マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

ビガイルド 欲望のめざめ

2018-02-28 15:41:29 | 映画ー劇場鑑賞

ービガイルド 欲望のめざめーTHE BEGUILED

2017年 アメリカ 93分

 

監督・脚本=ソフィア・コッポラ キャスト=コリン・ファレル (マクバニー伍長) ニコール・キッドマン (ミス・マーサ) キルステン・ダンスト (エドウィナ) エル・ファニング (アリシア)

 

【解説】

第70回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したスリラー。南北戦争期のアメリカ南部にある寄宿学園を舞台に、負傷して運び込まれた北軍兵士をめぐって、女性たちが情欲と嫉妬をむき出しにする姿を映す。監督は『ロスト・イン・トランスレーション』などのソフィア・コッポラ。『ラビット・ホール』などのニコール・キッドマン、ソフィア・コッポラ監督作『SOMEWHERE』にも出演したエル・ファニング、『メランコリア』などのキルステン・ダンストらが出演している。(シネマトゥデイ)

 

【あらすじ】

南北戦争下のアメリカ南部。世間から隔絶された女子寄宿学園で生活している園長(ニコール・キッドマン)や生徒(エル・ファニング)ら女性7人は、けがを負った北軍の兵士(コリン・ファレル)と遭遇する。敵方ではあるが、彼女たちは彼を屋敷に運んで介抱する。園長をはじめ学園の女性たちは、容姿端麗で紳士的な彼のとりこになってしまう。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

私は小学校の時から女子クラスで育ったので、こういう閉鎖された女の世界というテーマにすごく惹かれました。

1971年のドン・シーゲル監督、クリント・イーストウッド主演の「白い肌の異常な夜」のリメイクだそうですが、私は残念ながらオリジナルは見ていません。

でも、全然違う作品に仕上がっていたのではないかな?

この作品で監督のソフィア・コッポラはカンヌ映画祭の監督賞を受賞しています。

 

南北戦争が激しくなり、南部の小さな村にも戦乱の影が迫っている頃、マーサ園長(ニコール・キッドマン)が経営するファーンズワース女学園には、帰る場所がない女子学生5人ともう一人の教師エドウィナ(キルステン・ダンスト)が、ひっそりと寄宿生活を送っていた。

生徒のエイミー(ウーナ・ローレンス)が森の奥できのこ採りをしていると、大怪我を負った北軍の伍長マクバニー(コリン・ファレル)と遭遇した。

マクバニー伍長

エイミーは学園まで連れ帰り、ミス・マーサたちは驚くが、まず傷の手当と学園の建物の中に彼を運び入れた。

ミス・マーサは彼の足に埋まった銃の弾を取り除き、裂けた傷を縫い合わせ、消毒をして寝かせておく。

部屋は立ち入り禁止にするが、女学生たちは興味津々で彼と接触する。

 

やがてマクバニーがなんとか歩けるようになると、庭の手入れなど、力仕事を引き受けて働くようになる。

しかし、マクバニーは敵である北軍の兵士であり、良くなれば出て行ってもらうとミス・マーサは宣言した。

そして、その歓送会を開いた夜、事件が起こる。

 

☆ネタバレ

その夜エドウィナの部屋に行くと囁いたマクバニー、しかし、エドウィナが物音を聞きつけて開けた部屋で、彼はアリシア(エル・ファニング)と抱き合っていた。 

ショックを受けたエドウィナはマクバニーを階段の上から突き落としてしまう。

ミス・マーサはマクバニーの出血を止めるため、マクバニーの足を切る決断をした。

 

片足を失ったことを知ったマクバニーは荒れ狂う。

ミス・マーサの銃を奪い、みんなを脅かした。

もともとマクバニーはアイルランド移民で、北軍にはお金で雇われた傭兵だった。

南軍は引き上げてしまった。

北軍に引き渡すとこの学校のことが敵に知られてしまう。

ミス・マーサと女学生たちは毒キノコで彼を殺すことを思いつく。

 

閉鎖された世界で、誰が主導権を握るか、スリリングな展開です。

ニコールとキルスティンの男をめぐる主導権争いが見所。

そして、毒キノコ作戦を知らないキルスティンを、女学生たちの機転で切り抜けるところがとてもドキドキの展開でした。

 

マクバニーとエドウィナ

ここから出て行くことを夢見て、男に取り入ろうとしたキルスティンの野望も、マーサの前にしぼんでしまったところ、マーサという人のしたたかさ、強さ、見事だと思いました。

 

私は、ソフィア・コッポラのガーリー作品、結構気に入っています。

この作品も副題の「欲望のめざめ」みたいなことはありません。

ドロドロしていないし、あっさり、さっぱりしています。

この作品も、女性が作った品だと思いました。

女同士の付き合いって、こんな感じだなあと思いました。


アバウトレイ 16歳の決断

2018-02-19 17:22:29 | 映画ー劇場鑑賞

ーアバウトレイ 16歳の決断ー3 GENERATIONS/ABOUT RAY

2015年 アメリカ 92分

 

監督=ギャビー・デラル キャスト=ナオミ・ワッツ (マギー) エル・ファニング (レイ) スーザン・サランドン (ドリー) テイト・ドノヴァン (クレイグ)

 

【解説】

『SOMEWHERE』などのエル・ファニングらが出演したヒューマンドラマ。16歳のトランスジェンダーのレイと、レイを見守る家族の姿を追い掛ける。メガホンを取るのは、女優としても活躍してきたゲイビー・デラル。『インポッシブル』などのナオミ・ワッツ、『デッドマン・ウォーキング』などのスーザン・サランドンら実力派が共演する。ハートウォーミングなタッチもさることながら、短髪の主人公にふんしたエルの熱演も見どころ。(シネマトゥデイ)

 

【あらすじ】

トランスジェンダーで16歳のレイ(エル・ファニング)は、身も心も男性として生きていくことを母親のマギー(ナオミ・ワッツ)に告げる。思わぬカミングアウトと医師から渡されるホルモン治療の資料などに、マギーは困惑するばかり。一方、レズビアンであることを公言してパートナーと充実した日々を送る祖母ドリー(スーザン・サランドン)はレイを応援する。ある日、マギーはレイのホルモン治療の同意書にサインをもらおうと元夫を訪ねる。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

この作品、2015年のです。

どうも地味な作品なので公開を見送られていたらしい。

日の目を見られて良かったです。

いい作品ですよ。

 

トランスジェンダーの問題というのは、日本では話題にも上らず、蓋されがちだと思います。

そして、グローバルスタンダードなルールは受け入れようと建前論は整っているように見えます。

アメリカでは言い古されたテーマになってしまったのかもしれないけど、日本ではまだまだ口にしたくないタブーに近いテーマなんじゃないでしょうか?

その表れか、劇場のお客さんもすごく少なかった。

私を入れても10人以下。

 

でもこの作品を、家族の問題を描いた作品としてみたら、女3世代の、意外に古臭い、または失われた家族の絆というテーマの作品になっていて、実は私、後半泣きっぱなしでした。

お客さんが少なくて、思う存分涙を流せて良かったくらいです。

 

私立高校に通う16歳のレイ(エル・ファニング)は、シングルマザーの母マギー(ナオミ・ワッツ)とその母の母、祖母ドリー(スーザン・サランドン)と彼女のパートナーのフラニー(リンダ・エドモンド)の4人家族。

普通のとは言えないけど、3世代同居の家庭。

 

レイはラモーナという名前を持つ女の子として生まれたが、自分の性に違和感を持ち、とうとう男性として生きる道を選んだ。

しかし、未成年のため、ホルモン治療を始めるためには両親の承諾が必要だった。

 

ドリーは、自分もレズビアンカップルとして生きているので、体を変えてまで男性になる必要はないと考えている。

 

マギーは、本音では娘のままでいて欲しいと願うが、レイの切なる願いも叶えてやりたいと葛藤する。

 

レイは、新学期は男の子として転校して新しい学校で迎えたいと切望している。

 

問題は、両親のサイン。

つまり父親のサインも必要ということ。

マギーは、レイの父親であるグレイグ(テイト・ドノヴァン)とは、10数年も連絡をとっていないし、行方も知らなかったのだ。

 

マギーはグレイグを探し当てたが、グレイグには新しい家族があった。

もちろん、事情が分からないグレイグはサインを拒否する。

 

☆ネタバレ

このストーリー、トランスジェンダーというのは身近に感じられなくても、問題を抱えた家族をどう受け入れるか、というテーマで考えれば、すごく共感できます。

 ドリーとそのパートナー

ドリーのような、ウーマン・リブ時代の主張の強い母親に育てられたマギーという人物。

シングルマザーとしての生き方を選んだのではなく、仕方なくそうなったという感じ。

今も収入が少なく、母のアパートでパラサイトしている状態。

過去の過ちときちんと向き合わなかった結果が、最愛の娘からあぶり出されたという感じです。

 

苦悩するマギーですが、彼女なりに問題に向き合おうとする姿にとても共感が持てました。

マギーの過去の過ちで、自分が父親のない子になってしまったことを知るレイの絶望も悲しかった。

それでも、家族がなんとか理解し合い、許しあっていく過程が心を打ちました。

 

エル・ファニングが、かわいい子役から脱皮するような迫真の演技です。

 

ラストの日本食料理屋さん、今まで存在も知らなかった家族が大きなテーブルを囲んでぎこちなく食事する様子がとても微笑ましかったです。


グレイテスト・ショーマン

2018-02-17 15:46:41 | 映画ー劇場鑑賞

ーグレイテスト・ショーマンーTHE GREATEST SHOWMAN

2017年 アメリカ 104分

 

監督=マイケル・グレイシー キャスト=ヒュー・ジャックマン (P・T・バーナム) ザック・エフロン (フィリップ・カーライル) ミシェル・ウィリアムズ (チャリティ・バーナム) レベッカ・ファーガソン (ジェニー・リンド)

 

【解説】

19世紀に活躍した伝説のエンターテイナー、P・T・バーナムを『X-MEN』シリーズや『レ・ミゼラブル』などのヒュー・ジャックマンが演じるミュージカル。空想家の主人公が卓越したアイデアと野心で世界中を熱狂させるさまと、ロマンチックな愛の物語が描かれる。監督はマイケル・グレイシー。ミシェル・ウィリアムズやザック・エフロンらが共演。『ラ・ラ・ランド』で第89回アカデミー賞歌曲賞を受賞した、ベンジ・パセックとジャスティン・ポールが音楽を担当している。(シネマトゥデイ)

 

【あらすじ】

P・T・バーナム(ヒュー・ジャックマン)は妻(ミシェル・ウィリアムズ)と娘たちを幸せにすることを願い、これまでにないゴージャスなショーを作ろうと考える。イギリスから奇跡の声を持つオペラ歌手ジェニー・リンド(レベッカ・ファーガソン)を連れてアメリカに戻った彼は、各地でショーを開催し、大成功を収めるが……。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

P・T・バーナムという人は、実在の人物なんですね。

19世紀のアメリカの興行師。

賛否両論のある人物のようですね。

 

さて、映画の中のP・T・バーナム(ヒュー・ジャックマン)は、仕立屋の息子。

父についてお屋敷に出入りし、その家の一人娘チャリティ(ミシェル・ウィリアムズ)と恋仲になる。

チャリティは寄宿学校に入れられ、バーナムは父を失い宿無しとなるが、チャリティと文通しながら愛を育む。

バーナムは仕事を転々としながら、安アパートを借りたところでチャリティを迎えに行き結婚、二人の娘に恵まれた。

 フィニアス・バーナムとチャリティ

しかし、堅気の仕事はうまくいかず、バーナムは詐欺まがいのことをして銀行から資金を得て、ニューヨークに博物館をオープンさせる。

娘の一言からインスピレーションを得たバーナムは、当時偏見と差別の中で暮らしていたフリークス(奇形や奇人の人たち)を集めてサーカスを開いた。

これが大当たり。

 

お金持ちにはなったけど、上流と言われる人たちの世界には入れてもらえない。

娘も差別され、妻の両親とも和解できない。

 

そこで新進劇作家のフィリップ(ザック・エフロン)と手を組み、なんとか上流社会にも認められようと野心を燃やす。

 フィリップとバーナム

ヴィクトリア女王の御目通りが叶い、ヨーロッパでは有名な歌手ジェニー・リンド(レベッカ・ファーガソン)と出会う。

 歌姫、ジェニー

☆ネタバレ

ジェニーのアメリカ進出を手伝い、ニューヨークでのコンサートを成功させたバーナム。

この時、ジェニーもまた上流階級に復讐心を燃やしていて、自分と共通の思いがあることを知る。

 

サーカスはフィリップに任せ、ジェニーと一緒にアメリカ全土を興行して回ることになった。

チャリティも娘たちも置いて。

 

この時のバーナムは、上流階級をひれ伏せさせたいという野心しかない。

愛する家族も、今まで一緒にやってきた仲間たちの気持ちもまるで思いやれない。

 

ジェニーの巡業は各地で大成功を収めていた。

しかし、ジェニーとバーナムの思いがずれてき始めた時、二人の関係は破綻して、バーナムには莫大な借金だけが残った。

 

そこにバーナムの劇場の火事。

フィリプが大やけどを負った。

 

失望の中にいる時、フリークスたちがバーナムを励ます。

そして、フィリップが出資して、空き地に大きなテントを張ってサーカスを再開。

 

バーナムはフィリップにサーカスを任せ、自分は家族の元へ戻っていった。

 

この作品、ミュージカルにして成功したんじゃないかな?

時代は19世紀だけど、音楽は今のキレキレのポッブなミュージック。

ダンスもキレキレ。

すごく楽しい。

 

バーナムは貧しいから誰もやっていない見せ物みたいなことをやって、大衆に怖いもの見たさで受けただけで、彼自身に偏見がなかったわけじゃない。

新聞批評も最悪、でも彼は逆境アイデアと力にする強さがあった。

 

やはり芯になってくるのはチャリティとの愛。

バーナムは、チャリティと娘たちのためにもっともっとと欲張りすぎて破滅してしまった。

 

チャリティも、ジェニーとの仲を邪推するのではなく、破産したことを相談してくれなかった夫に失望して去って行ったのです。

「言ってくれたら、反対しなかったのに…」

 

この夫婦、本当に運命の人だったんだなあって、感動しました。

 

バーナムは心を入れ替え、家族のために尽くす父親になっていくでしょう。

 

ヒュー・ジャックマンはアカデミー賞の司会でも歌とダンスを披露してくれていたし、もちろん「レ・ミゼラブル」では主役を務めていましたので、その実力は十分発揮されています。

 

忘れていけないのが、ザック・エフロン。

私は忘れそうになっていたけど、「ヘア・スプレー」ね。

また、見直したい気持ちです。

 

今回もいい役でしたね。

 

単純に楽しめばいいんじゃないかなあ。

歌と音楽とダンスとサーカス!!

めくるめくショーの世界。

素敵です。


スリー・ビルボード

2018-02-11 15:05:40 | 映画ー劇場鑑賞

家庭の事情と怠け癖から、長らくブログの更新ができていませんでした。

覗きに来てくださっていた読者の皆様、本当にありがとうございます。

まだ元どおりとはいきませんが、少しずつ更新を増やしていきますので、よろしくお願いします。

 

ースリー・ビルボードーTHREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI

2017年 アメリカ 116分 

監督・脚本=マーティン・マクドナー キャスト=フランシス・マクドーマンド (ミルドレッド・ヘイズ)ウディ・ハレルソン (ウィロビー) サム・ロックウェル (ディクソン) アビー・コーニッシュ (アン)

 

【解説】

娘を殺害された母親が警察を批判する看板を設置したことから、予期せぬ事件が起こるクライムサスペンス。本作はベネチア国際映画祭で脚本賞、トロント国際映画祭で観客賞に輝いた。娘を失った母をオスカー女優のフランシス・マクドーマンドが演じ、『メッセンジャー』などのウディ・ハレルソン、『コンフェッション』などのサム・ロックウェルらが共演。ウディやサムも出演した『セブン・サイコパス』などのマーティン・マクドナーがメガホンを取る。(シネマトゥデイ)

 

【あらすじ】

ミズーリ州の田舎町。7か月ほど前に娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、犯人を逮捕できない警察に苛立ち、警察を批判する3枚の広告看板を設置する。彼女は、警察署長(ウディ・ハレルソン)を尊敬する彼の部下や町の人々に脅されても、決して屈しなかった。やがて事態は思わぬ方へ動き始め……。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

原題を直訳すると「ミズーリ州のエビリングの町はずれにある3つの大きな広告板」という感じでしょうか。

ミズーリ州はアメリカ中西部に位置しています。

エビリングという町は架空だそうです。

 

ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は町はずれの、ほとんど車も通らないようなところにあるボロボロの広告板を見て、広告を出すことを思いつきます。

ミルドレッドの19歳の娘は、この広告板の近くでレイプされ焼死体で発見されました。

それから7か月も経つのに、犯人の手掛かりすらつかめていません。

ミルドレッドは犯人にはもちろんのこと、捜査が進展しない警察にも怒っていました。

そこで思いついたのが、警察を批判する意見広告。

責任者のウィロビー警察署長(ウディ・ハレルソン)を名指ししました。

 

ウィロビー警察署長(ウディ・ハレルソン)とミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)

⭐︎ネタバレ

娘を無残に殺された母親が出した広告、同情されてしかるべきと思うが、批判されたウィロビー所長は人格者で町の人々の尊敬を集めていた。

ミルドレッドに同情を寄せていた町の人々も、この行為はやりすぎだと冷たい態度に変わっていった。

息子は学校でいじめられ、元夫も忠告しに来た。

元夫はミルドレッドに暴力をふるい、19歳の若い恋人がいた。 

 

ウィロビーも、捜査が進展しないことに忸怩たる思いを持っていたが、このミルドレッドの派手な広告板には憤っていた。

ミルドレッドに広告を取り下げるよう頼みに行き、自分の膵臓癌で余命が限られていることも打ち明けるが、ミルドレッドは引き下がらない。

 

ウィロビーを慕う部下のディクソン(サム・ロックウェル)は、広告板を製作した広告会社のレッド(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)に圧力をかける。

 

まず、ウディ・ハレルソンとサム・ロックウェルという個性派俳優が警官役というところに驚かされます。

ウィロビーは重い病にかかっているし家族思いだし、人格者。

しかし、思わぬタイミングで自殺してしまいます。

彼は遺書を残していて、ミルドレッドに善行を行うのです。

 

ディクソンの方は、独身で、マザコンで、差別主義者だし乱暴者。

はっきり言って、ひどい警官です。

最終的にはレッドにひどい暴力を振るって瀕死の重傷を負わせてしまう。

これがもとで、警官はクビに。

 

ディクソン(サム・ロックウェル)とママ

 

ミルドレッドも、事件解決と警察批判のためには手段を選ばない人。

火炎瓶も投げてしまうし、危うくディクソンを殺すところでした。

でも、娘の事件にこだわる執念の裏には、娘への深い愛情と確執への悔恨の思いもあるのです。

 

このように、この三人が悪人でもなく、善人でもなく、実に人間的。

良心もあり、差別心もあり、自分のことはなかなか客観的に見られない人たち。

つまり、私たちですよね。

 

見ているうちに、犯人捜しなんてどうでもよくなって、登場人物たちの言動や動向に目を離せなくなっていきます。

怒りに燃えて行った行為とそこから巻き起る波紋、取り返しのつかない結果。

行動を起こすということがいいことか悪いことか、だんだんわからなくなっていきます。

 

そしてラスト、ミルドレッドとディクソンが車に乗り込み、どうやら良くないことをしに行く様子。

でも、どこか幸せそうな二人。

このラスト、すごく気に入りました。

しばらくこのシーンが頭から離れなくなりそうです。

 

この作品、今年度のアカデミー賞の作品賞、脚本賞、主演女優賞にフランシス・マクドーマンド、助演男優賞にウディ・ハレルソンサム・ロックウェルがノミネートされています。

脚本の良さと個性的な俳優陣。

映画の醍醐味ですね。

 

忘れてはいけない、音楽の効果。

悲惨なテーマを悲惨に見せない、効果絶大でした。