ーキャデラック・レコード ~音楽でアメリカを変えた人々の物語~ーCADILLAC RECORDS
2008年 アメリカ
ダーネル・マーティン監督 エイドリアン・ブロディ(レナード・チェス)ジェフリー・ライト(マディ・ウォーターズ)ビヨンセ・ノウルズ(エタ・ジェイムズ)コロンバス・ショート(リトル・ウォルター)モス・デフ(チャック・ベリー)エマニュエル・シュリーキー(レベッタ・チェス)セドリック・ジ・エンターテイナー(ウィリー・ディクソン)ガブリエル・ユニオン(ジェニーヴァ・ウェイド)イーモン・ウォーカー(ハウリン・ウルフ)
【解説】
1950年代のシカゴを中心に、伝説的なレコード・レーベル、チェス・レコードと所属アーティストたちの盛衰を描く実話ドラマ。監督は『彼らの目は神を見ていた』のダーネル・マーティン。チェス・レコードを立ち上げたレナード・チェスをエイドリアン・ブロディ、グラミー賞受賞シンガー、エタ・ジェイムズをビヨンセが演じている。偉大なミュージシャンたちの波乱に満ちた半生と、彼らを熱演した出演陣から目が離せない。
【あらすじ】
野心家の青年レナード(エイドリアン・ブロディ)は、物静かで思慮深い天才ギタリスト、マディ・ウォーターズ(ジェフリー・ライト)と衝動的なハーモニカ奏者リトル・ウォルター(コロンバス・ショート)に出会う。発展しつつあったレコード・ビジネスのブームに乗ろうとしたレナードは、彼らのアルバム作りを始めることにする。(シネマトゥデイ)
【感想】
「ドリームガールズ」が大好きなので、この映画も見たいと思っていました。
マディ・ウォーターズ(ジェフリー・ライト)、私は知りませんでした。
有名な人みたいですね。
(ザ・バンドの「ラストワルツ」に出ていた!?汗!)
「マディ・ウォルターズ=シカゴにおいてエレキ・ギターを使ったバンド・スタイルのブルースを展開し、シカゴ・ブルースの形成に大きな足跡を残したことから、「シカゴ・ブルースの父」と称される。その豊富で深淵な声、豪快なボトルネック・ギター、カリスマ的キャラクターで、ブルースの第一人者のひとりとなった。ロック界においても、ローリング・ストーンズ、エリック・クラプトン、ロリー・ギャラガー、ポール・ロジャース、 ザ・バンドなど、彼から影響を受けたミュージシャンは多く、その影響力は計り知れない。(ウィキペディアより)」
1915年、ミシシッピ州のプランテーションで幼少期を過ごし、泥んこ(マディ)というあだ名がついたらしい。
この映画は、ウィリー・ディクソンの語りという形で描かれます。
ディクソンはソングライター、プロテューサーブルース界を陰で支えてきた人ということです。
映画にも出てきましたが、国会図書館のフィールド・レコーディングのためにマディが演奏して、レコーディングしました。
映画では、これが転機となり、シカゴへ出て音楽活動を始めたということです。
そして、天才なハーモニカ奏者リトル・ウォルター(コロンバス・ショート)と出会う。
マディとリトルは、ポーランド移民でライブハウスを経営していたレナード・チェス(エイドリアン・ブロディ)に見いだされ、レコーディングする。
チェスは「チェス」というレーベルを立ち上げ、ヒット曲を次々生み出していった。
チェスは、もうけたお金でマディやリトルにキャデラックを買ってあげた。
まだまだ黒人差別の厳しい時代。
キャデラックに乗り、セクシーな歌を歌う黒人はもてもてだった。
「ドリームガールズ」にも出てきましたが、キャデラックは成功の象徴だったのでしょうね。
マディは女遊びをしながらも、初めてシカゴに来たときに世話になった女性ジェニーヴァ(ガブリエル・ユニオン)を、彼なりに大切にしていました。
辛い思いを隠して、マディに尽くすジェニーヴァの献身にも泣かされます。
マディの話、リトルの話、そして、チャック・ベリーの話、ハウリン・ウルフなど、どれもとても興味深いものでしたが、やはり歴史の話、みたいな気がしていました。
でも、後半ビヨンセが出てきてから、映画の雰囲気は変わって行きました。
素晴らしい歌声とともに、生身の人間の悲しみが伝わってきました。
チェスレコードに入ってきたエタ・ジェイムズ(ビヨンセ・ノウルズ)。
有名人の白人の父と、貧しく娘のお金をかすめ取って行く卑しい母親の間で、苦悩するあげく、酒やクスリに溺れている女性を体当たりで演じていました。
レナードならずも、抱きしめたい気持ちなりました。
エタは、麻薬中毒から生還し、さらには肥満に悩まされていたことからも脱却して、今も存命だそうです。
最後にマディがイギリスツアーに行くところが描かれています。
飛行機の中で、マディは外国での演奏に不安を感じていましたが、イギリスの飛行場に着くと、たくさんのマスコミが押し寄せ、赤絨毯が敷かれるという予想外の歓迎でした。
アメリカでは差別が根強く、成功してもその呪縛からはなかなか逃れられないが、イギリスではその音楽性を高く評価されて、いろんな人が自由にそのセンスを取り入れてロックを発展させて行くというところが、とても皮肉で面白いと思いました。
その後、アメリカ国内でも、たくさんの犠牲を払いながら黒人の人権も認められるようになり、いまや黒人大統領が出現するまでになりましたが、マディたちのように、音楽でその地位を上げていった功績も大きいと思いました。
ーマイ・ライフ、マイ・ファミリーーTHE SAVAGES
2007年 アメリカ
タマラ・ジェンキンス監督、脚本 ローラ・リニー(ウェンディ・サヴェージ)フィリップ・シーモア・ホフマン(ジョン・サヴェージ)フィリップ・ボスコ(レニー・サヴェージ)ピーター・フリードマン(ラリー)デヴィッド・ザヤス(エドゥアルド)ベンガ・アキナベ(ジミー)カーラ・セイモア(カーシャ)
【解説】
認知症になってしまった疎遠の父親の面倒を見る羽目になった兄妹が、それまでの親子関係を浮き彫りにしながら葛藤していく姿をリアリスティックに描いたファミリー・ドラマ。(allcinema ONLINE)
【感想】
この映画では、介護や老人の問題は、アメリカも日本も同じだなあと思いました。
レニー・サヴェージ(フィリップ・ボスコ)はアリゾナで愛人と暮らしていた。
その愛人が亡くなり、レニーも認知症と診断され、家族に連絡が入った。
父と疎遠に暮らしていたウェンディー(ローラ・リニー)。
派遣社員として働きながら、戯曲を書いている39歳独身。
妻帯者のラリー(ピーター・フリードマン)と不倫関係にある。
ウェンディーの兄のジョン(フィリップ・シーモア・ホフマン)。
演劇学を教えている大学教授、独身。
ポーランド人の恋人がいるが、結婚には踏み切れない。
二人は父を引き取りにアリゾナへ。
幼い頃、母は幼かったこの兄妹を置いて家を出てしまった。
二人は父に育てられたが、父は時折暴力をふるい、愛情薄いと感じていた。
その父が、認知症。
ジョンは一足先に帰り、老人ホーム探し。
ようやくみつけた施設だが、ウェンディーは気に入らない。
自分の父が設備の貧しいホームに入るのが気に入らないのだ。
少しでも父の気を休めるようにと、枕やランプを買って来るが、長年はなれて暮らしていた父の好みがわかるはずもない、やることなすこと裏目に出て、ついついいらだち、兄と口喧嘩が絶えません。
兄妹の言い争いを黙って聞いている父のなんとも言えない顔。
家庭を顧みなかった反省なのか、世話をかけていることへの肩身の狭さなのか。
黙っているところが、父の思いやりと見えました。
認知症でも、心や感情はあるんですよね。
この作品の見所の一つだと思いました。
39歳のウェンディーはかなりのいらつき女です。
見ているこちらもいらいらします。
でも、老いて弱った親を目の前にして、自分の人生も未だ定まらないことへのいらだちはとてもよくわかります。
ジョンも、たぶん同じ気持ちでしょう。
二人は、じょじょにお互いを理解して行くようでした。
父は意外にあっけなく亡くなってしまいますが、ウェンディにとってもジョンにとっても、家族の再発見はよい結果となったようです。
映画は、ほのぼのと二人の将来に明るいものを暗示してエンディングとなります。
このお父さんは貧しく、何も残さなかったようなので、これで終わりでよかったのですが、小金を持っている親が亡くなった後の、醜い財産争いは止めてもらいたいものです。
よく聞くでしょう?
親が泣くよー。
兄弟は、助け合って、いつまでも仲良くしたいですよね。
ーシングルマンーA SINGLE MAN
2009年 アメリカ
トム・フォード監督 クリストファー・イシャーウッド原作 コリン・ファース(ジョージ)ジュリアン・ムーア(チャーリー)マシュー・グード(ジム)ニコラス・ホルト(ケニー)ジョン・コルタハレナ(カルロス)
【解説】
ファッションデザイナーとして成功を収めたトム・フォードが、かねてより熱望していた映画監督として初メガホンを取った人間ドラマ。「ベルリン物語」などの著者クリストファー・イシャーウッドの小説を基に、亡き愛する者のもとへ旅立とうとする中年男性の最期の一日を感動的に描く。主人公の大学教授を演じるのは『マンマ・ミーア!』のコリン・ファース。彼のかつての恋人を、『ブラインドネス』のジュリアン・ムーアが演じる。絶望の底で孤独に苦しむ主人公が見つける、何げない幸福が胸に迫る。
【あらすじ】
1962年11月30日。8か月前に愛する人を失ったジョージ(コリン・ファース)は、この日で人生を終わらせようと、死の準備を着々と整えていた。ところが大学での講義は熱を帯び、いつもならうっとうしい隣の少女との会話に喜びを抱く。そして遺書を書き上げたジョージに、かつての恋人チャーリー(ジュリアン・ムーア)から電話が入り……。(シネマトゥデイ)
【感想】
トム・フォードの初監督作品。
トム・フォード=ファッションデザイナー。1994年からは、グッチのクリエイティブ・ディレクターとして活躍。グッチのクリエイティブを統括しながら2000年、イヴ・サンローランおよびグッチグループ全体のクリエイティブ・ディレクターにも就任。現在は自らの名を冠したブランドを主宰している。CFDA賞ほかファッション業界における数々の賞を受賞。(ウィキペディアより)
ファッション業界で実績を残してきた監督だけあって、ほんとうにセンスのいい映像でした。
主人公のジョージ(コリン・ファース)が暮らすお家、家具、落ち着いた雰囲気のお部屋。
スーツの着こなしもとても素敵でした。
コリン・ファースって、本物の英国紳士だわー。
こんなにバランスのいい、モデルのような人だったんだー。
なんて、コリン・ファースへのイメージもすっかり変わってしまいました。
そして、ジョージの元彼女で今は親友のチャーリー(ジュリアン・ムーア)の家もお部屋も家具もドレスも素敵でした。
だけど、内容は、私にはとても難しいものでした。
☆ネタバレ
ゲイの大学教授のジョージが、16年間共に暮らした愛人のジムを、突然の交通事故で失い、8ヶ月経ってもその喪失感は増すばかり。
「死」を思い詰めた1日の話でした。
「死」を決意して見る世界ー朝日は住宅地のお庭を輝かせているし、隣の子供たちもとても元気。
8ヶ月前にジムの訃報を聞いて取り乱して訪ねたチャーリーとも、いい距離の友達関係が続いています。
今夜はディナーに呼ばれていました。
明らかにゲイとわかるカルロス(ジョン・コルタハレナ)が、ジョージに好意を持って援助を頼むが、受けることはできませんでした。
ジョージの決心は変わらなのいです。
チャーリーとの楽しいディナーも終わり、ふたりでダンスをして楽しく過ごしますが、やはりチャーリーは過去の人。
今の悲しみを埋めることはできません。
チャーリーと別れて、ジムと出会ったバーで一人で飲み直し。
そこへ、自分を慕う学生ケニー(ニコラス・ホルト)が近づいてきた。
一緒に飲み始め、意気投合する二人。
夜明けとなり、ケニーが自分を心配してくれていることを悟り、自殺するのを思いとどまったジョージだったが…。
私にはこのジョージの悲しみの深さが理解できないので、難しいと感じましたが、映像がとても美しいので、案外女性向きの映画かもしれません。
男の感傷…かな?
ケニー、なかなかの美形青年だなあとうっとり見ていたら、なんと、私の大好きな映画「アバウト・ア・ボーイ」の主人公の少年だった!!
まあ、あの子、こんなにきれいな青年に成長したのね!!
びっくりでした。
ケニー役のニコラス・ホルト
ー新しい人生のはじめかたーLAST CHANCE HARVEY
2008年 アメリカ
ジョエル・ホプキンス監督 ダスティン・ホフマン(ハーヴェイ・シャイン)エマ・トンプソン(ケイト・ウォーカー)アイリーン・アトキンス(マギー)ジェームズ・ブローリン(ブライアン)キャシー・ベイカー(ジーン)リチャード・シフ(マービン)リアーヌ・バラバン(スーザン)
【解説】
『主人公は僕だった』の共演で意気投合した、ダスティン・ホフマンとエマ・トンプソンが本格的な共演を果たした中高年向け恋愛物語。娘の結婚式に出るためにロンドンにやって来た男性と、なかば人生をあきらめて楽に生きることを選んだ女性の心温まる交流をしっとりと描く。監督と脚本を手掛けたのはイギリスの新星、ジョエル・ホプキンス。ロンドンの美しい秋の風景とともに、年齢を重ねてこそわかる人生の豊かさや繊細さが胸にしみる。
【あらすじ】
ニューヨークのCM作曲家ハーヴェイ(ダスティン・ホフマン)は、離婚後別居していた娘(リアン・バラバン)の結婚式に出席するためロンドンに飛ぶ。だが、仕事で頭がいっぱいの彼は披露宴を辞退して帰国しようとするが、飛行機に乗り遅れてしまう。やけ酒を飲みに入った空港のバーで、ハーヴェイは偶然ケイト(エマ・トンプソン)と出会い……。(シネマトゥデイ)
【感想】
この主人公ハーヴェイ(ダスティン・ホフマン)とケイト(エマ・トンプソン)はいくつぐらいの設定なんだろう。
ダスティン・ホフマンは実年齢は1937年生まれだから73歳、エマ・トンプソンは51歳。
年の差実に22歳。
親子やねえ。
この映画では、ハーヴェイは花嫁の父親ということなので、50歳後半、60歳前半というところかなあ。
ケイトは、いわゆるアラフォーに見えましたが。
やはり年の差は20歳くらいかな?
でも、さすがは演技派の俳優さんたち、男と女が出会って恋に落ちるというよくあるラブストーリーですが、その普通を普通に見せてくれるところが、とてもいい感じでした。
背の低いハーヴェイに背が高い上にヒールを履いているケイト。
それでも二人並べばお似合いでした。
いくつになっても人生は開けるし、愛する人も見つかる。
夢と希望がもらえる作品です。
すべての中年、熟年の人たちのための映画でした。
でも、この邦題、あまりにベタで、インパクトなさ過ぎですね。
「ラスト チャンス ハーベイ」でよかったと思うけど。
ーパパは、出張中!ーOTAC NA SLUZBENOM PUTU/WHEN FATHER WAS AWAY ON BUSINESS
1985年 ユーゴスラビア
エミール・クストリッツァ監督 モレノ・デバルトリ ミキ・マノイロヴィッチ ミリャナ・カラノヴィッチ
【解説】
旧ユーゴのクストリッツァがカンヌでグランプリを得た、ユーモアの中に痛烈な体制批判を織り込んだ作品。スターリン主義の影響下にあった50年代初頭のユーゴスラビア。薄汚い密告が見境なくはびこり、人々は疑心暗鬼だ。少年マリックの精力的かつ俗物の父親も例外なくその犠牲となる。ふと愛人に洩らした他愛ない国政批判のせいだ。収容所に収監された父を、母は“出張中”と少年に告げごまかすのだった……。(allcinema ONLINE)
【感想】
もっと政治的な怖い映画か、と思っていたら、体制批判の映画には違いはないけれど、少年の独り言で話が進んで行くので、ユーモラスな感じがしました。
さすが、クストリッツァ作品です。
第二次世界大戦後のサラエヴォが舞台。
6歳のマリクは父と母と兄、祖父と共にそれなりに幸せな生活を送っていました。
しかしある日、父親のメーシャが突然逮捕されてしまう。
逮捕の理由は、メーシャが愛人のアンキッツァに漏らしたちょっとした国家批判が政府側の人物に漏れてしまったせいでした。
この政府側の人物というのが、母の実の兄。
兄とアンキッツァが愛人関係になったからです。
父親はどこに行ったのかと尋ねるマリクに、母親のセーナは「パパは、出張中よ」というしかありませんでした。
「愛人にふと漏らした体制批判」というところが、マリクのパパのドジで人間臭いところです。
こんなにひどい目に会いながら、マリクのパパはママの目を盗んで娼婦を買いに行ったりします。
マリクを連れて、隠れ蓑にしてまで。
どんな体制でも、男は女にだらしがないねえ、と苦笑せずにはいられない作品でした。