ー冬のライオンーTHE LION IN WINTER
1968年 イギリス
アンソニー・ハーヴェイ監督 ピーター・オトゥール キャサリン・ヘプバーン アンソニー・ホプキンス ジョン・キャッスル ナイジェル・テリー ティモシー・ダルトン ジェーン・メロウ ナイジェル・ストック
【解説】
1183年のクリスマス・イブの夜。イギリス国王ヘンリー2世は、後継者を決めるために一族を召集した。そしてその中には、王の居城から離れて軟禁されていた王妃エリノアの姿もあった。二人はそれぞれの思惑をかかえ、別々の後継候補の後押しをする……。王位継承をめぐる争いを描いた歴史ドラマ。(allcinema ONLINE)
【感想】
ヘンリー2世(ピーター・オトゥール)は中世イングランドの王朝、プランタジネット朝の初代王。
フランスに広大な所領を持ったままイングランド王に即位し、アンジュー帝国という大連邦を形成した。
妻のエレノア(キャサリン・ヘプバーン)は、ボルドーで有名なアキテーヌの領主の娘で、この領地を持ってヘンリーと結婚し、二人で統治していた。
エレノアはフランス王ルイ7世と結婚していたが、11歳年下のヘンリー2世と出会い、大恋愛の末ルイと離婚して結ばれたのだった。
ヘリーとエレノアの間には5男3女がいた。
長男ウィリアムは夭折した。
次男、若ヘンリーはこの話では省かれていたが、実権のない王として父と共同統治、28歳で病死している。
三男のリチャード(アンソニー・ホプキンス)は、母エレノアの信望が厚く、次期王座を狙っている。
事実、ヘンリー2世が没したあとイングランド王に即位。その勇猛さから獅子心王と称される。
4男ジェフリー(ジョン・キャッスル)は狡猾な性格で、父からも母からも相手にされないことをひがんでいた。
5男ジョン(ナイジェル・テリー)は、父から溺愛されて「イングランド王を譲る」と約束されていた。
ヘンリーにはアリースという若い愛人がいた。
アリース(ジェーン・メロウ)は、エレノアの元夫ルイ7世が再婚して生まれた娘だったが、リチャードの婚約者として7歳でイングランドにやってきて、エレノアが育てた娘だった。
それなのにヘンリーは、エレノアに反逆の罪を負わせて川向こうの城に幽閉してから、アリースを愛人としてしまったのだ。
そして、婚約を履行する約束の16年後のクリスマス、フランスからアリースの弟で今はフランス王となったフィリップ2世(ティモシー・ダルトン)がその約束が履行されるのを見届けるためにやってくる。
でも、ヘンリーはアリースを手放すつもりはない。
もちろん、リチャードと結婚させる気持ちも、王位を譲る気持ちもなかった。
ジョンにイングランドを継がせることを願っていたのだ。
エレノアも王妃として、アキテーヌの領土に権利がある者として、クリスマスに幽閉を解かれてやってきた。
夫婦、息子3人、愛人とその兄が、入り乱れての権力争い。
誰が本当のことを言っているかわからない。
腹の探り合い、騙し合い、あげくには命の奪い合い。
結局、みんな領地が欲しい、王になりたいのよね。
そこに、夫婦の愛憎、親子の愛憎がからまるから、さらに憎しみが増幅して行きます。
でも一番底に流れているのは、ヘンリーとエレノアの他人にはわからない愛と憎しみの振幅。
そして、老いや死への恐怖感や焦燥感。
最後、また軟禁状態の城に戻って行く晴れやかなエレノアの表情と、その姿を見送るヘンリーの表情はなんとも複雑な色がありました。
これぞ、くされ縁なのでしょう。
ピーター・オトゥールとキャサリン・ヘップバーンの演技対決が見所です。