マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

ゴーストライター

2012-02-17 14:01:27 | 映画ーDVD

ーゴーストライターーTHE GHOST WRITER

2010年 フランス/ドイツ/イギリス

ロマン・ポランスキー監督 ユアン・マクレガー(ゴースト)ピアース・ブロスナン(アダム・ラング)キム・キャトラル(アメリア・ブライ)オリヴィア・ウィリアムズ(ルース・ラング)トム・ウィルキンソン(ポール・エメット)ティモシー・ハットン(シドニー・クロール)ジョン・バーンサル(リック・リカルデッリ)デヴィッド・リントール(ストレンジャー)ロバート・パフ(リチャード・ライカールト)ジェームズ・ベルーシ(ジョン・マドックス)イーライ・ウォラック(老人)

 

【解説】

『戦場のピアニスト』などの巨匠ロマン・ポランスキー監督が、ロバート・ハリスの小説を映画化したサスペンス。元イギリス首相のゴーストライターとして雇われた平凡な男が、ある秘密に吸い寄せられていくさまを鮮やかなタッチで描く。主人公を好演するのは『スター・ウォーズ』シリーズのユアン・マクレガー。魅力的な元首相を、『007』シリーズのピアース・ブロスナンが演じ切る。冒頭からラストまで徹底的に練り上げられた物語に引き込まれる。

 

【あらすじ】

元イギリス首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝執筆を、破格の報酬で引き受けたゴーストライター(ユアン・マクレガー)。その仕事の前任者が事故死したこともあり、彼は気乗りがしないままアメリカ東部の島へと向かう。同じころ、イスラム過激派のテロ容疑者に対する拷問への元首相の関与が取り上げられ……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

混沌とした中で繰り広げられるサスペンスで、巻き込まれたゴーストライターが、いつのまにか核心にたどり着くけど、たちまち命を狙われて、事態は急展開していきます。

どちらかと言えば、ぼぉっとしているゴーストライターが翻弄される所に、引き込まれてみてしまいました。

 

ロマン・ポランスキー流やね。

うまいと思いました。

 

ジョニー・デップが主演したポランスキー作品「ナインスゲート」に雰囲気が似ていて、内容のありそうでないところも、結末の付け方も、似ていました。

主人公が、サスペンスの主人公にも関わらず、切れ者ではないところも似ています。

こういうサスペンス、嫌いじゃないです。

 

元イギリス首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝執筆を、破格の報酬で引き受けたゴーストライター(ユアン・マクレガー)。

前任者が事故死していたり、引き受けてすぐに襲われたり、不気味だけど、気にしない振りをして、ラングのいる離れ小島に渡ります。

 

☆ネタバレ

そこには、ラングの妻のルース(オリヴィア・ウィリアムズ)や秘書のアメリア(キム・キャトラル)、ボディーガードやスタッフなどがいた。

仕事を初めて間もなく、ラングが首相時代に、イラク戦争のテロ犯をアメリカに引き渡したことが戦犯として取りざたされ、大きな問題となった。

ラングを始め、スタッフの多くはロンドンへ向かった。

 

小島に残されたゴーストライターは、前任者の原稿に死の謎が隠されていることを知り、電話番号や、来客用の車のナビなどによって、その核心に引き込まれていく。

 

そしてたどり着いた人物、ポール・エメット(トム・ウィルキンソン)。

表は大学教授だが、裏の顔はCIAのスパイで、ラングとは、ケンブリッジ大学の演劇部で一緒に映っている写真もあった。

 

ラングはCIAに操られていたのか?

 

ところが、ラングは、イラク戦争で息子を失ったという過激な男に狙撃されてあっけなく死んだ。

これで、謎は永遠の闇に葬られたかに見えた。

 

しかしゴーストライターは、前任者のゴーストライターが自叙伝の原稿に隠した謎解きに成功した。

真犯人は意外な人物だった。

(その人しかないでしょ、という声が聞こえてきそう)

 

なぞを解いたことを、本人に知らせて、原稿を持って会場を後にしたところで、ゴーストライターは車にはねられた。

あとには、散り散りになった原稿が散乱していた。

 

ラストは思わず「おおっ」と声が出てしまいました。

これで終わりと言うことは、謎も真犯人も、大学教授も安泰というわけなのねー。

なんのこっちゃ!とつっこみそうになりましたが、ここまで来る過程が、サスペンスタッチなところも、小島の殺伐とした風景も、しれっとした人間関係も、なかなかよかったので、まあ、いいか、と思いました。

 

サスペンスの気分が好きな人は、見る価値があると思います。

変な魅力のある作品でした。

 

ステイ・フレンズ

2012-02-15 08:55:48 | 映画ーDVD

ーステイ・フレンズーFRIENDS WITH BENEFITS

2011年 アメリカ

ウィル・グラック監督 ジャスティン・ティンバーレイク(ディラン)ミラ・クニス(ジェイミー)パトリシア・クラークソン(ローナ)ジェナ・エルフマン(アニー)ブライアン・グリーンバーグ[俳優](パーカー)リチャード・ジェンキンス(ハーパー氏)ウディ・ハレルソン(トミー)

 

【解説】

『ソーシャル・ネットワーク』のジャスティン・ティンバーレイクと、『ブラック・スワン』のミラ・クニスが共演を果たした現代的ラブストーリー。恋愛に不器用な男女が、親友同士から気軽なセックスフレンドへと変化したことから派生する出来事を映し出す。主人公のゲイの同僚に『ゾンビランド』のウディ・ハレルソン、彼の父親を『モールス』のリチャード・ジェンキンスが演じるなど脇役も豪華。臆病さを隠しながら進展する2人の関係に注目だ。

 

【あらすじ】

ディラン(ジャスティン・ティンバーレイク)は、ロサンゼルスで腕利きのアート・ディレクターとして活躍していた。彼は元ロサンゼルス・タイムズ紙の記者だった父(リチャード・ジェンキンス)と姉(ジェナ・エルフマン)、その息子と実家で暮らしている。そんなある日、ニューヨークのジェイミー(ミラ・クニス)から転職の話が舞い込み……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

「ブラックスワン」のミラ・ニクス。

このロマンティックコメディは、奇しくもナタリー・ポートマンの「抱きたいカンケイ」のテーマと同じでした。

恋愛抜き、セックスだけの相手、いわゆるセフレの関係を求めたカップルの話。

 

今、恋愛が苦手な若い人が増えていると言うことかな?

 

恋愛すると、別れが辛い。

ディラン(ジャスティン・ティンバーレイク)とジェイミー(ミラ・クニス)は、同じような失恋の経験を繰り返してきた。

 

有能なヘッドハンターのジェイミーは、LAで働くディランをNYの雑誌社に引き抜こうとしていた。

ジェイミーはこの仕事を受けてもらおうと、ディランにニューヨークの魅力を紹介します。

その熱意にほだされて、ディランはニューヨークにやってきました。

 

ディランとジェイミーは恋愛観がぴったり。

セフレでしかも親友という誓いを立てて付き合い始めます。

 

でも、セックスだけの関係はそんなに続かず、体の関係は止めて、親友としてだけ付き合うことにしますが、そうして改めて見直すと、お互いの魅力に気が付く。

でも、臆病なふたりは、次の1歩が踏み出せず、傷つけ合ってしまう。

 

ディランのアルツハイマーの父親(リチャード・ジェンキンス)や、ジェイミーのシングルマザーとして気ままに生きている母(パトリシア・クラークソン)が二人を支えて、いい味を出してくれます。

 

仕事はできるんだけど、本音で付き合うのが下手という今時の若者のお話です。

私は「抱きたいカンケイ」より、本音っぽくて面白かった。

ミラがとてもチャーミングでした。

 

もう一つのお楽しみは、フラッシュ・モブ。

タイムズスクエアと駅の構内で2回描かれていますが、とても楽しいシーンです。

300人くらいの群衆が、音楽がかかったとたん、ばらばらと踊り出して、最終的には全員が同じ振り付けで踊ります。

かなりわくわくするし、二人の恋にも影響を与える大事なシーンになっています。

 


リトルブッダ

2012-02-14 11:12:37 | 映画ーDVD

ーリトルブッダーLITTLE BUDDHA

1993年 イギリス/フランス

ベルナルド・ベルトルッチ監督 音楽=坂本龍一 アレックス・ヴィーゼンダンガー(ジェシー・コンラッド)キアヌ・リーヴス(シッダールタ王子)ブリジット・フォンダ(リサ・コンラッド)クリス・アイザック(ディーン・コンラッド)イン・ルオチェン(ラマ僧ノルブ)

 

【解説】

ベルトルッチらしい美しい場面で綴る、魅惑的な輪廻転生譚。案内役となるのはアメリカ・シアトルの9歳の少年ジェシー。突然訪れた三人のラマ僧が彼の前にひざまずく。少年を仏陀の生まれ変わり、活仏だと言うのだ。父と共に未知のチベットに旅した少年は、そこで太古の偉大な王子ゴータマの伝説を学び、その姿を目の当たりに見て仏性に目覚めていく。インド・ロケによる王子が栄華を極めるシークェンスや、彼が悟りを開いて仏陀となるシーン等、SFXも絶妙で、映像的には大変見応えがある。(allcinema ONLINE

 

【感想】

このブログによく遊びにきてくれるNAKAちゃんオススメの作品。

キアヌがきれいです。

 

上記の解説には「少年を仏陀の生まれ変わり、活仏だと言うのだ。」とありますが、そんなおこがましいことではありません。

 

チベット仏教の僧で、今はブータンに亡命しているノルブ僧(イン・ルオチェン)が、自分の死期を感じながら、師匠のドルジェ僧の生まれ変わりを探し出す中で、仏教や釈迦の生き方を考えるという作品です。

 

シアトルで暮すジェシー少年の両親もとに、3人のチベット僧がやってきて、「お宅の息子さんは、ドルジェ師の生まれ変わりかもしれません。一緒にブータンへ行きませんか?

戸惑う両親に、仏陀の絵本を手渡して帰っていった。

 

母親(ブリジット・フォンダ)は興味を示すが、建築家の父(クリス・アイザック)はいぶかった。

しかし、仕事仲間の親しい友人の死を経験して、仏教に興味を持ち、ジェシーとともにブータンへ行く決心をした。

 

☆ネタバレ

ブータンに行くと、ノルブ師は「あと二人の生まれ変わり候補がいる」と言って、カトマンズのサーカスの少年と、ブータンの裕福な家庭の少女を見つけ出した。

 

ジェシーが絵本を読むと、シッダールタ(キアヌ・リーブス)の一生が語られるという構成です。

おとぎ話のように美しいお話ですが、シッダールタが苦行するシーンは別です。

 

3人の候補者とともに、本山のお寺に行って、3人ともが生まれ変わりだと言う結末でした。

 

輪廻転生がテーマで、抹香臭い作品かと思いますが、もっと一般的にも受け入れやすい、生と死の自然な関係のお話だと思いました。

釈迦が解いた「中道」とか「悟り」とか、本気で考えたらとても難しいです。

 

私は大学の「世界の宗教」という講義で、釈迦の説いた「四苦八苦」のことを教えていただきました。

「四苦」は生・老・病・死ですが、八苦とは?

愛別離苦(あいべつりく) - 愛する者と別離する苦しみ

怨憎会苦(おんぞうえく) - 怨み憎んでいる者に会う苦しみ

求不得苦(ぐふとくく) - 求める物が得られない苦しみ

五蘊盛苦(ごうんじょうく) - あらゆる精神的な苦しみ

(ウィキペディアより)

 

私は2番目の「怨憎会苦」を「嫌いな人とも一緒にいなくてはならない苦しみ」と習いました。

嫌いな人といるときに感じる苦痛は、自分のわがままだと思っていたのに、お釈迦様が八苦の中に数えてくださっているほどの苦痛なんだ、お釈迦様はわかってくださっているんだと知り、とても救われた経験があります。

 

そんなふうに、宗教も先人の知恵のひとつと、身近に感じられることができたら、もっと生き易くなるんじゃないかなあと思いました。

 

劇的なお話ではありませんが、精神が疲れたときに見るにはいい作品だと思いました。

 

J・エドガー

2012-02-10 09:20:19 | 映画ー劇場鑑賞

J・エドガーーJ. EDGAR

2011年 アメリカ

クリント・イーストウッド監督 レオナルド・ディカプリオ(J・エドガー・フーバー)ナオミ・ワッツ(ヘレン・ギャンディ)アーミー・ハマー(クライド・トルソン)ジョシュ・ルーカス(チャールズ・リンドバーグ)ジュディ・デンチ(アニー・フーバー)

 

【解説】

FBI初代長官ジョン・エドガー・フーバーの半生を、クリント・イーストウッド監督、レオナルド・ディカプリオ主演で映画化した伝記ドラマ。母親からのでき愛、側近との関係など、フーバーの輝かしい功績の裏に隠された禁断の私生活を赤裸々に描いていく。フーバーの秘書役にナオミ・ワッツ、公私を共にした側近に『ソーシャル・ネットワーク』のアーミー・ハマー、母親役にはジュディ・デンチと、豪華な俳優陣が共演。半世紀もアメリカを裏で支配した謎多き男の真実にディカプリオがどうはまるのか注目だ。

 

【あらすじ】

1924年にFBI初代長官に任命されたジョン・エドガー・フーバー(レオナルド・ディカプリオ)は、歴代の大統領に仕え、数々の戦争をくぐり抜け、半世紀にわたって法の番人としてアメリカをコントロールしてきた。しかし、フーバーには絶対に人に知られてはならない秘密があった……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

予想していた内容とは、かなり違っていました。

さすが、イーストウッド監督というべきか…。

アメリカ人にとって、この作品は、どういう気持ちになるのかなあ?

 

FBIアメリカ連邦捜査局の初代長官であり、1924年の任命から1972年に亡くなるまで長官職に留まり、第30代アメリカ大統領カルビン・クーリッジから第37代リチャード・ニクソンまで、8代の大統領に仕えたジョン・エドガー・フーバー。

 

FBIと言えば、ギャングや凶悪犯をどんどん逮捕していくコミックや映画では、正義の味方のイメージが強かったので、この作品はかなり意外でした。

ヒーロー物語なのかな、と思っていましたから。

 

この作品は、ジョン・エドガー・フーバー(レオナルド・ディカプリオ)が晩年に自伝を書かせるという形式で語られます。

FBIという画期的な組織を育て上げ、科学捜査にも功績のある自分。

凶悪犯を逮捕し、迷宮入りかと思われたリンドバーグ(ジョシュ・ルーカス)の愛息誘拐事件の犯人も検挙した。

栄光の人生、賞賛されるべき人物。

 

筆記する人に、自分の栄光を語り聞かせるのですが、その間にも、彼の秘密のファイルは収拾され、蓄えられていきます。

 

それを保管しているのが、初期の段階から私設秘書を務めているヘレン・ギャンディ(ナオミ・ワッツ)。

その中には、歴代大統領の秘密のファイルも多数ありました。

捜査の過程で知り得た秘密を武器に、大統領をも黙らせ、捜査当局のトップに君臨した男。

 

過去と、現在を行きつ戻りつしながら、ジョン・エドガー・フーバーという男の生き様を浮き彫りにしていくという手法でした。

 

☆ネタバレ

母(ジュディ・デンチ)から、「おまえはアメリカで一番強い男になる」と言われながら育った。

裕福な生まれと言うわけではなく、大学図書館で働きながら大学を卒業し、司法試験に受かった努力の人。

生涯独身で、母が亡くなるまで母と暮した。

マザコン?

強い母に、ジュディ・デンチがぴったりでした。

 

司法省時代、ヘレンにプロポーズするが、断られ、それで私設秘書として雇った。

彼女は、実に忠実にフーバーの秘密を守った。

ほとんど老けメイクで、ちょっと気の毒でした。

左から、ヘレン、クライドとフーバー

 

もう一人重要な人物、側近のクライド・トルソン(アーミー・ハマー)。

女装癖、同性愛者とウワサされるフーバーの、プラトニックなパートナーとして描かれていました。

 

彼が信頼したのは、この3人だけです。

極度な人間不信、特に晩年の猜疑心は、ひどいものでした。

醜悪と言っていいでしょう。

 

そのなかでトルソンは、自分が病気になっても、フーバーをさとし、愛を捧げていました。

ちょっとうるっときました。

 

全体には、ディカプリオの苦悩に満ちた演技が少し重たい感じでした。

どこか、息が抜けるシーンがあれば良かったのになあ、と思いました。

 

老けメイクがわざとらしく感じられたのですが、これもイーストウッドの演出のうちなのでしょうか?

 


ペントハウス

2012-02-09 15:14:48 | 映画ー劇場鑑賞

ーペントハウスーTOWER HEIST

2011年 アメリカ

ブレット・ラトナー監督 ベン・スティラー(ジョシュ)エディ・マーフィ(スライド)ケイシー・アフレック(チャーリー)アラン・アルダ(アーサー・ショウ)マシュー・ブロデリック(Mr.フィッツヒュー)マイケル・ペーニャ(エンリケ)ティア・レオーニ(FBI捜査官クレア)ガボレイ・シディベ(オデッサ)

 

【解説】

世界的な人気を誇るコメディー俳優、ベン・スティラーとエディ・マーフィが初めて共演を果たしたクライム・アクション。ニューヨーク・マンハッタンの超高級マンション「ザ・タワー」を舞台に、最上階のペントハウスに住む大富豪に全財産をだまし取られたタワーの使用人たちの奪還作戦を描く。監督は、『ラッシュアワー』シリーズのブレット・ラトナー。共演には『ジェシー・ジェームズの暗殺』のケイシー・アフレック、『アビエイター』のアラン・アルダら実力派が顔をそろえる。

 

【あらすじ】

マンハッタンの一等地に建つ超高級マンション「ザ・タワー」の最上階に暮らす大富豪ショウ(アラン・アルダ)が、ある日20億ドルの詐欺容疑で逮捕される。それを機に、管理人ジョシュ(ベン・スティラー)をはじめタワーの使用人たちの全財産もだまし取られていたことが発覚。自分たちの財産を取り戻すべく、ジョシュはペントハウスに忍び込んでショウの隠し財産を奪う計画を練るが……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

ベン・スティラーとエディ・マーフィの競演という謳い文句だけど、ドタバタ度は押さえられて、ハラハラドキドキも味わえる、楽しい作品でした。

 

 

マンハッタンの一等地にすっくと建つ高級マンション「ザ・タワー」。

その最上階に暮らす大富豪のショウ(アラン・アルダ)。

ネットで、マンションのマネージャーのジョシュ(ベン・スティラー)とチェスをするという粋な老人、と思っていたら、これが大変な食わせ物。

自分の倒産を知りながら、ジョッシュを通じてマンション従業員の年金積み立てを投資させたり、勤勉なドアマンの全財産を言葉巧みに預けさせていた。

 

防犯カメラにショウが誘拐される所が映し出され、ジョシュは大慌てで救出に走った。

犯人の車が黒い車に囲まれて横転、ショウが助かったと思ったら、黒い車から降りてきたのはFBIの捜査官クレア(ティア・レオーニ)たちだった。

ショウは詐欺罪でその場で逮捕。

 

ショウは破産していることがわかり、ドアマンは自殺を図った。

幸い、命に別状はなかったが、責任を感じたジョシュは、保釈されてきたショウのところに乗り込む。

しかし、ショウは手のひらを返したようにその本性を剥き出しにする。

みんなから預かったお金は「ギャンブルに使った」としゃあしゃあと言うのだ。

ショウが、いままでの好々爺の顔から、厚顔無恥な非道の顔に一瞬で変身する所が見所です。

ジョシュの落胆ぶりが手に取るように伝わってきます。

「信じて尽くしてきたのに!!」

 

クレアから、ショウの隠し財産が20億円あるはずだと聞いたジョシュは、そのお金がペントハウスにあるとにらみ、仲間を集めて奪う計画を立てるのだがー。

 

☆ネタバレ

ショウの部屋を襲撃するメンバーとしてジョシュが集めたのが、新米エレベーターボーイのエンリケ(マイケル・ペーニャ)、家賃を滞納して追い出された元住民Mr.フィッツヒュー(マシュー・ブロデリック)、ジョシュの妹のダンナでマンション従業員のチャーリー(ケイシー・アフレック)、それにこの素人集団を指導する本物の泥棒スライド(エディ・マーフィ)という面々だった。

 

ジョッシュとスライドが噛み合なくて、いちいちおかしいけれど、みんな真剣そのもの。

チャーリーは最終的には抜けて、マンション業務に戻るけれど、代わりに金庫破りの名人オデッサ(ガボレイ・シディベ)が加わって、ショウの隠し金庫までたどり着きますが、そこは空っぽ。

 

そして、部屋を見回すと、スティーブ・マックイーンが乗っていたというショウの愛車が。

ジョッシュはひらめきました!!

 

そこからが、トム・クルーズの「ミッション・イン・インポシブル ゴーストプロトコル」も顔負けという、高層ビルディングの恐怖の始まり。

 

 

こっちの方が勝っているかもです。

Mr.フィッツヒューが大活躍!!

 

素人集団ではありながら、最後は見事なチームワーク。

ベン・アフレックの弟のケーシー・アフレックとか、「プレシャス」で衝撃デビューを飾ったガボレイ・シディベ、「クラッシュ」や「大いなる陰謀」で渋い演技を見せたマイケル・ペーニャなど、コメディ畑ではない人をうまく配していました。

 

そして、見事なオチが待っています。

すかっとしますよ。

 

サンクタム

2012-02-09 15:02:45 | 映画ーDVD

ーサンクタムーSANCTUM

2010年 アメリカ

アリスター・グリアソン監督 リチャード・ロクスバーグ(フランク)リース・ウェイクフィールド(ジョシュ)アリス・パーキンソン(ヴィクトリア)ダン・ワイリー(クレイジー・ジョージ)クリストファー・ベイカー(J..)ジョン・ガーヴィン(ジム)ヨアン・グリフィズ(カール)

 

【解説】

『アバター』で映画界を新たなるステージへと導いたジェームズ・キャメロンが製作総指揮を務めるアドベンチャームービー。洞くつの中で展開される脱出劇が、キャメロン自らが改良したフュージョン・カメラ・システムによって臨場感たっぷりに描かれていく。監督は、『男たちの戦場』のアリスター・グリアソン。激流に押しつぶされる感覚や洞くつの天井に圧迫される感覚など、迫力と臨場感あふれる映像体験が楽しめる。

 

【あらすじ】

南太平洋にぽつりと浮かぶ島にある、熱帯雨林の奥地に広がる洞くつ。その地は、人が足を踏み入れてはいけない聖域(サンクタム)の様相を呈していた。そんな洞くつの謎に挑もうと探検隊がダイビングによる調査を試みるが、巨大なサイクロンが襲い掛かり……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

この作品、「アバター」のジェームズ・キャメロンの3D映画のように宣伝していませんでしたか?

それで、DVD鑑賞をと思ったわけですが、キャメロン監督じゃないやん!

製作総指揮には名前がありましたが。

しかも、ヨアン・グリフィズのほか、知らない俳優さんばかり。

しかも、ヨハンが主役じゃないし。

「あれー?」という思いで見ていたら、なんと、私の苦手なサバイバルもの。

あちゃー!!

失敗だ。

 

パプアニューギニアの巨大洞窟を探検しているグループが、突然のサイクロンに襲われ、洞窟内の水位が急上昇する中、そこからの脱出を試みるストーリー。

軸になっているのは、探検に命をかける父親と、反発しつつも父に従う息子の物語でした。

 

ひとりひとり順番に、しかもあまりいい亡くなり方をしないので、かなりグロテスクな感じで続いていきます。

まるで、ポセイドンアドベンチャーのような先の見えない、息苦しい脱出劇ですが、最後まで頑張ってみたら、父の思いが息子に届いて、いやな終わり方ではありませんでした。

 

純粋に、サバイバル映画としてみたら、その方面の好きな方には、よい映画と評価されたと思うけど、「アバター」をイメージした宣伝の仕方は、私のような観客を引き入れてしまうので、評価の点では、マイナスだったのではと思いました。

 

 


善き人

2012-02-07 10:17:08 | 映画ー劇場鑑賞

ー善き人ーGOOD

2008年 イギリス/ドイツ

ヴィセンテ・アモリン監督 ヴィゴ・モーテンセン(ジョン・ハルダー)ジェイソン・アイザックス(モーリス)ジョディ・ウィッテカー(アン)スティーヴン・マッキントッシュ(フレディ)マーク・ストロング(ボウラー)ジェマ・ジョーンズ(ハルダーの妻)アナスタシア・ヒル(ヘレン)

 

【解説】

『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどで人気を博すヴィゴ・モーテンセン主演のヒューマン・ドラマ。劇作家CP・テイラーの代表作を基に、ナチス政権下のドイツで葛藤(かっとう)する大学教授の日々を描く。監督は、『Oi ビシクレッタ』のヴィセンテ・アモリン。『ハリー・ポッター』シリーズのジェイソン・アイザックスや、『ヴィーナス』のジョディ・ウィッテカーらが脇を固める。特殊な国内情勢の中で、苦悩し続ける心優しい主人公の姿に、胸が熱くなる。

 

【あらすじ】

ヒトラーが独裁政権を築いた1930年代のドイツ。ベルリンの大学で学生を教えるジョン(ヴィゴ・モーテンセン)は、病に伏す母親を助け、自分の家庭では家事をこなす献身的な人間。そんなある日、自分が執筆した小説を読んだヒトラーが彼をナチス党に呼び入れることを決める。しかし、過去に戦争を戦い抜いた友人でユダヤ人のモーリス(ジェイソン・アイザックス)のことが頭をよぎり……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

この作品は、「サラの鍵」に続けて見ました。

「サラの鍵」は1942年7月からの物語、この「善き人」は1937年から1942年4月までの物語です。

 

前者の舞台はフランスで、後者の舞台はドイツ。

ナチスが台頭して、ユダヤ人に対する迫害が激しくなっていく過程を描いて、フランスとドイツでの微妙な違いなどが感じられて、単独で見るよりも興味深かったと思いました。

 

タイトルの「善き人」(good)というのは、皮肉だと思いました。

主人公のジョン(ヴィゴ・モーテンセン)は、いたって小心者の、俗人です。

大学で文学を教え、家では、年老いた口うるさい母の面倒を見ながら、家事や育児をこなしていました。

妻は、ピアノばかりを弾いていて、夫にも家庭にも興味がないようでした。

 

妻の父親はナチス党の党員で、ジョンにも入党を薦めていましたが、ジョンは入党は拒んでいました。

 

ジョンは若い時に戦争に参加していて、戦友のモーリス(ジェイソン・アイザックス)がいました。

モーリスは精神分析医ですが、ユダヤ人でした。

 

モーリス(左)とジョン

 

ある日、党からジョンに出頭命令が出ました。

びくびくして出頭すると、ジョンの書いた小説をヒトラー総帥が気に入ったので、論文を書けという。

その小説とは、愛する人の安楽死を容認すると言う内容でした。

ヒトラーは、知的障害者の安楽死を容認する理論を欲しがっていたようです。

このことに関しては、あまり語られません。

ジョンが、知的障害者の施設を見学するシーンがありますが、その理論がどう使われたかと言うことには触れられませんでした。

 

それより、ジョンの論文はナチス上層部に認められ、ナチスに入党もして、ジョンは党の中で重い役職となっていきます。

ジョンの生活も一変します。

母は施設に入れ、妻とは別れて、教え子だったアン(ジョディ・ウィッテカー)と結婚します。

 

☆ネタバレ

ジョンの生活とはうらはらに、ユダヤ人迫害は激しくなり、モーリスから、国外脱出するための便宜を図って欲しいと言う申し出があった。

でも、ジョンはフランス行きの切符を買うことに失敗する。

 

そのうちに、俗に「水晶の夜」(私の推測です)と呼ばれる事件が起きる。

ユダヤ人の青年が、ドイツの書記官を撃ったのだ。

やっと、モーリスの身が危険だと思い知ったジョンは、フランス行きの切符を手に入れたが、自宅にモーリスの姿はなかった。

 

撃たれた書記官が亡くなると、反ユダヤの暴動が起きた。

ジョンも鎮圧のためにかり出される。

モーリスの身を案じつつ現場に出かけていく。

妻に、「モーリスがきたら、これを渡せ」と言いおいて。

 

現場にモーリスの姿はなかった。

自宅に戻って妻に聞いても、モーリスは来なかったと言った。

 

ナチスの情報部に、ユダヤ人の記録がすぐに取り出せるシステムがあった。

それで、モーリスの行方を調べると、妻が密告したこともわかった。

ジョンは、すぐに収容所に行き、モーリスを探そうとするが、ジョン自身も音楽が聞こえると言う幻聴がひどくなっていた。

 

この幻聴が聞こえるのはいつも決まってマーラーの音楽なのですが、私はこれが、ジョンの良心のなせることなんだと思いました。

そして、このラストシーンは、自分がモーリスに何をしたかを理解したとき、ジョンの精神も普通ではなくなっていたということではないかと考えています。

 

平時には母や妻に押さえ込まれていたジョンが、ナチス党で地位を得たら、母は施設に、妻とは離婚、若い妻を迎えるという変わりっぷりです。

 

しかし、母は孤独で惨めな暮らし、妻は、反対にピアノ教師として自立して生き生きとしている。

戦友であるモーリスは、助けられない。

若い妻からは裏切られる。

という結末でした。

 

ジョンにとって、ナチスとは何だったのか。

「虎の威を借る狐」という言葉が浮かんできました。

自分を見失ってしまったジョンの悲劇の作品だと思いました。

 


サンザシの樹の下で

2012-02-07 08:54:53 | 映画ーDVD

ーサンザシの樹の下でー山[木査]樹之恋/THE LOVE OF THE HAWTHORN TREE

2010年 中国

チャン・イーモウ監督 チョウ・ドンユイ(ジンチュウ)ショーン・ドウ(スン)シー・メイチュアン(ジンチュウの母)リー・シュエチェン(村長)チェン・タイシェン(ルオ先生)スン・ハイイン(スンの父)

 

【解説】

HERO』『初恋のきた道』などで知られる世界の名匠チャン・イーモウが監督を務めた、美しくも切ない純愛ストーリー。中国で300万部を売り上げた華僑作家エイ・ミーのベストセラー小説を基に、文化大革命下の中国に生きる男女の実話をつづる。運命に翻弄(ほんろう)されるヒロインを演じるのは、チャン・イーモウが国内の芸術学校を探し回り、2,500人の中から抜てきした新星チョウ・ドンユィ。本作をきっかけにスター街道を進むドンユイの熱演が見どころだ。

 

【あらすじ】

文化大革命下の中国。都会育ちの女子高生ジンチュウ(チョウ・ドンユイ)は、再教育のために送られた農村でスン(ショーン・ドウ)という青年に出会う。エリートでありながら明るく誠実な彼に惹(ひ)かれるジンチュウだったが、それは身分違いの許されない愛だった。その後、2人は愛を交わし合う関係にまで至るが……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

名匠チャン・イーモウと言えば、「初恋のきた道」でチャン・ツイィーに魅了された人は多いのではないでしょうか?

この作品は、「初恋のきた道」を彷彿とさせる純愛物語。

ハンカチを用意しなくっちゃ。

 

1970年代の中国、文化大革命の真っ最中。

都市部で暮す女子高生ジンチュウ(チョウ・ドンユイ)は、農村体験のためにはるばるバスで小さな村にやってきた。

村の入り口にあるサンザシの木。

この木は、抗日戦争のとき、日本兵が中国兵を処刑した場所で、サンザシは普通白い花をつけるが、この木に咲くのは兵士の血を吸った真っ赤な花だと言う。

 

ジンチュウは、村長の家にホームステイすることになり、この家に食事に来る地質調査員スン(ショーン・ドウ)と出会う。

 

二人は淡い恋心を通わせるが、スンに婚約者がいるという噂を聞いて、ジンチュウはスンをさけ、自宅に戻った。

 

☆ネタバレ

ジンチュウの家は母と幼い妹と弟の4人暮らし。

父は思想犯として獄中にいた。

母も、思想教育を受ける身で、一家はとても貧しく、ジンチュウが高校を卒業後、学校に残って働くというのが家族の願いだった。

そのためには、ジンチュウも女学生でありながら、男たちに混じって肉体労働も厭わず働いていた。

 

ときどき村から氷砂糖やサンザシの実などが届くようになった。

スンがジンチュウのことを思って届けてくれていたのだった。

婚約者は実は妹だったということもわかり、二人はときどき会うようになった。

誰も知らない、二人だけの幸せのとき。

ジンチュウの学校への試験採用も決まり、ようやく未来に光が射したかと思われたそのとき、二人のデート中にジンチュウの母親に会ってしまった。

 

母親は「恋愛に反対しているのではない。まだ早すぎるのだ」と二人を説得した。

スンは、理解を示し「いつまでも待つ」といって、二人は無言で別れた。

 

しばらくして、スンが病院に入院したという知らせが届き、ジンチュウは母にも職場にも嘘をついてスンの元へ。

「白血病」と聞いていたのだが、スンは「ただの定期検診」だという。

二人は、看護婦宿舎を借りて一夜を共にする。

そのあとの二人の別れがあまりにせつない。

 

その後スンからの連絡が途絶え、ジンチュウは不安から、スンの愛情まで疑い始める。

ジンチュウは自分が余りにも幼く、恋愛に付いても何も知らないということを、友達の妊娠騒動によって知り、ソンの深い愛情を思い知った。

そして、スンの行方を探し始める。

地質調査の仲間に聞くと「白血病にかかった人はいたが、スンは健康だった」といい、行方は知らなかった。

 

ジンチュウが授業をしていると軍から1台の車が迎えにきた。

連れて行かれたところは病院で、そこには痩せて内出血した痕が全身にあるスンの変わり果てた姿があった。

スンの父が出迎え、「もう長くはない、名前を呼んでやってほしい」と言った。

スンのうつろな目は、天井に貼付けた二人の写真を見ていた。

ジンチュウが呼びかけると、スンの目から一筋の涙がー。

 

文革が終わって、ジンチュウは外国へ留学し、二人の思い出のサンザシの木は、ダムの下に沈んだ。

 

まさに、純愛ストーリーで、とても切ない物語なんだけど、ソンが難病で死んでしまうなんて、チャン・イーモウ作品にしては、単純だなあと言う気持ちがしていました。

 

それで、こんな解釈をしてみました。

 

スンは仕事がら、定期検診を義務づけられていました。

ジンチュウがお見舞いに行ったときは、本当に定期検診だったようです。

でも、「地質調査」ってなんでしょう。

怪しいですよね。

作業員たちも「白血病で亡くなった人もいた」と言っていました。

 

スンは仕事中の事故で、瀕死の重傷になったのには間違いがありません。

かなり急性のものだったと思われます。

身分を回復したスンの父親が、軍を通じてジンチュウを呼びました。

 

ということは、国家の仕事のしていての事故なのでしょう。

死に目に恋人を会わせるという温情も認められたのでしょう。

 

では、スンが謎の死を迎えなければならなかった仕事とは、一体なんなのでしょう。

作品の中ではまったく語られませんでした。

地質調査の装置も布で覆って隠されたままでした。

 

スンの最後の姿も悲惨でした。

あの明眸皓歯の青年が、痩せて横たわっている姿には、観る者もショックを受けました。

でも、スン自身は、こういう結果がいつくるかわからないと、予想していたようでした。

二人が別れるたびに、これで会えないという危機感が漂っていました。

 

以上のことから、私は放射性物質に関係するもの、たとえばウラン鉱の調査かなあ?と思いました。

まったく語られなかった所が、ヒントではないかなあ。

国家機密で、働いている人にもその危険性を教えられてなかったような調査。

そう考えると、二人を引き裂いたのは、まさに国家だったんだと思い、さらに、この作品が奥深いものに思えてきました。

 

貧しさ故に幼くて、あまりにもピュアなジンチュウに惹かれて、自分の人生を全部捧げてもいいと思うほどの愛を示したスンは、自分の短い生涯を予感していたに違いありません。

だからこそ、ジンチュウといる時間を美しいものにしたいと、命を賭けて大切にしたのではないでしょうか。

 

かわいいジンチュウに気持ちを入れて見てしまいましたが、スンの気持ちを考えながら見ると、また違った純愛が見えてくるのかもしれません。

二人の恋愛を通じて垣間見える革命の矛盾や問題点。

監督の意図も、ここにあるような気がしました。

 

サラの鍵

2012-02-04 11:42:46 | 映画ー劇場鑑賞

ーサラの鍵ーELLE S'APPELAIT SARAH

2010年 フランス

ジル・パケ=ブランネール監督 クリスティン・スコット・トーマス(ジュリア・ジャーモンド)メリュジーヌ・マヤンス(サラ・スタルジンスキ)ニエル・アレストリュプ(ジュール・デ。ユフォール)エイダン・クイン(ウィリアム・レインズファード)フレデリック・ピエロ(ベルトラン・テザック)

 

【解説】

ナチス占領下のパリで行われたユダヤ人迫害、ヴェルディヴ事件を題材に、過去と現代を交錯させながらユダヤ人一家に起こった悲劇を描く感動的な社会派ドラマ。世界中で300万部を売り上げたタチアナ・ド・ロネの原作を基に、『マルセイユ・ヴァイス』のジル・パケ=ブランネール監督が映画化。『イングリッシュ・ペイシェント』などのクリスティン・スコット・トーマスが、アウシュビッツについて取材するジャーナリストを好演。次第に解き明かされる衝撃の事実とラストに胸を打たれる。

 

【あらすじ】

1942年、ナチス占領下のパリ。ユダヤ人一斉検挙によってヴェルディヴに連れてこられた人々の中に、少女サラはいた。それから60年後。パリに暮らすアメリカ人ジャーナリストのジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)は、アウシュヴィッツに送られた家族を取材するうちに、かつて自分のアパートで起こった悲劇を知ることとなる。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

<ナチス占領下のパリで行われたユダヤ人迫害、ヴェルディヴ事件>を全く知りませんでした。

ウィキペディアによると、「1995716日大統領就任直後に第二次世界大戦中、フランス警察が行ったユダヤ人迫害事件であるベルディブ事件に対して、追悼式典に出席した上で、始めてフランス国家の犯した誤りと認めた」のだそうです。

 

この映画は、1942年7月に起きたヴェルディヴ事件で、フランス警察によってアパートから強制的に連れ出されるユダヤ人スタルジンスキ家の悲劇と、現代のフランスで生きるアメリカ人女性ジャーナリストで、ホロコーストの取材を続けるジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)の物語が交錯して語られていきます。

サスペンス仕立てで、観客を飽きさせません。

 

前者の物語の主人公はスタルジンスキの長女サラ(メリュジーヌ・マヤンス)です。

「その日」は突然やってきました。

 

 

噂はあったのでしょう。

父親は地下室に隠れていました。

でも、警察は家族全員を連れて行くというのです。

サラはとっさに弟のミッシェルを納戸の中に隠し鍵をかけました。

「きっとすぐに出して上げる。約束するから静かに待っていて」と。

 

☆ネタバレ

警察は乱暴に母もサラも連れ出しました。

地下室に隠れていた父親も見つかり、ベルディブ競輪場に連れて行かれました。

サラはミッシェルを隠したことを後悔し、警察官にミッシェルを連れれてくるように頼んだけれど無視されてしまいました。

両親にも「おまえが隠すからだ、お前の責任だ」と罵倒されます。

 

人々はここで数日間放置され、収容所に送られました。

収容所では、男と女子供が先に引き離され、それから数日して母と子供が引き離されました。

 

サラは友達になった女の子と収容所を逃げ出し、近くの村へたどり着きます。

でも、一緒に逃げた女の子はジフテリアにかかっていました。

農家のテザック夫婦が二人を助け、亡くなった女の子をフランス警察に引き渡しますが、サラは匿ってくれました。

 

二人を助けてくれたテザック氏

 

そのうえ、サラの訴えを聞いてパリの自宅にも連れて行ってくれました。

ところが、アパートには新しい住民が入居したばかりでした。

サラは片時も放さなかった鍵で納戸を開けますが、もちろん遅過ぎたのです。

 

この出来事がサラの心に暗い影を落とし、生涯にわたってサラを苦しめ続けます。

賢く働き者の女性に成長したサラは、育ててくれたテザック夫妻にも黙って家を出ていき、その後アメリカに渡りました。

 

さて、もう一方の主人公ジュリアです。

フランス人の夫とティーンエージャーの娘の3人暮らし。

この度、夫の祖母の思い出のアパートを改装して住むことになりました。

でも、ジュリアの心はうつろです。

 

ヴェルディヴ事件をライフワークのように追っかけていますが、歴史の闇に葬られ、人々から忘れ去られようとしているこの事件をいくら取材しても、それで何が得られるのか、まるで、底なし沼に落ちていくようです。

 

諦めていた妊娠がわかり、ジュリアは喜びますが、夫も娘も赤ちゃんを望んではいませんでした。

さらに落ち込むジュリア。

 

取材の過程で、彼女の改装中のアパートが、1942年7月までユダヤ人のスタルジンスキ一家が住んでいたことがわかります。

スタルジンスキ夫妻は収容所で亡くなったことが確認されましたが、子供たちーサラとミッシェルの消息は不明になっていました。

 

夫の父に聞くと、8月引っ越したばかりのときに、ユダヤ人の少女が飛び込んできて、納戸を開け、幼児の死体があったことを話し始めました。

このことは、父と祖父だけの秘密でした。

祖父とテザック夫妻の手紙のやり取りがあり、それが貸金庫に残されていました。

そこには、美しい娘に成長したサラの写真がありました。

 

 成長したサラ

 

子供を産む決心をし、ジュリアはサラを追ってアメリカへ。

 

サラは、アメリカで知り合ったリチャードと結婚。

サラにとって、人生で一番幸せな時代だったのでしょうが、過去の苦しみはサラを決して逃がしませんでした。

一人息子をもうけましたが、その子が9歳のときに、サラは自殺してしまったのです。

 

ジュリアはサラの息子ウィリアム(エイダン・クイン)に会うためにイタリアへ。

 

サラの息子、ウィリアム(エイダン・クイン)

 

でも、ウィリアムは両親から何も聞かされておらず、自分がユダヤ人の息子であることも知りませんでした。

ジュリアはへんな言いがかりをつける女と思われ、追い返されてしまいました。

 

ジュリアは夫から「家族を傷つける真実を知ってなんになる」となじられますが、「真実を知るには代償がいる」と言い、自分の生き方を貫くのです。

 

数年後、ジュリアは夫と別れ、長女と赤ちゃんの次女とニューヨークで暮らしていました。

そんなある日、ウイリアムから連絡がありました。

ウィリアムは父親から母親のすべてを聞いて、ジュリアにも理解を示すようになっていました。

 

二人は旧知の間柄のように親しく話し合い、そして最後にウィリアムがジュリアの娘の名前を聞いたのです。

ジュリアは「ごめんなさい、サラと名付けたの」

二人の間に、なんともいえない感情が通いました。

それが見ている私にも伝わってきて、流れる涙を止めることができませんでした。

 

悲しい壮絶なサラの生涯。

でも、こうして、ジュリアの娘という形になって、赦しの感情が流れ込んで来ました。

サラの苦しみは決して無駄ではなく、新しい命という美しいものに形を変えたんだと思いました。

カタルシスを与えてくれるラストでした。

 

ホロコーストの映画を見ると、いつも疑問に感じることがあります。

人が人に、あんなにひどいことができるのだろうかと。

 

多くの人は、クラスのいじめられっ子にするように、少しだけイジメに加担したり無視したりしているだけなのでしょう。

あんなひどい収容所に入れられ、最後は殺されるなんて、想像もしなかった、というに違いありません。

人々の無関心がホロコーストの悲劇を生んだのではないかと思います。

 

サラたちが連れて行かれるときも、隣人のフランス人たちはとても冷たかった。

でも彼らは、競輪場で何が起きているのか、知ろうともしなかったし、その後アウシュビッツで殺されるなんて想像もしなかったのでしょう。

 

事実が明るみになったとき、多くのフランス人たちは恥じて忘れてしまいたかったのでしょう。

 

それが、ジュリアがサラを知ったように、個人を知ってしまえば、無視はできない存在になります。

彼女の痛みや苦しみは、自分のことのように感じられることでしょう。

 

アウシュビッツでは何万人の人が亡くなったと言われても、それはすごいと思うけど、数字でしかありません。

でも、その数のひとりひとりに人生があり、感情があったと知ることが、大切なんだと思いました。

真実を知ることは、人も傷つけ、自分も傷つかずにはいられないことかもしれないけど、真実はやがて愛に通じると信じ、勇気を持って追求しなければならないんだと思いました。

 

相変わらず、クリスティン・スコット・トーマスは素敵です。

演技もさることながら、フランス語と英語を苦もなく操る知的な姿には、うっとりしてしまいました。

 

 


SOMEWHERE

2012-02-04 10:20:58 | 映画ーDVD

SOMEWHERESOMEWHERE

2010年 アメリカ

ソフィア・コッポラ監督 スティーヴン・ドーフ(ジョニー・マルコ)エル・ファニング(クレオ)クリス・ポンティアス(サミー)ララ・スロートマン(レイラ)クリスティーナ・シャノン カリサ・シャノン アマンダ・アンカ エミリー・ケンパー ミシェル・モナハン ベニチオ・デル・トロ

 

【解説】

『ロスト・イン・トランスレーション』『マリー・アントワネット』のソフィア・コッポラが、映画スターの家族のきずなや孤独をセンチメンタルに描いた人間ドラマ。ロサンゼルスの有名なホテルで自堕落に暮らす俳優が、娘との久々の時間を過ごす中で自分を見つめ直すプロセスを映し出す。主演は、『ブレイド』のスティーヴン・ドーフと、ダコタ・ファニングの妹で『ベンジャミン・バトン数奇な人生』のエル・ファニング。美しい映像や音楽と共につづられる、父娘のさりげない交流と感情のうつろいに、心を洗われる。

 

【あらすじ】

ロサンゼルスのホテルで派手な暮らしを送るハリウッド・スターのジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)だが、別れた妻のもとで暮らしていた11歳の娘クレオ(エル・ファニング)をしばらくの間、預かることになる。騒々しい日常は一転、クレオとの楽しく穏やかな日々が過ぎていく。そして、再び離れ離れになる日が訪れるが……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

「ロストイントランスレーション」のような感じの映画です。

主人公はジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)。

ハリウッドスターで、LAのシャトーマーモントでホテル暮らしをしている。

ポールダンスの女の子の出前(そんなんあるのねえ!!)を頼んだり(それも2回も、途中で寝てしまうのに)、パーティで拾った女性とセックスを始めるけど、途中で寝たり…。

私は、こういう病気の人の話になるのかと思いました。

 

とにかく、彼は空虚で空っぽなのね。

 

そこに、娘がやって来る。

ティーンエージャーのクロエ(エル・ファニング)。

母親の都合で、父親であるジョニーに預けられたのだ。

彼女がサマーキャンプに行くまでの数週間、一緒に過ごすことになった。

 

ジョニーはイタリアの授賞式に招待され、クロエも同行する。

泊まるホテルはお部屋にプールが付いていました!!

表彰式には金熊賞ならぬ、金猫賞。

ユーモアたっぷりです。

 

父と娘。

甘い至福の時間はすぐに過ぎ、キャンプに送っていきます。

これも、途中ヘリに乗り替えたりして豪華です。

さすが、ハリウッドスターです。

 

その途中、クロエは「ママはなぜどこかに行ってしまったの?」と泣き出すシーンがあり、これが唯一感情が出ているシーンでした。

 

でも、ラスト、ジョニーが砂漠にすっくと立つシーン。

ジョニーも何か大きな決断をして、一歩踏み出すことにしたんだなあという余韻を残して終わりました。

 

エル・ファニングは自然な感じの美少女で、スリムな体で背も高く、とてもチャーミング。

この映画、エルのための映画と言って過言ではないと思いました。

この天使のような娘だからこそ、ジョニーも再び歩きだそうと思ったんだね。

 

この作品は、とてもソフィアらしい作品でした。

インタビューを読むと、子供の頃の経験が元になっているそうです。

そういう意味では、フランシス・フォード・コッポラ監督の娘・ソフィアにしか作れない作品と言えますね。