マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで

2009-01-30 13:30:27 | 映画ー劇場鑑賞
ーレボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまでーREVOLUTIONARY ROAD
2008年  アメリカ/イギリス サム・メンデス監督 リチャード・イェーツ原作
レオナルド・ディカプリオ(フランク・ウィーラー)ケイト・ウィンスレット(エイプリル・ウィーラー)キャシー・ベイツ(ヘレン・ギヴィングス夫人)マイケル・シャノン[俳優](ジョン・ギヴィングス)キャスリン・ハーン(ミリー・キャンベル)デヴィッド・ハーバー(シェップ・キャンベル)ゾーイ・カザン(モーリーン・グラブ)ディラン・ベイカー(ジャック・オードウェイ)ジェイ・O・サンダース(バート・ポラック)リチャード・イーストン(ギヴィングス氏)マックス・ベイカー(ヴィンス・ラスロップ)マックス・カセラ(エド・スモール)ライアン・シンプキンス(ジェニファー・ウィーラー)タイ・シンプキンス(マイケル・ウィーラー)キース・レディン(テッド・バンディ)

【解説】
1950年代半ばのアメリカの郊外の街で、夢と希望に人生を懸けようとする若い夫婦の葛藤(かっとう)と運命を描く感動作。作家リチャード・イェーツの小説を原作に、『アメリカン・ビューティー』のアカデミー賞受賞監督サム・メンデスが映像化。『タイタニック』のレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが11年ぶりに共演を果たし、輝かしい未来を夢見る夫婦を好演。自己実現の夢と家族の愛の間で揺れ動く、切なく深いドラマに注目。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
1950年代半ばの富裕層が集まるコネチカット州の郊外で、フランク(レオナルド・ディカプリオ)とエイプリル(ケイト・ウィンスレット)の夫婦は二人の子どもに恵まれ、幸せに暮らしていた。しかし、彼らはそれぞれが抱いているヨーロッパでの成功と女優になるという夢の実現のため、人生で大きな賭けに出ることを決意する。(シネマトゥデイ)

【感想】
ケイトとレオ、「タイタニック」のゴールデンコンビ復活。
批判する人もいるけど、私は「タイタニック」の純愛物語、大好きです。

この作品は、純愛の成れの果て、結婚生活の絶望を描いたドラマです。

1950年代、まだアメリカでも離婚が一般的ではなかった時代のお話。
郊外の一軒家に住む、フランク(レオナルド・ディカプリオ)とエイプリル(ケイト・ウィンスレット)は二人の子供にも恵まれて、幸せに暮らしていた。
家族思いの夫、完璧に家事をこなす妻。
一般的には、これを理想の家庭ーというのですが。

☆ネタバレ
結婚前、女優志願だったエイプリルは、地元の劇団に入っているが、ある夜の公演は大失敗だった。
フランクはケイトのご機嫌を取ろうとするが、エイプリルはそういうフランクの態度さえ我慢できない。

そして、最初のバトル。
機嫌を直そうとしない妻に、フランクはキレる。

フランクは平凡なサラリーマン。
日々繰り返される仕事にも、日常にも虚しい気持ちを持っている。
家庭や職場の鬱憤ばらしに、職場の女性と浮気をしている。
後腐れのない関係。

ある日、帰宅するとエイプリルが彼の誕生日を祝い、フランクが単純に喜んでいると、新しい提案があった。
「パリへ行きましょう。私が働くから、あなたは自由に自分にあった仕事を見つけて欲しい、あなたなら、見つかるはずよ」。
エイプリルのご機嫌を取るため、この提案に同意するフランク。

同僚たちは、現実味のない夢にすぎないと批判するが、地元の不動産屋のヘレン・ギヴィングス夫人(キャシー・ベイツ)の一人息子ジョン(マイケル・シャノン)は、心底感心し、深く賛同した様子。
ジョンは、数学者でとても優秀な人なのに、精神を病んで、入退院を繰り返していた。

エイプリルの妊娠がわかり、中絶もできないとなって、夢の計画はおじゃんになる。
そのころフランクは実力を認められ転職。
人から評価されたことで、この計画が崩れたことも、ちょっと嬉しい気持ちになっていた。

反対にエイプリルは人生に深く絶望していました。
エイプリルは、自分たちは特別な人間だと信じていたのです。
でも、自分たちも平凡な人間に過ぎなかったー
夫もー
エイプリルの中で、何かが壊れ始める。
しかし、この妻の変化が、フランクにはわからないんだなあ…

そして、ジョンの言ったことが原因で、再びバトル。
お互いに、決して言ってはいけないことを言い合い、傷つけ合う。

そして、最悪の結末へー。

見終わって、いろいろ考えてしまう作品でした。

 ケイト・ウィンスレットとサム・メンデス監督
サム・メンデス監督は、ケイトのご主人なんですね。
「アメリカン・ビューティ」でアカデミー監督賞も取っています。
この作品も衝撃的で面白かった!!

ケイトとレオのバトルは演技賞ものだと思いました。
ケイトはゴールデングローブ賞女優賞を獲得したけど、アカデミー賞はふたりともノミネートもされず、残念です。
個人的には、このレオに賞をあげてもいいと思いました。

助演男優賞にノミネートされているのが、ジョンを演じたマイケル・シャノン。
エイプリルから狂気を引き出すような役どころでした。
表向きには、常識から逸脱したことを絶対言わないやらない母親。
そのことに無関心な夫。
ホンネとタテマエが全然違う人に育てられた、感受性の豊かな優しい頭のいい子は、こんなふうになってしまうんだろうなあ、という説得力のある演技でした。
親の欺瞞を見抜いてしまった子供は、不幸だよね。

「エデンより彼方に」とか「めぐりあう時間たち」でも取り上げられていた、50年代の郊外の妻たち。
(あら、どっちもジュリアン・ムーアだ!!)
その子供たちが、選んだ道がフラワーピープルやウーマンリブ世代。
そして、保守化しているといわれる現代の若者の中に浸透する、晩婚化、少子化、離婚率の高さ。

日本も、確実にその流れの中にいますね。

どんな生き方が理想なのかー
どんな結婚が理想なのかー
物質が豊かになるのと反比例するように、人生は複雑になって行くようです。
ただ、幸せになりたいだけなのに。

この作品、結婚前の女性には見て欲しくないような気がしました。
あまりに、本質的過ぎて、結婚に夢が持てなくなるかも。

でも、ケイトはインタビューで、「この映画の後の方が夫婦は理解し合えた」と答えているから、お互いにとことん突き詰めてみるのも、倦怠期を脱する方法のひとつかも知れませんね。

見終わった後に、女性客がおしゃべりしていました。
「夫にあそこまで言われたら、とりあえず子供を連れて、実家に帰るわね」
妻たちは、現実的な対処方法がちゃんとわかっているようです。
夫たち、少しは安心しましたか?

スパイダーウィックの謎

2009-01-30 13:23:21 | 映画ーDVD
ースパイダーウィックの謎ーTHE SPIDERWICK CHRONICLES
2008年 アメリカ
マーク・ウォーターズ監督 フレディ・ハイモア(サイモン/ジャレッド)サラ・ボルジャー(マロリー)メアリー=ルイーズ・パーカー(ヘレン)ニック・ノルティ(マルガラス)ジョーン・プロウライト(ルシンダ叔母)デヴィッド・ストラザーン(アーサー・スパイダーウィック)セス・ローゲン(ホグスクイール)マーティン・ショート(シンブルタック)

【解説】
80年間封印されていた謎の書を読んだ姉弟が、妖精たちと必死に戦う姿を描くミステリアス・アドベンチャー。『フォーチュン・クッキー』のマーク・ウォーターズ監督が、最新テクノロジーと究極のイマジネーションを融合させ妖精伝説をよみがえらせる。主人公の双子の兄弟を『チャーリーとチョコレート工場』のフレディ・ハイモアが好演。ILMとフィル・ティペット率いるティペット・スタジオ全面協力による数々の妖精クリーチャーは必見。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
両親が離婚して母親と森の奥にひっそりとたたずむ屋敷に引っ越してきた3人の姉弟マロリー(サラ・ボルジャー)、ジャレッド(フレディ・ハイモア)、サイモン(フレディ・ハイモア)たちは屋根裏部屋から謎の書を発見する。そこには大叔父アーサー・スパイダーウィックの“決して読んではならない”という警告のメモが記されていた。(シネマトゥデイ)

【感想】
ファンタジーをバカにするな。
大掛かりにしなくても、こんなに面白い大人も喜ぶファンタジーが作れるんだよ、という証明をしたような作品。
騙されたと思って、見て欲しいなあ。

舞台は、母親が相続した古いお屋敷。
80年前、アーサーおじさん(デヴィッド・ストラザーン)は、妖怪の研究をしていたが、ある日こつ然と姿を消した。
娘のルシンダは、家族の手で精神病院へ入れられて、それ以来この屋敷は無人だった。

母が突然この屋敷に引っ越しを決めて、ジャレッド(フレディ・ハイモア)はお冠だ。
双子の兄弟のサイモン(フレディ君の二役)は、素直にママの言うことを聞くし、姉のマロリー(サラ・ボルジャー)は小さなママ気取りで、ジャレッドの心はますますいらだつ。

そして発見したのが、おとぎばなしのお約束、「開けてはならない」ジャーン!!「妖怪図鑑」!!

開けてはいけないと書いてあって、開けない方がルール違反、もちろんジャレッドは本を開けます。
すると世界が変わって、そこは、クリーチャーの世界。
ゴブリンや、フェアリーや、トロールや、結構日本人でもなじみの深い妖精たちの世界が広がります。

このクリーチャーたちのデザインがとてもいい。
お花の妖精なんて、すごーくかわいいよ。

そして、子供たちと悪い妖精たちの戦いが始まるんだけど、これが退屈させないで、すごく楽しい。

私は、妖精や妖怪が身近にいるという考え方が大好き。
これって、「ゲゲゲの鬼太郎」や「もののけ姫」なんかにも通じる考え方だと思って、うれしくなります。

ファンタジーの世界は、生きるのが大変な子供たちの、生きる智恵と勇気を与えてくれるものだし、子供たちの栄養ドリンクみたいに、疲れた時に必要なものだと思う。

そして、子供の気持ちを忘れそうになっている大人にも、すごく役に立つと思うなあ。

ハワーズ・エンド

2009-01-29 11:09:46 | 映画ーDVD
ーハワーズ・エンドー
1992年 イギリス/日本
ジェームズ・アイヴォリー監督 E・M・フォスター原作 アンソニー・ホプキンス ヴァネッサ・レッドグレーヴ ヘレナ・ボナム=カーター エマ・トンプソン ジェームズ・ウィルビー サミュエル・ウェスト

【解説】
J・アイヴォリーが「眺めのいい部屋」「モーリス」に続き、みたびE・M・フォスター文学に挑んだ作品。知的中産階級で理想主義的なシュレーゲル家と、現実的な実業家のウィルコックス家は旅行中に親しくなり、シュレーゲルの次女ヘレンはウィルコックスの別荘ハワーズ・エンドに招かれる。美しい田園風景の中、当家の次男ポールに一目惚れし、姉に婚約の意志を書き送る。それを読んで、すわ結婚と早とちりした姉が飛んでくるが、ポールにそのつもりはなく……。(allcinema ONLINE)

【感想】
「眺めのいい部屋」を見て、この作品も見ようと思いました。
同じ原作監督の1作目「モーリス」は、残念ながら私の契約しているオンラインショップでは数が少なそうです。

さて、この作品、すごく日本の小津安二郎監督などの日本の家庭を描いた作品に通じるものがあるなあ、と思って見ていました。

これは「ハワーズ・エンド」と呼ばれる屋敷をめぐるお話です。
建物に名前がつき、愛着を持たれるようになった家と言うものは、自分自身の意思があるかのように、人々の運命を変えていきます。
そう捉えてみて見ると、この作品はとても壮大でドラマチックです。

知性と教養があり、議論好きで読書好きのシュレーゲル家の姉妹、マーガレット(エマ・トンプソン)とヘレン(ヘレナ・ボナム=カーター)。
姉はすでに婚期を逃し、妹は結婚相手を捜していました。

イギリスは階級社会ということも頭に入れる必要があるでしょう。
シュレーゲル家はお金持ちではないけど、資産階級で、生活の心配はないようです。

一方、ハワード・エンドを所有しているウィルコックス家。
当主のヘンリー(アンソニー・ホプキンス)は実利一辺倒の事業家。
妻ルース(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)は病気がち。
3人の子供たちは、長男のチャールズは跡取りですが、次男のポールは落ち着かない野心家で、娘のイビィーもお嬢様育ちという感じです。
1年前、ポールとヘレンが恋愛して、気まぐれで結婚すると言い出した騒ぎがあり、両家は疎遠になっていました。

チャールズが結婚して、しばらくロンドンに滞在することになった一家。
選んだ借家がシュレーゲル家のお向かいでした。

ご挨拶に行ったマーガレットとルースは意気投合して、二人の付き合いは深まっていきました。
ルースは、親切なマーガレットをとても信頼して、自分の生まれた家であるハワーズ・エンドをマーガレットに譲るとメモ書きして亡くなります。
遺されたウィルコックス家の人たちは、そのメモを病人の戯言として、暖炉で燃やしてしまいました。

ふとしたきっかけで姉妹は保険会社に勤める、つまり労働者階級のレナードと知り合います。
レナードには、無教養な妻がいて、線路際の貧しい家で暮らしています。
レナードは、詩や文学を愛する好青年で、姉妹は彼の役に立ちたいとおせっかいをやきだします。

ウィルコックスは、姉妹とレナードの付き合いを止めるように忠告し、レナードの会社は倒産すると言います。
二人は早速、レナードに忠告し、彼は転職しますが、その銀行からリストラに会い、とうとう失業してしまいました。
しかも、元の保険会社は潰れなかったのです。

一方マーガレットは、住んでいる家を家主に明け渡すことになり、新しい家を探すためにヘンリーに相談しているうち、求婚され、受け入れます。

ヘレンは、レナードへの責任から、マーガレットからヘンリーに求職を頼んでくれるよう、ヘンリーの娘の結婚式に、レナードとその妻ジャッキーを連れ、乗り込んでいきます。

そこで、ジャッキーがかつてヘンリーの愛人だったことがわかるのですが、マーガレットは歯を食いしばってヘンリーを許します。

ヘレンも、レナードへの自責の念が、やがて愛情に変わり、二人は一度だけの情事に踏み込んでしまいました。

妊娠を隠すため、レナードから身を隠し、マーガレットや弟との連絡も絶ってしまうヘレン。

病気だと思い込んで心配したマーガレットは、ハワーズ・エンドにヘレンが来るようにしむける手紙を書きます。

ヘンリーはその様子をチャールズに見に行かせ、レナードもヘレンの行き先を追ってハワーズ・エンドへ。

運命の糸は登場人物たちをこの家へと導き、思いもかけない悲劇として幕を閉じるのでした。

ルースの思いが通じたのか、家に意思があったのか、ハワーズ・エンドはマーガレットの所有となりました。

イギリスの家庭の様子がよくわかるし、洗練された会話が楽しめ、映像もとてもきれいです。

アカデミー賞(主演女優賞)(1993年)カンヌ国際映画祭(45周年記念賞)(1992年)ゴールデン・グローブ(女優賞(ドラマ))(1992年)LA批評家協会賞(女優賞)(1992年)NY批評家協会賞(女優賞)(1992年)など、数々の賞を受賞しています。

禅~ZEN~

2009-01-26 11:15:45 | 映画ー劇場鑑賞
禅~ZEN~
2008年 日本
監督=高橋伴明 キャスト=中村勘太郎[2代目](道元)内田有紀(おりん)藤原竜也(北条時頼)テイ龍進(寂円・源公暁)高良健吾(俊了)安居剣一郎(義介)村上淳(懐奘)勝村政信(波多野義重)鄭天庸(如浄)西村雅彦(浙翁)菅田俊(公仁)哀川翔(松蔵)笹野高史(老僧)高橋惠子(伊子)

【解説】
曹洞宗を開き禅の教えを説いた鎌倉時代の僧、道元禅師の生涯を描く歴史ロマン。歌舞伎俳優の中村勘太郎が、道元の生きざまをりんとした姿で演じる。原作は大谷哲夫の「永平の風 道元の生涯」、監督は『丘を越えて』の高橋伴明。ヒロインのおりんに内田有紀がふんするほか、藤原竜也や笹野高史、高橋惠子といった脇を固める俳優陣も豪華。生や死を深く考えさせられるのはもちろん、道元の魅力的な人柄や風光明美な自然をとらえた娯楽作品としても楽しめる。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
「只管打坐(しかんたざ)」の考えに目覚め、大宋国での修行より帰国した道元禅師(中村勘太郎)。勢力入り乱れる鎌倉時代、道元は禅の教えを広めようとしていた。困窮する人々にも権力者にもわけ隔てなく、出会った人々に真の教えを説いていく。(シネマトゥデイ)

【感想】
高橋伴明監督といえば、社会派やハードな作品を想像しますが、この作品は禅をテーマにしながらも、生き生きと生きている道元を通じて、人生を語るような解りやすい作品に仕上がっていました。
ヒットしていることが納得できました。


それも、ひとえに道元を演じる中村勘太郎の役者としての力量に負うところが大きいと思いました。
歌舞伎役者の花と技量で、ぶれることなく道元を体現していました。
幾度となく、苦しむ人の心に寄り添い、涙するシーンはとても美しいものでした。

時は鎌倉時代、政変もあり、権力の中にいる人も、貧しさに喘ぐ庶民も、心の寄りどころを求めている時代でした。
既成の宗教は保身に走り、争いばかり繰り返して民衆の苦しみを見ていない状態。
現代にも通じる混乱の時代でした。

幼くして母を亡くした道元は、人はなぜ死ぬのか、死んだら魂はどこに行くのかという大きな問いを抱えます。
「母は、死にたくない、そなたと一緒にいるここが浄土だ」と言いながら、母は死んでいったのでした。

宋に渡り、数々のお寺を訪ねますが、道元の問いに答えてくれる高僧は見当たりません。
もう、会えないのか、と諦めかけた時に、天童如浄禅師と出会い、座禅を組み、「只管打坐(しかんたざ)」を体得して大悟を得ます。

ここが一番難しい表現ですが、CGを使ってあっさりと表現していました。

その後、日本に帰った道元は、少ない弟子、貧しい暮らしの中で、人々に禅の教えを仏教の正法として解いていきます。
己の中に仏を見ると言う、厳しい修行をともなう教えであっても、弟子や信者を増やしていきます。
面白く思わないのが、多宗派の僧で、僧兵が来て道元の寺を焼き討ちしてしまいます。

そこで、波多野義重(勝村政信)が自分の領地へ招いてできたのが永平寺です。
今も、修行の寺として、現役ですね。すごい。


戦争の後遺症に苦しむ時の権力者北条時頼(藤原竜也)に対峙する道元は、まさに信念の人でした。
命を賭けたその説法は、病んだ時頼の心も動かします。
「春は花、夏ほととぎす、秋は月、冬雪さえてすずしかりけり」
あるがままを受け入れよ、という道元の教えでした。


おりん(内田有紀)とのエピソードは、「ジーザスクライストスーパースター」のマリアとのやりとりにも似ていました。

道元と弟子との別れ、道元と言えども、いい人間関係を構築できた結果なんだなあ、としみじみ感じました。
人は、一人では生きていけない、禅の極みを極めた人でも…。

全体的にベタなんだけど、真摯に本質を語るやり方に好感が持てる、いい作品でした。

マンマ・ミーア!

2009-01-26 11:06:50 | 映画ー劇場鑑賞
ーマンマ・ミーア!ーMAMMA MIA!
2008年 イギリス/アメリカ 
フィリダ・ロイド監督 メリル・ストリープ(ドナ)ジュリー・ウォルターズ(ロージー)ステラン・スカルスガルド(ビル)コリン・ファース(ハリー)ドミニク・クーパー(スカイ)ピアース・ブロスナン(サム)アマンダ・セイフライド(ソフィ)クリスティーン・バランスキー(ターニャ)

【解説】
全世界170都市以上で上演され、空前の大ヒットを記録した同名ミュージカルを映画化。ギリシャの小島を舞台に、20歳の花嫁ソフィの結婚式前日から当日までの物語が、伝説のポップグループ、ABBAの大ヒットナンバーに乗せてつづられる。監督は舞台版の演出を手掛けたフィリダ・ロイド。主人公ソフィを「ヴェロニカ・マーズ」のアマンダ・セイフライド、その母を名女優メリル・ストリープが演じる。豪華キャストの素晴らしい歌声に注目(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
エーゲ海に浮かぶギリシャの小島で、シングルマザーの母ドナ(メリル・ストリープ)に育てられたソフィ(アマンダ・セイフライド)。彼女のひそかな願いは、まだ見ぬ父親とバージンロードを歩くこと。結婚式を控え、父親探しをすることに決めたソフィは、内緒でドナの日記を読み、父親の可能性のある昔の恋人3人に招待状を出す。(シネマトゥデイ)

【感想】
友達に誘ってもらって、試写会に行ってきました。

日本では、劇団四季がロングラン公演をしていますが、世界中で大ヒットしたミュージカルの映画化です。
私も、1度見たことがあります。

舞台には客席と一緒に盛り上がれる、というよさがありますが、映画には、そのロケーションを楽しむという楽しみがありました。
ギリシャの小さな島でリゾートホテルを経営するドナ(メリル・ストリープ)が主人公です。

抜けるような青空、白い雲、深い碧をたたえた海、そこにやってくる一艘のヨット。
白い帆が一層ロマンチックです。
そして、ドナの一人娘ソフィ(アマンダ・セイフライド)が結婚式を挙げる教会は、尖った山の上にありました。

舞台では味わえない、壮大な自然がこの映画の魅力でした。

時代背景は、1990年頃でしょうね、1970年代に青春を送ったドナ。
世界を放浪し、あるときは女性コーラスグループのリーダとして人気もあったようです。

そして、ギリシャで恋に落ちた。
その恋人の名は、サム(ピアース・ブロスナン)。
身も心も許したのに、サムには婚約者がいた。
傷ついたドナは、ハリー(コリン・ファース)とビル(ステラン・スカルスガルド)とも関係を持ってしまった!!

その二人からもドナは身を隠し、この小島でソフィを出産、その後一人でソフィを育ててきた。
その一人娘が20歳でスカイ(ドミニク・クーパー)と結婚すると言い出した。
娘の幸せを願いながらも、世の中に出ていろんな経験をして欲しいと思う母。


そんな母の心を知ってか知らずか、ソフィは母の古い日記をみつけ、三人のパパ候補に結婚式の招待状を出したのです。


いまや、社会の重鎮となっている三人。
ドナからの正体と思い込み、島にやってきました。

物語は、ここから2日間の大騒動を、ABBAのヒット曲に乗せて、繰り広げていきます。
島の人たちが総動員で、歌って踊る、とても楽しい作品。

メリル・ストリープの歌唱力は「今宵フィッツジェラルド劇場で」で証明済み。
でも、ちょっと年を取り過ぎかなあ?
そんなことはない、あのはしゃぎっぷり、踊りっぷりは、大女優を越えていました。

ピアース・ブロスナンは、歌はうまいとは言えないけど、うまくないところに誠実を感じて、説得力がありました。

コリン・ファース、ステラン・スカルスガルドは、うまい。
作品のいいスパイスでした。

 ドナ(中央)と友達のロージー(左)とターニャ
ロージー役のジュリー・ウォルターズ、「ハリー・ポッター」シリーズでは、ロンのママ。
変われば変わるものです。びっくり!!

母の心、娘の心、それを支える友人たちの気持ちが温かく、見終わった後、「よーし、がんばろう」って、元気の出る作品でした。

ペルセポリス

2009-01-23 09:44:46 | 映画ーDVD
ーペルセポリスー PERSEPOLIS
2007年 フランス
監督=マルジャン・サトラピ(原作、脚本) 、ヴァンサン・パロノー キャスト=キアラ・マストロヤンニ(マルジ)カトリーヌ・ドヌーヴ(マルジの母、タージ)ダニエル・ダリュー(マルジの祖母)シモン・アブカリアン(マルジの父、エビ)ガブリエル・ロペス(少女時代のマルジ)フランソワ・ジェローム(アヌーシュおじさん)

【解説】
1970年から90年代の激動のイランを舞台に、どんなときもユーモアとロック魂を忘れない少女の姿を描いたアニメーション。原作者のマルジャン・サトラピ自身が監督を務め、。主人公マルジの成人時の声を『ゼロ時間の謎』のキアラ・マストロヤンニが、マルジの母親の声をキアラの母親でもあるカトリーヌ・ドヌーヴが担当している。ビビッドな映像とウィットに富んだせりふ、さらには少女の成長を見つめた普遍的ストーリーが見どころ。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
1978年のテヘランに住む9歳の少女マルジ(ガブリエル・ロペス)は、両親や祖母とともに何不自由なく暮らしていた。そんなある日、革命が始まり、新イスラム共和国が誕生。反政府主義者として投獄されていたアヌーシュおじさん(フランソワ・ジェローム)も解放され、マルジは彼からさまざまなことを教えてもらうが、その後アヌーシュは新政府に逮捕されてしまう。(シネマトゥデイ)

【感想】
2007年のカンヌ国際映画祭をはじめ、数多くの映画賞を獲得している作品。
監督で原作者でもあるマルジャン・サトラピの自伝的なお話なのだと思いました。

こういう映画に触れて、自分がいかに世界情勢に疎いかということが思い知らされる反面、映画を通じてでも、少しはものを知れてよかったとも思います。

この作品で語られているのは、イランで生まれ育った、一人の少女の個人的なことですが、そのなかにでも、この間の「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」で出てきた、ソ連軍のアフガンの侵攻の原因が、イラン革命にあったというつながりがわかりました。

イランが宗教革命を起こして、それがアフガニスタンに波及するのを怖れたソ連の行動だったのです。

「パフラヴィー朝下のイランは1953年のモハンマド・モサッデク首相失脚後、ソ連の南側に位置するという地政学的理由もあり、西側陣営の国際戦略のもとでアメリカ合衆国の支援を受けるようになり、脱イスラーム化と世俗主義による近代化政策を取りつづけてきた。皇帝モハンマド・レザー・シャーは1963年に農地改革、森林国有化、国営企業の民営化、婦人参政権、識字率の向上などを盛り込んだ「白色革命」を宣言し、上からの近代改革を推し進めた。シャーは自分の意向に反対する人々を秘密警察によって弾圧して、近代化革命を推し進めた。近代化にはイスラム教は邪魔と考え、厳しい弾圧を続けた。結果、宗教界の人々はもとより、右派から左派まで国民はシャー打倒を叫びだした。」(ウィキペディアより)

革命が起こるまでのイランは、上記のように、比較的自由な国に生まれ変わろうとしていたようです。
しかし、王家がアメリカと結びついて汚職などの私利私欲に走ったことや、宗教弾圧が厳し過ぎたなどの理由から、イラン革命へとつながったようです。

革命後は、王権への反発からか、宗教的な規制が厳しくなり、またまた共産党弾圧などが厳しくなったようです。
女性に対する規制はさらに厳しく、服装や生活態度にまで及んでいます。
マルジが学校に遅れそうで走っているだけで、警察官に「走る姿が性的だ、歩きなさい」ととがめられるシーンがありますが、「性的」に見るかどうかは、見る側の責任です。
ヒジャブで全身を覆うのは、女というだけで性的な存在だと言いたいようです。
マルジは「見るな」と叫んで走っていきました。

イランの指導者が十二イマーム派という、アラブ諸国でも異質なイスラームの指導者だったために、周辺国も緊張して、イランイラク戦争も勃発し、ソ連のアフガン侵攻も行われたと言う流れのようです。

体制が変わるたび、国民の生活も変わっていきます。
まさに、激変するのです。
思想弾圧にあって牢獄で亡くなる人、パーティをしていただけなのに、警察に追われてビルから転落してしまう人。
デートしているだけなのに、不純だと言われて、結婚せざるを得ない恋人たち。

パンクロックとブルース・リーをこよなく愛する少女マルジャンも、例外無く巻き込まれていきます。
祖母は「どんな世の中になっても、毅然と公明正大に生きなさい」とマルジを励まします。

母国で生きづらいからと言って、外国に逃れても、そこは所詮よその国です。
自分の居場所なんてないのです。

この作品は、ほんとうに解りやすく私たちに、国とは、人が生きるとは、ということを考えさせてくれました。

戦争や、宗教や、としかつめらしく押し付けてくる権力者たち。
でも、ほんとうに国を支えているのは国民だということに、早く気がつかなければ、いつまでたっても国は復興も発展もしません。

それは、私たち日本人が一番よく知っていることではないでしょうか?
あの国土を焼かれて焼け野原になった敗戦から、戦争を放棄して、先進国と言われるようになった日本の歩み。
そのことは、世界に誇り、戦争なんてしなくても、平和に生きる道はあるんだと、世界に語りかけてもいいんじゃないかなあ。


エンジェル

2009-01-23 09:34:43 | 映画ーDVD
ーエンジェルーANGEL
2007年 イギリス/ベルギー/フランス
フランソワ・オゾン監督 ロモーラ・ガライ(エンジェル・デヴェレル)シャーロット・ランプリング(ハーマイオニー・ギルブライト)サム・ニール(セオ・ギルブライト)ルーシー・ラッセル(ノラ・ハウ=ネヴィンソン)マイケル・ファスベンダー(エスメ・ハウ=ネヴィンソン)

【解説】
オゾン監督らしくなく、解りやすい作品でした。

少女の頃、エンジェル(ロモーラ・ガライ)のような夢を抱いた傲慢な少女、私もそんな少女だったような気がします。

独りよがりの夢を見がちな少女だった私は、多くの人がそうであるように、自分に才能のないことに気がつき、たくさん頭を打って、平凡な人生を歩んできました。

そういう多くの人と違っていたのは、エンジェルにたくましい想像力と文才が備わっていたことでした。

出版人のセオ・ギルブライト(サム・ニール)の妻ハーマイオニー(シャーロット・ランプリング)が、エンジェルを評して言うように、エンジェルは「傲慢で不躾、好きじゃないけど、大した女」です。

自分の才能だけで、欲しかった「パラダイス屋敷」「貴族的な生活」「理想の夫エスネ(マイケル・ファスベンダー)」を、若くして手に入れるエンジェル。
もう、誰からも文句なんて言わせません。
反目していた母も、忌み嫌っていた伯母も、不安ながらエンジェルの才能と成功を認めました。

でも、それは虚飾の生活だったのです。
夫は、エンジェルに魂も才能も抜かれてしまっていました。
しかも、愛人と二重生活をしていて、それに破れて自殺までしてしまいます。
エンジェルが愛していたのは、彼の抜け殻に過ぎなかったことに気がついたとき、初めてエンジェルの人生に深い陰を落とします。

現実が何も見えていなかったエンジェル。
自分が書いた小説さながらに、虚構の人生を生きていたエンジェル。
真実を知った時、深い喪失感に襲われ、生きるエネルギーもついえてしまいます。

エンジェルの人生を描いて、オゾン監督は観客に何を訴えようとしていたのでしょうか?

見終わった後で、それが一番の謎となりました。

夫のエメスは、「風と共に去りぬ」のアシュレーと重なりました。
アシュレーよりもっとしたたかで、ずるい男ですが。

エンジェルの才能に惚れて、最後まで寄り添うノラ(ルーシー・ラッセル)。
この人の存在が救いの映画でした。

シネマ歌舞伎「らくだ・連獅子」

2009-01-17 09:42:06 | 映画ー劇場鑑賞
ーシネマ歌舞伎「らくだ・連獅子」ー
2008年 日本
監督=山田洋次 
らくだーキャスト=中村勘三郎[18代目](紙屑買久六)坂東彌十郎(家主女房おいく)片岡亀蔵(駱駝の馬太郎)尾上松也[2代目](半次妹おやす)片岡市蔵[6代目](家主左兵衛)坂東三津五郎[10代目](手斧目半次)
連獅子ーキャスト=中村勘三郎[18代目](狂言師後に親獅子の精)中村勘太郎[2代目](狂言師後に子獅子の精)中村七之助(狂言師後に子獅子の精)片岡亀蔵(僧蓮念)坂東彌十郎(僧遍念)

【解説】
2007年10月に新橋演舞場で中村勘三郎、中村勘太郎、中村七之助が踊った舞台を、HD高性能カメラで撮影してスクリーンで上映する、2003年から松竹が開発・製作に着手している「シネマ歌舞伎」シリーズの第7弾。『シネマ歌舞伎 人情噺文七元結』に続いて日本映画界の巨匠・山田洋次監督が「シネマ歌舞伎」として新たな命を吹き込み、プロジェクト史上初の舞台上に設置したカメラで舞台げいこを撮影。客席の臨場感を体感できる迫力の映像が圧巻。(シネマトゥデイ)

【あらすじー連獅子】
河竹黙阿弥の作詞による歌舞伎舞踊の人気演目の一つで、親獅子が子獅子を千尋の谷に突き落とし、駆け上がって来た子獅子だけを育てるという故実を踊る「連獅子」。ニューヨーク公演でも絶賛されたこの演目で、親獅子を中村勘三郎が、子獅子を実の息子である中村勘太郎と中村七之助の親子3人が舞い踊り、迫力ある舞台を作り出す。(シネマトゥデイ)

【感想】
先日のシネマ歌舞伎「文七元結」に感動して、見に行きました。

「連獅子」は、かつて生で見たことがあります。
本当にきらびやかですばらしい踊り。
すごい迫力でした。

思わず拍手したくなりますが、映画だとできないので残念でした。

勘三郎さんがいちばん脂の乗り切っている今、中村勘太郎と中村七之助という息子たちの成長が著しい今、当世最高の映画監督が、最先端の技術力で撮った映像が、後世に残る意義も大きいと思いました。

「らくだ」は落語が元です。
落語も面白いけど、ビジュアルにしたら、こんなに面白いのかというくらい、笑いっぱなしです。
ちょっと気分が沈みがちな昨今、この映画を見て笑い飛ばしたいと思いました。

美しすぎる母

2009-01-11 15:23:54 | 映画ーDVD
ー美し過ぎる母ーSAVAGE GRACE
2007年 スペイン/フランス/アメリカ 
トム・ケイリン監督 
ジュリアン・ムーア(バーバラ・ベークランド)スティーヴン・ディレイン(ブルックス・ベークランド)エディ・レッドメイン(アントニー・ベークランド)エレナ・アナヤ(ブランカ)ウナクス・ウガルデ(ブラック・ジェイク)ベレン・ルエダ(ピラール・デュラン)ヒュー・ダンシー(サム・グリーン)

【解説】
実際に起こった息子による母親殺害事件を映画化し、カンヌ国際映画祭などで話題となった衝撃作。監督は『恍惚』で禁断の愛と狂気の行方を描いたトム・ケイリン。持ち前の美ぼうで大富豪夫人となるものの、息子によって殺害されるという主人公バーバラを『エデンより彼方に』のジュリアン・ムーアが演じる。息子役は『グッド・シェパード』のエディ・レッドメイン。官能的なタッチとショッキングな結末、さらには役者たちの熱演に注目だ。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
貧しい家庭で育ちながらも、持ち前の美ぼうで大富豪ブルックス・ベークランド(スティーヴン・ディレイン)と結婚したバーバラ(ジュリアン・ムーア)。息子アントニー(エディ・レッドメイン)にも恵まれ、幸せの絶頂にいたバーバラだったが、ブルックスが若い女に走り、裏切られたバーバラはアントニーに偏った愛情を示しはじめる。(シネマトゥデイ)

【感想】
この物語が実話だということを予告編で知り、興味を持ちました。
公開当時、劇場鑑賞する予定だったのに、世間の評判があまりに悪いので止めた経緯があります。

でも、思ったよりドロドロではなかった。
このようにしか生きれなかった母と息子、むしろ哀れを感じました。

ベークライトーフェノール樹脂(フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ベークライト、石炭酸樹脂)は、フェノールとホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂の一つで、世界で初めて植物以外の原料より、人工的に合成されたプラスチックである。硬化させた樹脂は、3次元的な網目構造を持つ。電気的、機械的特性が良好で、合成樹脂の中でも特に耐熱性、難燃性に優れるという特徴を持つ。耐油、耐薬品性も高いが、アルカリに弱い。また、これらの性能の割に、比較的安価である。
レオ・ベークランド(Leo Hendrik Baekeland, 1863年11月14日 ? 1944年2月23日)はベルギー生まれのアメリカ合衆国の化学者、発明家。合成樹脂「ベークライト」を発明、工業化に成功し、「プラスチックの父」とよばれる。ベークライトは製造の過程で爆発の危険があるなどしたため、その後、改良されたプラスチックが普及し、1960年代には姿を消すことになった。」(以上ウィキペディアより)

このレオの4代目が、主人公のアントニー・ベークランド(スティーヴン・ディレイン)。
彼の美し過ぎる母がバーバラ(ジュリアン・ムーア)。
アントニーの愛称がトニー。
赤ちゃんをあやすように母は「トニー」と呼び続けています。

結論から言えば、この悲劇、父親不在の家庭が原因。
核家族、富裕層独特の希薄な人間関係などなど他にも原因はあるのでしょうが。
でも、日本でも親殺しが増えている今日、他人事みたいには見れませんでした。
現代的な家族問題を内包している感じがしました。

このお父さん、ほんと、ひどいです。
自分の趣味の生活を大切にして、教養のない美貌だけの妻に飽きてしまっていることはまだしも、息子にも興味がなく、息子のガールフレンドを愛人にしてしまうなんて、そりゃ、息子も歪んでしまうというものです。
しかし、彼にも父や偉大な祖父に対してのコンプレックスがあるようでした。

傷つき残された母と息子。
母に知性と教養があれば、また違った展開もあったのでしょう。
また、息子がこんなに感性の鋭い純粋な青年ではなく、無神経なぼんくらなら、この悲劇を免れたのかもしれません。

すべての条件が揃って、悲劇は起こってしまうのです。

アントニーが父へ宛てた手紙を、父の玄関に隠している様子は哀れなものでした。
それを見ていながら声もかけない冷たい父親。
愛せない妻の生んだ子は、血を分けた息子といえどもかわいくないのでしょうか?
自分が父親に愛されたことがないから、愛せないのかもしれませんね。

父の名声や経済力に依存して、自分の人生を歩めない母。
母と息子は一心同体の様に、堕ちていくというわけです。
「母は、息子を使って自殺したのではないか?」と監督は語っています。
鬱病だったようなので、その可能性も否定できません。

アントニーは、心神耗弱を理由に数年で刑務所を出て、母方の祖母に引き取られますが、その祖母も1週間とたたないうちに刺して重傷を負わせ、あげくに自殺しているそうです。

親殺しのニュースを聞いて、いつも思うのですが、結局、親を殺しているようで、自分を殺しているんですよね。
自分と親の区別がついていないというかー。
思春期の子供にとって、親は経済的にも生活面でもなくてはならないもの、自分の命を守る存在です。
それくらい、子供にだって解っているはず。
その親を殺してしまうということは、自分の生きる道を閉ざすのと同じです。

人間関係の難しさを、ひしひしと感じます。
できるだけ、親子が1対1で対峙しないで、逃げ道をたくさん作っておいてほしいと思う。
愛し合っていることは、解りきっていることなんだから、求めすぎることなく、与えすぎることなく、そのしんどい時代さえうまくやり過ごしたら、また、いい関係も見えて来るのに、と思う。

少子化と核家族化が進んでいるいまだからこそ、家族以外の人とたくさんつながって、めんどくさくても、だるく感じても、社会的なつながりを広げていくことが、セイフティネットを広げることになるんだと切実に思います。

譜めくりの女

2009-01-11 15:18:13 | 映画ーDVD
ー譜めくりの女ーLA TOURNEUSE DE PAGES
2006年 フランス
ドゥニ・デルクール監督 カトリーヌ・フロ(アリアーヌ・フシェクール)デボラ・フランソワ(メラニー・プルヴォスト)パスカル・グレゴリー(ジャン・フシェクール)グザヴィエ・ドゥ・ギュボン(ローラン)クロティルド・モレ(ヴィルジニー)クリスティーヌ・シティ(プルヴォスト夫人)ジャック・ボナフェ(プルヴォスト氏)

【解説】
クラシックの世界を舞台に2人の女性の愛憎を描き、セザール賞3部門にノミネートされた心理ドラマ。監督は高名なヴィオラ奏者であり、国立音楽院の教授でもあるドゥニ・デルクール。『地上5センチの恋心』のカトリーヌ・フロと『ある子供』で鮮烈なデビューを飾ったデボラ・フランソワが、人気ピアニストとその“譜めくり”を演じる。クラシック音楽さながらに繊細(せんさい)で、情感豊かに展開するヒロインたちのドラマが堪能できる。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
かつてピアニストを目指す少女だったメラニー(デボラ・フランソワ)は、ピアノの実技試験中、審査員の人気ピアニスト、アリアーヌ(カトリーヌ・フロ)の無神経な態度に動揺してミスを犯し、ピアニストの夢を絶たれる。その後、アリアーヌに再会したメラニーは、演奏会の成功の鍵を握る“譜めくり”に抜てきされるが……。(シネマトゥデイ)

【感想】
この映画、復讐心理劇です。
メラニー(デボラ・フランソワ)対アリアーヌ(カトリーヌ・フロ)ですが、メラニーの一方的な恨みで、復讐される覚えはアリアーヌにはありません。
そこがこの映画の怖いところ。
アリアーヌは不幸な事故から精神不安定に陥り、演奏家生命をかけて再起に努力しているところなのですから。
その弱みをメラニーはがっちり押さえ、じわじわと復讐を実行して行きます。

アリアーヌの気持ちは解りやすいので、観客はメラニーの心理を探るように作品を見ていくことになります。

☆ネタバレ
復讐の動機となったピアノの入学試験。
メラニーの演奏の最中に、ファンのサインに応じてしまったアリアーヌ。
メラニーは集中力が途切れ、あとの演奏は散々なものになってしまった。
勝ち気な少女は、ピアノに鍵をかけ自ら音楽への道を封印してしまう。

私は、これが復讐の動機になるのかという疑問を持ちました。
仮説として、メラニーがアリアーヌの狂信的なファンであったとすれば、その異常さが際立つ気もしました。

二人の再会は偶然だったように思いました。
メラニーが実習に行った法律事務所の所長の家のベビーシッター。
訪ねてみるとアリアーヌが所長の妻だったという感じ。

そこで、復讐心が甦ったのでしょうか?
でも、息子まで標的にするのはやりすぎじゃないかな?
彼の腱鞘炎が治るといいのだけど。

若く美しいメラニーに、恋愛感情さえ抱くほど、依存していくアリアーヌには哀れさえ感じさせました。

この2大女優競演。
見終わって、余韻が残るいい映画ですが、私の個人的な感想としては、まだまだ将来のある若い娘が、落ち目になっている人間に対して、さらに弱みにつけ込んでそこまでしなくても…と思いました。