マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

鉈切り丸

2013-10-28 09:59:22 | 舞台

ー鉈切り丸ー

演出=いのうえひでのり 脚本=青木豪 音楽=岩代太郎

キャスト

源範頼=森田剛 巴御前=成海璃子 源頼朝=生瀬勝久 北条政子=若村麻由美 源義経=須賀健太 梶原景時=渡辺いっけい 和田義盛=木村了 比企の尼=宮地雅子 建礼門院=麻美れい イト=秋山菜津子

 

【あらすじ】

時は平安末期、源範頼(森田剛)は、嵐の中木曾義仲を追っていた。

範頼は兄源頼朝(生瀬勝久)の弟に当たり、義経(須賀健太)の兄であった。

その姿は、せむしでびっこ、顔には醜い痣もあった。

実母は女郎で、生まれたときにへその緒を鉈で切ったところから、幼名を「鉈切り丸」と名付けられた。

権力を得た兄には従順なところを見せていたが、胸の奥にはどす黒い欲望が渦巻いていた。

 

【感想】

劇団☆新感線の作品だとばかり思っていましたが、これはいのうえシェィクスピアのシリーズなのですね。

いのうえさんはよほど「リチャード三世」がお好きなようで、ご自身も3作目だとおっしゃっています。

「朧の森に棲む鬼」も「リチャード三世」が下敷きに作られた作品だそうですし、そのものずばり、古田新太主演の「リチャード三世」もありました。

 

今回は、平安末期の乱世、存在さえ知らなかった源範頼をリチャード三世に重ねています。

範頼にはV6の森田剛。

鬼気迫るような役作りで、圧倒されました。

 

範頼には、最高権力者になってからのビジョンなどはなく、ただただ、権力を手に入れたいという上昇志向だけで動いている人物。

母親からも命を狙われ、たったひとかけらしかなかった愛情も、歪んだ形で終末を迎え、愛する女性とお腹にいた自分の子まで惨殺してしまいます。

 

最終的には、歴史からも名を消され、壮絶なる最後を迎えます。

 

本当に、森田剛の熱演でした。

 

頼朝と北条政子の夫婦は、本当にこうだったんじゃないかなあと思わせるくらいのイキの良さで、笑わせてもらいました。

 

建礼門院の生霊、麻美れいもすごいオーラで圧倒されました。

 

平安末期と言えば、終末思想に貴族たちは怯え、都は混沌としていた時代です。

地方は武士の台頭によって混乱し、政治形態も、庶民の生活もがらりと変わろうとしていた時代。

そして、新興宗教や、彫刻や建物など、新しい息吹も感じられる時代。

そんな流動的な時代に、このお話の背景を持って来たことが、この作品の成功のひとつではないかなと思いました。

範頼のキャラクターが実にしっくりハマる感じがしました。

 

「歴史は勝者が書き換える」

北条政子のセリフも面白かった。

歴史は、確かに勝者の歴史なんだなあ。

それは今も変わらないですよね。

 

ミス・サイゴン

2012-12-29 15:14:51 | 舞台

ーミス・サイゴンー

1226日 梅田芸術劇場 夜の部

 

【解説】

ミュージカル「ミス・サイゴン」は1989年ロンドン・ウェストエンドを皮切りに、91年ニューヨーク・ブロードウェイ、そして92年に東京・帝国劇場にて上演されました。

帝劇で3度上演された演出版は、その余りにもスケールの大きな舞台装置から"日本では帝劇以外での上演は不可能"と言われてきました。帝劇以外では唯一、福岡・博多座は、設計当初から「ミス・サイゴン」の上演を想定して3ヶ月間上演されました。

新演出版では、大型スクリーン映像を駆使して、より臨場感のある舞台に生まれ変わりました。それに伴い、舞台装置、衣裳、照明といった視覚的なものから、音響に至るまで、すべてのセクションが刷新されました。

この度の2012年の日本11都市での上演が可能になったのは、かつてのような劇場の大きさや設備の制約を受けない、新演出版=21世紀の「ミス・サイゴン」によるものなのです。

新演出版として生まれ変わったとはいえ、このミュージカルを貫くテーマは、「究極の愛」であり、それは日本初演から20年の月日が経っても、全く色あせることはありません。(公式HPより抜粋)

 

【感想】

「ミス・サイゴン」と言えば、故本田美奈子さんを思い浮かべる人も多いことでしょう。

彼女がこの作品を転機に、アイドルからミュージカルスターに成長を遂げたエピソードはあまりにも有名です。

 

でも、今回が大阪初上演だそうです。

上記にもありますが、舞台装置の都合で、限られた劇場でしか上演できなかったようですね。

問題のそのシーン、実にうまく表現してあったので、これで全国の皆さんにも見ていただけるということでしょう。

お楽しみに!!

 

実はこの日、観劇の前に「レ・ミゼラブル」の映画を見ていて、奇しくも製作・キャメロン・マッキントッシュ、作曲・クロード=ミシェル・シェーンベルク、作詞・アラン・ブーブリルの作品が続くことになりました。

しかも、秋にホーチミン市に行って来たばかり、なんというタイミングでしょう!

 

時は、ベトナム戦争の終末期、アメリカ軍に村を焼かれ、両親を失い、ひとりぼっちになったキム(笹本玲奈)は、17歳でサイゴン(現ホーチミン)にあるエンジニア(市村正親)が経営するキャバレーに働きに出た。

 

アメリカ人の軍人・ジョン(岡幸二郎)にこの店に連れて来られたクリス(山崎育三郎)は気が進まない。

かつてベトナムで戦い一時帰国したが、母国に居場所がなく、再び軍属としてサイゴンで働いているのだが、この戦争に対する虚しい気持ちがクリスを苦しめていた。

 

成り行きでキムと一夜を過ごしたクリス。

キムの純真な真心に触れて、二人は恋に落ちる。

しかし、サイゴン陥落は迫っていた。

仲間の協力で結婚式を挙げ、書類も整えた二人だったが、クリスの元に届いたサイゴン陥落の通知は、即撤退という命令となり、ふたりは引き裂かれた。

 

☆ネタバレ

数年が経ち、キムは難民キャンプでクリスの子供を育てながら、クリスの迎えを信じて耐えていた。

新政府の思想教育を受けていたエンジニアは、軍部の幹部となったトゥイ(泉見洋平)からキムの居場所を聞かれた。

トゥィはキムが13歳のときに親が決めた許嫁だったのだ。

 

難民キャンプにトゥィを案内するエンジニア。

トゥイは復縁を迫るが、キムは息子タム(荒川槙)を見せてトゥイに応じない。

逆上したトゥイはタムを手にかけようとした。

キムは思わずクリスから護身用にもらった銃でトゥイを撃ってしまう。

 

難民に混じってバンコクへ逃れるエンジニアとキム、タムの親子。

そのころ、クリスは自分の子供がベトナムにいるのも知らず、ベトナムでの辛い体験からトラウマに苦しみ、それを救ってくれたエレン(木村花代)と結婚した。

 

アメリカでも、ベトナム人とアメリカ軍人との間にできた混血児「ブイ・ドイ」の存在が社会問題化していた。

その問題に関わっていたジョンから、クリスにクリスとキムの間に子供がいると聞かされた。

エレンに打ち明け、バンコクに向かったクリスとエレン。

 

バンコクでは、キムがタムのために夜の町で働いていた。

そこへ、ジョンからキムにクリスが来たことを知らされるが、待ちきれず、キムはクリスの泊まっているホテルを訪ねる。

でも、そこにいたのはエレンだった。

クリスが結婚している事実を知ったキム。

気が狂ったように部屋を飛び出した。

 

ジョンとクリスが戻って来て、今後のことを話し合う。

クリスはエレンと別れられない。

キムとタムも引き離せないだろう。

アメリカから二人に援助する、と決めて、キムの元に向かう。

 

キムは、タムに着替えをさせ、荷物を持たせてクリスに会う準備をしていた。

そして、クリスが来てタムと初対面している間に、キムはクリスからもらった銃で自らを撃ったー。

 

悲しい結末でした。

観客たちの涙は止まりません。

キムの気持ちはよくわかりました。

キムは、タムと一緒にアメリカに行くことを夢見ていたのですから。

それがかなえられないとなると、こういう結末しかないと思いました。

 

日本でも、戦後はこんな悲劇がたくさんあったのでしょうね。

他人事とは思えず、身につまされました。

クリスは、苦しんだといってもキムほどではありません。

だってキムは17歳からずっと、自分ではどうしようもない運命に翻弄され続けて来たのです。

今秋に会ったベトナム人の若者の笑顔が浮かんできました。

 

ほんと、戦争は悲劇しか生みませんね。

平和になってよかったです。

 

この日は初日とあって、大阪出身の市村さんと木村さんの舞台挨拶がありました。

アンコールがなごやかで、とてもほっとしました。

感激しました。

 


ウィーン初演20周年記念公演 ミュージカル エリザベート

2012-09-04 14:08:39 | 舞台

ーウィーン初演20周年記念公演 ミュージカル エリザベートー

脚本・歌詞 ミヒャエル・クンツェ

音楽・編曲 シルヴェスター・リーヴァイ

演出・訳詞 小池修一郎

 

梅田芸術劇場での初日、行ってきました。

良かったわあ♡

 

2004年の一路真輝、山口祐一郎のものと、2008年の涼風真世、武田真治のものを見ています。

たぶん、2002年の宝塚本公演で春野寿美礼さんがトートを演じたDVDを見て、とても感動しました。

それで、今回の公演を楽しみにしていたら、なんと、初日のチケットを友達が取ってくれました。

A子ちゃん、いつもありがとう。

 

「エリザベート」なぜか、ブログにアップするのは初めてです。

2004年の一路真輝さんのエリザベートはとても感動しました。

歴史上の人物、しかも激動のヨーロッパ、第一次世界大戦に向かう頃、ハプスブルグ家ほとんど末期にオーストリア皇帝の皇后として迎えられて、数奇な運命に翻弄された人物です。

172センチ、ウエスト50センチ、体重は50キロで、素晴らしい美貌の持ち主。

時の皇帝フランツ・ヨーゼフが一目惚れしたのも無理はないでしょう。

一路さんは、エリザベートのプライドの高さや、上品さを完璧に演じておられました。

ぴったりでしたね。

 

初日の配役。

今回私が注目したのは春野寿美礼さん。

宝塚時代のトートのかっこよさが忘れられません。

さて、エリザベートはどう演じられるのでしょう。

 

結論から言って、少女時代のかわいらしさ、孤独な王妃時代、晩年のはかなさ、音域の広い美しい声で、とても感動しました。

特に、トート役のときは聞かれなかった、澄んだ高音もステキでした。

 

でも、私が心奪われたのはマテ・カマラスさんの迫力。

 

マテ・カマラス(ハンガリー語:Máté Kamarás(マーテー・カマラーシュ)、1976年9月21日 - )は、ハンガリーのミシュコルツ生まれのミュージカルスター。ロック歌手。アーティスト。2006年『エリザベート』ウィーン引っ越し公演でトート役で初来日。以来毎年来日し、東京や大阪でミュージカルナンバーや自身の曲を含むコンサート活動を行う。ドイツ語・英語・ハンガリー語・日本語で歌うことができ、ヨーロッパ、日本を中心に活動するアーティスト。(ウィキペディアより)

 

なるほど、なかなかの実力者。

日本のキャストとも違和感なく、特にルドルフと歌い踊る「闇が広がる」はすごくよかったです。

 

19989月、ジュネーヴ・レマン湖のほとりで、旅行中のエリザベート(春野寿美礼)はイタリア人無政府主義者ルイージ・ルキーニ(高嶋政宏)に短剣のようなヤスリで心臓をつかれ、暗殺された。

ルキーニは、獄中で首を吊ったが、闇から問いかけが続く。

「なぜ、エリザベートを殺害したのか?真実を述べよ」と。

ルキーニは闇に向かって語り始めた。

エリザベートの物語。

 

エリザベートはバイエルン王家であるヴィッテルスバッハ家傍系のバイエルン公マクシミリアン(今井清隆)とバイエルン王女ルドヴィカ(春風ひとみ)の次女として生まれた。

父マクシミリアンは自由を愛する奔放な人だった。

エリザベートはシシィと愛称で呼ばれ、父に憧れて、活発な少女だった。

 

ある時登った木から落ちて、死にかけた。

迎えにきた黄泉の帝王トート(マテ・カマラス)はシシィの美しさに魅せられ、生きた彼女に愛されたいと、この世に彼女を戻した。

このときから、シシィは死に魅入られてしまったのだ。

 

蘇ったシシィは、姉ヘレネのお見合いに付いていくことになった。

お相手は、600年間続いたハプスブルグ帝国を若干23歳で治めているフランツ・ヨーゼフ(岡田浩暉)。

しかし、実権を握っていたりは母のゾフィ(寿ひずる)だった。

ゾフィと、シシィたちの母のルドヴィカが姉妹だったため執り行われたお見合いだった。

しかし、運命のいたずらか、フランツ・ヨーゼフは付き添いのシシィを見初めてしまう。

無邪気に彼の愛を受け入れるシシィだったが、トートは結婚式に忍び込み、シシィを誘惑する。

怖くてフランツ・ヨーゼフの胸に飛び込むシシィ。

でも、空を飛ぶ小鳥のようなシシィには束縛された王妃の暮しにはまるで向いていなかった。

宮殿の窮屈な暮らし、姑ゾフィとの確執は、若い夫婦の間に溝を刻んで、その溝が次第に深く大きくなって行く。

 

数年後、夫婦の間に子供が産まれると、ゾフィはシシィには任せられないと、シシィから取り上げた。

二人目の子供もそうだった。

耐えられないシシィは、夫に「私を取るか、姑を取るか」と迫る。

彼女は勝利し、ハンガリー皇帝となった夫に従い、ハンガリー国旗の衣装を着て国民に歓喜を持って迎えられる。

しかし、長女の死という悲劇が訪れた。

彼女の人生に死の影がまとわりつく。

 

ハンガリー訪問の1年後、待望の王子ルドルフ(少年=山田瑛瑠、青年=古川雄大)が誕生するが、またもゾフィに取り上げられる。

ルドルフは繊細な子供で、ゾフィの帝王教育に耐えきれず、孤独な魂を抱える。

その孤独な心に、トートが寄り添う。

 

シシィは、フランツ・ヨーゼフに最後通牒を突きつけ、ルドルフをゾフィから取り戻すが、シシィには母としての自覚が育っておらず、ただルドルフをほったらかしにしただけだった。

シシィは何かに取り憑かれたように旅を続け、夫にも息子にも無関心だった。

 

ドイツではナチスが台頭し、激動の近代史が幕を開けようともがいていた。

オーストリア国民もハンガリー国民も貧しく、王家への批判、とりわけエリザベートの華麗な生活に対して不平不満が噴出していた。

 

国家転覆を狙う無政府主義者たちは決起の瞬間を今や遅しと待ち構えていた。

孤独なルドルフは、彼らのお先棒を担がされ、集会しているときに逮捕された。

「父を裏切った」とフランツ・ヨーゼフは激怒。

母のシシィに助けを求めるが拒絶される。

結局、ルドルフはトートに身を委ね、自殺してしまう。

 

この自殺には暗殺説もあり、謎も多いようですが、シシィはこのあと、生涯喪服を着続けたと言います。

 

シシィはフランツ・ヨーゼフが懇願しても、ウィーンへは戻らず、皇帝はハプスブルグ家崩壊の悪夢を見る。

トートはルキーニに短刀を渡し、ルキーニはエリザベートを暗殺した。

 

黄泉の国で、シシィはトートと再会し、トートの愛を受け入れた。

 

あらすじはこんな感じですが、第1次世界大戦に向かう世紀末と、ハプスブルグ家の最後にエリザベートという美貌の皇后を主人公に持ってきたところがこのミュージカルの凄いところですね。

そして、エリザベートに恋をした死神と、心ならずもその恋敵になってしまったオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ。

エリザベートは幼くて、恋の意味すら知らない。

父のように自由に生きたいと願う小鳥のような少女。

 

後世の人は、エリザベートは目覚めた女性ともてはやす風潮もあるようですが、彼女はただわがままで自由奔放な少女のままだったような気がします。

しきたりも義務も学ぼうともしない。

でも、そんな彼女をフランツ・ヨーゼフはひたすら愛したのですね。

 

嫁と姑は、ここでも犬猿の仲。

この事実は、古今東西を問いません。

 

エリザベートが、ダイエットに励み、あらゆる場所を旅して、どんなに求めても求めても自分が描いていた自由や幸福は得られなかった。

「パパのようになりたかった、なれなかった」と歌う歌は、本当に切なかったです。

 

そして、愛を知らずに育ったルドルフがトートと歌い踊る「闇は広がる」は、今も私の頭の中で鳴っているのですが、とても感動しました。

父に認められたい、母に愛されたいと愛を求め続けたルドルフが、すべてに絶望したときに寄り添ったのは死神だけ。

本当にかわいそうでした。

 

リピーターチケットも買ってしまいました。

楽しみです。

 

文楽「加賀美山旧錦絵」

2012-04-28 09:15:24 | 舞台

ー文楽「加賀美山旧錦絵」ー国立文楽劇場

 又助住家の段
 草履打の段
 廊下の段
 長局の段
 奥庭の段

 

☆主な出演者

竹本住大夫 竹本源大夫 鶴澤寛治 鶴澤清治 吉田簑助 吉田文雀 ほか

 

文楽は、我が国の重要無形文化財で、世界無形遺産に登録されていています。

音楽的な語りで物語が語られ、無表情な人形遣いが人形を動かして、その物語を表現するという演劇形態です。

その三位一体が、文楽の芸術性を高めています。

義太夫、三味線、人形遣い、そして人形たちが創りだす世界観は、他に類を見ない独特なものです。

 

それなのに、人形を使うため、子供から大人までとてもわかりやすく、ストーリーも日本的でシンプルです。

字幕で語りが紹介されていました。

ますますわかりやすかった。

 

今回の「加賀美山旧錦絵」は女忠臣蔵ともいわれている演目ですが、果たして…!!

 

「又助住家の段」は、長いお話の前半の結末でした。

でも、このお話そのものを知らないので、主人公だと思っていた鳥居又助やその子又吉、妻のお大までが悲劇の最期を遂げてしまうので、これからどうなるのかと不安に思いました。

この前の段では、又助が主人求馬(もとめ)のためと思い、政敵を殺したと思っていたのが、実は、その政敵の謀で、なんと主君を殺めていたのです。

そうとは知らない又助と求馬の元へ、その事実を知らせに家老がやってきて、この悲劇が起こるという筋書きです。

 

前の段から演じるには、時間が足りないのでしょうね。

江戸時代の文楽は、朝から晩まで上演されていたようです。

芝居茶屋があって、途中で休憩したり。

今の相撲見物を考えたら、想像しやすいでしょう。

興行期間が決まっていて、朝から取り組みがあるし、お茶屋さんが仕切って枡席なんかにお弁当を用意したり、それがもっと賑やかだったはずです。

 

次から続く「草履打の段」「廊下の段」「長局の段」「奥庭の段」が、国元のお屋敷で起きるお家騒動のお話でした。

 

この後半の主人公が桐竹勘十郎さんが操られる召使いのお初という人形です。

「廊下の段」から登場して、最後は髪振り乱しての大立回り。

女性ながら、忠君の功を上げるお話です。

義太夫さんの熱演、勘十郎さんの冷静な横顔、人形の感極まったような演技。

文楽の魅力を十分伝えて、あまりある出し物でした。

様式美として、完成された舞台だと思いました。

 

人形が本当に美しく、また、人間ではあり得ないような動きをするので、驚きに満ちています。

舞台装置も美しくて、情感たっぷりでした。

 

せっかく大阪に住んでいるんだから、もっと気軽に見に行きたいと思いました。


劇団☆新感線「シレンとラギ」

2012-04-27 11:00:04 | 舞台

ーシレンとラギー劇団☆新感線大阪公演初日

 

スタッフ&キャスト

作=中島かずき 演出=いのうえひでのり 企画・制作=劇団☆新感線・ヴィレッジ

藤原竜也(ラギ) 永作博美(シレン) 高橋克実(ゴダイ) 三宅弘城(ギセン) 北村有起哉(シンデン) 石橋杏奈(ミサギ) 橋本じゅん(ダイナン) 高田聖子(モンレイ) 粟根まこと(モロナオ) 古田新太(キョウゴク)

 

チケットを取ってくれたA子ちゃんに感謝。

よく、初日のしかも7列目、よく取れたよねー。感動!!ありがとう!

 

藤原竜也、劇団☆新感線に出演、初めてだって!

新鮮ですねー。

そして、ヒロインは永作博美。

期待度が高まります。

 

もちろん、時代も国も架空ですが、北の王国、通称幕府と南の王国のお話。

何やら、南北朝時代の香りも…。

いきなり、北の王国のギセン将軍(三宅弘城)の暗殺未遂から物語は始まりました。

 

ギセンは王と言えども、実権は執権のモロナオ(粟根まこと)とその一族が握っていた。

キョウゴク(古田新太)は侍所の官領として、息子で守護頭を勤めるラギ(藤原竜也)とともに、宮廷の警護に当たっていた。

曲者がギセンに襲いかかったそのとき、キョウゴクやラギとともに、曲者に向かって行った女性がいた。

暗殺専門族・狼蘭の毒使いシレン(永作博美)だった。

 

シレンが20年前、毒殺したはずの南の国王ゴダイ(高橋克実)が生きているというスパイからの報告に、キョウゴクはシレンとラギをゴダイ暗殺に差し向けた。

ゴダイは、かつてはキョウゴクやモロナオと手を組み、新しい世の中を模索していたのだが、そのカリスマ性から人々から宗教の教祖と崇められ、独裁者となり、キョウゴクやモロナオは北の王に仕えたのだ。

シレンはキョウゴクの命令で、ゴダイの愛妾となって入り込み、毒を盛って自然死に見せたのだが、20年経ち毒の威力が消えてゴダイは目覚めたのだ。

しかし、かつてのカリスマ性は失われ、ふぬけのような状態だった。

暗殺という、大きな任務を持っていても、ラギはシレンを慕うが、シレンは非情な人殺しの一族。

ミッション遂行のため非情な試練が二人を襲う。 

 

南の国のゴダイが唱える宗教は、神がなく、教義だけが存在する宗教。

ここが、この演劇のテーマ、肝だと思いました。

神無き国の物語。

でも、カリスマを求めている愚かな民衆。

今の日本ですよね。

 

私は、結局このゴダイだけが、人間としての筋を通して生き抜いた人物に見えました。

あと、ギセンもギャップのある人物として興味深く、権力者が一番権力を嫌っていたという設定が面白かったです。

 

シレンとラギの関係は、まるでギリシャ悲劇のように救いがなく、親子の情も、人と人との信頼感もどんどん裏切られ、人がばたばた倒れ、血に染まり、とても激しいストーリーでした。

 

いつもの新感線みたいな軽いノリはなく、最後までどろどろとしたままの内容でした。

踊りも音楽も少なかったと思いました。

 

前半の盛り上がりのようには、後半はいかなくて重いまま、終わってしまいました。

 

初日のせいか、もたもたしたシーンもあったし、セリフを噛んでいたのも残念だったなあ。

回想シーンがところどころに挿入されて、盛り上がった気分が沈静化されるのも、難しいところ。

これが、もっとスピーディーに流れて行ったら、いつもの躍動感が出てくるのでしょう。

 

神無き国で、信じられるものは何か?

愛もダメで、親子の情もダメ、となったら、何を信じて生きるのかなあ?

とりあえず、自分のできることをしましょう、ということかな?

辛いわあ。

愛だけは信じられるという結末では、今の世の中通らないのでしょうね。

 


九月松竹大歌舞伎

2011-09-14 08:41:10 | 舞台

ー九月松竹大歌舞伎ー

平成23年9月2日~26日

大阪新歌舞伎座

 

〈昼の部〉

御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)

男女道成寺(めおとどうじょうじ)

人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)

 

〈夜の部〉

双蝶々曲輪日記 引窓(ふたつちょうちょうくるわにっき ひきまど)

お祭り

一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)

 

【感想】

1月から突発性難聴で療養されていた中村勘三郎さんが元気に舞台に復帰されたと言うニュースを聞き、この公演を楽しみにしていました。

やはり病み上がりと言うことなのか、出番は少ないように思いましたが、その分、二人の息子さんたち、勘太郎さんと七之助さんが立派に努めておられました。

 

大阪上本町駅前の新歌舞伎座に行ったのも初めてでした。

もう1周年なんですね。

幟がたくさんあがって、芝居ムードを高めていました。

 

【御摂勧進帳】

歌舞伎十八番の勧進帳とは全然違う演出の勧進帳でした。

弁慶(中村橋之助)が、すごくハデな衣装、顔の隈取りもけばけばしく登場し、その怪力や豪快さをマンガチックに表現します。

スカットする面白さでした。

 

【男女道成寺】

「京鹿子娘道成寺」を花子(中村七之助)、桜子(中村勘太郎)の二人の白拍子が左右対称に踊り、そののち、桜子は狂言師だと正体がばれ、二人がいろんな踊りを披露してくれます。とてもあでやかな舞踊でした。

 

【人情噺文七元結】

これは、シネマ歌舞伎で見たことがありました。

落語からお芝居にしたものだそうです。

 

左官の長兵衛(中村勘三郎)は博打にはまり、その年の大晦日も越せないほどの貧乏所帯。

見るに見かねた娘のお久(中村志のぶ)は、吉原の遊郭角海老に行き、身を売ろうとしていました。

お久を迎えに来た長兵衛は、女将の情けで、50両を借りて借金を返し、次の年の大晦日に娘を迎えにくる約束をしました。

ところが帰り道、身投げしようとしている若い手代の文七(中村勘太郎)に出会い、そのお金を困っている文七にやってしまう。さて、長兵衛と娘お久の運命はー。

 

何度見ても泣かされてしまいます。お久のけなげさ。

何度見ても大笑いです。長兵衛の妻のお兼(中村扇雀)と長兵衛のやりとり。

こんな人情噺に涙もろくなったわ。

歳かしら?

 

【双蝶々曲輪日記 引窓】

中秋の名月の頃の、人情噺です。

 

元は曲輪で働いていたお早(中村七之助)は南方十次兵衛(中村扇雀)に嫁ぎ、十次兵衛の母のお幸(中村歌女之丞)と暮らしていた。

そこへ、お幸が幼いときに養子に出した実子の濡髪長五郎(中村橋之助)が、人を殺めて逃げて母を訪ねてきます。

そうとは知らない十次兵衛、念願であった侍になり、お尋ね者の人相書きを持って意気揚々と帰ってきました。

しかし、その人相書きはお幸の実子、濡髪の顔。

お早とお幸はなんとか濡髪を逃がそうとするのですが…。

 

【お祭り】

中央のセリから中村勘三郎さんに押さえつけられた橋之助さんが登場。

客席から大きな拍手です。

勘三郎さんが客席に向かって、挨拶をすると「待ってました!」の声がかかりました。

「待っていたとはありがてえ」と言って、また客席は歓声で包まれました。

粋でいなせな鳶頭に扮した勘三郎さん。

江戸情緒たっぷりな踊りを披露して、元気なことをアピールしてくれました。

本当に復帰してくださって、よかった!!

 

【一本刀土俵入】

これも、あらすじくらいは知っていました。

 

水戸街道の取手の宿にある茶屋旅籠「安孫子屋」の表をふらふと通る駒形茂兵衛(中村勘太郎)。

ふとしたことから、そこで働く酌婦のお蔦(中村七之助)から恩を受け、もう一度江戸に戻って相撲の修行をすると誓いました。

10年後、茂兵衛は博徒となって、お蔦を訪ねて戻って来ました。

取手の宿には安孫子屋はなく、お蔦の消息も知れません。

いかさま博打をした辰三郎(中村松也)と間違えられ、それがお蔦の主人と知った茂兵衛は、追っ手から、お蔦一家を逃がすのでした。

 

最初は、純真無垢でお腹をすかせてふらふらしていた茂兵衛が、後半は渡世人としてしゃきっと現れるところが見せ場です。

 

お蔦が、お酒を飲みながら茂兵衛を励まし、ありったけのものを与えるところは、涙なしでは見られません。

また、ラストのお蔦は、自分の善行も忘れてしまっているところがリアルだと思いました。

それでも、恩を返そうと、茂兵衛が悪者をやっつけて、「これが茂兵衛の横綱の土俵入りです」という決めゼリフもかっこ良く決まっていました。


髑髏城の七人

2011-08-26 11:46:50 | 舞台

ー髑髏城の七人ー

作=中島かずき 演出=いのうえひでのり キャスト=小栗旬(捨之介) 森山未來(天魔王) 早乙女太一(無界屋蘭兵衛) 小池栄子(極楽大夫) 兵庫(勝地涼) 仲里依紗(沙霧) 高田聖子(贋鉄斎) 粟根まこと(天部の将監) 河野まさと(三五) 千葉哲也(狸穴二郎衛門)

 

【解説】

1990年の初演以来4回目の上演。

劇団☆新幹線の「いのうえ歌舞伎」と呼ばれるシリーズで、「阿修羅場の瞳」とともに代表作の一つ。

前回は7年前には同じ年に、演劇性を重視した「アカドクロ」(主演=古田新太)と、エンターテインメントを強調した「アオドクロ」(主演=市川染五郎)の2本を上演したことで話題となった。

今回は、いままで一人二役だった捨之介と天魔王を、それぞれ小栗旬と森山未來が演じている。

エグゼクティブプロデューサーの細川展裕によれば通称「ワカドクロ」ということになる。

 

【あらすじ(ネタバレあり)&感想】

本能寺の変で織田信長が明智光秀に討たれて後8年後。

天下統一を果たした豊臣秀吉の死はいず届いていない関東では、天魔王(森山未來)と呼ばれる仮面の男が率いる髑髏党が、天下統一を企て、勢力拡大のために殺戮を繰り返していた。

 

髑髏党が略奪行為で民衆を苦しめているのを、兵庫(勝地涼)がリーダーの関東荒武者隊がみつけ、争いとなった。

あやうく、荒武者隊がやられそうになったところに、捨之介(小栗旬)と名乗る若者が現れ、髑髏党を追い払った。

 

兵庫たちは、村の生き残りと捨之介を無界の里へ案内した。

無界の里は無界屋蘭兵衛(早乙女太一)が仕切る色里で、噂に高い極楽大夫(小池栄子)が、女たちと暮らしていた。

 

そこには、諸国流浪のやせ牢人・狸穴二郎衛門(まみあなじろうえもん=千葉哲也)も逗留していた。

また、髑髏党に追われて身を隠している沙霧(仲里依紗)もいた。

 

沙霧が髑髏党に襲われ、蘭兵衛と捨之介がそれを助けるが、顔を合わせた二人は知り合いのようだった。

そこに天魔王が現れて、3人の過去が明らかになる。

 

3人は、いずれも織田信長に仕えていた。

敬愛してやまない、目標とする人が突然いなくなり、3人はそれぞれ生き延びたものの、生き方や考え方はまるで違っていた。

天魔王は、信長の意志を継いで天下取りの野望を抱き、蘭兵衛は色里という裏の世界で生きることを選び、捨之介は世捨て人の道を選んだのだった。

 

沙霧は、築城術に長けた部族の娘だった。

髑髏城の築城にかり出され、その仕事が終わると、部族のみんなは殺された。

沙霧は絵図面を持って逃げ出し、追われる身となったのだった。

 

捨之介と蘭兵衛は無界の人々を救うために、天魔王と闘うことを決めた。

 

捨之介は、天魔王のつけている鎧をも斬れる刀を求めて、贋鉄斎(高田聖子)を訪ねた。

そして、斬鎧剣の制作を頼み、胸騒ぎを感じて無界に戻った。

 

捨之介に、単独行動はしないようにと固く言われていたにもかかわらず、蘭兵衛は単身髑髏城に乗り込み、天魔王と面談した。

天魔王に薬を飲まされ、操られてしまう。

そして、二人は無界へ乗り込み、無界の人たちを惨殺する。

 

このとき、狸穴二郎衛門は徳川家康の仮の姿であることが判明。

服部半蔵が助けにきて、城に帰るように促される。

 

生き残った兵庫、極楽大夫と捨之介、沙霧、贋鉄斎、そして、何度も裏切りを繰り返して生き延びた三五(河野まさと)たちは、天魔王を倒すべく、髑髏城に向かうのだった。

 

ここからは、劇団☆新幹線の真骨頂、アクションの連続になります。

蘭兵衛の最期、天魔王の最期など、見せ場の連続です。

すごい迫力でした。

 

久々の舞台鑑賞です。

今回は友達から誘ってもらったのですが、この公演チケットがとても取りにくかったそうです。

これだけの人気者の若手を揃えたのだから、当然ですね。

席は、一番後ろでした。

でも、劇の迫力は損なわれませんでした。

面白かったです。

誘ってくれたA子ちゃん、ありがとう。

 

私は無界屋蘭兵衛の末路が哀れでなりませんでした。

薬を飲まされたとはいえ、困った人たちの駆け込めるアナーキーな無界を作った人が、天魔王を守るために命を落とす最期は、なかなか承服できない気がしました。

せめて最期は正気に戻って、極楽大夫の腕の仲で息を引き取って欲しかったなあ。

 

天魔王のぶれない悪人ぶりは、とても魅力的でした。

そして、その最期はひょうきんで面白かったです。

頑丈な城の中でせこい策略ばかり練っている人間は、小心者の弱虫に決まっています。

そこのところも、うまく表現されていました。

 

そして、主役の捨之介。

超人的ヒーローじゃないところがよかったです。

まだまだ青臭くて、伸びしろが感じられるのもご愛嬌ですね。

 

私の一番好きなキャラクターは兵庫だなあ。

一本気で、きれもよくて、楽しい人物でした。

農民出身だけど、一番武士らしいと思いました。

 

再演を繰り返しているだけあって、完成度も高く、人気が出るのも納得でした。

楽しかったです。

 

なお、大阪公演は8月24日で終了しています。


世界遺産薬師寺 奉納大歌舞伎

2010-08-03 09:42:27 | 舞台

ー世界遺産薬師寺 奉納大歌舞伎ー

 

世界遺産の薬師寺で催された奉納大歌舞伎「船弁慶」=2日夜、奈良市、筋野健太撮影

元の記事はこちら。

http://www.asahi.com/showbiz/stage/kabuki/OSK201008020134.html

 

平城遷都1300年祭を記念した「世界遺産薬師寺 奉納歌舞伎」を見に行きました。

薬師寺に行くのはおよそ30年ぶりです。

たしか、1976年の金堂の落慶法要に行ったんだと思います。

奈良でお勤めしていたので。

うわあ、34年ぶり?!

その時は、職場の上司と一緒で、お寺にはまったく興味もなく好奇心だけで行きましたが、その時の金堂で、歌舞伎を見るなんて、不思議な気持ちです。

 

開演前の境内の様子。

 

始めの演目は、鼓と笛で暑さを鎮めるような「一調一管」。

 

観客席がシーンとなったところで、橋懸かりから弁慶(中村勘太郎)が現れました。

「舟弁慶」の始まりです。

 

「舟弁慶」

能楽の演目である「舟弁慶」を明治18年に河竹黙阿弥(作詞)・三世杵屋正二郎(作曲)・九世市川団十郎(主演)により、東京新富座で初演された。団十朗が制定した「新歌舞伎十八番」の一つ。昭和に入り、六世尾上菊五郎が演出を加えて完成させたものが、現在演じられている。

 

既に太陽は沈んでいましたが、境内には真昼の暑さが淀んでいました。

観客も汗を拭きながらの鑑賞となりましたが、舞台におられる演者の皆さんは、どれほどか

 

次に現れたのは家来を伴った義経(中村七之助)

義経は、平家を壇ノ浦まで追いつめ、滅亡に至らせた功労者でしたが、義経の兄頼朝は梶原景時らの讒言(ざんげん)を真に受けて、義経討伐を臣下に命じたのです。

落人となった義経は、少ない家臣を連れて、尼崎の大物の浦から船で西国へ落ちていくところです。

 

義経は、愛妾静御前(中村勘三郎)を伴っていましたが、弁慶はこれからの厳しい道のりを考え、静は都へ帰らせた方がいいと進言します。

その進言を義経は受け入れますが、静に弁慶が告げても、静は義経の心変わりを心配して応じません。

義経から直々、静の身を案じてのことだと聞かされ、都へ帰ることを納得します。

 

静は義経の求めに応じて舞を舞い、辛い別れをします。

 

船頭に導かれて一行は船に乗りますが、怪しい雲行きです。

ひるむ義経を叱咤して、弁慶は船を出航させました。

沖に出ると、波が荒れてそこには凄まじい形相の知盛の幽霊が現れました。

 

前シテの静御前の静と、後シテの知盛の霊の動を、中村勘三郎が演じ分けるところが見所です。

 

知盛の霊が舞台の真ん中で荒れ狂うと、金堂の奥の本尊薬師如来を始めとする三尊像が、優しいまなざしで舞台を見ている姿が、浮かび上がりました。

 

義経はひるまず刀を振り上げて勇猛ですが、弁慶は必死で祈り、知盛の霊を退散させました。

知盛の引っ込みが、とても感動的でした。

勘三郎さん、素晴らしいです。

 

熱い(+暑い)舞台の余韻を残しつつ、役者たちが再び舞台に現れ、アンコールに応えてくれました。

 

玄裝三蔵院も公開されていたので、平山郁夫さんの「大唐西域壁画」も鑑賞して帰りました。

平山郁夫さんも、お亡くなりになったのですね。

 

3日も同じ演目を鑑賞しました。

加筆補足します。

 

 

私が昨日金堂が舞台だと思い込んでいた建物は、大講堂の間違いでした。

浮かび上がる仏様は薬師三尊像ではなく、弥勒三尊像でした。

 

ここで薬師寺のご説明をしましょう。

(ウィキペディアやお寺のホームページを参考にまとめてみました)

 

薬師寺は天武天皇9年(680年)、天武天皇の発願により、飛鳥の藤原京(奈良県橿原市城殿(きどの)町)の地に造営が開始され、平城遷都後の8世紀初めに現在地の西ノ京に移転したものです。

「日本書紀」によると、680年、天武天皇が後の持統天皇となる妻の鵜野讃良(うののさらら)皇后の病気平癒を祈願して、薬師寺建立を発願したとされます。

 

金堂には薬師三尊像が祀られています。

中央に薬師如来、向かって右に日光菩薩、左には月光菩薩が柔らかな表情でたたずんでおられます。

昨日は、舞台が終わった後、金堂にお参りすることができました。

 

天武天皇は寺の完成を見ずに没し(686)、伽藍の整備は持統天皇、文武天皇に引き継がれました。

持統天皇は、692年に最勝会で、天武天皇の菩提を弔うために阿弥陀浄土を写した大繍仏像を祀られました。

この薬師寺は、天武、持統の夫婦愛がこめられたお寺ということです。

 

現在講堂に祀られている仏様は弥勒三尊像です。

中央に弥勒菩薩、向かって右は法苑林菩薩[ほうおんりんぼさつ](左脇侍)で、左は大妙相菩薩[だいみょうそうぼさつ](右脇侍)です。

 

8月は、お盆の月です。

亡き人を偲ぶ月。

暑いけれど、この時期にお寺にお参りされる方も多いことでしょう。

仏様にお参りして、自分の心の中を顧みることも必要かもしれません。



福笑と異常な仲間たちvol.3~アブノーマル人物伝~in繁昌亭

2010-04-02 14:07:21 | 舞台
ー福笑と異常な仲間たちvol.3~アブノーマル人物伝~ー繁昌亭





ものすごいタイトルの落語会に行ってきました。
ゲストが加川良さん。
どんな落語会になるのか、とっても楽しみでした。

まず最初に笑福亭たまさんの「くっしゃみ講釈」。
たまさんの落語は始めてでしたが、すごく面白かった。
若いと思うけど、福笑さんのお弟子さんで、京大出身ですって。

のぞきからくりの八百屋お七の段をたっぷり語ってくれました。
講釈の部分もしっかりしていて、めりはりがよかったです。


笑福亭福笑さん

そして、福笑さんの「刻うどん」。
聞き慣れた演目だけど、やはりベテラン。
おかしかったです。

中入り後いよいよ良さん。


撮影禁止のため、イメージ。この写真は去年末ペーニャのライブで撮影しました。

私は前から2番目の席だったので、かなり見上げる形。
客席も舞台もすごく明るいので、かなり歌いにくかったでしょうね。
緊張が伝わって来ました。
後ろの女性は「この人歌手?」と言っていました。
でも、良さんのファンもたくさん来ていたようで、アンコールとなり「教訓」では、客席からコーラスが入り、良さんも気を良くしてリフレインしました。

さて、最後は福笑さんの創作落語「宗教ウォーズ」。
最近の政治の話から始まって、社会風刺、荒唐無稽、しっちゃかめっちゃか、最後は大戦争へー。
これぞ福笑の魅力炸裂の面白さでした。

最近、夫が桂枝雀さんのDVDの全集を買って、ヒマな夜は二人で見ています。
落語って、ほんと面白いですね。

そして、今回の異文化交流も、微妙な緊張感が楽しかったです。
繁昌亭は満員、大盛況でした。


京の年中行事 當る寅歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎

2009-12-21 11:49:56 | 舞台
ー京の年中行事 當る寅歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎ー

今年も「吉例顔見世興行」を見に行くことができました。
ぐっと冷え込んだこの日、京都南座の前だけは、華やいでいました。
今回は夜の部だけの鑑賞となりましたが、それでも、浮き世を忘れさせてくれる夢のようなお芝居で、「さあ、師走を乗り切って新しい歳を迎えよう」という新鮮な気持ちになりました。



第一 天満宮菜種御供(てんまんぐうなたねのごくう)
   時平の七笑
右大臣の菅原道真が、見に覚えのない謀反の疑いをかけられ、太宰府に流されることが決定したときの様子を表しています。
道真の前では弁護する様子をみせる左大臣藤原時平、実はこの人こそが、道真を無実の罪に陥れた張本人だったのです。
みんなが去って、一人になった時平の七笑いが見所です。

第ニ 新古演劇十種の内 土蜘(つちぐも)
菊五郎家に伝わる演目のひとつだそうで、能舞台を模した展開なので、とても様式化されています。
源頼光の土蜘蛛退治のお話でした。

第三 助六曲輪初花桜(すけろくくるわのはつざくら)
三浦屋格子先の場



江戸随一の男伊達といえば、この人!!花川戸助六でしょう。
大江戸博物館にも、このシーンがディスプレイされていました。(写真はこの夏「大江戸博物館」で撮影したものです。このシーンは市川団十郎さんが演じた時の再現です。この日の舞台はもっとたくさんの花魁が並んで、華やかでした)

「江戸の古典歌舞伎を代表する演目のひとつ。「粋」を具現化した洗練された江戸文化の極致として後々まで日本文化に決定的な影響を与えた。歌舞伎宗家市川團十郎家のお家芸である歌舞伎十八番の一つで、その中でも特に上演回数が多く、また上演すれば必ず大入りになるという人気演目である。」(ウィキペディアより)

吉原三浦屋の傾城揚巻が、自分の間夫といってはばからないいい男。
ぱっと見は軽薄そのものの遊び人ですが、本性は、親の仇を追う曽我兄弟の弟五郎でした。
花魁たちの華やかな衣装にも負けない男っぷり。
片岡仁左衛門さんが演じる助六は、文字通り、水も滴るいい男!!
客席のすべての女性の心をぎゅっと掴んでしまうようなセクシーまなざしと身のこなし、立ち姿でした。
私たち世代には「孝夫さん」の方が親しみがありますが、えーっ、おいくつ?と聞きたくなるほどの艶っぽさ。
いつまでも女性ファンの心を掴んで離さない役者さんです。
ステキ!!

傾城揚巻には坂東玉三郎さん。
その衣装のあでやかさには、息をのんでしまいました。

花魁白玉に菊之助さん。
こちらも、負けず劣らず美しかったです。

第四 石橋(しゃっきょう)
これは、獅子の舞踊。
中村翫雀さんと片岡愛之助さんが、それぞれ白と赤の獅子のカツラをつけて、景気よく頭を振りながら踊り狂いました。
その激しさに圧倒され「来年も頑張ろう!」という元気をもらって、みなさんいいお顔で家路につかれていました。

これぞ、顔見世の醍醐味だと思いました。

来年こそ、いい年になりますように!!