お葬式事情 5 葬式の台所

カンボジアから   金森正臣(2006.01.25.)

お葬式事情 5 葬式の台所

写真:街角で行われた葬式の台所。専門の賄い業者がいて、鍋釜かまどをトラックに積んでやってくる。水を家の中からホースで引いて、台所の出来上がり。まことに簡単。この家では、6基もの竈(かまど)が据えられ、大がかりの調理となった。

 前回に報告した、お葬式の続きの調理場の風景。葬式でも結婚式でも、法事でも家庭で行う場合には、調理に限界がある。カンボジアでは、専門の業者がいて鍋釜、竈、食器、スプーン・フォーク・箸などのセットをトラックで運んできて開業となる(カンボジアでの食事には、必ずスプーン・フォークが付く)。場合によっては、皆が集うテントからテーブルとイスまでセットになっていることもある。

 この家では、葬儀が盛大に行われたので、竈が6個も用意されている。通常は3個で間に合い、場合によっては2個の時も見かける。使われるアルミ鍋は、何処でも大きさがだいたい同じで、愛知県三河地方でハソリと呼んでいる鍋よりもやや深い。以前にこのハソリなるものでウドンを作ったことがあった。見た目には底の方にちょっとだけで、なんだか寂しい感じであった。しかし食べ始めてみると、20人ぐらいでも食べきれなくて参ったことがある。この鍋は、それよりやや入るので、1鍋で100―150人分のスープは賄えると思われる。

 カンボジアの葬式料理がどの様なものであるかは、十分に分かっていない。しかしながら、日本の精進料理とは異なり、肉類が使われている。多分ヒンズー教の影響もあって、肉類が忌避されていない。カンボジアでは、お寺の縁日(月4回)には、お料理したものをお寺に持って行き、お坊さんに布施する。度々見ているが、何時も肉が入った料理が入っている。年を取ると生活の中で殺生が無いように気を使うのと、どの様に整合性があるのかは、まだ理解できないない。

 中国料理の影響と思われるが、干し椎茸、干しエビ、ニンニクなどが使われる。干し椎茸は、多分カンボジアでは生産されていない。最近は日本でも見られる、薄く切った干し椎茸が出回っており、水に戻さなくても使えるので便利である。しかし、この薄切り椎茸は、干した時の臭いが残り上質な味にはならない。市場では、日本でドンコと呼ばれる、まだ傘が開かない肉厚な上質のものも見かける。

 この様な調理場で料理するのであるから、衛生状態が気になるのだが、カンボジア人はあまり気にしていない。冷蔵庫もないし、まな板も衛生的とは思われない。第一水が十分ではないから、食器などの洗浄が心配である。この状態で3日間もしたら、あまりきれいな状況ではない。食材はその都度買って来るにしても、まな板は中国式の木の輪切り板である。十分水を掛けて洗っても、様々な食材のこびり付きがある。それをしばらく放って置いてまた使うから、当然菌の繁殖もある。何しろ熱帯で気温は培養に十分な、30度近くはある。

 衛生状態など余分な心配かも知れない。25年も以前にナイル川のファルーカ(ヨット)で遊んだ時に、船頭にナイルの水を進められてインド人は、ベリー・スウィートとか言って平気で飲んでいた。ウーン。私は明日の朝、起きてこられないヨ!なんて考えて遠慮した。やはりインダス川で育ったのは違うと、痛く感じ入った。何しろコチトラは、様々な菌に対抗する抗体が無い。インダス川で育った連中は、生まれた時から抗体を作り続けている。できなかったのは、あの世に行ってしまったわけだから、残っているのは抗体を持っている。カンボジア人もきっと沢山抗体を持っていて強いのであろう。やはりきれい好きの日本人は、弱いのか?なかなかインド人の様に、何処でも生きられるコスモポリタン(国際人)には成れない。
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