マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

BIUTIFUL ビューティフル

2012-03-31 11:52:56 | 映画ーDVD

BIUTIFUL ビューティフルーBIUTIFUL

2010年 スペイン/メキシコ

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督 ハビエル・バルデム(ウスバル)マリセル・アルバレス(マランブラ)エドゥアルド・フェルナンデス(ティト)ディアリァトゥ・ダフ(イヘ)チェン・ツァイシェン(ハイ)アナー・ボウチャイブ(アナ)ギレルモ・エストレヤ(マテオ)ルオ・チン(リウェイ)

 

【解説】

バルセロナを舞台に、闇社会に生きる男が末期がんで余命いくばくもないことを知り、愛する子どもたちのために精いっぱい尽くそうと奮起する感動作。『バベル』の名匠アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥが監督を務め、現代社会の病理をリアルに扱いながら、闇の中から一筋の光を見いだそうとする人間の強さと美しさを描く。主演は『ノーカントリー』のハビエル・バルデム。父から子どもたちへ向けられた最後の愛の物語に胸が熱くなる。

 

【あらすじ】

スペインの裏社会で生計を立てるウスバル(ハビエル・バルデム)は、あらゆる闇取引に手を染めながらも、愛する2人の子どもと情緒不安定の妻を支えて暮らしていた。ある日、自分が末期がんであることを知ったウクスバルは、やがて訪れる死の恐怖と闘いながらも、家族との愛を取り戻すために新たな決断を下すのだが……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

「それでも恋するバルセロナ」と同じバルセロナの話なのかと思うほど、貧しい町の話でした。

建設中のサクラダファミリアも、夢のように美しく遠くに見えるのだけれど。

 

「ペーパーバード」で描かれていたフランコ将軍時代の名残、今もこの町には色濃く残っているのですね。

貧しい人が喘ぐように暮らしています。

 

その上に、中国人の出稼ぎ労働者、セネガルからの不法入国者がいっぱい。

その人たちの稼ぎをピンハネしているスペイン人でも底辺の暮らしをしているウスパル(ハビエル・バルデム)が主人公です。

 

BIUTIFUL」というタイトル。

綴りが間違っていますよね。

娘から綴りを聞かれてウスパルが「発音と同じBIUTIFULだよ」と教えるシーンがあります。

つまり、ウスパルは無学と言うことを表しているのですね。

 

物語がストレートに語られるわけではありません。(イニャリトゥ監督ですもの!)

最初に、ウスパルが娘に語る指輪の話と、雪の森の中で誰かと話をしている夢は、ラストにもう一度出てきます。

 

それでも、そんなに複雑な作品ではありません。

 

ウスパルには小学校に通うアナ(アナー・ボウチャイ)と、マテオ(ギレルモ・エストレヤ)という子供たちがいて、妻のマランブラ(マリセル・アルバレス)とは離婚しています。

他に、やくざな兄ティト(エドゥアルド・フェルナンデス)がいます。

 

ウスパルはセネガル人が麻薬や偽ブランドを路上で売るために、警察に賄賂を渡して見逃してもらったり、中国人の出稼ぎ労働者を取りまとめているハイ(チェン・ツァイシェン)に仕事を斡旋したりして生計を立てている。

 

元は、麻薬も扱っていたようなほのめかしもある。

また、霊能者で、死者のメッセージを遺族に伝えてお金をもらうという副業もしている。

 

とにかく、子供たちを育てたいというのが、ウスパルの切なる願いのようです。

ところが、なんの因果か、ウスパルは癌の宣告をされ、自分が余命幾ばくもないことを知らされるのです。

自分が死んだら、子供たちはどうなるのかー。

 

ウスパルは、元妻のマランブラともう一度やり直すことを試みます。

マランブラはひどい躁鬱病ですが、本人は治ったと言い張ります。

ウスパルもそれを信じたい。

 

☆ネタバレ

中国人労働者は、倉庫の地下に閉じ込められて眠っています。

朝6時に起こされ、建設現場で働いていました。

その中には、乳児を抱えたリリもいました。

ウスパルはその寒さを気の毒に思い、ストーブを買いました。

その情けがアダとなり、ストーブの不完全燃焼で、中国人たちは全員死んでしまいました。

 

そしてハイは、同性愛の恋人リウェィ(ルオ・チン)と共謀して、死体を沖に捨てました。

次の日には、浜辺に打ち上げられ、国中が大騒ぎ。

あまりのことに呆然として、同じ超能力を持つベアに悩みを打ち明け、心の救いを求めるウスパル。

家族と約束をしていたピレーネ旅行に行けなくなりました。

夜中に自宅に帰ってみると、マランブラに虐待を受けて置き去りにされたマテオがいました。

 

母親には子供たちを託せないと悟ったウスパルは、子供たちを連れてマランブラの家を出ました。

 

元のアパートには、強制送還されたセネガル人の妻イヘ(ディアリァトゥ・ダフ)と赤ちゃんを住まわせていました。

狭いアパートで共同生活が始まりました。

 

癌は容赦なくウスパルの健康を奪い、とうとう紙おむつをするようなありさまです。

イヘは子供たちの面倒を見たり、ウスパルの看護をしたり献身的でした。

 

ウスパルはイヘに全財産を預け、子供たちを託します。

荷物をまとめて財産を持ち逃げするつもりで駅まで行くイヘ。

 

物音がしてウスパルが「イヘ?」と呼びかけると、「そうよ」と返事がありました。

イヘは、このアパートで子供たちと暮す決心をしてくれたようです。

 

そして、冒頭のシーン。

アナに母親の形見の指輪をあげます。

自分が生まれる前に、フランコの圧政に抵抗してメキシコへ渡り、すぐに肺炎で亡くなり、遺体となって戻って来た父。

 

森の中の夢は写真でしか知らない父と話をしています。

足下にはフクロウの骸。

「フクロウは死ぬときにそのくちばしから毛玉をはいて死ぬ」というセリフが作品中に3回出てきます。

これは、何を意味するのでしょうか。

 

胸の内に秘めた深く悲しい思い。

死ぬ前には吐き出したいという願望かなあ、と思いました。

 

ウスパルはやがて死んでしまうでしょう。

ウスパルが思いを残した子供たちが、幸せに育つことを願わずに入られません。

 

でも、人種を越えた人たちのつながりが、子供たちに明るい未来を暗示しているような気持ちで見終わることができました。

 

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品の中では、かなり明るい感じで良かったと思いました。

テーマはめちゃめちゃ悲惨で、映像も辛いシーンが多いのに、不思議です。

誰にでもオススメと言うわけにはいきませんが、私はよかったと思いました。

 

未来を生きる君たちへ

2012-03-30 09:33:25 | 映画ーDVD

ー未来を生きる君たちへーHAEVNEN/IN A BETTER WORLD

2010年 デンマーク/スウェーデン

スサンネ・ビア監督 ミカエル・パーシュブラント(アントン)トリーヌ・ディルホム(マリアン)ウルリク・トムセン(クラウス)ウィリアム・ヨンク・ユエルス・ニルセン(クリスチャン)マルクス・リゴード(エリアス)

 

 

【解説】

『アフター・ウェディング』などのスサンネ・ビア監督が、暴力や憎しみに満ちた世界の中で希望を見いだしていく人々の姿を描き、第83回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した感動作。ある2組の家族が抱える葛藤(かっとう)から複雑に絡み合った世界の問題を浮き彫りにし、登場人物それぞれが復讐(ふくしゅう)と許しのはざまで揺れ動くさまを描写。キャストにはスウェーデンで活躍するミカエル・ペルスブラント、『ある愛の風景』のウルリク・トムセンら実力派がそろう。

 

【あらすじ】

医師アントン(ミカエル・ペルスブラント)は、デンマークとアフリカの難民キャンプを行き来する生活を送っていた。長男エリアス(マークス・リーゴード)は学校で執拗(しつよう)ないじめを受けていたが、ある日彼のクラスに転校してきたクリスチャン(ヴィリアム・ユンク・ニールセン)に助けられる。母親をガンで亡くしばかりのクリスチャンと、エリアスは親交を深めていくが……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

「しあわせな孤独(2002)」「ある愛の風景(2004年)」「アフター・ウェディング(2006年)」「悲しみが乾くまで(2008年)」と個性的な作品をコンスタンスに世に問い続けているスサンネ・ビア監督の最新作です。

この作品は、2011年の外国語映画賞に選ばれました。

 

見ている途中、辛くなってこの先どんな展開になるのかと、投げ出しそうな気分にもなりましたが、ビア監督らしい、赦しのメッセージで終わり、見終わった後は清々しい気分になりました。

 

ビア監督の作品はいつも、正義か邪悪か、白か黒かということにこだわらず、人は過ちを犯すけれど、信じられるところもあるということを明確に提示してくれるところが、すごいです。

 

医師アントンは、アフリカの難民キャンプで働いている。

テントを張っただけの、砂漠の真ん中の診療所。

怪我の人や病気の人でいつもごったがえしている。

 

アントンの妻マリアン(トリーヌ・ディルホム)はデンマークの病院で働く医師で、長男エリアス(マークス・リーゴード)と次男と一緒に暮らしている。

アントンの浮気が原因で、二人は別居状態。

アントンが休暇で戻ったときは、アントンは別荘に帰り、そこに子供たちが訪ねてくる。

 

エリアスは、「移民」「ネズミ顔」と、クラスのいじめっ子にいつもいじめられていた。

転校してきたクリスチャン(ヴィリアム・ユンク・ニールセン)が、暴力でもってエリアスを助けたことで、二人は仲良くなる。

 

クリスチャンは母親を亡くしたばかりで、安楽死(?)を認めた父親(ウルリク・トムセン)を許せないでいた。

 

☆ネタバレ

登場人物のみんなに試練が訪れます。

 

アントンは、難民の妊婦のお腹を裂くという残酷な犯行を行っていたビックマンが足に深い傷を負って乗り込んできたとき、医師として救うことを決心します。

でも、足が治っても非人間的な言動を許すことができず、ビックマンを診療所から追い出してしまいます。

人々がビックマンにリンチをするのはわかっていたのに。

 

クリスチャンは、無抵抗のアントンに暴力をふるった修理工の男を許せず、男の車を爆弾で破壊する計画をエリアスに打ち明けます。

始めは反対していたエリアスですが、クリスチャンに押し切られるように爆弾を仕掛けに付き合います。

そこへ、ジョギングの親子が近づいてきて、危険を知らせに走っていたエリアスは爆風に吹っ飛ばされました。

ようやく、事の重大さに気づいたクリスチャン。

病院へエリアスの容態を見に行きますが、マリアンに「問題児!」とののしられて、エリアスは死んだと思い込みます。

 

緊急の知らせを受けて帰ってきたアントン。

エリアスが一命を取り留めたと知り、安堵しますが、そこへクリスチャンの父親から「クリスチャンがいなくなった」との知らせが。

 

アントンは、いつも子供たちが遊んでいたビルの上に、飛び降りる決心をしたクリスチャンをみつけたー。

 

ビア監督の提示するテーマは、白黒決めるのが本当に難しい。

暴力はいけない、復讐の連鎖が憎しみを増す、言葉では簡単に言えても、それが我が身に降り掛かったとき、どう対処できるのか。

 

いじめられている子供が、どう解決すればいいかとか、難民キャンプのような秩序のないところで、人々を暴力からどう守るかというような問題。

心の中は葛藤で嵐が渦巻いているようです。

思考も停止して、憎しみばかりが増大して行くのです。

 

それでも、それでも、平和で秩序のある世界に生きている私たちは、あらゆる暴力を赦し、憎しみ連鎖を断ち切り、生きていかなければならないんだという、次世代に対するメッセージをしっかり感じることができる作品でした。

 

きれいごとじゃないけど、きれいに生きていきたい。

思いは切実だけど、明確な答えはない。

だけど、人の心には希望があるよね。

ビア監督の切なる思いが、見終わった後にじんわり伝わってきました。

 

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

2012-03-28 10:59:21 | 映画ー劇場鑑賞

ーマーガレット・サッチャー鉄の女の涙ーTHE IRON LADY

2011年 イギリス

フィリダ・ロイド監督 メリル・ストリープ(マーガレット・サッチャー)ジム・ブロードベント(デニス・サッチャー)オリヴィア・コールマン(キャロル・サッチャー)ロジャー・アラム(ゴードン・リース)スーザン・ブラウン(ジューン)ニック・ダニング(ジム・プライアー)ニコラス・ファレル(エアリー・ニーブ)イアン・グレン(アルフレッド・ロバーツ)リチャード・E・グラント(マイケル・ヘーゼルタイン)アンソニー・ヘッド(ジェフリー・ハウ)ハリー・ロイド(若き日のデニス)アレクサンドラ・ローチ(若き日のマーガレット)

 

【解説】

イギリス初の女性首相として強力なリーダーシップを発揮したマーガレット・サッチャーを、『クレイマー、クレイマー』『プラダを着た悪魔』のメリル・ストリープが演じる人間ドラマ。1979年の就任以来、強気の姿勢でイギリスを導いて鉄の女と称されたサッチャーの誰もが知る姿と、その裏に隠された孤独な一面を繊細に描き出す。監督は、『マンマ・ミーア!』でメリルと組んだフィリダ・ロイド。サッチャーの夫を、『アイリス』や『ハリー・ポッター』シリーズのジム・ブロードベントが演じる。ハリウッドを代表する演技派女優、メリルの渾身(こんしん)の演技が見どころだ。

 

【あらすじ】

1979年、父の教えである質素倹約を掲げる保守党のマーガレット・サッチャー(メリル・ストリープ)が女性初のイギリス首相となる。鉄の女の異名を取るサッチャーは、財政赤字を解決し、フォークランド紛争に勝利し、国民から絶大なる支持を得ていた。しかし、彼女には誰にも見せていない孤独な別の顔があった。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

アイアンレディーの異名を取る元英国首相マーガレット・サッチャーを演じたメリル・ストリープは、2011年度のアカデミー賞主演女優賞を獲得。

自身にとって2度目の受賞で、受賞スピーチでは「信じられない。本当にありがとう。名前を呼ばれたとき、アメリカの半分ぐらいが、なぜ? また?と思ったかも。でも、そんなことはいいんですよ」と笑いを誘いました。

それもそのはず、ノミネートだけでも主演女優賞14回、助演女優賞3回と史上最多を誇っています。

 

そして、この作品、「そっくりショーか」と揶揄されたとも聞きましたが、聞きしに勝る名演技、さすがオスカー女優と、びっくりしました。

 

マーガレット・サッチャー物語ではありません。

どちらかというと、認知症にかかった老人の夢幻の世界という感じです。

鉄の女と呼ばれ、歴史ある英国議会のトップに立った初の女性首相、マーガレット・サッチャーでも、老いるとはこういうことなのかと、ショックを覚えました。

 

そして、もう一つの柱は夫婦愛です。

最初の選挙で上院議員に落選して以来、ずっと支え続けてくれた夫、デニス・サッチャー(ジム・ブロードベント)。

「私は普通の妻のように台所で一人茶碗を洗うようなことはしない」と言い切るマーガレットを、影のように支え続けた人でした。

 若き日の二人

この映画は、デニスが亡くなり、彼の遺品を整理しているマーガレットの姿を追い続けます。

デニスが幻影として現れ、彼が幻影ということはわかっていても、それが心の支えになっている老いて孤独なマーガレット。

 

この心情がとてもわかる感じがしました。

私も、わかる年になったと言うべきでしょうか?

 

ペーパーバード幸せは翼に乗って

2012-03-28 10:33:20 | 映画ーDVD

ーペーパーバード幸せは翼に乗ってーPAJAROS DE PAPEL/PAPER BIRDS

2010年 スペイン

エミリオ・アラゴン監督 イマノル・アリアス(ホルヘ)ルイス・オマール(エンリケ)ロジェール・プリンセプ(ミゲル)カルメン・マチ(ロシオ)

 

【解説】

スペインの国民的芸能一家出身のエミリオ・アラゴンが、初監督を務めた珠玉の感動作。1930年代のスペイン内戦から1940年代の軍事政権下のマドリードを舞台に、厳しい時代を生き抜いた芸人たちの心意気を熱く語る。舞台で芸達者ぶりを披露するのは、『私の秘密の花』のイマノール・アリアスと、『抱擁のかけら』のルイス・オマール。彼らと孤児の少年の交流を通して描かれる、人間としての誇り高き生きざまが深い感動を呼ぶ。

 

【あらすじ】

喜劇役者のホルヘ(イマノール・アリアス)は、スペイン内戦中に爆撃で妻と息子を失い、その後こつ然と姿を消す。内戦が終結した1年後、マドリードの劇団にふらりと戻って来たホルヘを、相棒のエンリケ(ルイス・オマール)は温かく迎える。ある日、彼らは戦時中両親を失ったミゲル(ロジェール・プリンセプ)という少年と出会い……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

1936年のスペイン内戦下を舞台に、喜劇役者のホルヘ(イマノール・アリアス)と戦争孤児ミゲル(ロジェール・プリンセプ)の運命を描いています。

 

作品の冒頭部分で、ホルヘは妻と一人息子をフランコ将軍の爆撃で失います。

そして、姿を消してしまいました。

 

1年後、ホルヘはふらりと劇団へ顔を出します。

コンビのエンリケ(ルイス・オマール)をはじめ、劇団員は大喜び。

内戦は治まり、フランコ将軍が権力を握っていました。

そして、反抗する人々を逮捕しようと、目を光らせていました。

 

エンリケは孤児のミゲルをかわいがり、自分たちのチームに入れようとホルヘにも薦めます。

ホルヘは、亡くなった息子を思い出すのか、ミゲルに冷たく当たりますが、どこにも行くところのないミゲルを面倒見ることにしました。

 

☆ネタバレ

ホルヘも劇団も、フランコ政権に逆らうものがいないかと疑われ、スパイも送り込まれていました。

 

そんな中、フランコ将軍が劇団を見に来ることに。

劇団員の一人は、ホルヘに「暗殺の絶好の機会だ」と詰め寄ります。

 

あるとき、ニュース映像でミゲルは自分の母親を発見します。

ホルヘはその女性に会いに行きますが、彼女は戦争のショックで廃人同様になっていました。

「ミゲルを立派な役者にする」とその母親に誓うホルヘ。

 

そして、とうとうフランコが観劇に来る日、ホルヘは陰謀が進展していることを知りました。

ホルヘたちは危険なスペインを離れブエノスアイレスに亡命しようとしますが…。

 

現代、アメリカで喜劇人として成功したミゲルの姿がありました。

その挨拶に泣かされます。

「パパと2度だけ呼んだ恩人」ホルヘの話でした。

 

家族を引き裂く戦争。

犠牲になる子供たち。

 

ちょっとだけ昔の話ですが、いい作品でした。

戦争の中でも、一番怖いのは疑心暗鬼と陰謀が渦巻く内戦ではないでしょうか?

 

これも、オススメです。

 

モリエール 恋こそ喜劇

2012-03-28 10:03:32 | 映画ーDVD

ーモリエール恋こそ喜劇ーMOLIERE

2007年 フランス 

ローラン・ティラール監督 ロマン・デュリス(モリエール)ファブリス・ルキーニ(ムッシュ・ジュルダン)リュディヴィーヌ・サニエ(セリメーヌ)ラウラ・モランテ(マダム・ジョルダン/エルミール)エドゥアール・ベール(ドラント伯爵)ファニー・ヴァレット(アンリエット・ジュルダン)ゴンザーグ・モンテュエル(ヴァレール)ジリアン・ペトロフスキー(トマ)

 

【解説】

笑いの中に人間の本質を描き出し、今も世界中の人々を魅了する17世紀フランスの天才劇作家モリエールの名作がどんな経験から生まれたのかを、大胆な発想で紡いだ歴史喜劇。モリエール作品のエッセンスを織り込みながら、彼が若き日に経験した冒険とロマンスを涙と笑いとともに描く。主演は『PARIS(パリ)』のロマン・デュリス。共演にはベテランのファブリス・ルキーニ、『スイミング・プール』のリュディヴィーヌ・サニエら実力派が名を連ねる。

 

【あらすじ】

1644年、22歳の駆け出しの劇作家モリエール(ロマン・デュリス)は前年に旗揚げした劇団の借金が膨れ上がり、債権者から追われていた。多額の借金に苦しむ彼は、金持ちの商人ジュルダン(ファブリス・ルキーニ)に窮地を救われる。借金の肩代わりと引き替えに、ジュルダンの演劇指南役として雇われることになったモリエールは……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

モリエールについては「人間嫌い」を学生のときに読んだくらいです。

 

モリエール(Molière、1622年1月15日 - 1673年2月17日)は17世紀フランスの劇作家で、コルネイユ、ラシーヌとともに古典主義の三大作家の一人とされる。

本名はジャン=バティスト・ポクラン(Jean-Baptiste Poquelin)で、パリの裕福な家庭に生まれる。オルレアンの大学で法律を学んだ後、俳優となるが芽が出ず、売れない劇団の座長として地方の旅回りを続けた。その中で喜劇作品を書き始めた。

1658年、パリに戻り次々に作品を上演し、『お嫁さんの学校』(1662年)が大評判となって劇作家として認められた。モリエールの劇作は宮廷でも支持を得て、喜劇に対する人気、評価を高めた。喜劇作品『人間嫌い』『ドン・ジュアン』『町人貴族』『病は気から』『いやいやながら医者にされ』『スカパンの悪だくみ』などがある。モリエールの死後、コメディ・フランセーズが創設された(1680年)。(ウィキペディアより)

 

コメディー・フランセーズの創設のきっかけとなった人なのですね。

コメディ・フランセーズが来日したとき(たぶん1976)に、「ドン・ジュアン」を見ました。

 

「恋こそ喜劇」、この作品は、すごく面白かったです。

ロマン・デュリス、うまいです。

 

13年ぶりに地方巡業からパリに戻って来たモリエールの一座。

モリエールは座員たちに「悲劇をやる」と宣言する。

 

ある日、朝帰りのモリエールのもとに女性が訪ねてきて、「あなたに会いたがっている人がいる」と告げる。

 

その人の名はエルミール(ラウラ・モランテ)。

 

遡ること13年前。

モリエールの劇団は借金を抱え、とうとうモリエールは牢獄に入れられてしまった。

それを救ってくれたのが、金持ちの商人ムッシュ・ジュルダン(ファブリス・ルキーニ)。

しかし、それには条件があった。

 

ジュルダンはセメリーヌ(リュディヴィーヌ・サニエ)という貴族の未亡人に恋いこがれていた。

いつか彼女のサロンで自作の演劇を演じることが彼の夢だった。

そこでモリエールに演劇指南をしてもらうというのが、モリエール救出の条件。

イヤとは言えないモリエール。

聖職者を装って、ジュルダンの屋敷へ。

 

ジュルダン氏の家族は、夫人のエルミールと一人娘。

ジュルダン氏が、セメリーヌのサロンに入れる工作をしているのが、貧乏貴族のドラント伯爵(エドゥアール・ベール)だった。

 

☆ネタバレ

ドラント伯爵は、ジュルダンにはセメリーヌにいろいろプレゼントをしたりして取り入っていると報告しながら、ジュルダンからお金をせしめることしか考えていない悪い奴。

 

しかも、貴族になりたいジュルダンと、お金持ちになりたいドラント伯爵の利害が一致して、お互いの娘と息子の結婚を決めてしまう。

 

恋人のいるジュルダンの娘は嘆き悲しみ、エルミールとモリエールはひと芝居打つことにする。

 

気乗りがしないで乗り込んだジュルダンの屋敷に、賢婦エルミールがいて、恋に落ちるモリエールですが、彼女の演劇に対する深い見識に触発され、喜劇の才能が開花して行くところが見所です。

そして最後には、自分がいかに妻をないがしろにしていたかに気づくジュルダンにも注目です。

 

エンドロールは、ジュルダンをもじったモリエールの喜劇。

自分では、誰にも知られずに一生懸命画策していることが、なんと滑稽なことかということに気づかせられます。

客観的に人生をみること。

これが、喜劇の真髄だなあ。

 

それを教えたのが、モリエールにとっては美しき人妻エルミールだったという、この作品はフィクションです。

 

エルミールが実に魅力的です。

心ない夫を支え、恋に苦しみ、それでも深い愛情を示すエルミール。

こんな女性に憧れます。

 

ロマン・デュリスのアンダルシアの馬、かっこいいですよ。

ジュルダン氏の演じる馬はめちゃおかしいです。

 

二人の演技対決も楽しいです。

 

格調が高く、とてもいい作品です。

お薦めします。


ヒューゴの不思議な発明

2012-03-23 10:45:59 | 映画ー劇場鑑賞

ーヒューゴの不思議な発明ーHUGO

2011年 アメリカ

マーティン・スコセッシ監督 ベン・キングズレー(パパ・ジョルジュ)ジュード・ロウ(ヒューゴのお父さん)エイサ・バターフィールド(ヒューゴ・カプレ)クロエ・グレース・モレッツ(イザベル)レイ・ウィンストン(クロードおじさん)エミリー・モーティマー(リゼット)ヘレン・マックロリー(ママ・ジャンヌ)クリストファー・リー(ムッシュ・ラビス)マイケル・スタールバーグ(ルネ・タバール)フランシス・デ・ラ・トゥーア(マダム・エミール)リチャード・グリフィス(ムッシュ・フリック)サシャ・バロン・コーエン(鉄道公安官)

 

【解説】

オスカー受賞作『ディパーテッド』など数々の傑作で知られる世界的巨匠、マーティン・スコセッシ監督が初めて3Dでの撮影に挑んだ本格ファンタジー。世界各国でベストセラーとなったブライアン・セルズニックの小説を原作に、父親が残した機械人形に隠された秘密を探る少年の冒険を描く。主演は『縞模様のパジャマの少年』のエイサ・バターフィールドと、『モールス』のクロエ・グレース・モレッツ。共演にはジュード・ロウ、『ブルーノ』のサシャ・バロン・コーエン、ベン・キングズレーら豪華な顔ぶれがそろう。

 

【あらすじ】

1930年代のパリ。駅の時計台にひそかに住む孤児の少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)の唯一の友達は、亡き父が残した機械人形だった。壊れたままの人形の秘密を探る過程で、彼は不思議な少女イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)とジョルジュ(ベン・キングズレー)に出会う。やがてヒューゴは、機械人形にはそれぞれの人生ばかりか、世界の運命すらも変化させてしまう秘密があることに気付き……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

今年のアカデミー賞の大本命とされていた本作品。

結果的には、「アーティスト」に作品賞は獲られてしまいましたが、撮影賞を始め、技術的な賞は総なめにしていました。

確かに、オープニングの3Dはステキでした。

 

タイトルの「ヒューゴの不思議な発明」というのはどういうところから付いたタイトルなんでしょう?

ヒューゴは発明なんかしていないし、予告編の作り方もファンタジーみたいだったので、誤解して見に行った人も多かったのではないでしょうか?

これは、映画を愛する人のための映画であって、子供向きのファンタジー作品ではありません。

原題は「HUGO」。

 

1930年代のパリ。

駅の壁の隙間に暮す少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)の物語です。

 

ヒューゴは美術館に勤める父(ジュード・ロウ)と二人で暮らしていました。

父は美術館にあった古い機械人形をヒューゴと修理していました。

ところがある日、美術館が火事となり、父は帰らぬ人となったのです。

 

すぐにおじさんがヒューゴを引き取りにやってきました。

そのおじさんが駅の時計の管理をしていたのです。

 

ところが、おじさんは飲んだくれで、いつからか帰って来なくなりました。

ヒューゴはひとりぼっちになってしまいましたが、駅にあるものを盗んだり拾ったりしながら時計の管理を続けていました。

そして、父が遺した機械時計の修理もこつこつと続けていたのでした。

 

☆ネタバレ

駅構内で修理屋を営むジョルジュ(ベン・キングズレー)に、機械の部品を盗んでいたことがばれ、だいじな手帳を取り上げられてしまう。

ヒューゴは返してくれるように懇願するが、ジョルジュは、孤児を目の敵のように追いかけている鉄道公安官(サシャ・バロン・コーエン)に突き出すと脅す。

 

ヒューゴはジョルジュの養女イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)と仲良くなって、ジョルジュが毛嫌いしている映画を一緒に見に行った。

 

 

そして、イザベネの胸にハート形の鍵をみつけ、機械人形の鍵穴に差し込むと機械人形が動き出した。

 

そして書いたものは顔のある付きの顔面にロケットが突き刺さっている絵。

これこそ、パパと自分を結ぶ線が途切れたとがっかりした。

 

図書館で映画の歴史の本にジョルジュの名前を発見し、ジョルジュが映画創世記の英雄だったことがわかり、彼が作った1本の映画フィルムが存在することも発見する。

 

ジョルジュの家でそのフィルムを見ていると…。

 

私も映画少女だった頃の情熱が甦ってきて、途中からうるうるし始めました。

大学では映画研究会に属していて、映画の歴史の勉強したような気が…。

そうそう、メリエスの月世界旅行、本で見た覚えであります。

 

ここで使われた3Dは、スコセッシ監督の映画への情熱を、映画を愛する人すべてに伝えるためのツールだと思いました。

その情熱は感動となって、ひしひしと伝わってきました。

 

主人公を演じたエイサ君を見るのは、「縞模様のパジャマの少年」「ナニー・マクフィーと空飛ぶ子ブタ」と3本目です。

透き通ったブルーの目が観客を引き込みます。

彼の演技で、泣かされてしまいます。

 

イザベラ役のクロエちゃんも、「キック・アス」「モールス」と売れっ子です。

 

エンドロールに大きく「ジョニー・デップ」のクレジット。

ジョニーはこの作品への出演を希望したそうですが、スケジュールの都合で出演できなかったので、制作に入ったということです。

 

ジョニーも出演していたら良かったのにね。

 

映画愛に溢れた感動作品でした。

よかったです!!

 


シャーロックホームズシャドウゲーム

2012-03-15 10:26:33 | 映画ー劇場鑑賞

ーシャーロックホームズシャドウゲームーSHERLOCK HOLMES: A GAME OF SHADOWS

2011年 アメリカ

ガイ・リッチー監督 ロバート・ダウニー・Jr(シャーロック・ホームズ)ジュード・ロウ(ジョン・ワトソン)ノオミ・ラパス(シム)ジャレッド・ハリス(ジェームズ・モリアーティ教授)レイチェル・マクアダムス(アイリーン・アドラー)スティーヴン・フライ(マイクロフト・ホームズ)エディ・マーサン(レストレード警部)ケリー・ライリー(メアリー)

 

【解説】

『アイアンマン』シリーズのロバート・ダウニー・Jrと『コールドマウンテン』のジュード・ロウがシャーロック・ホームズ、ジョン・ワトソンにふんするアクション・ミステリーの第2弾。おなじみのコンビに謎の女占い師を加えた3人が、ある事件を裏で操る最強の敵との死闘を繰り広げる。監督は、前作に続き『スナッチ』のガイ・リッチー。また、2人と手を組むヒロインを、『ミレニアム』シリーズのスウェーデン出身の女優ノオミ・ラパス、テレビドラマ「MAD MEN マッドメン」シリーズのジャレッド・ハリスが敵役として登場。ヨーロッパをまたに掛けて活躍する、ロバートとジュードの絵になるコンビに期待が高まる。

 

【あらすじ】

オーストリア皇太子が自殺する事件が起きるも、シャーロック・ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)は皇太子が暗殺されたと推測。事件の謎を解くため社交クラブに潜入したホームズは、ジプシーの占い師シム(ノオミ・ラパス)と出会うが、シムは事件の手掛かりを知ったことで暗殺事件の首謀者モリアーティ教授(ジャレッド・ハリス)に狙われてしまい……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

ガイ・リッチー版「シャーロック・ホームズ」第2弾。

前作のDVDも見直して、楽しみに鑑賞してまいりました。

結論から言うと、前作ほどではないんですが、楽しんできましたよ。

ロバート・ダウニー・Jrはホームズをすっかり自分のキャラにしてしまいました。

オタクで非常識でヤク中のホームズと、常識人で堅物のワトソン。

ジュード・ロウのワトソンとともに、名コンビが出来上がった感じがします。

二人がどんな危機に陥っても、信頼関係を損なう事無く助け合ったり、仲良く口喧嘩を続けている様子を見ているのは、とても楽しいです。

二人の間でいい化学反応が起きたのですね。

もともと、テレビドラマ「アリー・my・ラブ」時代から大好きだったロバートですが、こんなふうにスクリーンで活躍してくれて、ますます大好きです。

 

今回のシャーロック・ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)は彼にとっての最大の敵、世界中を戦争に巻き込もうと企むモリアーティ教授(ジャレッド・ハリス)に挑みます。

 

☆ネタバレ

前回に引き続き、アイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダムス)は、怪しい行動をしています。

彼女の身を案じる(たぶん)ホームズは、変装して彼女の後を付けたり、陥れられたり。

でも、なんとか爆破の危険を一つ回避できました。

ところが、アイリーンはモリアーティ教授の手にかかって死んでしまいます。

彼のために働かされていたのに。

 

手掛かりは、アイリーンから取り上げた手紙。

テロリストの兄から妹のシム(ノオミ・ラパス)に宛てられた手紙だった。

 

一方、ワトソン(ジュード・ロウ)はメアリー(ケリー・ライリー)との結婚式をひかえ、ホームズの冒険には乗り気ではない。

 

シムの働くお店に乗り込んだホームズは、シムとともに命を狙われるが、ワトソンはそんなことは知らずにトランプ遊びに興じていた。

 

次の日はワトソンとメアリーの結婚式。

結婚式の付添人を勤めながらも、幸せそうな二人からしょんぼりと離れるホームズ。

そんなにワトソンのことが好きなのね。

 

さて、新婚旅行のために列車の1等席に乗ったワトソンとメアリーは、幸せいっぱい。

しかし、甘い時間もそこそこに襲撃を受ける。

モリアーティはワトソンの命も狙っていたのだ。

 

女装して助けに来るホームズ。

メアリーを列車から川に突き落とし、計画通りにワトソンの命を守るホームズは、どことなく得意げで満足そうにも見えました。

大好きなワトソンを救うことが喜びー!!

この男同士の恋愛感情にも似た友情が、この作品の魅力です。

 

二人はシムの隠れたジプシーたちの村を訪れます。

そして、シムの兄がこの事件に大きく関わっていることに気づき、モリアーティの大きな陰謀に愕然とするのです。

 

果たして、二人はモリアーティの陰謀から世界を救うことができるのでしょうか?

 

下敷きになっているのは、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ「最後の事件」です。

私もテレビドラマで見た記憶があります。

スイスのライヘンバッハの滝から二人は滝壺へと落ちていきました。

原作でも、ホームズは助かっていて、次の「空き家の冒険」でも活躍しているので、この結末も当然です。

 

第3部もあるのでしょうね。

楽しみになりました。

 

アイリーンとホームズの関係、メアリーとのワトソンを巡る三角関係…。

アイリーンは、早々と姿を消して残念でしたが、それでも満足度の高い描き方でした。

 

兄のマイクロフト・ホームズ(スティーヴン・フライ)との絶妙の信頼関係も面白かったし、この人も、ホームズに負けず劣らずの奇人ぶりで、面白かったです。

 

悪役モリアーティを演じたジャレッド・ハリスは、いかにも非情なインテリという感じで、ぴったりでした。

 ジャレッド・ハリス

「ミレニアム」シリーズ(スウェーデン版)でリスベット・サランデルを演じたノオミ・ラパス。

登場シーンこそとてもよかったんだけど、最後は尻すぼみになってしまって、少し花がなかったなあ。

残念でした。

ノオミ・ラパス 

今「ミレニアムドラゴンタトゥーの女」を読んでいます。

私の頭の中で活躍しているリスベットは、ノオミ・ラパスです。

印象が強かったからなあ。

面白いです!!

 

この作品、イギリス、フランス、スイスと国境を越えて冒険が続くのですが、ひとつひとつのエピソードがぷつんと途切れてそのあとが緩慢な感じで、気持ちが連続して盛り上がっていかなかったのが、惜しいなあと思いました。

退屈というわけではないんだけど。

 

きっと、第3部で締めてくれるのでしょう。

期待したいと思います。


戦火の馬

2012-03-14 09:29:42 | 映画ー劇場鑑賞

ー戦火の馬ーWAR HORSE

2011年 アメリカ

スティーヴン・スピルバーグ監督 ジェレミー・アーヴァイン(アルバート・ナラコット)エミリー・ワトソン(ローズ・ナラコット)デヴィッド・シューリス(ライオンズ)ピーター・ミュラン(テッド・ナラコット)ニエル・アレストリュプ(エミリーの祖父)トム・ヒドルストン(ニコルズ大尉)パトリック・ケネディ(ウェイバリー中尉)デヴィッド・クロス[俳優](ギュンター)

 

【解説】

1982年にマイケル・モーパーゴが発表し、舞台版は第65回トニー賞で5部門に輝いたイギリスの小説を巨匠スティーヴン・スピルバーグが映画化。第1次世界大戦下を舞台に、主人公の少年アルバートとその愛馬ジョーイの掛け替えのないきずなの物語が展開する。主人公の少年を演じるのは、新星ジェレミー・アーヴァイン。共演は『ウォーター・ホース』の実力派女優エミリー・ワトソン。壮大かつ感動的な物語の行方に注目だ。

 

【あらすじ】

農村に住む少年アルバート(ジェレミー・アーヴァイン)の愛馬であるジョーイが軍馬として騎馬隊に売られ、フランスの戦地に送られてしまう。敵味方の区別を知らないジョーイの目に、戦争は愚かさで悲惨なものとして映るだけだった。一方そのころ、アルバートは徴兵年齢に満たないにもかかわらず、ジョーイと会いたいがため激戦下のフランスへ旅立つ。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

テーマが、「戦争」と「動物が試練を受ける」映画。

私のダメな映画です。

このどちらの条件を満たしているこの作品。

 

NAKAちゃんのご推薦で見に行きましたが。

やはり、途中はかなり辛かったです。

 

ジョーイは、四白流星の美しい栗毛のサラブレッドです。

4本の足が白い靴下を穿いているように見え、額には縦長の十字を思わせる流星があります。

奇跡の馬にふさわしい美しさでした。

 

そのジョーイが、農耕馬としてアルバート(ジェレミー・アーヴァイン)の農場にやってきました。

父が借金をしてまで惚れ込んでしまった馬。

アルバートもまた、ジョーイが産まれたときから見守っていました。

 

誰もが無理だろうと見ている中、ジョーイは見事に畑を耕しました。

でも、父が借金返済のためにもくろんだカブの栽培は嵐が来て散々なことに。

 

第1次世界大戦が始まり、イギリスも参戦が決まりました。

借金に首が回らなくなった父は、ジョーイを戦争馬として売ってしまいました。

ジョーイを買ったニコルズ大尉(トム・ヒドルストン)は、アルバートの思いを知り、「戦争が終わったら君に返す」と約束してくれました。

 

☆ネタバレ

戦場でのジョーイの姿は、痛ましいです。

あるときはイギリス軍の騎馬隊として疾走し、あるときはドイツ軍大砲を引く馬となって、仲間の馬をも助ける気概のある馬です。

振り返ってきっと人間を睨みつけていました。

その目の鋭さは馬のものではないと思いました。

演技でしょうか?

 

風車小屋でのエミリーとそのおじいさんとのひとときは、つかの間の幸せな時間でしたが…。

 

そして、たぶんスピルバーグが言いたかったことではないかと思うのですが、軍隊だろうと、過酷な最前線だろうと、どこにでも生き物好きの人はいるということです。

これは、人間の美点の一つだと思います。

 

敵同士が向かい合っている塹壕で、有刺鉄線に絡まれて動けなくなっているジョーイを助けたのは、イギリスの兵士とドイツの兵士でした。

こんな最前線にも,動物を通じて心の交流があるのは、本当にほっとしました。

動物は人の心を助けてくれるのですね。

 

でも、戦争はいやです。

いいことなんか、ひとつもありません。

アルバートも毒ガスで目をやられ、いつも陽気な親友は死んでしまいました。

ジョーイも破傷風と診断され、安楽死寸前までいきます。

 

銃を構えられた前で頭を垂れているジョーイは神々しくさえありました。

そこに、アルバートのほーほーという指笛が。

 

ジョーイは奇跡の馬として、生かされることになりました。

でも、まだ試練はあります。

戦争が終わり、競売にかけられたのです。

 

競り落としたのは、エミリーのおじいさんでした。

エミリーはもうこの世にいないようでした。

詳しくは語られませんが、悲劇が彼女を襲ったのでしょう。

 

おじいさんもジョーイとアルバートの絆を感じて、アルバートに譲ってくれました。

 

アルバートとジョーイは生まれ故郷の農場に帰ってきました。

「風とともに去りぬ」の1部の終わりみたいなラストシーンでした。

そしてふたたびジョーイの目。

「人間て、馬鹿な生き物だなあ」と思っているに違いありません。

 

人生はビギナーズ

2012-03-10 16:24:00 | 映画ー劇場鑑賞

ー人生はビギナーズーBEGINNERS

2010年 アメリカ

マイク・ミルズ監督 ユアン・マクレガー(オリヴァー)クリストファー・プラマー(ハル)メラニー・ロラン(アナ)ゴラン・ヴィシュニック(アンディ)メアリー・ペイジ・ケラー(ジョージア)キーガン・ブース(オリヴァー(少年時代))カイ・レノックス(エリオット)

【解説】

同性愛をカミングアウトした父親と初めて恋をした38歳の息子の姿を通して、人はいつでも新たなスタートが切れることを感動的にうたい上げる人生賛歌。『サムサッカー』のマイク・ミルズ監督が、自身と父との体験を基に脚本を書き上げ映画化。『スター・ウォーズ』シリーズや『ムーラン・ルージュ』のユアン・マクレガーと『終着駅トルストイ最後の旅』のクリストファー・プラマーが父子を演じ、『イングロリアス・バスターズ』のメラニー・ロランが共演する。殻を破ることで幸せをつかむ登場人物たちを生き生きと好演し、観る者の共感を呼ぶ。

 

【あらすじ】

息子のオリヴァー(ユアン・マクレガー)に、ゲイであることをカミングアウトしたハル(クリストファー・プラマー)。妻に先立たれ、自身もガンを宣告されるが、父は75歳にして新たな人生をスタートさせる。一方、オリヴァーは38歳になっても、内気な性格からなかなか恋をすることができない。しかし父が亡くなった後に仲間から呼び出されたパーティーで、運命の女性アナ(メラニー・ロラン)と出会い……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

本作品でクリストファー・プラマーがアカデミー賞・助演男優賞を受賞しました。

御年83歳。

快挙です。

コングチュレーション!!

 

 

で、大変期待して見に行きました。

最近、「サウンド・オブ・ミュージック」も見直して、「かっこいいなあ」と思っていたところです。

 

お話は、時系列がばらばらで語られるので、ややこしかったのですが、70を過ぎた父のハル(クリストファー・プラマー)が「自分はゲイだ。これからは隠さず生きようと思う」とカミングアウトして、ゲイの集会などに出かけていくようになりました。

しかも、癌の告知を受け、余命も限られていました。

 

38歳の息子のオリヴァー(ユアン・マクレガー)は、父の余命を看取り、父のお葬式や父の家の片付けをしていました。

父が遺したジャック・ラッセル・テリアのアーサーも寂しがって、オリヴァーの行くところどこへでも付いてきます。

 

この犬がとてももの言う犬です。

オリヴァーと心の声で話し合います。

字幕が出るのですが、かわいいですよ。

犬好きの人は、とっても共感するでしょう。

エンディングにしっかりと名前が出てきます。

「with COSMO as Athur」

あまり立派に紹介されていたので、笑ってしまいました。

 

仲間たちがオリヴァーを慰めようと、仮装パーティーに誘ってくれました。

そこでアナ(メラニー・ロラン)と知り合います。

二人は、最初から意気投合し、愛し合うのですが…。

 

☆ネタバレ

38歳にもなって、なぜ自分の恋愛はうまくいかないんだろうか?

父と母とは微妙な距離があったことを、幼いときから感じていました。

そうか、父がゲイだったからなんだな。

母は、幸せな人生だったんだろうか?

 

父の死の悲しみからどうやったら癒されるのだろう。

恋人を愛せば癒されるのだろうか?

 

などなど、現代の若者の気持ちはとても繊細だなあと思いました。

38歳は、若いとも言えないしね。

父親に寄り添う、とっても優しい息子。

それはそれで、素敵なんだけど。

 

私の知り合いにも、恋を失うのが怖くて一歩を踏み出せない人もいます。

人生はまさにビギナーズですよね。

若い人ばかりではありません。

老いへの最前線に立っている私も、老いは未知数です。

時間に背中を押されるように、老いをいやでも受け入れざるを得ないのです。

 

でも、それでは後追いですからね。

自分の人生を生きているとは言えないでしょう?

 

ビギナーズはビギナーズらしく、恥を捨てて自分の思いに忠実に人生を歩んでいかないと、自分の人生を生きたとは思えないでしょう。

たぶん、踏み出すことに遅いことなんてないんです。

始めたときが始まり。

年取っているからとか、知らないから、とかはいいわけです。

誰だって、何かを始めるときはビギナーズなんだから。

 

オリヴァーは、アナとの人生に踏み出すことはできるのでしょうか?

ハルのように勇気を持って、悲しみや愛する人を失った喪失感から、その1歩を踏み出して欲しいと思いました。

それを予感させるラストで、よかったです。

 

ハルのゲイの恋人にゴラン・ヴィシュニック。

テレビドラマの「ER」のコバッチュ先生。

ごつい人なのに、ゲイの恋人だなんて、おかしかったです。

「ドラゴンタトゥーの女」にも出ていて、会うたびに嬉しくなります。

こういうのも、映画の楽しみですね。

 

おとなのけんか

2012-03-09 19:40:24 | 映画ー劇場鑑賞

ーおとなのけんかーCARNAGE

2011年 フランス/ドイツ/ポーランド

ロマン・ポランスキー監督 ヤスミナ・レザ、ロマン・ポランスキー脚本 ジョディ・フォスター(ペネロペ・ロングストリート)ケイト・ウィンスレット(ナンシー・カウアン)クリストフ・ヴァルツ(アラン・カウアン)ジョン・C・ライリー(マイケル・ロングストリート)

【解説】

世界各地の公演で好評を博し、演劇界でも権威のあるオリヴィエ賞とトニー賞に輝いたヤスミナ・レザの舞台劇を、名匠ロマン・ポランスキー監督が映画化したコメディー。子ども同士のケンカを解決するため集まった2組の夫婦が、それぞれに抱える不満や本音をぶつけながらバトルを繰り広げるさまを描く。和解のための話し合いから修羅場に陥っていく2組の夫婦を、ジョディ・フォスターとジョン・C・ライリー、ケイト・ウィンスレットとクリストフ・ヴァルツという演技派が務める。豪華なキャストが集結した本作で、彼らがどんなストーリーを展開していくのか注目したい。

【あらすじ】

ニューヨーク・ブルックリン、子ども同士のケンカを解決するため2組の夫婦、ロングストリート夫妻(ジョン・C・ライリー、ジョディ・フォスター)とカウアン夫妻(クリストフ・ヴァルツ、ケイト・ウィンスレット)が集まる。双方は冷静かつ理性的に話し合いを進めるが、いつしか会話は激化しホンネ合戦に。それぞれが抱える不満や問題をぶちまけ合い、収拾のつかない事態に陥っていく。(シネマトゥデイ)

【感想】

これは、面白い!!

劇場全体がくすくす笑いに包まれていました。

「おとなのけんか」って自分が関わらないなら、なんて面白いんでしょう。

 

原題は「CARNAGE」大量殺戮とか殺戮とか言う意味です。

物騒ですね。

つまり、修羅場かな?

 

邦題の方がうまいです。

 

オープニングタイトルで、子供の喧嘩が遠景で描かれています。

一人の子がもう一人の子を棒で殴った。

あ~あ。

 

元々が舞台劇ということもあって、最初に登場する4人以外に、登場人物は遠景の子供と公園にいる人とハムスターだけです。

このハムスターも、問題ではあるのですが。

 

4人は二組の夫婦。

殴った子の親がカウアン夫妻(クリストフ・ヴァルツ、ケイト・ウィンスレット)、殴られた子の親がロングストリート夫妻(ジョン・C・ライリー、ジョディ・フォスター)。

 

まずは、事実を認めようと、書類を作成。

「うちの子が悪かったんです」とカウアン夫妻。

さっき棒で殴った子供の親は、こちらです。

 

「お話のわかるいい方でよかったわ。コーヒーをいかが?」とロングストリート夫妻。

 

ここから4人の雲行きが怪しくなっていきます。

 

☆ネタバレ

ナンシーとアランのカウアン夫妻は、夫が弁護士で妻は投資ブロカーとか言っていました。

つまりセレブで社会強者のふたり。

夫は、子育てに協力的でなく、妻は夫に不満がある様子。

ナンシーは最初は相手の言い分を聞いて低姿勢ですが、やがて、アランのいい方にや絶え間なく続く携帯電話に苛立ち、○○してしまいます。

衝撃!!

 

ケイト・ウィンスレットがここまでやるとは思わなかった!!

クリストフ・ヴァルツは、「イングロリアス・バスターズ」とはまた違う、嫌みな弁護士を生き生きと演じていました。

 

一方、ペネロペとマイケルのロングストリート夫妻は、日用品店を営んでいる中流家庭。

ペネロペはリベラリストで、社会問題に関する著書もあるライター。

マイケルは、母親に弱く、ハムスターも嫌いで、理論派の妻にも頭が上がらないようす。

 

この二組の夫婦はもちろん咬み合いませんが、自分たち夫婦の日頃の不満も噴出して収拾がつかなくなっていきます。

そこに、上等のスコッチが登場して、酔いが回るほどに舌戦は激しさを増していきます。

確かに、そこは戦場でした。

 

ジョディ・フォスターが、自分のイメージをからかわれて、首に青筋をたてて怒り狂っています。

ジョン・C・ライリーは、相変わらず自然体で俗物亭主を好演。

 

キャストの妙とセリフの辛辣さ、本音はエゴ丸出しでも、共感できる意見もあるから興味が増しました。

 

そして、ラストは可愛いお目々のハムスターと、仲良く遊ぶ子供たち。

子供はすぐに仲良くなれるんだけどねえ…。

 

これは、必見!!

役者の芸達者と会話を楽しむ作品でした。

ロマン・ポランスキー監督、さすがですねえ!!