はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

マテ貝採り

2012-05-22 10:58:59 | はがき随筆


 今年は久しぶりにマテ貝採りを楽しんでいる。くわと塩と浜てごを持って行く。浜は家族連れでいっぱいだ。干潟の砂を斜めに削ると、マテ貝の小さな楕円形の穴がいくつも出てくる。その穴に塩を入れると、水がブクブクして、ヒョコヒョコ出てくる。それを素早く指で引き抜く。あまり強く引くとマテ貝が切れて可哀そうだ。中には水だけブクブクするのものや取りそこないもある。このブクブクとヒョコヒョコを見極めて採るタイミングが難しいが、面白く妙味だ。腰は大変痛い。しかし、明日になると痛さは忘れて楽しんでいる。
  出水市 畠中大喜 2012/5/21 毎日新聞鹿児島版掲載

見かけだけでは

2012-05-22 10:35:11 | はがき随筆
 45歳の時に産んだ一人娘と一緒にいると、必ず娘は、お孫さんと言われる。
 それを聞いて、テンションがぐんと下がる私に気を使い、娘は初めての他人と一緒の時には、必要以上に「母ちゃん」「母ちゃん」を連発し、母ちゃんである事をもモーレツにアピールする。
 残念ながら娘のその気遣いは届かず「お孫さん」と言われてしまうのは、何故?
 「母ちゃんです」と言うと、うろたえる相手。他人を見かけだけで判断してはいけないのだと、娘と私はずっと勉強させられている。
  鹿児島市 萩原裕子 2012/5/20 毎日新聞鹿児島版掲載

鹿児島弁

2012-05-22 10:29:08 | はがき随筆
 娘が帰るなり「がねって知ってる?」「知らないヨ」。職場でがねの話が出て、かき揚げのことで形がカニに似ているから、と教わったという。なるほど面白い。魚のことをいおと知ったのも最近。結婚当初、主人と会話中ちょっと得意に「じゃっど」と言って、亭主に言う言葉ではないと苦笑しながらたしなめられた。それから下手に鹿児島弁を使わないことにしたが、ある時、自然に出て、義弟が「姉さんも鹿児島弁になったネ」と笑った。山口から嫁いで四十数年。鹿児島弁は難解だが、簡潔でインパクトがある。“かごっま弁”にかんぱーい。
  鹿児島市 内山陽子 2012/5/19 毎日新聞鹿児島版掲載

愛車

2012-05-22 10:21:46 | はがき随筆
 もう48年も昔になる。2回目の転勤は田園広がる地方の中学校。1年生の担任になり4月末は家庭訪問になった。校区が広いので自動車での訪問が普通だが、私は生徒の3割が自転車通学だったので、その時自転車を購入した。
 今でも覚えている。町境のM君の家は県道から細い道に入り、山道を自転車を押して登り1時間50分で着いた。ご両親は息子をいとおしみ楽しい家庭だった。帰りは下り坂50分で帰校した、M君の登下校の厳しさを知った。この自転車はさまざまな思い出を持っている。今も健在。私の足となっている。
  出水市 年神貞子 2012/5/22 毎日新聞鹿児島版掲載

耳悪じいさん

2012-05-18 20:49:15 | はがき随筆






 「さっきから呼んでいるんだけど全然聞こえないの? 耳が悪くなったわねえ」。カミさんが縁側からこっちを見ている。
 「ハイ、ハイ、何の御用ですか」「せっかくカメラも買い替えたんだから、庭の花でも撮ったらとう?」。庭に出てみればシンビジウムが一気に開花、サイネリアも咲き誇っている。「この花も撮っておいて」。カミさんの指さす先には薄紫の小さな花が咲いている。ブラキカムという名の菊科の花だという。
 「これからは私に言われる前に庭に出なさいよ、耳悪じいさん」「ハイハイ」「ハイは一つ」。カミさんは常に正義です。
  西之表市 武田静瞭 2012/5/18 毎日新聞鹿児島版掲載

写真は武田静瞭さんのブログより

花見弁当会

2012-05-18 20:31:10 | はがき随筆


 4月2日、急いだように桜満開。植物の方が季節を良く感知している。夫の弟さんが、明日は春の嵐が吹くから今夜のうちに花を観賞し、弁当会をしたらと急な話題。灯をつけ準備が始まった。数人分の弁当を私が作ることになり、あわててきりきり舞い。つわぶきと魚の煮干しで卵とじ、鶏の空揚げ、塩サケ、果物のデザートを添えて仕上がり。一日の仕事が終わり、全員腹ぺこ状態。弁当は見事に平らげ。手作りを満足されうれしい。夜中になり、激しい雨の音と強風の勢いに花は吹き飛ばされている様子。危機一髪の花見弁当会は、無事終了した。
  肝付町 鳥取部京子 2012/5/17 毎日新聞鹿児島版掲載

「突然のことで………」

2012-05-17 23:06:09 | 岩国エッセイサロンより
2012年5月17日 (木)

    岩国市  会 員   横山 恵子

「何の親孝行もせんうちに逝ってしもうて」と悲痛な声で弟は父の手や頭をなでた。

4月12日、不慮の事故と聞き、急ぎ病院へ到着した時は臨終間近。なぜ? 茫然自失。

翌日、湯灌し、化粧してもらった父の穏やかな顔に、皆救われる思いがした。たった1週間前、ひ孫のために植樹しながら「成長するのを見たいもんじゃが……」と言っていたのに。

76歳まで働き、何事も全力投球。背中で生き様を見せてくれた。父さんには到底及ばないけど、恩に報いるよう生きていくよ。ありがとう!! 母さんのことは心配しないでね。 

 (2012.05.17 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩國エッセイサロンより転載

弥生さん

2012-05-17 16:31:46 | はがき随筆
 弥生さん。頭脳明晰の55歳。小柄でチャーミング。ショートカットヘアがよく似合う。趣味は油絵・読書・庭いじり。人の悪口は言わない。そんな彼女も、中学生の時にお父さんを亡くし心身ともに大変な時期を過ごした。だから、今でもこつこつとユニセフ募金を続ける。スーパーで、お年寄りに進んで手を貸す。私にも他の誰にでも「ありがとう」をよく言う。
 「貧乏人の坊ちゃん育ち」の私には、彼女は恋人から妻へ、そして今では母へとかわった。俺、一体何やってんだか……。でも「ありがとね。この世でいちばん長く居る君!」。
  霧島市 久野茂樹 2012/5/16 毎日新聞鹿児島版掲載

辰年の女

2012-05-17 16:24:18 | はがき随筆
 以前、母にあきれられた。「あんたの同級生はよく離婚するねえ。辰年のせいだろうか」
確かに妹の同級生で離婚した女性は少ない。私の友人たちは20代の頃から30代、40代、50代になっても、夫の年金を半々にして熟年離婚しようと思っている人もいる違いない。
 いや離婚云々の前に結婚していない同級生も結構居る。これは辰年のせい? 単に男運が悪い? 決断力があってうじうじしない友人が多い。決して悪くない性格だと思うのだが。友よ、今年は再生の年。竜のごとく天高く駆け回る良き人生を!
  鹿児島市 種子田真理 2012/5/15 毎日新聞鹿児島版掲載

学習しない

2012-05-17 16:16:37 | はがき随筆
 新緑がすがすがしい季節になると足もとの雑草も生き生きと伸びてくる。最初は浴室用の低い腰掛けを移動しながら、1時間ぐらいを目安に進む。所が雑草の伸びは待ってくれず1回が2回になる。
 きれいに除草した後を見る達成感がたまらず、気付けば1日に3回の草取り。肩や背中が痛くなる。ここまでと草に手招きされた夕方の、あのひと踏ん張りがよくなかったらしい。まだ残っている雑草を見ないように、温泉に体をほぐしに行く。以前にもこんな事があったと思い出す。決して若くはならぬ体。ほんと学習しないものです。
  霧島市 口町円子 2012/514 毎日新聞鹿児島版掲載

バラの花

2012-05-17 16:09:58 | はがき随筆
 「美しいものにはトゲがある」の代名詞がバラの花であるが、美しいが故に、他の花が嫉妬のまなざしを向けないように神様がトゲを作られた気がする。
 30年ぶりに訪れた公園は全くなく、モダンな花園になっていた。
 子供と一緒に遊んだ霧島ヶ丘公園は、人影もまばらで寂しい限りであった。
 大きなタワー風建物から見る眼下の錦江湾だけが昔のままであった。
 霧島場丘公園がバラ園に嫉妬のまなざしをらないか心配になった。
  鹿児島市 下内幸一 2012/5/13 毎日新聞鹿児島版掲載

卒寿の舞

2012-05-17 15:03:20 | はがき随筆
 京都から3歳のひ孫も来て、母の卒寿の祝いに花を添えた。一挙手一投足が愛らしく、集まる人たちを魅了してやまない。主役の座を取られた母は、所在投げの様子である。
 縁もたけなわとなり、母が卒寿の舞を披露する。そこかしこでよろめくも「90歳にしては達者だ」と、花も上がってやんやの喝采を浴びる。主役の座をひ孫から取り戻した母は、ほおを紅潮させて舞い踊る。
 93歳の伯母や87歳の叔母を「いつまでもお達者で」と送り出す。ここに集まっていただいた方々が、5年後も元気でありますよう。切に願ってやまない。
  出水市 道田道範 2012/5/12 毎日新聞鹿児島版掲載

「隠し昧」

2012-05-15 21:29:53 | 岩国エッセイサロンより
2012年5月15日 (火)

岩国市  会 員   吉岡 賢一

みそ汁に浮かぶ青い小さな葉っぱ、この季節ならではの味わいが朝から元気をくれる。

そんな木の芽どきになると、我が家流の岩国寿司が何度となく食卓を飾る。私の母から受け継いだ伝統の味は十分クリアしていると思うのに、さらにひと工夫。風味豊かな木の芽を寿司の表面に散りばめ、旬の味に仕立て上げる。この味は隣近所にも喜んでもらっている。時には寿司がタケノコに化ける。タケノコが木の芽あえに姿を変える。

何十年変わらず作り続けるかみさん。「うまいね」だけでいいのだろうか、と時々……。

(2012.05.15 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩國エッセイサロンより転載

母の日

2012-05-13 22:44:59 | アカショウビンのつぶやき
 

今日は母の日。
子どもたちから贈られたお花を眺めてます。
嫁が贈ってくれたアレンジにはクロネコがちょこんと。
ネコ好きの2人らしい可愛いアレンジです。

キリスト教会では、母の日礼拝でした。
出席者全員にカーネーションをプレゼントします。
数が多いので、今年初めてお願いしたお花屋さんでは、
赤いカールーションは数をそろえられず
今年は優しいピンクですが、これも良いかな…



夕方は、ずっと気になっていた庭の手入れ。
取っても取っても生えてくる、
にっくき「ムラサキカタバミ」を駆除しました。
と言っても一部分…
ムラサキカタバミを駆逐するのは本当に至難の技
こうして、
いつもと変わらぬ「いちにち」は終わりました。/div>

はがき随筆4月度入選

2012-05-11 20:56:31 | 受賞作品
 はがき随筆4月度の入選作品が決まりました。
▽伊佐市大口原田、清水恒さん(64)の「母の生き甲斐2」(1日)
▽阿久根市大川、的場豊子さん(56)の「南無阿弥陀仏」(4日)
▽垂水市市木、竹之内政子さん(62)の「やっぱり」(28日)

──の3点です。

 投稿なさる方が比較的高齢の方が多いせいか、話題が病気、看病や介護、懐旧の念、それに孫の逸話が目立ちます。興味深いのは50歳になっても60歳になっても、ご両親のことを語られる時は、ご自分は子供になっていることです。当たり前といえば当たり前ですが、70歳の子供というのもほほ笑ましい感じもします。
 清水恒さんの「母の生き甲斐2」は、86歳になって俳句を作り始めた母親への励ましの言葉です。俳句の添削のために、手紙のやりとりが頻繁になったことに感謝されています。老人のスマホがはやっているそうですが、やはり手紙はいいですね。
 的場豊子さんの「南無阿弥陀仏」は、菜園の主がスイカ泥棒に「南無阿弥陀仏……合掌」という立て札を立てたという内容です。見落としがちな立て札ですが、立て札の表現のユーモアの中に、怒りと無念さを読み取った観察の細かさが、優れた文章にしています。
 竹之内政子さんの「やっぱり」は、ラジオで財産残すは銅賞、思い出は銀賞、生き方は金賞という名言を聞き、ご子息にメールで確かめたら「銅賞希望」であったという内容です。ご子息も歳をとると金賞に変わると思います。きっと年齢の問題です。
 入選作のほかに3編を紹介します。
 吉井三男さんの「ぼくはクワガタ」は、知人に事故死され暗い気持ちで過ごしていると、お孫さんが大人たちの血液型の話に割って入り、「僕はクワガタ」と叫んだというほほ笑ましい内容です。無邪気は慰めです。
 秋峯いくよさんの「喪失感」は、亡き御主人の手作りのウッドデッキを、白アリのために壊さざるをえなくなった。形あるものはいつかは滅びると分かっていても、子供さんたちとの思い出が詰まっているので寂しいという内容です。 
 高橋誠さんの「新食感の野菜」は、ヤーコンというものを初めて食べ、コンが着くからダイコンやレンコンの種類かと思っていたら、英語でYACONでした。でも、やはり野菜です。
 (鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)