カンボジアの交通事情 5 シクロ

カンボジアから   金森正臣(2006.01.20.)

カンボジアの交通事情 5 シクロ

写真:シクロに4人乗り。モト全盛の時代になって、シクロは廃れるかと思って見ていたが、いっこうに無くなる気配はない。モトよりもやや高く、同じ距離なら2倍ぐらいはする。しかし、お年寄り達を中心に、良く使われている。長距離の場合は速度が遅いから無理である。しかし、近くであれば重い物でも載せられるし、かさばる物でも乗せられる。ご覧の様に、大きなお嬢さんが4人も乗れるのだから。

 カンボジアには、公共交通機関が発達していないから、市内の移動は全て何かを貸し切ることになる。例えばモトであったり、シクロであったりする。タクシーも最近出てきたが、まだ空港で待っているのがせいぜいで、市内の流しは無い。

 シクロは、三輪自転車である。前に二輪付いていてそこにお客の乗り台が取り付けられている。極めて簡単な構造である。多量の荷物が載せられるのと、ゆっくりで安心感があるので年寄り達がよく利用している。しかし、ゆっくりであっても安全であるかどうかは別問題で、しばしば交通事故には巻き込まれている。値段はモトよりも高く、最初から2,000リエル(0.5ドル)程度はする。モトだと同じ距離だと半額である。

 値段は高くても、多量の荷物が積めたり、一家で出かける時に子どもまで全員が乗り込めたりで結構人気がある。300kgは積んでいるであろうと思われることもある。また、モトでは積めないかさばる荷物を、しばしば積んでいる。荷主は片側を支えながら歩いていることもある。例えば、鉄製の門扉などを乗せると、荷主は脇について行くことになる。

 写真でもお分かりの様に、大きなお嬢さんが4人ものって、なんだかシクロが可哀想な気もする。でもカンボジア人は、そんなことは気にしない。定員は乗れるだけである。

 シクロの運転手は、地方からの出稼ぎ者が多いと言う。多くは、シクロは自分の物ではなく、シクロを沢山持って貸し出している網元みたいな存在がいる。1日或いは1月いくらかで借り、それ以上の稼ぎが運転者のものになる。何れの運転者も貧しく、服装もかなり哀れである。宿に泊まるお金もないので、路上でシクロの上に泊まっている。運転者同士も、夜中に襲われる危険があるのか、数人が同じところで泊まる。集まるとトランプの博打などが始まり、稼いだ金が何処に消えているのかは定かではない。良くモトのドライバーも一緒に加わっているが、モトがほとんど自分のものであるのに対し、シクロはほとんどが借り物で、所持している財産量から言ったら格段の差がある。シクロ台数は、モトの5%ぐらい以下かと思うが、定かではない。

 シクロの運転者は、路上生活に近いので、朝などは公園の水道などを使って、顔を洗ったり体を洗ったりしている。良くシクロも洗っており、かなり綺麗好きだとは思われるが、服装はそれとは反している。
 地方の家に仕送りするほど稼げるのかどうか分からない。しばしば村から出て行ったまま帰らないで、家庭が崩壊してしまった話も聞く。だいたい村から出て行った知人などを頼って都市に出て、シクロの運転手になることが多い様だ。シクロの親方も、この様な人材の集め方をしているようだ。
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