マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

あかね空

2007-11-27 11:38:43 | 映画ーDVD
ーあかね空ー
2006年 日本 浜本正機監督 内野聖陽(永吉/傳蔵)中谷美紀(おふみ)中村梅雀[2代目](平田屋)勝村政信(嘉次郎)泉谷しげる(源治)角替和枝(おみつ)武田航平(栄太郎)細田よしひこ(悟郎)柳生みゆ(おきみ)石橋蓮司(清兵衛)岩下志麻(おしの) 

【解説】
時代小説の第一人者、山本一力の直木賞受賞作品を映画化した感動作。市井に生きる人々の愛と人情、そして家族の再生を描く。本作の企画には、2003年の『スパイ・ゾルゲ』をもって監督業を引退した篠田正浩がたずさわっている。主演は内野聖陽と『嫌われ松子の一生』の中谷美紀。石橋蓮司や、篠田正浩の実生活での妻でもある岩下志麻など個性派が脇を固める。VFX映像でリアルによみがえらせた永代橋など、江戸の町並みも見どころのひとつ。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
永吉(内野聖陽)と江戸っ子のおふみ(中谷美紀)が深川の長屋に開く豆腐店「京や」は、なかなか客が入らない。だが、明るいおふみの笑顔と努力で客が入り始め、繁盛しだす。やがて3人の子どもにも恵まれ、小さいながらも幸せに満ちている生活を送っていた……。(シネマトゥデイ)

【感想】
典型的な人情劇でした。
ベタなお話ですが、臭さがなかったのは、主人公の永吉(内野聖陽)、おふみ(中谷美紀)夫婦、相州屋夫婦(石橋蓮司・岩下志麻)、悪役に平田屋に中村梅雀を配したキャストが良かったからだと思いました。

特に、永吉と傳蔵という全く違う個性を演じ分けた内野聖陽が光っていました。
個人的には、傳蔵のキャラクターの方が好き。

豆腐屋永吉は理想的すぎるように思いました。
豆腐を作っている姿は、おふみでなくとも、惚れ惚れするいい男ですが。
それに比べて、親とはぐれ裏社会で生きるほかなかった傳蔵、でも、心は美しいまま、人情味溢れる人間性の持ち主に成長していました。
その切ない心情が忍ばれて、最後のどんでん返しがすっきりしたものになりました。

結局、豆腐屋一家にはなんの種明かしもありませんでしたが、お天道様(この場合は観客ですが)はお見通しだ、といわんばかりのラストシーン、良かったと思いました。

この映画には、現代にも通じる家族の問題が描かれていました。
跡取りと立てて育てた長男を溺愛の果てにだめにしてしまう母親。
それには、自分の不注意で大火傷を負わせてしまったという負い目があったようでした。
子供を信じようとしても、信じきれない母親の弱さ。
水に映った姿は夜叉の姿でした。

でも、この夫婦はずっと揺らぎのない愛情でつながれていて、その絆でなにもかも乗り越えてきた強さもありました。
最愛の夫が死んでもなお、その絆はおふみを強く支えていました。

結局はそれが傳蔵の気持ちを動かし、平田屋を懲らしめる結果につながっていきました。

あまりヒットはしなかったようですが、内野聖陽の陰と陽の演じ分けが見事なので、ぜひ見て欲しい映画です。

タロットカード殺人事件

2007-11-22 10:58:41 | 映画ー劇場鑑賞
ータロットカード殺人事件ー
2006年 イギリス/アメリカ ウディ・アレン監督 スカーレット・ヨハンソン(サンドラ・プランスキー)ヒュー・ジャックマン(ピーター・ライモン)ウディ・アレン(シド・ウォーターマン)イアン・マクシェーン(ジョー・ストロンベル)チャールズ・ダンス(マルコム氏)ロモーラ・ガライ(ヴィヴィアン)フェネラ・ウールガー(ジェーン・クック)ジュリアン・グローヴァー(ライモン卿)ヴィクトリア・ハミルトン(ヤン)

【解説】
ロンドンを舞台に、アガサ・クリスティへのオマージュたっぷりの事件が展開するコミカルなミステリー。切り裂きジャックの再来と言われる連続殺人鬼に、ジャーナリスト志望の女学生が挑む。監督は『マッチポイント』のウディ・アレン。主演はアレン監督作品のヒロインを務めるのは2度目となるスカーレット・ヨハンソンと、ヨハンソンとは2度目の共演となるヒュー・ジャックマン。アレン作品ならではのウィットとペーソスにあふれた作品に仕上がっている。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
ロンドン市街のマジックショー劇場で、ジャーナリスト志望の女子大生サンドラ(スカーレット・ヨハンソン)が舞台に上げられ、中に入った人間の身体が消えては現れるボックスに入れられる。その中で、彼女は著名なジャーナリストの亡霊ジョー(イアン・マクシェーン)と遭遇。急死したばかりの彼から、とっておきのスクープを耳打ちされる。(シネマトゥデイ)

【感想】
この邦題は違うね。
大失敗。
だって、べつに殺人事件が中心の話ではないもの。
原題の「SCOOP」、日本語でもおなじみだし、これで良かったんじゃないかなあ?

「マッチポイント」から、ウディは娯楽ということを心がけているのか、見やすい映画です。
この作品もコミカル・ミステリーということで、ウディとスカーレットの男女漫才みたいな会話の掛け合いが見どころ。
字幕なので、面白さは半減でしょうが、さらっと楽しめました。

 やっぱりきれい!!スカーレット・ヨハンソン

スカーレットが等身大の女子大生を演じていて、好感が持てました。
ヒュー・ジャックマンが大富豪の御曹司。
ぴったりでした。

でも、普通の女の子が御曹司に見初められて恋に落ちるーなんてムシのいいおとぎ話あるわけないじゃん!!

誰かわからない人のお葬式、三途の川を渡っていく死人から始まって、マジックショー、貴族のパーティ、別荘、お屋敷など、めくるめくイングリッシュライフが楽しめました。

ボンボン

2007-11-22 10:54:05 | 映画ーDVD
ーボンボンー
2004年 アルゼンチン カルロス・ソリン監督 フアン・ビジェガス(フアン・ビジェガス)ワルテル・ドナード(ワルテル・ドナード)

【解説】
アルゼンチン南部のパタゴニアを旅する男と犬の珍道中を、優しく見つめるロードムービー。ひょんなことから出会った一人と一匹がドッグショーを目指す過程をおもしろおかしく描く。監督にスカウトされ本作でスクリーンデューを飾ったのは、20年間、まじめにガレージに勤務しているファン・ビジェガス。彼と犬のボンボン役のグレゴリオの相性はぴったり。ひたむきに生きる普通の人々が巻き起こす、小さな奇跡に心が温まる。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
長年勤めたガソリンスタンドをクビになったファン(ファン・ビジェガス)は、娘夫婦の所に居候し、手彫りのナイフを売り歩いていた。彼はある日、車が故障して困っている女性(クラウディーナ・ファッツィーニ)を助け、家まで送って行くと、そのお礼に白い犬(グレゴリオ)をもらう。その犬は由緒正しき血統書付きの犬で……。(シネマトゥデイ)

【感想】
この映画、エンドロールを見ていたら、ほとんど役名と役者名が同じ。
それもそのはず、主演のファン・ビジェガスさんは監督の駐車場の警備員さんを20年もやっている方で、この映画の後また復職したそうです。

でも、彼の演技力、肩の力が抜けてとてもいいですよ。
そんな、にわか作りの役者さんには見えないよ。
すごい人がいるなあ。

彼を上回る演技力なのがドゴという犬種のボンボン。
シネマトゥデイにはちゃんと名前が載っていますね。グレゴリオ号。
威風堂々としたいい名前です。
画像にも写っていますが、映画で見たらすごい迫力の犬です。
しかも、ユニーク。
この犬を見てたら、絶対映画にして世界中の人を驚かせてやろうと思うでしょうね。
この犬を見るためにだけでも、この映画、ぜひ見て欲しいです。

この映画のキャッチコピーで「アルゼンチンのわらしべ長者」とあったみたいですが、そんなに簡単なわけじゃありません。

こんなラストなの~~~!!
と、思わず声が出てしまいそうな、思いがけないラストも用意されています。
その後のボンボンの表情がいいんだなあ。
きっと一生忘れられない表情になると思います。

アルゼンチンといえば、麻薬とか貧困とか、あまりいいイメージがなかったのですが、やっぱり人間はいいなあ、と思わせてくれる、まったりとした映画です。

ご用とお急ぎのない方は、ご覧下さい。

グリース

2007-11-20 10:00:41 | 映画ーDVD
ーグリースー
1978年 アメリカ ランダル・クレイザー監督 ジョン・トラヴォルタ オリヴィア・ニュートン=ジョン ジェフ・コナウェイ ストッカード・チャニング バリー・パール イヴ・アーデン ジョーン・ブロンデル ディディ・コーン ダイナ・マノフ フランキー・アヴァロン アリス・ゴーストリー

【解説】
 71年に初演された人気ブロード・ウェイ・ミュージカルを基に、当時「サタデー・ナイト・フィーバー」で人気絶頂だったトラヴォルタと、70年代に数々のヒット曲を出したポップス・クイーン、O・ニュートン=ジョンの共演で描いた学園ミュージカル。舞台は50年代のアメリカ。サマー・バケーションで知り合ったダニーとサンディ。ひと夏の恋で終わったはずが父の転勤でダニーと同じ高校に転校してきたサンディは突然の再会に喜ぶ。しかしダニーはテカテカのリーゼントに皮ジャンという出立で“T・バーズ”と言う不良グループのリーダーだった……。続編「グリース2」あり。(allcinema ONLINE)

【感想】
ミュージカルの王道。歌よし、ダンスよし。
流れる曲はロックンロール。
ああ、リアルタイムで見たら、もっと感動しただろうに、残念です。

今見た私は「オリビア、まあ懐かしい!!」
トラボルタはやっぱりかっこいいとは思わないなあ。
個性的なお顔。
でも、なんであんなにダンスがうまいのでしょう!!

登場人物、高校生にしてはちょっと老けていますねえ。
ま、固いことは言いませんが。

この映画を見ていない私でさえ知っているヒット曲の数々。

ダンスシーンにうっとり。
舞台のような面白さプラス、カメラワークも面白い。
カラフルでおしゃれなシーンがどんどん続きます。

中身はハッピーな学園ロマンス。
不良といってもタバコ吸って突っ張っているくらい。

今は、なんか暗い世の中だなあ。

彩の国シェイクスピア・シリーズ第18弾 『オセロー』大阪公演

2007-11-20 09:58:23 | 舞台
2007年11月17日 大阪梅田芸術劇場シアタードラマシティー
原作=シェークスピア
演出=蜷川幸男
キャスト=オセロー:吉田鋼太郎
デズデモーナ:蒼井優
イアゴー:高橋洋
エミリア:馬渕英俚可
ロダリーゴー:鈴木豊
キャシオー:山口馬木也
ブランバンジョー:壤晴彦
【解説】
 『オセロー』は、壮年の黒人の将軍と若き白人の娘との結婚が巻き起こす悲劇を壮大なスケールで描き、シェイクスピア四大悲劇のひとつとされ、シェイクスピア作品の中でも人気の高い作品だ。さらに、これまでシェイクスピアの四大悲劇では、『リア王』3回、『マクベス』3回、『ハムレット』は6回もの演出を手掛けた蜷川が、『オセロー』だけは1回しか演出をしておらず、13年ぶりの『オセロー』挑戦は自身にも期するところがあり、期待の公演となること間違いない。

【物語】
 舞台はヴェニス。オセローは、ヴェニス公国に仕えるムーア人の将軍。彼は数々の戦で手柄を立て、周囲から尊敬されていた。しかしオセローがキャシオーを副官に昇格させたことに不満を抱いている人物がいた。オセローの旗手であるイアゴーだった。イアゴーは、オセローがヴェニス元老院議員ブラバンショーの娘デズデモーナと密かに結婚をしたことを知り、デズデモーナに恋をしているロダリーゴーをそそのかし、ブラバンショーに娘の駆落ちを密告する。ブラバンショーは、オセローが娘をたらしこんだと公爵に訴えるが、オセローは、敵国トルコ軍の侵略を阻むため、新妻を伴いキプロス島へ派遣されるところだった。
 ヴェニス軍がキプロス島に到着すると、激しい嵐で敵軍は全滅。軍の勝利とオセローの結婚の喜びに島中が酔いしれる夜、イアゴーはキャシオーを泥酔させ、けんか騒ぎを起こさせる。イアゴーの陰謀とは知らないオセローは、イアゴーの話を鵜呑みにし、キャシオーを副官から解任する。落胆するキャシオーは、イアゴーの提案で、オセローに取り入ってもらうようデズデモーナに嘆願する。よからぬたくらみを秘めつつも忠実な部下を装うイアゴーは、オセローにデズデモーナがキャシオーと密会していると告げる。ちょうどその時、デズデモーナは夫からのプレゼントであるハンカチを落としてしまう。イアゴーは妻エミリアが見つけたそれを、デズデモーナの不貞をオセローに信じ込ませる証拠として使うことを思いつく。彼はハンカチをキャシオーの部屋に落としておき、何も知らないキャシオーは、それを娼婦ビアンカにやる。ビアンカが持っているハンカチを見たオセローは妻の不義を確信するのだが……。
(e+theatrix!より)

【感想】
私はバレエの「オセロー」をパリのオペラ座で見て、あらすじくらいはわかっていましたが、部下の言葉に踊らされ、嫉妬に狂って妻を惨殺する権力者の夫の話なので、いいお話とは思っていませんでした。
私の見たオセロー将軍はとてもかっこよかったのです。

この舞台では、勇敢なオセロー(吉田鋼太郎)は肌の色の黒いムーア人には違いがありませんでしたが、中年でした。
不幸な生い立ちを経て、百戦錬磨の末、今の地位まで上り詰め、気がつけば中年にさしかかっていた人です。
いまでこそ、たくさんの部下を持ち、元老院から信頼も厚く、人格者として認められているけれど、この地位に来るまでには、マイノリティ出身ということもあり、数々の苦難をくぐり抜けてきた苦労人ということが容易に想像されます。

一方のデズデモーナ(蒼井優)は、年若く有力議員の娘。
親子ほども年の違う二人が少々話し込んでいたとしても、それ以上の関係になるはずはないと、親も気を許していたのでしょう。
でも、心清らかなデズデモーナはオセローの経歴にいたく心を動かされ、憐れみから彼を愛するようになったのです。

父親の怒りを越えて、ふたりは結ばれます。
オセローの有能さを知っている元老院はこの結婚を指示します。
デズデモーナの父親は憤死してしまうほどの怒りでした。
「父親も欺くような女、いずれあなたも欺かれるであろう」不吉な預言を残します。

この二人の背景がこのあとの悲劇をより悲劇的なものへ導く伏線になっていました。
人格者オセローといえども、今このときが青春、うぶな青年と変わりない心の状態なのに、年若い妻に負い目も感じている。
「なぜ、デズデモーナのような人が、私を選んだのか?」
愛するが故の不安や恐怖に油を注いだのが、どす黒い野心を持つイアゴー(高橋洋)だったのです。
もともと、不安に覆いをかけていただけの結婚なのだから、イアゴーのような姦計を弄する者の手にかかったら、愛はたちまち嫉妬の炎に焼かれ、憎悪に変わってしまったのです。

そうとも知らずに、オセローの人が変わってしまったようなひどい仕打ちに耐え、不吉な予感に怯えるデズデモーナ。
それでも、一筋の愛を信じようとけなげに歌うデズデモーナの歌声に、涙が止まらなくなりました。

オセローは、イアゴーの口車に乗り、いとも簡単に疑心暗鬼の地獄に堕ち、本人に確かめる、真実を知る、と言う簡単なこともせずに、デズデモーナに手をかけてしまいます。

吉田鋼太郎さんと演出の蜷川さんは、オセローの威厳を損なうことなく、オセローの弱さをあぶり出すのに成功しました。
とても緊張感溢れる辛い内容の舞台なのに、ときどき観客席から笑いが漏れるユーモラスなシーンもありました。

オセローとデズデモーナがが愛を確かめあうシーンはどれも微笑ましく、とても好感が持てました。

高橋洋さんはイアゴーのいやらしい性格を最後までぶれることなく演じ続け、実力のあるところを見せていました。

現代にも通じる男と女の心の闇。
愛とはかくももろいものか、嫉妬によって愛が憎悪に変わる瞬間を見ました。

カーテンコールはスタンディングオーベーション。
蒼井優ちゃんが涙ぐんでいるように見えました。

ツォツィ

2007-11-16 09:09:42 | 映画ーDVD
ーツォツィー
2005年 南アフリカ/イギリス ギャヴィン・フッド監督 
プレスリー・チュエニヤハエ(ツォツィ)テリー・フェト(ミリアム)ケネス・ンコースィ(アープ)モツスィ・マッハーノ(ボストン)ゼンゾ・ンゴーベ(ブッチャー)ZOLA(フェラ)ジェリー・モフケン(モーリス)

【解説】
アパルトヘイト後も続く南アフリカの過酷な現状と、未来への希望を見つめ、第78回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した感動作。社会の底辺で暴力に明け暮れてきた少年が、生後間もない赤ん坊と出会ったことで人間性に目覚めてゆく姿を描く。監督は、本作の成功により次回作でメジャーデビューを果たす南ア出身のギャヴィン・フッド。監督は本作の成功でメジャーデビューも決まった南アフリカ出身の新鋭ギャヴィン・フッド。アパルトヘイト後もなお続く過酷な現状を描いたリアルなドラマと、主人公の少年を演じて圧倒的な存在感を見せつけた新星プレスリー・チュエニヤハエに注目。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
南アフリカ、ヨハネスブルクのスラム街に暮らすツォツィ(プレスリー・チュウェンヤガエー)は、仲間とつるんで窃盗やカージャックを繰り返していた。ある日、高級住宅街にやってきた彼は車を運転していた女性を撃って逃走。やがて、強奪した車の後部座席に生後間もない赤ん坊がいることに気づいたツォツィは、赤ん坊を紙袋に入れて自分の部屋に連れ帰るが……。(シネマトゥデイ)

【感想】
05年度のアカデミー賞外国語映画賞受賞作品。

予告編からもっと残酷なシーンのでて来る映画かと構えていましたが、思いっきり直球勝負のヒューマンドラマでした。

病気の母親から遠ざけられ、アル中で犬を虐待する父親から逃れて、自らストリートチルドレンとなった少年。
彼は名前を捨て、「ツォツィ(不良)」と名乗って、泥棒、強盗、殺人など悪行を生業に生きている。
情け無用、大人も怖れる少年ギャング。

ある日、高級住宅地で車を襲い、女性を傷つけて逃走する。
その車の中に赤ん坊がいた。
何を血迷ったか、彼は赤ん坊の面倒をみようと試みる。
だが、その方法すら知らない。
近所の、赤ちゃんがいて夫を亡くした若い母親に頼もうと思うのだが、頼む方法も知らない。
銃で脅して、おっぱいをもらう。
赤ん坊の名前を聞かれた。
とっさに捨てたはずの自分の名前を告げた「デビッド」。

少年の心に変化が表れる。
駅で物乞いをする障害のある男性をみて、なぜ人はこうまでして生きるのかと疑問を持つ。

これは、アフリカの固有の悲劇に根ざした問題だけが原因とは思えませんでした。
南アフリカ独特の、アパルトヘイトの後遺症といった根深い問題があるにしても、都市が発展していく過程で、生み出され、取り残されていく弱者の話。
どの都会にもあるスラムや貧困に起因する物語だと思いました。

いえ、今の日本にだって起こりえることではないでしょうか?
親から虐待されている子供、社会から見捨てられて夜の町を彷徨う子供は、どうやって生きていくのか?

あるいは、人は悪人に生まれつくのか、悪人として育つのか?
いろいろなテーマを含んでいると思いました。

人の心に触れた彼は、やがて両親に赤ちゃんを返す決心をするのですが…。

DVDには特典として違うラストがふたつ付いていました。
どちらも、捨てがたいラストでした。
でも監督のコメントを聞くと、本編のラストの意味がよくわかりました。

ここは監督の望み通り、みんなで考えましょう。
ツォツィはこの先、どうなったのかー。
人間として目覚めた彼の行く末に、幸せはあるのか?


ボーン・アルティメイタム

2007-11-15 13:53:08 | 映画ー劇場鑑賞
ーボーン・アルティメイタムー
2007年 アメリカ ポール・グリーングラス監督 マット・デイモン(ジェイソン・ボーン)ジュリア・スタイルズ(ニッキー・パーソンズ)デヴィッド・ストラザーン(ノア・ヴォーゼン)スコット・グレン(エズラ・クレイマー)ブライアン・コックス(-)パディ・コンシダイン(サイモン・ロス)クリス・クーパー エドガー・ラミレス(パズ)ダニエル・ブリュール ジョーイ・アンサー(デッシュ)コリン・スティントン(ニール・ダニエルズ)アルバート・フィニー(アルバート・ハーシュ)ジョーン・アレン(パメラ・ランディ)トム・ギャロップ コーリイ・ジョンソン

【解説】
記憶を失った元CIAの暗殺者ジェイソン・ボーンが活躍する大ヒット・シリーズの第3作。今作では、ついにボーンが自らの忌まわしい過去と対峙(たいじ)し、彼の“自分探しの旅”に衝撃の結末が訪れる。主人公のボーンを演じるのは、前2作に引き続きマット・デイモン。監督は前作『ボーン・スプレマシー』のポール・グリーングラスが務めている。息をもつかせぬスリリングな展開と、3つの都市を舞台に繰り広げられる迫力のアクション・シーンが堪能できる。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
自分を暗殺者に仕立てあげたCIAの極秘プロジェクト、“トレッドストーン計画”などに関する取材を進めていた新聞記者ロス(パディ・コンシダイン)とロンドンで接触しようとしたボーン(マット・デイモン)。しかし、CIAの現地要員に監視されていたロスは、若い暗殺者(エドガー・ラミレス)に狙撃されてしまう。(シネマトゥデイ)

【感想】
TVで2週続けて前作を予習復習済みだったので、「アルティメイタム」の世界にもすんなり入っていけました。

いきなりスピーディな展開。
ジェイソン・ボーン(マット・デイモン)は、前作に引き続き、モスクワで追われていました。
ここから息つく暇もなく、次々と展開される局面。
でも、観客が置いていかれることはありません。

モスクワ、パリ、マドリード、モロッコ、ニューヨーク、場所は次々に変われど、ボーンは追われ続けます。
暗殺者はどこにでもいて、指令を受けて起き上がり、ボーンを執拗に狙ってきます。

かつてボーンも暗殺者、殺人マシーンだった…。

観客がボーンに惹かれるのは、彼が決してなくすまいと、懸命にしがみついている人間性、人の心です。
しかし、これにしがみつく故に、CIAは彼を裏切り者、敵として抹殺するために追い続けます。
組織や国家が群れをなして襲いかかってくるのです。

個としての人間は弱い。
しかし、ボーンはかつて訓練されて研ぎすまされた危険回避能力や語学力を駆使してたったひとり、確信に迫っていきます。
過去の自分が消え、新しい自分が生まれた場所で、自分に何が起こったのかを見極めるために。

追われるものがやがて、追うものに変わっていきます。

3部作の最高傑作となりました。

私はカーチェイスのところで、あまりに集中していたので、車酔いを起こしそうになってあわてました。
ちょっと肩の力を抜いて一息入れました。

 ボーンとパメラ・ランディ

これほどまでに緊張感溢れるシーンがこれでもかと続いていくのですが、ニッキー(ジュリア・スタイルズ)やパメラ・ランディ(ジョーン・アレン)との情の絡みもしっかりあって、最後の暗殺者とのやりとりなど、細かいシーンをラストにつなげてありました。
うまいよね。

この静かな終わり方って、さらに続編につなげるつもりなのでしょうか?

それにしても、この3部作でマットは逞しくなりましたよね。



やじきた道中 てれすこ

2007-11-15 13:43:51 | 映画ー劇場鑑賞
ーやじきた道中 てれすこー
2007年 日本 
監督=平山秀幸 中村勘三郎[18代目](弥次郎兵衛)柄本明(喜多八)小泉今日子(お喜乃)ラサール石井(梅八)笑福亭松之助(与兵衛)淡路恵子(おきん)間寛平(奉行)松重豊(地廻りの太十)山本浩司(地廻りの甚八)吉川晃司(沓脱清十郎)鈴木蘭々(清十郎の妻・菊)星野亜希(花魁・おちみ)藤山直美(お仙)國村隼(代貸)笹野高史(お喜乃の父・杢兵衛)

【解説】
これまで数多くの映画や芝居のモチーフにされてきた「弥次さん喜多さん」コンビと、足抜けしたおいらんが珍道中を繰り広げる時代劇コメディー。監督は『しゃべれども しゃべれども』の平山秀幸が務め、さまざまな落語ネタを散りばめて庶民の笑いと人情を描き出す。弥次さんには世界的な歌舞伎俳優の中村勘三郎、相方の喜多さんには名優柄本明、ヒロインお喜乃を小泉今日子が演じる。3人が見せる息のあった掛け合いに注目。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
品川の遊郭で偶然に再会した弥次さん(中村勘三郎)と喜多さん(柄本明)は、ひょんなことから売れっ子おいらんお喜乃(小泉今日子)の足抜けを手伝う。無事に江戸を脱出した3人は、金をだましとられたり、子タヌキの恩返しで博打で荒稼ぎしたりと、珍道中の連続。やがて箱根に着くと、お喜乃は弥次さんにある告白をする。(シネマトゥデイ)

【感想】
中村勘三郎さんファンなので、柄本明さんとのやじさんきたさん、とっても期待して見ていました。

柄本明さんはもちろん喜劇役者さんだとは知っていたけど、映画ではけっこうシリアスでぼそぼそお話しする役が多い印象でした。
この映画では、相手が勘三郎さんだからだよけいにだと思うけど、はじけて、本来の喜劇役者としての魅力全開でした。
面白かった。
小泉今日子もキャラクターを生かした花魁で、似合っていました。

お話は落語が下敷きなのはわかりました。
「てれすこ」「狸賽(たぬさい)」「野ざらし」などだそうです。
でも、タイトルになっている「てれすこ」だけど、本筋にはあんまり絡んでこなくて、かえって気が散ってもったいない感じでした。

最初の心中未遂シーンとか間寛平が奉行のお白州のシーンとか、くすっと笑える部分はありましたが。

上方まで行くのかと思ったら、結局江戸から大井川までの話でした。
続編があるのかしら?
だったら、うれしいなあ。

今回、「てれすこ」は話だけにして、道中のエピソードをもっと増やした方が面白かったかもしれないなあ。

そうは思っても、この映画はなかなか面白かった。
たくさんの芸達者な役者さんが、あちこちにちりばめられていました。
笑福亭松之助と淡路恵子の変な心中カップル、ラサール石井の太鼓持ち、松重豊と山本浩司の地回りコンビ。
吉川晃司と鈴木蘭々のいわくありげな夫婦、星野亜希の若い花魁、國村隼の代貸。
他にも笹野高史、藤山直美、麿赤児など、個性溢れる役者さんが適材適所に現れて、楽しめました。

音楽も面白いし、景色もよかった。
のんびり旅気分でした。

大当たり狸御殿

2007-11-12 10:44:21 | 映画ーTV
ー大当たり狸御殿ー
1958年 日本 佐伯幸三監督 美空ひばり(狸吉郎)雪村いづみ(きぬた姫/お黒(二役))白川由美 山田真二 淡路恵子 有島一郎 左卜全 永田靖 井上大助 千石規子 夏亜矢子 峯京子 環三千世 ミヤコ蝶々 南都雄二 中田ダイマル 中田ラケット トニー谷 佐原健二 河内桃子 浜村美智子

【解説】
各社競作となった木村惠吾原作のミュージカル・コメディ“狸御殿”もので、時代劇仕立ての1本。政略結婚目的の見合いをさせられそうになった狸御殿のきぬた姫は、窮屈な暮らしに飽きあきしたこともあり、誕生祝いの宴の最中に姿をくらましてしまう。困ったのはご家老。姫そっくりの町娘・お黒を身代わりにと連れ帰り、満月城の狸吉郎(たぬきちろう)と見合いをさせる。一方、町娘に化けたきぬた姫は、別の青年と淡い恋に落ちるのだった……。(allcinema ONLINE)

【感想】
すごい、豪華キャストです。
しかも、なんでもありのてんこもりミュージカル、ただびっくりして見ていました。
当時の人も楽しんだのでしょうね。
私は子供でした。
うちの親はあまり興味がなかったようで、このへんの日本映画は何も知りません。

蝶々・雄二やダイマル・ラケット漫才を聞けたのもうれしかったし、トニー谷さんの登場には思わず歓声を上げてしまいました。

何の脈絡もなく浜村美智子さんの「バナナボート」が出てきたのには、びっくりしました。
めちゃセクシー。
今の若い人よりナイスボディじゃない?

セットもカラフルでかわいかったし、歌も踊りもなかなかのものでした。
美空ひばりと雪村いづみだから当たり前っちゃ当たり前ですが、このころのスターさんはなんでもしっかりお勉強していたみたいですね。

ローズ・イン・タイドランド

2007-11-10 23:26:17 | 映画ーDVD
ーローズ・イン・タイドランドー
2005年 イギリス/カナダ テリー・ギリアム監督 ジョデル・フェルランド(ジェライザ=ローズ)ジェフ・ブリッジス(パパ/ノア)ジェニファー・ティリー(ママ/グンヒルド王妃)ジャネット・マクティア(デル)ブレンダン・フレッチャー(ディケンズ)

【解説】
悲惨な現実を生きる少女ジェライザ=ローズが、少女ならではのイマジネーションを使って、奇妙で不可思議な冒険を繰り広げるファンタジー。アメリカの人気作家ミッチ・カリンの「タイドランド」を、『ブラザーズ・グリム』の鬼才テリー・ギリアムが、奇想天外なギリアム版「不思議の国のアリス」に仕上げた。少女ジェライザ=ローズ役にふんした、カナダ出身の天才子役ジョデル・フェルランの大人顔負けの芸達者ぶりも必見。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
10歳の少女ジェライザ=ローズ(ジョデル・フェルランド)は、元ロックスターでジャンキーのパパ(ジェフ・ブリッジス)と同じく、ジャンキーのママ(ジェニファー・ティリー)と共に暮らしいていた。ある日、オーバードーズでママを亡くしたパパとジェライザ=ローズは、バスに乗ってテキサスにあるお祖母ちゃんの家を目指す。(シネマトゥデイ)

【感想】
ダイドランドとは干潟だそうです。
ジャンキーの両親から生まれたジェライザ=ローズの心的風景でしょうか?

それにしても、ジェライザ=ローズ役のジョデル・フェルランドちゃん、すごい演技力ですね。
かわいい顔で、百の表情を見せてくれます。
無邪気な天使のような顔、意地悪なおばさんみたいな顔、おねだり上手な娼婦のような顔、恐怖の顔、娘の顔、父親に注射をする時は看護婦さんのような表情だし、眠った父親を見るときは母親のよう。
とても10歳の子供だとは思えなかった。
彼女の一人芝居、一人遊びがえんえんと続きます。

 ジョデル・フェルランド


彼女のくるくる変わる表情を見ているだけでも飽きないとは言うものの、途中、さすがに少しだれてしまいましたが。

「パンズラビリンス」と違う意味で、ジェライザ=ローズも空想だけを武器に現実を生きている子供です。
子供は親を選べません。
住むところも選べなければ、食べ物を得る手段もないのです。
恐怖を味方に、孤独を手玉にとって生きて行くしか方法はありません。
想像力を通り越して、妄想力!
そして、すごい生命力!!

私はテリー・ギリアム監督「ブラザーグリム」で失望していたので、これはよかったーと思いました。