ー終戦のエンペラーーEMPEROR
2012年 日本/アメリカ
ピーター・ウェーバー監督 岡本嗣郎=原作 マシュー・フォックス(フェラーズ准将)トミー・リー・ジョーンズ(マッカーサー元帥)初音映莉子(アヤ)西田敏行(鹿島大将)羽田昌義(高橋)火野正平(東條英機)中村雅俊(近衛文麿)夏八木勲(関屋貞三郎)桃井かおり(鹿島の妻)伊武雅刀(木戸幸一)片岡孝太郎(昭和天皇)コリン・モイ(リクター少将)
【解説】
岡本嗣郎のノンフィクション「陛下をお救いなさいまし河井道とボナー・フェラーズ」が原作の歴史サスペンス。進駐軍を率いて終戦直後の日本に降り立ったマッカーサー元帥から、太平洋戦争の責任者追究を命じられた男が衝撃の事実にたどり着く姿を息詰まるタッチで追う。監督に『ハンニバル・ライジング』のピーター・ウェーバー、出演に『メン・イン・ブラック』シリーズのトミー・リー・ジョーンズ、日本を代表する俳優西田敏行ら、国内外の実力派が結集。終戦をめぐる謎の数々に肉迫した物語に加え、日米の名優たちが見せる妙演も見ものだ。
【あらすじ】
1945年8月30日、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の司令官としてダグラス・マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)が日本に上陸。彼は日本文化に精通している部下ボナー・フェラーズ(マシュー・フォックス)に、太平洋戦争の真の責任者を探し出すという極秘任務を下す。わずか10日間という期限の中、懸命な調査で日本国民ですら知らなかった太平洋戦争にまつわる事実を暴き出していくボナー。ついに最大ともいうべき国家機密に近づくが、彼と敵対するGHQのグループや日本人たちの一団が立ちはだかる。(シネマトゥデイ)
【感想】
この作品は、私の周りでは静かなヒットになっているようです。
見てよかったという友達は、「アメリカの映画だから、きっと日本を悪く描いてあると、あまり期待していなかったんだけど、よかったわ」と言っていました。
私も見てよかったなあと、しみじみ感じた作品でした。
めったに買わないパンフレットも買いましたが、なかなか内容も充実していました。
フェラーズ
主人公はGHQ(連合国最高司令官総司令部)の一員として日本にやってきたボナー・フェラーズ(マシュー・フォックス)。
日本では知られていない人です。
彼は、アメリカで出会った日本人の恋人アヤ(初音映莉子)の面影を追う親日家で、司令官ダグラス・マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)に信頼されている部下でした。
アヤ
GHQの使命は戦争犯罪者をすみやかに拘束して国際軍事裁判にかけること。
「戦争の責任は誰にあるのか?」
当然その目は天皇(EMPEROR)にも向けられていた。
マッカーサー
さらにマッカーサーは、「日本を占領するのではなく、解放させるのだ」と強い信念を持っていた。
そして、この使命を果たして、次は大統領選へと野心にも燃えていた。
マッカーサーの直接の命令を受けて、フェラーズは天皇の戦争責任の証拠を集めようとする。
しかし、それは並大抵のことではなかった。
天皇は皇居に籠って近づけないし、その側近たちにも会うこともままならないありさま。
近衛文麿
巣鴨プリズンに収容されていた東条英機(火野正平)との接見から、近衛文麿(中村雅俊)に会い、戦争に至る日本の立場を主張される。
「イギリスや列強国のやってきたことと、どこが違うのだ!」
内閣の重鎮、木戸幸一(伊武雅刀)からは面会をすっぽかされる。
木戸幸一
この過程は、フェローズのアヤへの回想を交えながら、サスペンスタッチで描かれます。
日本的な白とも黒ともつかない証言に翻弄されながらも、ようやく天皇の側近関屋貞三郎(夏八木勲)に会うことができたのですが、結局真実は判らずじまい。
マッカーサーは、フェローズの白黒がついていないレポートを受け取ると、天皇に接見することを強く指示するのだった。
☆ネタバレ
天皇陛下とマッカーサーのツーショットの有名な写真。
あの写真が残っていると言うことが、この二人が直接会ったという何よりの証拠です。
そこで語られた陛下のお言葉、それは日本人なら心を揺り動かされる一言でした。
私も思わず感動の涙がポロリ。
それにしても、知らないことが多過ぎますね。
もっと、いろんなことをタブー視しないで、率直に事実を知り、話し合わなくてはいけません。
世界で唯一の被爆国であるにもかかわらず、アメリカの核の傘に守られている現実。
日本の矛盾が、私たちの心を迷わせます。
鹿島大将(西田敏行)が「日本人は滅私となれる。献身的になれるのだ」と言っていましたが、そのことが、隣国を恐ろしい気持ちにさせているのかもしれないなあとも思いました。
GHQが下した結論のお陰で、戦後の日本の急速な復興やそれに続く高度経済成長をもたらしたことは違いないけれど、日本的な心は忘れられているようです。
日本人としてのプライドや自信もなくしてしまったように感じます。
やはり、日本人が自信を取り戻し、国際社会で堂々と日本の主張ができるためには、終戦の頃のこの隠された歴史をしっかりと学び直す必要があるんではないかあと思いました。
何が真実で何がごまかしか、国民ひとりひとりがはっきりと判ったときに、日本の戦後が終わるのではないでしょうか?
ベルリン国際映画祭などで絶賛されたアレクサンドル・ソクーロフ監督作品「太陽」(2005年 ロシア/イタリア/フランス/スイス制作国 イッセー尾形主演)、やっと何がテーマだったのか判りました。
夢か現実かよく判らない作品でしたが、もう一度見直そうかなあ?
プロデューサーの奈良橋陽子さんはこの作品に登場する関屋貞三郎の孫に当たるそうです。
また、共同プロデューサーを務めた奈良橋さんの息子、野村祐人さんには曾祖父に当たり、そういう人たちが作った作品だからこそ、日本の描き方にがっかりさせられることがなかったのかなあと思いました。
これが遺作となった夏八木さん。
中村勘三郎さんに背中を押されて天皇を演じたという片岡孝太郎さん。
素晴らしかったです。