マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

終着駅 トルストイ最後の旅

2010-09-28 10:18:14 | 映画ー劇場鑑賞

ー終着駅 トルストイ最後の旅ーTHE LAST STATION

2009年 ドイツ/ロシア 

マイケル・ホフマン監督 ヘレン・ミレン(ソフィヤ・トルストイ)クリストファー・プラマー(レフ・トルストイ)ジェームズ・マカヴォイ(ワレンチン)ポール・ジアマッティ(チェルトコフ)アンヌ=マリー・ダフ(サーシャ・トルストイ)ケリー・コンドン(マーシャ)ジョン・セッションズ(ダシャン)パトリック・ケネディ(セルゲンコ)

 

【解説】

Dr.パルナサスの鏡』のクリストファー・プラマーと、『クィーン』のヘレン・ミレン共演の希有(けう)な愛の物語。ロシアの文豪トルストイとその妻の晩年をさまざまな角度からとらえる。この物語のキーマンとなる理想に燃えたトルストイの若き助手を、『ウォンテッド』のジェームズ・マカヴォイが好演。大作家の一番弟子と、一般的には悪妻として知られるトルストイの妻の確執と共に描かれる、年老いた夫婦の長年にわたる強いきずなに心動かされる。

 

【あらすじ】

ロシアの偉大な作家、トルストイ(クリストファー・プラマー)の妻(ヘレン・ミレン)は50年近く夫を献身的に支え続けてきた。その人生も終盤に近づいたころ、夫は弟子(ポール・ジアマッティ)と新宗教を興し、爵位も財産も捨てようとする。そんな折り、トルストイ信奉者の青年(ジェームズ・マカヴォイ)が助手として屋敷にやって来る。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

この作品は、文豪トルストイの晩年を描いています。

トルストイは1910年に82歳で旅先の駅アスターポヴォの駅長官舎で永眠しました。

 

なぜ、トルストイは伯爵で、しかも高齢なのに旅先で死ななければならなかったのかー世の中では「夫人との長年の不和に悩んで」と言われているようです。

では、トルストイの妻、ソフィアとはどんな人だったのでしょう。

人の家庭を除くような、女性週刊誌的な興味もわいてきます。

 

トルストイの妻は世界三大悪妻の一人と言われています。

ソクラテスの妻のクサンチッペ、モーツァルトの妻のコンスタンツェ、そして、トルストイの妻ソフィアだそうです。

 

この作品を見て驚いたのは、トルストイの屋敷の前にはたくさんのカメラマンやジャーナリストが取り囲んで、今で言うパパラッチ状態だったことです。

トルストイの私生活に大衆が興味を示していたことがよくわかりました。

すごい有名人だったのですね。

 

物語は、トルストイの一番若い弟子・ワレンチン(ジェームズ・マカヴォイ)の目から語られます。

トルストイの一番弟子・チェルトコフ(ポール・ジアマッティ)に採用されたワレンチンはトルストイが営む理想郷に部屋をもらい、馬車で2時間かけてトルストイ邸に通い始めました。

 

チェルトコフとトルストイ

 

チェルトコフとトルストイはトルストイ主義という非暴力や私有財産を持たないなどの理想を掲げて活動していましたが、トルストイの妻・ソフィア(ヘレン・ミレン)は伯爵夫人という立場もあり、トルストイが著作権の権利を国家に移譲すべきというチェルトコフの主張に反対していました。

 

☆ネタバレ

映画は、理想と妻への愛情の間で揺れるトルストイの姿を追いかけています。

ワレンチンは最初、トルストイの理想に心酔して、理想を実践しようとしますが、トルストイの「人生は愛」という基本の心情に触れ、また愛する女性も得て、どんどん人間的に成長していきます。

 

ソフィアの信頼を得るワレンチン

 

ソフィアの信頼も得て、最終的にはソフィアとトルストイをつなぐ重要な人物となっていくのです。

 

ソフィアとトルストイは愛し合っているのは間違いのない夫婦だと思いました。

しかし、トルストイは自分の言い出した理想主義から抜け出せないでいます。

自分の作品は自分のものなんだから、思う通りにさせて欲しいという気持ちだったのでしょう。

 

でもソフィアにも、夫の作品に対する愛情はありました。

劇中で「『戦争と平和』は6回も清書した」と言っていましたし、登場人物の言動についても意見したとワレンチンに語っていました。

ソフィアにとって作品は、自分たちの夫婦愛の歴史だと言いたかったのかもしれません。

それを子供たちに残したいのだと。

 

でも喧嘩になると、感情的になり、ヒステリックに怒鳴ったり暴れたりするソフィアは不利でした。

トルストイの秘蔵っ子である娘のサーシャも父に味方して、ソフィアからトルストイを遠ざけてしまいます。

 

その旅路の果てでのトルストイの死去となってしまったのでした。

 

愛し合っていても、こういう悲劇で終わってしまったトルストイ夫婦。

これも男のタテマエと女のホンネのすれ違いの物語でした。

 

熟年夫婦に見ていただきたい、興味深い映画でした。

おおかたの妻なら、ソフィアに味方するのではないでしょうか?

トルストイに対しては、自分の愛情を惜しみなく注ぐかわいい妻です。

ヘレン・ミレンがいじらしいくらいの心情を表現していました。


瞳の奥の秘密

2010-09-23 15:42:05 | 映画ー劇場鑑賞

ー瞳の奥の秘密ーEL SECRETO DE SUS OJOS/THE SECRET IN THEIR EYES

2009年 スペイン/アルゼンチン

フアン・ホセ・カンパネラ監督 エドゥアルド・サチェリ原作 リカルド・ダリン(ベンハミン・エスポシト)ソレダ・ビジャミル(イレーネ・メネンデス・ヘイスティングス)パブロ・ラゴ(リカルド・モラレス)ハビエル・ゴディーノ(イシドロ・ゴメス)カルラ・ケベド(リリアナ・コロト)ギレルモ・フランセーヤ(パブロ・サンドバル)

 

【解説】

長年勤めた刑事裁判所を退職した男が、25年前の未解決殺人事件をモチーフに小説を書き出すものの、過去の思い出に支配され苦悩するサスペンス・ドラマ。アルゼンチンを代表する名監督ファン・J・カンパネラが1970年代の祖国の姿を背景に、過去と現在を巧みに交差させ、一人の人間の罪と罰や祖国の軌跡を浮き彫りにする。また、本作は第82回アカデミー賞外国語映画賞を受賞。主演は、カンパネラ監督作品の常連リカルド・ダリン。衝撃的な秘密が暴かれるラストに言葉も出ない。

 

【あらすじ】

刑事裁判所で働いていたベンハミン(リカルド・ダリン)は、定年を迎え、25年前に起きた忘れ難い事件をテーマに小説を書くことにする。それは1974年、新婚生活を満喫していた女性が自宅で殺害された事件で、担当することになったベンハミンが捜査を始めてまもなく、テラスを修理していた二人の職人が逮捕され……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

この作品はアルゼンチンの司法制度が背景になっているし、25年前と今を行ったり来たりするので、たぶん社会情勢も変わっているのだろうと思います。

日本とは違うので、驚かされるところもありました。

 

ベンハミン(リカルド・ダリン)は連邦刑事裁判所の検察官だったが、定年を迎え、年金暮らしになった。

妻とも離婚して一人暮らし。

25年前の気になっている事件を小説化しようと思い立って、ペンを持つがなかなか進まない。

 

今は、検事となっているかつての上司イレーネ(ソレダ・ビジャミル)を訪ねる。

相変わらずの美貌だが、人妻となり母となっていた。

 

25年前の事件とは、新婚間もない美しい人妻が自宅でレイプされ殺された事件。

ベンハミンはその遺体に衝撃を隠せなかった。

 

犯人として最初に上がったのは、移民の職人たち。

ベンハミンのライバルのチームが、拷問ででっち上げた犯人だった。

 

若いベンハミンはこの不正行為に憤り、犯人逮捕に執念を燃やした。

しかし、1年が経ち、捜査本部は活動停止状態だった。

そんなときに、犯人逮捕を諦めることなく、独自の方法で犯人を捜していた被害者の夫のモラレス(パブロ・ラゴ)と出会い、彼の愛の深さに感動する。

 

自分自身もイレーネに思いを寄せているが、身分違いの恋に告白する勇気はなかった。

 

ベンハミンは、被害者のアルバムから被疑者をゴメスと特定して、裁判所の意向に反して独断で犯人を捜し続ける。

サッカー場での激しい逃走劇の末、犯人逮捕につなげるが、ゴメスは犯行を認めない。

イレーネの機転で犯人を自白に追い込み、これで一件落着かと思われた。

 

しかし、最初の犯人のでっち上げを暴いたことに腹を立てていたライバルチームは、この犯人が闇の組織と通じていることを利用するためにスパイとして無罪放免してしまった。

 

さらに、ベンハミンは命を狙われ、同僚のパブロが身代わりに殺された。

イレーネのはからいでベンハミンはブエノスアイレスを離れ、地方都市の検察官として働くこととなった。

 

ようやくこの事件を一冊の本にまとめ、モラレスを訪ねる。

モラレスは、田舎の一軒家でひっそりと暮らしていた。

ベンハミンはモラレスに「この事件の決着を、自分なりにどうつけたのか」とモラレスを問いただすと、モラレスは、「ゴメスを殺した」と告白する。

 

一旦は納得してモラレスの家を出たが、思い直して密かにモラレスの家に戻った。

そこでベンハミンが見たものとは…!!

 

ベンハミンはようやく25年前の出来事に結論を得て、いよいよイレーネに向き合う決心をする。

イレーネは自分の部屋に招き入れ、そこでかわされる愛の結論はどうなるのでしょうか???

 

私には、二人が愛し合う結末は考えられませんが。

だって、イレーネには夫と子供がいるもの。

25年前に告白すべきだったと思いますが。

 

モラレス

 

それはともかく、被害者の夫であるモラレスの心情はとても辛い。

モラレスは「死刑は望まない」という。

「死んで罪が消えると言うものではない。終身刑を望む」。

司法が裁いてくれないのなら、個人で裁くということになるかもしれない。

アルゼンチンの当時の国情もあるのでしょうが、あまりにも人命を軽く扱うことに愕然としました。

 

犯罪と被害者やその遺族と司法の関係。

100パーセント納得いく罰なんてありえないけど、どこかで納得しないといけない。

あんなに冷静に耐えていたモラレスが、最終的に選んだ罰。

それは、衝撃的なものでした。

 

映画の冒頭の美しい死体を思い出さずに入られません。

美しい妻を奪った犯人は、許せません。

モラレスの強い気持ちが伝わってきました。

 

俳優さんたちは、25年前も現在も同じ人が演じていました。

顔のアップが多かった作品ですが、メイクの技術はすごいですね。

現在のベンハミン


96時間

2010-09-23 15:37:38 | 映画ーDVD

96時間ーTAKEN

2008年 アメリカ

ピエール・モレル監督 リュック・ベッソン 、ロバート・マーク・ケイメン監督

リーアム・ニーソン(ブライアン)マギー・グレイス(キム)リーランド・オーサー(サム)ジョン・グライス(ケイシー)デヴィッド・ウォーショフスキー(バーニー)ケイティ・キャシディ(アマンダ)ホリー・ヴァランス(シーラ)ファムケ・ヤンセン(レノーア)ザンダー・バークレイ(スチュアート)オリヴィエ・ラブルダン(ジャン=クロード)ジェラール・ワトキンス(パトリス・サンクレア)

 

【解説】

『トランスポーター』シリーズなどのヒットメーカー、リュック・ベッソンが製作を務めた本格アクション・スリラー。96時間というタイムリミットの中、娘を誘拐された父親が警察の助けを借りず、たった一人で異国の敵からの奪還を試みる。名優リーアム・ニーソンが元工作員にして、娘を思う父親でもある主人公を演じる。怒とうのカーチェイスや銃撃戦、そしてマーシャルアーツなど、ノンストップで繰り広げられるアクションに注目だ。

 

【あらすじ】

17歳のアメリカ人少女キム(マギー・グレイス)が、初めての海外旅行で訪れたパリで何者かに誘拐される。その事件のさなかにキムと携帯電話で話していた父ブライアン(リーアム・ニーソン)は、自らの手で犯人たちから娘を奪還しようと決意。アルバニア系の人身売買組織だと判明した犯人一味のもとへ単身で乗り込む。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

娘を思うお父さんのお話。

年頃の娘を心配しつつも、コミュニケーションに悩むお父さんがこの作品を見たら、泣くでしょう!!

そういう心情にストーレートに迫って来る作品です。

 

ブライアン(リーアム・ニーソン)は元CIAの工作員。

忙しくて家庭を顧みなかったせいで、娘が5歳のときに離婚してしまう。

でも、年とともに娘への思いは募るばかり。

 

いまでは、大富豪の後妻となった元妻(ファムケ・ヤンセン)。

今日は娘のキム(マギー・グレイス)の17歳のお誕生日です。

娘が気に入るだろうとカラオケの機会をプレゼントしたら、なんと継父からはサラブレッドのプレゼント。

負けたね~。

娘の写真をアルバムに貼って、娘の幸せだけを祈る父でした。

 

 

あるとき、娘から夕食の誘い。

あらうれしやと出かけてみると、未成年なので海外旅行の許可が両親揃って必要ということ。

頑固親父は「友達と海外旅行なんて危な過ぎる」と反対しますが、かわいい娘の膨れっ面には勝てず許してしまいました。

 

☆ネタバレ

キムはパリに着く早々、若い男性に声をかけられて泊まるホテルを知られてしまいます。

この男は、なんと、アルバニア系の人身売買グループの一人でした。

父親と電話中に、友達が襲われ、キムも拉致されてしまいました。

この時の電話の少ない情報からブライアンは犯人組織に目星を付け、単身パリへ乗り込みました。

 

過去の犯罪履歴から、キムを助けるのは96時間がリミットです。

これが邦題の「96時間」の由縁。

 

ここから、はっきりいって、乱暴過ぎる、危な過ぎるブライアンの追跡が始まります。

リュック・ベンソンらしい、ノンストップアクションです。

思いは、キムを時間内に助け出すことなので、ほとんどのことには目をつぶれますが、かなり残酷な拷問もありました。

 

結論はもちろんキムを危機一髪のところで助け出すのですが、だからといって、キムと一緒に暮らせるとか、元妻とやり直せるとかという話ではないところが、なかなか切ない映画でした。

 

世の中のお嬢さん。

今はうざい父親でしょうが、思いはブライアンと同じです。

たまには、優しい言葉をかけてあげてね。

 

でも、妻の立場から見ると、娘は思春期を過ぎたらすでに女で、母と娘はそんな甘い関係じゃないし、家庭を顧みなかった代償はかなり大きいと思います。

ブライアンは確かに立派だったけど、「ありがとう」で終わってしまうわ。

父親って、母親よりずっとロマンチストなのかもしれませんね。

 

この映画、すごく評判がいいので、続編が決まったそうです。

楽しみです。

 

それにしても、妻の再婚相手がたいてい自分より金持ちか社会的地位の高い人というのが、ハリウッド映画ではお定まりのようですが、なんで?

日本ではあまり聞かない話ですよね。

アメリカではそれが普通なのかな?

再婚、ちょっとうらやましかったりして…

 


2012

2010-09-23 15:28:10 | 映画ーDVD

20122012

2009 アメリカ

ローランド・エメリッヒ監督 ジョン・キューザック キウェテル・イジョフォー アマンダ・ピート オリヴァー・プラット タンディ・ニュートン ダニー・グローヴァー ウディ・ハレルソン

 

【解説】

マヤ暦による2012年終末説を題材に、『インデペンデンス・デイ』『紀元前1万年』のローランド・エメリッヒが手掛けるディザスター・ムービー。地球滅亡を目の前になすすべもない人々が、巨大な自然災害から必死に逃げまどう姿を描く。偶然にも地球の危機を知ってしまうリムジン運転手に『ハイ・フィデリティ』のジョン・キューザックがふんし、大事な家族を守るために奔走する。大地震、火山噴火、津波など最新CG技術による迫力ある映像に注目。

 

 

【あらすじ】

2009年、リムジン運転手のジャクソン・カーティス(ジョン・キューザック)は、子どもたちとの旅行を楽しんでいた。ところが、偶然湖底に沈む巨大な研究施設を発見し、地球が滅亡に向かっていることを知る。この危機から逃れる手はないものかと模索するジャクソンだったが、すでに天災は地球上の至るところで起こり始め……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

終末もののハリウッド映画で、いつもアメリカが舞台で、世界はたいてい悲惨なままほっとかれるのが不満だったので、そういう意味では、この映画は世界各地にも配慮はあったと思ういます。

 

でも、この映画はいくらなんでもエゴイストだなあ。

 

☆ネタバレ

太陽のフレア現象で地球の核が熱せられて地殻変動が起きることを、2010年にインドの科学者が発見します。

それをアメリカ人の科学者(キウェテル・イジョフォー)が上院議員(オリヴァー・プラット)を通じてホワイトハウスに持ち込みます。

密かに始まる「ノアの方舟」計画。

各国の政府要人と、優勢遺伝子の持ち主と、各種類の動物、それに10億万ドルの乗船券を買える人たちが乗れる船です。

 

優性遺伝子の持ち主って何だろう。

金持ちだけってどういうことかしら?

まったくひどい計画です。

 

主人公(ジョン・キューザック)は作家で、離婚していて、今は大金持ちの運転手です。

ある日、子供たちとキャンプの約束の日、イエローストーン国立公園に来て不思議な予言をする男(ウディ・ハレルソン)に会います。

奇妙な現象が起きていて、政府のものものしい観測隊もいました。

予言の男は「地球の終末」を予言していますが、そのひとつひとつが当たって行きます。

 

主人公は決心して、その男の言う通り、子供たちと元妻とその恋人とともに、方舟に乗るために中国を目指すのですがー。

 

映画館で見たら、迫力だけで満足できるのかもしれませんが、とにかく全世界のほとんどが死ぬと言うのに、生き残る彼らの行動はすごく自分勝手に見えました。

「お先にどうぞ」という奥ゆかしさなんか、全然ないのね。

当たり前ですが…

私なんかは、ぼーっとしているから真っ先に死ぬ人のひとりでしょう。

そう思ってしまうので、なかなか映画の人たちに感情移入ができません。

 

科学者の言う通り、2年前に公表していたら、結局武器を持った強い人が脅してでもチケットを手に入れたでしょうし、その殺し合いの結果、人類が滅亡したかもしれません。

くじ引きで決めても同じことだったでしょう。

 

人間のむき出しの欲望なんて、わかりきっているので、見たくもありません。

 

いままでの終末ものは、それでも、自分を犠牲にしてでも他人を助ける人間の精神の気高さに感動したものでした。

 

この映画は、ただ自分勝手な人たちだけが生き残った感じがしました。


なくもんか

2010-09-23 15:25:00 | 映画ーDVD

ーなくもんかー

2009年 日本

監督=水田伸生 脚本=宮藤官九郎 キャスト=阿部サダヲ(下井草祐太)瑛太(下井草祐介)竹内結子(山岸徹子)塚本高史(金城大介)皆川猿時(トシちゃん)片桐はいり(みどり)鈴木砂羽(下井草祐子)カンニング竹山(山岸正徳)高橋ジョージ(桜井)陣内孝則(桂谷壮一郎)藤村俊二(ボーダーシャツの男)小倉一郎(中やん)光石研(加々美昌弘)伊原剛志(下井草健太)いしだあゆみ(山岸安江)

 

【解説】

幼いころに生き別れ、互いの顔も知らずに育った兄弟と、二人を取り巻く周囲の人々が織り成す人情コメディー。『舞妓 Haaaan!!!』の水田伸生監督、主演の阿部サダヲ、脚本の宮藤官九郎のトリオが再び顔を合わせ、不幸な生い立ちの兄弟の再会劇を、笑いと涙を交えて描く。お人好しの兄を阿部が演じるほか、人気お笑い芸人の弟を瑛太が、兄の幼なじみに竹内結子がふんする。家族のきずなをテーマにした、ハートフルな物語が感動的。

 

 

【あらすじ】

無茶苦茶な父に捨てられ、幼少期に生き別れた兄・祐太(阿部サダヲ)と弟・祐介(瑛太)は、互いの顔も名前も知らずに成長する。祐太は、東京下町の商店街でハムカツが名物の店を切り盛りし、祐介はお笑い芸人として超売れっ子になっていた。そんなある日、祐太のもとに、初代店主の一人娘・徹子(竹内結子)が突然帰って来る。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

クドカン(宮藤官九郎)ワールド炸裂の楽しい人情劇でした。

人情劇は大好きだけど、サービス過剰だなあ。

そこまで小ネタで笑いを取らなくても…と思いました。

 

キャストもはまっていました。

竹内結子はコメディもうまいですね。

あと、脇役も適材適所、面白かったです。

 

ただ、クライマックスの漫才シーン。

内輪の話をマジで舞台でやっても、ちょっとしらけると思いました。

うまくまとめてほっとしましたが、あそこをもう少しスマートにやったらよかったのになあ。

クライマックスなのに、引きそうでした。

 

不幸の固まりのような祐太(阿部サダヲ)が、「他人の家では甘えない、泣かない」を自分に戒めて、明るく生きている姿がとてもよかったです。

八方美人と言われても、いいじゃないか。

こういうところに幸せがやってくるものです。

今は逆境と思っても、心を明るく、周りも明るくして生きていきたいと思いました。

 

でも、祐太の唯一のストレス発散がオカマバーのママ「ゆうこ」というのが、私には理解しがたいことでした。

お客さんにサービスするなんて、八方美人と同じように疲れると思うけどね。

それだったら、女装してオカマバーの客になるほうがいいと思うけどなあ。


女の子ものがたり

2010-09-23 15:18:56 | 映画ーDVD

ー女の子ものがたりー

2009年 日本

監督=森岡利行 原作=西村理恵子 キャスト=深津絵里(高原菜都美)大後寿々花(なつみ(高校時代))福士誠治(財前静生)風吹ジュン(藤井里美)波瑠(きみこ(高校時代))高山侑子(みさ(高校時代))森迫永依(なつみ(小学生時代))三吉彩花(きみこ(小学生時代))佐藤初(みさ(小学生時代))大東俊介(たか)佐野和真(しん)賀来賢人(片桐俊夫)落合恭子(あき)板尾創路(高原房蔵)奥貫薫(高原光代)

 

【解説】

スランプから抜け出せず自堕落な日々を過ごすアラサーの漫画家が、少女時代の友だちとの思い出に励まされ生きる元気を取り戻していくガールズ・ムービー。漫画家・西原理恵子の同名ベストセラーを原作に、『子猫の涙』の森岡利行が脚本と監督を手掛け、ノスタルジックなドラマを紡ぐ。人生の絶不調から立ち上がる主人公を『博士の愛した数式』の深津絵里が好演。彼女の透明感あふれる演技と、風光明媚(めいび)な愛媛県の自然がさわやかな感動を呼ぶ。

 

【あらすじ】

36歳の漫画家の高原菜都美(深津絵里)は、昼間からビールを飲み、たらいで水浴、ソファで昼寝をするなどスランプから抜け出せない生活を送っていた。新米編集者の財前(福士誠治)にも愛想を尽かされ、キツイ一言を言われてしまうが、幼いころに過ごした友だちとの思い出にふけるうちに、菜都美の心が徐々に変化し始める。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

思っていた内容とずいぶん違いました。

もう少し、残酷だけど女の子らしいファンタジックな物語だと、勝手に想像していました。

この作品は、女の子の現実の厳しさがテーマでした。

 

主人公なっちゃんとその友達のきいちゃんとみさちゃんの、小学校から高校までのエピソードを、36歳の漫画家である高原菜都美が思いだす形で語られます。

 

まず、漫画家、高原菜都美は大スランプ。

何年か前に描いたマンガがヒットしたものの、あとはぱっとしない。

新作もなかなか筆が進まない。

新米編集者の財前(福士誠治)があきれるほどのだらしない生活。

犬と散歩して、帰ったらビールを飲んでお昼寝ー。

 

「そんなだから、友達も恋人もいないんだ!!」と財前に叱責され、「友達はいるよ」と思いだしたのが、きいちゃんとみさちゃんのことでした。

 

☆ネタバレ

なっちゃんの母は、離婚して小学生のなっちゃんをつれて新しいお父さんと田舎で暮らし始めました。

継父は「おまえは人と違う生き方をすると思う」と、折々に言っていました。

母は、「私のようにならないように」とか「友達は選びなさいよ」と意見していました。

 

でも、なっちゃんにはすぐに友達ができました。

貧乏でいじめられているきいちゃんと、貧乏人の子だくさんのような家庭のみさちゃん。

それでも子供時代はいじめにも負けず、3人は元気です。

ただ、きいちゃんもみさちゃんもかわいく、服もかわいくて、あまり貧乏人と言うリアリティは感じられませんでした。

きいちゃんの家も「見たらわかるほどの貧乏」と言いたげでしたが、ただ散らかっているだけにしか見えませんでした。

 

なっちゃんの家も継父が事業に失敗して失踪してしまいますが、3人とも無事に地元の高校へ行けたようでした。

 

きいちゃんは暴走族風のお兄さんを好きになって彼の家に家出をしてしまい、それを連れ戻そうと、なっちゃんとみさちゃんはきいちゃんと一緒にドライブに行きます。

ガソリン泥棒をしているところを警察に見つかり、山の中で置き去りにされます。

3人は自力でふもとまで帰ってくるのですが、これが小さな冒険物語になっています。

3人の絆を強くした最大のエピソードです。

 

「この町の若者は町を出て行く。男の子はヤクザになって帰って来るけど、女の子は帰って来ない」というセリフがあり、なっちゃんは納屋の壁に旅に出る女の子の絵を書きました。

これが、なっちゃんのマンガの原点です。

 

みさちゃんの親は犯罪に手を染め、みさちゃんは幼い兄弟とともに取り残され、生活のために水商売に入ったようです。

きいちゃんは結婚しますが、夫はDVで生傷が絶えません。

 

きいちゃんの新居で集まった時は、みさちゃんも夫から暴力を受けていて、頭を怪我していました。

高価なものばかりを身に付けている割には、借金を申し込んできて、お金に困っているようでした。

 

なっちゃんはこんなふたりの生き方を批判して、町を出ます。

それ以来、会うこともありませんでした。

 

漫画家、高原菜都美の原点を思いだし、ふるさとに帰ることにしたなっちゃん。

きいちゃんは、病気で亡くなり、みさちゃんは借金で行方不明でした。

きいちゃんのお母さん(風吹ジュン)と一人娘に、自分の書いた絵の前で会い、もう一度原点に戻ってマンガを書こうと決心したなっちゃんでした。おわり

 

3人の女の子の母親は、男の人に引きずられて不幸になるタイプの女性ばかり。

そして、きいちゃんもみさちゃんも同じ道を歩むのでは、進歩がないなあと暗い気持ちになりました。

貧乏と言っても、身なりはいいし、高校まで進学するわけだし、きいちゃんの母親の風吹ジュンさんはこぎれいな格好をしているし、現在、訪ねたきいちゃんの実家は大きくないけどきれいに片付いてお仏壇もありました。

あの小学生の時の家は、なんであんなに散らかっていたのでしょう。

お母さんが片付けが下手なんだったら、いまも散らかっているはずですけどね。

孫の面倒も見ているし、そんなに貧乏と言うほどではないと思いました。

 

つまり、きいちゃんの母親は、やはり何かで収入を得て子供を育てていたわけでしょう。

お父さんがいなくて大変だっただろうとは思いますが、立派なお母さんだと思いました。

 

なっちゃんのお母さんも、事業に失敗して死んだ継父のお葬式もあげていたし、喪服もあったし、なっちゃんが町に出て行く日、お小遣いも渡していました。

こちらも立派なお母さんだと思いました。

 

それに比べて、きいちゃんは暴走族といい、DV男といい、男を見る目がなさそうだし、みさちゃんはお金に釣られたみたいに見えます。

 

それで、なっちゃんがふるさとに帰って得たものは、まさか優越感ではないでしょう。

みんなが求めたしあわせ。

でも、自分が努力しないと、道は開けないよね。

田舎だからとか、貧乏だからとか、女だからと言っていては、道は開くことはできないでしょう。

なっちゃんは、自分が行動した意味を、やっと今、理解したのでしょうか?

それって、遅くないかなあ?

 

どうも、主人公たちにひたむきさとか、無邪気さとかが感じられなくて、私はこの作品に共感できませんでした。

 

貧乏だけど、心は豊かだということをどう描くか、難しいなあと思いました。

 


フェアウェルさらば、哀しみのスパイ

2010-09-18 09:35:14 | 映画ー劇場鑑賞

ーフェアウェルさらば、哀しみのスパイーL'AFFAIRE FAREWELL/FAREWELL

2009年 フランス

クリスチャン・カリオン監督 エミール・クストリッツァ(セルゲイ・グリゴリエフ大佐)ギョーム・カネ(ピエール・フロマン)アレクサンドラ・マリア・ララ(ジェシカ・フロマン)インゲボルガ・ダプコウナイテ(ナターシャ)ウィレム・デフォー

 

【解説】

ソ連崩壊の大きなきっかけとなったといわれる20世紀最大級のスパイ事件の一つフェアウェル事件を映画化したサスペンス。冷戦時代のソ連から西側に機密情報を大量に提供したKGB幹部の孤独な戦いを、『戦場のアリア』のクリスチャン・カリオン監督が描き出す。祖国と家族のために死のリスクをいとわない実在のスパイには、2度のカンヌ国際映画祭パルム・ドールに輝くエミール・クストリッツァ監督、彼と奇妙なきずなを育むフランス人男性を監督としても活躍するギョーム・カネが熱演する。

 

【あらすじ】

1980年代初頭、KGBの幹部グリゴリエフ大佐(エミール・クストリッツァ)は、フランスの国家保安局を通じて接触した家電メーカーの技師ピエール(ギョーム・カネ)にある情報を渡す。それは、ソ連が調べ上げたアメリカの軍事機密や西側諸国にいるソ連側スパイのリストなどが含まれ、世界の国家勢力を一変させる力を秘めたものだった。やがて、二人の間には不思議なきずなが芽生えていくが……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

エミール・クストリッツァ監督の「ウェディング・ベルを鳴らせ」を見たばかり。

あんなドタバタ喜劇を作った人が、今回は役者として、祖国を裏切るKGB大佐を演じていました。

彼と通じるピエールを演じていたギョーム・カネも監督をするそうです。

二人の監督が演じた作品、よかったですよー。

私の今年の1番かもしれません。

 

1980年代初頭、ロシアに家族とともに赴任している家電メーカーの技師ピエール(ギョーム・カネ)は、フランスの国家公安局の人の偉いさんに頼まれて、KGBの幹部グリゴリエフ大佐(エミール・クストリッツァ)からある情報を受け取った。

その情報は、アメリカのホワイトハウスまで届き、その情報の正確さと重要さにレーガン大統領以下首脳陣は驚いた。

 

グリゴリエフ大佐は、公安局の報酬や家族ぐるみの亡命という条件に応じず、仲介人にド素人のピエールを指名することだけを条件にして、「フェアウェル」というコードネームを使って、機密情報を流し続けた。

 

グリゴリエフとピエールの間に生じた奇妙な関係。

二人は人間的にも結びついて行く。

 

「共産主義は理想だ」というグリゴリエフ。

しかし、ソ連の現況は支配の中枢が腐り切っていて、崩壊は間近だとグリゴリエフには思えた。

それなら、早い方が傷は少ない。

息子には新しい世界で生きて欲しい。

 

それだけが、グリゴリエフ望みだった。

 

この不器用でロマンチストの大佐をエミール・クストリッツァが実に繊細に演じていました。

彼の風貌だからこそ、体現できたのだと思いました。

 

☆ネタバレ

こんなに心を砕いて思いを寄せている家族は、妻は上司と不倫をしたし、息子は部屋に閉じこもって、父親批判を繰り返し、ろくな話にも応じません。

 

それでも、彼は自分を捨てて家族のために、国を愛するが故に、国を裏切ります。

 

一方のピエールも、自分がスパイ活動に巻き込まれていることを、妻にも秘密にしていることに苦しみます。

また、グリゴリエフの行く末も心配で、そのお人好しで気持ちのやさしさから悩み抜く姿もよかった。

 

ピエールの一家が国境を突破するところははらはらドキドキ。

しびれました。

 

一方のグリゴリエフは、拷問を受けますが、口を割りません。

息子が会いに来るシーンは、やっと父と息子が和解できて、お互いを思いやる二人の心情の美しさに涙が出ました。

 

しかし、この美しい物語には裏がありました。

「ソルト」でも描かれた冷戦構造の中でのスパイ合戦。

機密漏洩の汚いからくり。

 

知らなかったのはグレゴリエフとピエールだけでした。

ソ連を崩壊に導いた功労者であるグリゴリエフは、アメリカ国家に非情にも切り捨てられたのでした。

 

この国家の非情さを表現したのがウィレム・デフォー。

ここのシーンもよかったー。

 

たったひとりの戦いを闘い抜いたグレゴリエフ。

この上は、彼が託したロシアの未来が豊かなものであることを、祈らずに入られません。

 

グリゴリエフがスパイ活動の報酬に要求したソニーのウォークマンとクイーンのミュージックテープ。

それを聞きながらフレディーのまねをして「ロック・ユー」を歌い踊る息子の姿が、ミック・ジャガーに似ているのが面白かったです。

当時の青年なら、クイーンを聞きたくて当然ですね。

 

「ソルト」と同じようなテーマのスパイ映画ですが、あまりアクション映画らしくありません。

むしろ心理的な作品で、私が感じたことは、一人の大佐の生き様と、国を越えた友情と息子への深い思いでした。

大佐の心情を思うと、観客の心も揺すぶられるような作品でした。


悪人

2010-09-17 08:45:49 | 映画ー劇場鑑賞

ー悪人ー

2010年 日本

監督=李相日 原作=吉田修一 音楽=久石譲 キャスト=妻夫木聡(清水祐一)深津絵里(馬込光代)岡田将生(増尾圭吾)満島ひかり(石橋佳乃)塩見三省(佐野刑事)池内万作(久保刑事)光石研(矢島憲夫)余貴美子(清水依子)井川比佐志(清水勝治)松尾スズキ(堤下)山田キヌヲ(馬込珠代)韓英恵(谷元沙里)中村絢香(安達眞子)宮崎美子(石橋里子)永山絢斗(鶴田公紀)樹木希林(清水房江)柄本明(石橋佳男)

 

【解説】

朝日新聞夕刊に連載され、毎日出版文化賞と大佛次郎賞を受賞した吉田修一の話題作を映画化した犯罪ドラマ。九州のとある峠で起きた殺人事件をきっかけに、偶然に出会う男女が繰り広げる逃避行と愛を息苦しくなるほどリアルに描く。監督は、『フラガール』の李相日。罪を犯してしまう肉体労働者と彼と行動をともにする女性を、『ブタがいた教室』や大河ドラマ「天地人」の妻夫木聡と『女の子ものがたり』の深津絵里が演じる。原作で巧みにあぶり出される登場人物の心理がどう描かれるのか、実力派俳優たちの共演に期待が高まる。

 

 

【あらすじ】

若い女性保険外交員の殺人事件。ある金持ちの大学生に疑いがかけられるが、捜査を進めるうちに土木作業員、清水祐一(妻夫木聡)が真犯人として浮上してくる。しかし、祐一はたまたま出会った光代(深津絵里)を車に乗せ、警察の目から逃れるように転々とする。そして、次第に二人は強く惹(ひ)かれ合うようになり……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

「フラガール」でその才能を証明した李相日監督。

この作品では原作者の吉田修一と組んで脚本も書いています。

 

この監督野作品は、どこか日本映画と違う感じです。

今回もオープニングからサスペンスタッチで、引き込まれました。

音楽も使い方がうまかった。

 

この作品は、カナダで開催されていた第34回モントリオール世界映画祭でヒロインを演じた深津絵里が最優秀女優賞を受賞したことが大きなニュースになりました。

 

深津絵里さんは受賞に値する体当たり演技で、素晴らしかったですが、さらに樹木希林さん、柄本明という脇役陣も素晴らしい演技力で、物語に厚みを加えていました。

 

☆ネタバレ

石橋佳乃は保険外交員の女性、転勤で故郷に戻って来たのに、親とは離れて会社の寮で生活している。

出会い系で知り合った清水祐一(妻夫木聡)とときどき会ってセックスをしているが、それ以上進むことは考えていない。

佳乃は、旅館の経営者の息子、増尾圭吾(岡田将生)との交際を願っていた。

 

ある夜、佳乃は友達と別れて祐一と会いに行く途中、思いがけず増尾と会う。

祐一を振って、増尾の車に乗り込んで行ってしまう佳乃。

長崎から1時間半、車を飛ばして佳乃に会いに来た祐一は怒りに燃え、二人の車を追っていく。

 

次の日、山の中に放置された佳乃の絞殺死体が発見される。

増尾が疑われるが、増尾は山中に放置しただけとわかる。

 

そして、祐一の名前が挙がり、警察が彼を追う。

 

そんな中で、祐一と光代(深津絵里)もネットを通じて知り合う。

二人は引かれ合って、逃避行となるが、長くは続かず、警察に知られてしまう。

そして、祐一のとった行動を、観客はどう解釈するかー

 

祐一は幼い頃に母親に置き去りにされたという辛い経験をしていて、人間不審に陥っています。

祖父母に育てられたのですが、心を開かない無口な青年です。

でも、肉体労働をしながら祖父母の面倒をよく見ていると言う一面もあります。

 

光代は婚期を逃した女性で、紳士物のスーツのお店で働いていて、妹と二人暮らし。

妹にも最近彼氏ができて、さらに孤独感でいっぱいです。

そんな中にすっぽりおさまったのが祐一という存在なのでしょう。

「殺人を犯した」と告白されても、自分の孤独を癒すために、逃避行を持ち出します。

 

二人が逃避行の末、たどり着いた無人の灯台。

 

それは祐一のためであったのか、疑問です。

 

この二人の物語より、私が心を引かれたのは、被害者の父親が、置き去りにした増尾に復讐の矛先を向けて行くところ。

 

工具を持って増尾に追いすがる佳乃の父。

 

「保護責任者遺棄致死」の疑いで、押尾学容疑者の裁判を連日マスコミが報じていますが、この映画の事件も、父親が問いたいのはそこだったようです。

「山の中に娘を置き去りにしたから、娘は殺されたのだ」と。

 

しかし、彼が犯罪者にならずによかったと、ほっとしました。

あんな大学生を殴って怪我をさせて犯罪者になっても、娘は生き返らないし、世界も変わりません。

本当に辛いことですが、犯罪被害者は耐えて生きていくしかないのですね。

 

もう一人の心を引かれ人は、祐一の祖母を演じた樹木希林さん。

 

マスコミに囲まれる祐一の祖母

 

最後の方は、全くといっていいほどセリフがなく、その一挙一動で彼女のおかれた辛い立場を表現していました。

素晴らしい。

 

祐一のおばあさんの間違いって、何だったんでしょうね。

娘に置き去りにされた孫を、我が子のように育ててきて、この結果はあまりに酷い。

さらに、この哀れなおばあさんにものを売りつけて大金をせしめる悪党がいます。

人を信じて素朴に、一生懸命生きてきて、人生のゴールが見えかけた時のこの絶望。

力なく押し掛けたマスコミに頭を下げるおばあさんの姿が、あまりに痛々しかったです。

 

バスの運転手さんが一言声をかけます。

「しっかりしなさいよ。あんたが悪いわけじゃないんだから」。

救われる一言でした。

 

私から、この映画を見た若い人に言いたい。

出会い系サイトには、決して本物の出会いなんかありませんよ。

出会い系サイトは、人生や生活に疲れて、夢も希望も失ったおじさんやおばさんが癒されるために使う、人生最後のファンタジーです。

将来のある若い人たちは、ちょっと寂しいからといって、安易にはまりこんではダメですよ。

 


祝!!ラファエル・ナダル生涯グランドスラム達成!!

2010-09-16 10:29:27 | スポーツ

ー祝!!ラファエル・ナダル生涯グランドスラム達成!!ー

2005年の全仏優勝の少し前から応援して来たラファエル・ナダルが、とうとう今年の全米オープンテニスで初優勝、生涯グランドスラムを達成しました。

 

おるめでとう!

ラファ!!

 

生涯グランドスラムを達成したのは史上7人目、史上3番目の若さ(24歳101日)の快挙でした。

 

これは、私のブログの中のナダルの紹介記事です。

http://blog.goo.ne.jp/katsu1021/e/f5153ae1fa49fafbf0f31e476630b34c

 

昨日は、録画した決勝戦の試合をゆっくり鑑賞しました。

本当に、いいゲームでした。

 

今大会ではナンバー1シードで臨み、ドローに恵まれた感もあります。

3回戦のジル・シモンも準々決勝のベルダスコも、前日の試合をフルセット闘って、くたくたの状態でナダルと対戦しました。

今大会、絶好調のナダルは、いとも簡単に難敵を破りました。

 

決勝戦、ランキング3位のノバク・ジョコビッチも、準々決勝でフェデラーと4時間近くにも及ぶ死闘演じ、ジョコビッチのフィジカル面を考えると、ナダルに有利じゃないかと、大勢の人々に予想されていました。

 

ところが決勝当日は雨で順延となり、ジョコビッチの体力面の心配は薄れ、とても楽しみな試合となりました。

 

実際、第1セットはナダルが取りましたが、紙一重という感じで、第2セットはブレイクの応酬のようになって結局はジョコビッチが取りました。

第3セットの始めまでは、ジョコビッチの方が押しているような感じさえありました。

 

ナダルは、一生懸命守り、一発逆転のショットを繰り出し、ポイントを重ねて行きました。

ジョコビッチは、しだいに単調になり、強打もコントロールを失って行きました。

 

その結果としての優勝、生涯グランドスラムの達成。

 

今大会のナダルは、サーブが早く、ネットプレーも積極的で正確でした。

 

振り返ってみると、ランキングが1位になった頃のナダルは、決してサーブもネットプレーもうまい選手ではありませんでした。

それが、ナンバー1になったことに奢らず、じわじわと進化を見せてくれるところが、ナダルのすごいところです。

そして、まだ24歳、ますます進化しそうな気配です。

 

ナダルの目標は高く、その目標に向かって努力することはむしろ楽しそうでもあります。

4歳からおじさん(トニー・ナダル)のコーチだけで伸ばしてきた才能もすごいと思う。

ナダルは、運動神経は抜群なのは間違いないですが、テニスプレーヤーに向いているかと言えば、そうは言い切れない部分があります。

テニスプレーヤーといえば、やはりフェデラーが完成されたプレーヤーかな、と思います。

よく「蝶のように」と形容される動きはとても滑らかでしなやかで、それでいてショットは鋭く正確無比です。

サーブも早い。

それに比べて、ナダルのテニスは無骨です。

でも、ナダルは自分の個性にこだわったテニスを、独特のやり方で進化させて、その進化は止まることを知らないようです。

 

また、「自分のいいところはメンタル面とコートでの態度だ」と言い切るころもすごい。

ナダルは試合中に切れることはないし、仁王さんのような顔で集中しています。

素晴らしいメンタリティだと思います。

 

世界でも稀なことをする人なんだから、普通の人間ではないんだけど、インタビューを受けたり、試合後に見せる無邪気な笑顔は親しみやすく、24歳の青年そのままです。

 

10月には初来日です。

楽天オープンテニスhttp://rakutenopen.rakuten.co.jp/

私もチケットを用意して、ナダルの来日を待っているところです。

 

 

イケメンでしょ?

 


ウェディング・ベルを鳴らせ

2010-09-14 14:59:09 | 映画ーDVD

ーウェディング・ベルを鳴らせーZAVET/PROMISE ME THIS/PROMETS-MOI

2007年 セルビア/フランス 

エミール・クストリッツァ監督・脚本 ロシュ・ミロヴァノヴィッチ(ツァーネ)マリヤ・ペトロニイェヴィッチ(ヤスナ)リリャナ・ブラゴイェヴィッチ(ボサ)ストリボール・クストリッツァ(トプス)ミキ・マノイロヴィッチ(バヨ(マフィアのボス))アレクサンダル・ベルチェク(ジヴォイン(祖父))

 

【解説】

『ライフ・イズ・ミラクル』などで知られる、エミール・クストリッツァ監督によるハッピーなラブ・コメディー。牧歌的なセルビアの山村を舞台に、花嫁を探しに都会に出て行く少年の珍道中を軽快な音楽に乗せてつづる。主人公を演じるのは、これが長編デビュー作となるウロス・ミロヴァノヴィッチ。その祖父役をベテランのアレクサンダル・ベルチェクが演じている。おとぎ話のようなストーリー展開と、管弦楽器が奏でるリズムに酔いしれる。

 

【あらすじ】

ツァーネ(ウロス・ミロヴァノヴィッチ)は、セルビアの山奥の村で祖父(アレクサンダル・ベルチェク)とのどかな暮らしを楽しんでいた。ある日、祖父は突然孫に都会へ行って牛を売った代金で3つの約束を果たせと命じる。1つ目は聖ニコラスのイコンを買うこと、2つ目は自分用のお土産を買うこと、そして3つ目は何と嫁を見つけることだった。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

エミール・クストリッツァ監督といえば、私にとってはジョニー・デップ主演の「アリゾナ・ドリーム」なんですが、彼は、旧ユーゴスラビアのサラエヴォ生まれ。

「アリゾナ~」を撮影中に、ボスニア戦争が勃発し、自宅の略奪や父の死を経験したそうです。

「アリゾナ~」を完成させたすぐ後に「アンダーグラウンド」を制作し、カンヌ映画祭でパルムドール賞に輝きました。

 

この「ウェディング・ベルを鳴らせ」は予告編を見て興味を持ちました。

 

すごーい、ドタバタ喜劇でした。

面白かったー。

 

お話の舞台はセルビアの貧しい村。

おじいさんと暮らす16歳の少年ツァーネ(ロシュ・ミロヴァノヴィッチ)が主人公です。

村は過疎化が進んでいるようです。

学校に通う子供はツァーネひとり。

ある冬に役人がやって来て、「一人の生徒しかいないなら、学校は閉鎖だ」と言いました。

それ以来、ツァーネは学校に通えなくなりました。

 

おじいさんは、発明家で、オープニングシーンは「バックトゥザフューチャー」を彷彿とさせます。

古い教会の修理をコツコツとしていますが、自分が死んだ後のツァーネのことが心配でなりません。

 

ある日、おじいさんはツァーネに町で牛を売ってくるように言いつけました。

そのお金で、1.聖ニコラスのイコンを買うこと。2.ツァーネ自身へのお土産を買うこと。3.お嫁さんを見つけてくること、という3つの約束をしました。

 

ツァーネは牛を引いて、村を後にしました。

サーカスのロケット人間が延々と空を飛び続けているし、まるでおとぎ話のようです。

 

町は、とても近代的で美しい町です。

ツァーネは大きなビルに驚きますが、きれいで薄着の美女たちからも目が離せません。

 

やがて、一人の女子高生に目を奪われ、ふらふらとついて行きました。

美しい娘はヤスナ(マリヤ・ペトロニイェヴィッチ)といいます。

教師をしている母と二人暮らしですが、母には秘密がありそうです。

 

ヤスナの母はマフィアのボス・パヨ(ミキ・マノイロヴィッチ)に脅かされているました。

借金があって、そのカタにヤスナを差し出せと言っています。

いまや、ヤスナのストーカーみたいにつきまとっているツァーネですが、彼自身もパヨと関わり、事件に巻き込まれて行きます。

 

とうとうヤスナがパヨの手に落ち、ここからの攻防が、まるで「ホームアローン」のように笑わせてくれます。

 

ツァーネはついに、ヤスナを悪人の手から救い出し、おじいさんとの約束を果たすべく村に帰ってきますが、マフィアも追いかけて来て、牧歌的な村は激しい銃撃戦の舞台となります。

 

それでも、臨場感なし、ほのぼのハッピーなラストとなります。

 

ツァーネとヤスナは、初キッスが、ツァーネが傷ついた振りをしてヤスナを騙して人工呼吸をしたものですから、そのあとのキスも二人は思いっきり息を吸ってキスをします。

初々しいと言うか、とても微笑ましいキスでした。

 

隣人同士で、流血の内戦を経験したセルビア。

立ち直るまでには、村も町もまだまだ時間がかかりそうですが、こんな映画を作れるユーモアがあれば、明日は明るいと思いました。

 

音楽も印象的で楽しかったです。

 

クストリッツァは偉大だと思いました。