ー縞模様のパジャマの少年ーTHE BOY IN THE STRIPED PYJAMAS
2008年 イギリス/アメリカ
マーク・ハーマン脚本・監督 ジョン・ボイン原作 エイサ・バターフィールド(ブルーノ)ジャック・スキャンロン(シュムエル)アンバー・ビーティー(グレーテル)デヴィッド・シューリス(父)ヴェラ・ファーミガ(母)リチャード・ジョンソン(祖父)シーラ・ハンコック(祖母)ルパート・フレンド(コトラー中尉)デヴィッド・ヘイマン(パヴェル)
【解説】
ナチス将校を父親に持つドイツ人少年と強制収容所内のユダヤ人少年との友情と哀しい運命を描いた心揺さぶる人間ドラマ。ジョン・ボイン原作の世界的ベストセラーを、『ブラス!』『リトル・ヴォイス』のマーク・ハーマン監督が映画化。主人公となる二人の少年をオーディションで選ばれたエイサ・バターフィールドとジャック・スキャンロンが演じ、デヴィッド・シューリスやヴェラ・ファーミガといった実力派が脇を固める。人種など問わない純粋な友情と、戦争がもたらす子どもたちの宿命に胸が痛む。
【あらすじ】
第二次世界大戦下、8歳の少年ブルーノ(エイサ・バターフィールド)は、ナチス将校の父(デヴィッド・シューリス)の栄転でベルリン郊外に引っ越すことになる。裏庭の森の奥、鉄条網で覆われた場所を訪れたブルーノが出会ったのは、縞模様のパジャマを着た少年シュムエル(ジャック・スキャンロン)だった。二人は友情を育むが、ある日ブルーノはシュムエルを裏切ってしまい……。(シネマトゥデイ)
【感想】
この作品、「ナニー・マクフィーと空飛ぶ子ブタ」でしっかりものの長男を演じていたエイサ・バターフィールドを調べていたら出てきた作品で、レビューの評判もいいし、と思って借りました。
見始めて、「戦争ものだ。しまったかなあ」と思い始めましたが、ドイツ将校の家庭のお話だし、子供が主人公だし、「きっと、大丈夫」と思って見ていました。
8歳の少年ブルーノ(エイサ・バターフィールド)はベルリンで暮らしていました。
ある日、家に帰るとパーティの用意をしていました。
父(デヴィッド・シューリス)と母(ヴェラ・ファーミガ)から、父の転勤でベルリン郊外へ引っ越すことが告げられました。
姉のグレーテル(アンバー・ビーティー)は納得しましたが、ブルーノは友達と別れるのが嫌でした。
転勤先はベルリンの郊外。
兵隊さんが警備して物々しい感じです。
ブルーノの部屋から農場が見えて、そこにいる大人も子供も縞模様のパジャマを着ていました。
台所にはズボンの裾から縞模様のパジャマをのぞかせている老人がいて、下働きをしていました。
学校へは行けず、厳格な家庭教師に勉強を教えてもらうことになりましたが、ブルーノの大好きな冒険や短剣の本は禁止され、ドイツの歴史ばかりを学びました。
ブルーノは友達も無く退屈でした。
庭で怪我をしたとき、下働きの老人が手当をしてくれて、自分は医者だと言いました。
「よっぽどへまな医者だったんだね。ジャガイモの皮を剥いているもの」
退屈でたまらず、母が出かけた隙に、禁じられた裏庭を抜けて、森を抜けて農場へ着きました。
家畜もいないのに有刺鉄線が張り巡らせてありました。
一人の少年がぽつんと座っていました。
「なぜお昼なのにパジャマを着ているの?」
「パジャマじゃないよ」
「胸に書いてある数字はなんのゲームなの?」
「ゲームじゃないよ」
「じゃあ、何?」
「わかんない」
「あの煙は何?」
「知らない。あっちに行ったらダメなんだ」
この少年はシュムールと言いました。
ブルーノと同じ8歳でした。
「ヘンな名前。今まで聞いたことないよ」
「ぼくだってブルーノなんて初めて聞いたよ」
二人は友達になりました。
☆ネタバレ
家庭教師の先生は、ユダヤ人のせいで第1次世界大戦に負けた、ユダヤ人は全員悪者だと言いました。
「いい人はいないの?」
ブルーノはシュムールを思って、その言葉を信じることができません。
グレーテルは、運転手のコトラー中尉(ルパート・フレンド)に淡い恋心を抱いていたので、すっかり軍国少女になっていました。
でも、ブルーノは、出発前のおばあさんの不機嫌な様子や、ここにきてからの母の神経質になっていく様子、父の怖い感じなど、大人の変化を感じていました。
ある日、シュムールが家にきてガラス食器を磨いていました。
ブルーノがお菓子をあげました。
そこへ、コトラー中尉がやってきて、厳しく詰問しました。
「この子が勝手に食べた」ブルーノは思わず嘘を言いました。
農場に通いましたが、シュムールは現れませんでした。
ようやく会えたとき、シュムールの顔は腫れ上がっていました。
ブルーノは謝り、シュムールは許し、二人は有刺鉄線を避けて握手をしました。
ブルーノの家に軍の人たちが集まり、収容所を紹介するフィルムを見ていました。
それを盗み見したブルーノは、思ったより楽しそうな場所なので、父もいい人なんだとうれしくなって父に抱きつきました。
二人は誰にも内緒で二人だけの時間を楽しんでいました。
これしか楽しみがない二人でした。
ベルリンでは空爆でおばあさんが亡くなりました。
母は、どんどん具合が悪くなっていく様子でした。
とうとう両親は、母と子供たちをここから遠いところへ引っ越しさせることにしました。
別れを惜しむブルーノとシュムール。
シュムールは父親が行方不明になったことを心配していました。
「戦争が終わったらベルリンで探してあげるよ」と言ったけど、シュムールはうなだれたまま。
ブルーノは土が柔らかくなっているところをみつけ、
「明日、出発前にここを掘って中に入ってお父さんを探すのを手伝うよ」
「同じ服なら取って来られるし、帽子をかぶればわからないよ」と喜ぶシュムール。
そして運命の日、ブルーノは納屋からシャベルを持ち出し収容所へ。
縞模様の服に着替えて、穴を掘って収容所の中に入っていきました。
「カフェはないの?」
フィルムで見たのとは全然違う様子に戸惑いましたが、友達のお父さんをみつけるのだという、強い意志がありました。
そのとき、鋭いホイッスルの音とともに兵隊がやってきて、小屋の中の大人たちと一緒に、行進の波に飲み込まれて、逃げ出すこともできずにシャワールームのような小屋の中へー!!
もうこれ以上は書けない。
ブルーノの不在に気づいた両親は、気が狂ったように探しまわりますが、父の「ブルーノ!!」という絶叫を聞いて、母は号泣しました。
「いままでの3倍の処理能力のある新しい焼却炉です」といいながら、平然と図面を見ていた父。
親の因果が子に報いーという悲劇なのでしょうか?
ひどい結末でした。
ブルーノの大きく見開いた無垢なブルーの瞳が、残像となって脳裏にこびりついています。
特典で語られていましたが、全員を殺してしまうという収容所のことは、収容所の所長の家族にも知らされていなかったようで、ここに描かれていた母のショックもリアルな感じでした。
プロパガンダフィルムを作ったり、家族には内緒にしたり、やはり良心は痛んだのでしょうね。
それにしても、何をどう間違うと、人間が人間に見えなくなるのでしょう。
人間に見えたら、さすがにこんな仕打ちはできないでしょう。
「ユダヤ人はみんな悪人なのか?」
ブルーノの疑問はまっとうです。
シュムールは友達。
自分の裏切りで傷つけても、許してくれた、大切な友達。
最後は二人が手を握ってー。
それだけが、救いでした。
制作者たちは「これは道徳の映画だ」と言っていました。
人間には、教育や洗脳や組織の論理によって、ホローコーストを実行してしまう弱さがあるということを、気づかせてもらえる作品でした。
子供とともに、この作品を見ることも大切かもしれません。
辛いけど。
ああ、辛い。