はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

三丁目と同じ

2008-01-21 07:51:37 | はがき随筆
 映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」を見に行った。下町の工場で親類の女の子を預かり、すき焼きを振る舞う場面があった。いいとこのお嬢ちゃんが「豚肉なんてすき焼きじゃない」と言い放つ。私は「うちと同じだ」と思って見ていた。
 経済的な事情もあったが、沖縄で生まれ育った父は、肉イコール豚という人だった。ちょっとだけ牛肉を混ぜ、母と目配せして食べたこともある。父の没後の話だが、すべて牛肉を使った時はぜいたくだなと思った。
 母が作ったように煮込み風にして、今は一人で牛肉の鍋をつついている。
   鹿児島市 本山るみ子(55) 2008/1/21 毎日新聞鹿児島版掲載

あんかと共に

2008-01-21 07:45:32 | はがき随筆
 あんかがないと寝られず、大して寒くない日も必ず使う。ふとんに入るちょっと前にスイッチを入れると、ほんわかふとんになり幸せ気分になる。
 昨晩、いつもと同じ手順でふとんに入ったら、あら、冷たい。必死になってたたいたり、コードをゆすったりしても反応なし。
 「わりと短命だったのね。さようなら」と物言わぬあんかにつぶやきながらコンセントの方を見たら、 何とプラグを差し込んでなかった……。
 ボケばあさんは、これからも寿命の延びた?あんかといっしょです。
   鹿児島市 馬渡浩子(60) 2008/1/20 毎日新聞鹿児島版掲載

まちなかギャラリー

2008-01-19 21:56:14 | アカショウビンのつぶやき













 陶芸の道を選んで30年、夫婦2人でこつこつと焼き物を続けてきた姪夫妻が、まちなかにギャラリーをオープンさせた。
 今まで古い民家に作品をならべ、彼の作風を生かす形でギャラリーとしていたが、突然「まちなかにギャラリーをオープンしたの…」と聞かされたときはびっくりした。 
 周囲の心配をよそに2人で創った、十坪ほどの、おしゃれな「ギャラリー利重」は、2人の夢がいっぱいつまった素敵な空間だった。
 陶芸仲間や画家、薩摩和紙や銅細工の友人などの作品も展示され、多彩なジャンルの作品は見応えがある。
 鹿屋市再開発ビル・リナシティかのやのソフトバンク前にオープンした
「まちなかギャラリー利重」が、多くの方々にホッとした空間を提供できる場所になればいいな…と、思いつつエールを送る。
場所は鹿屋市大手町3-20
0994-41-3392
お気軽にお越し下さい。

感傷旅行

2008-01-19 21:04:51 | はがき随筆
 23年ぶりに、同窓会のために訪れた大阪。時の流れという現実を見た。
 毎日のようにのぞいていた本屋はおしゃれな雑貨屋に、銭湯は歯医者に、スーパーはネットカフェに。そして暗くて狭かった下宿の建物は広い駐車場に。この場所で私は笑い、泣き、そしてちょっとだけ恋もした。
 キンモクセイの香りに包まれて感傷に浸る私。そんな私を温かく迎えてくれる友達の顔、顔。縁をこの縁を大切にしていこう。
 冷たい雨にぬれながら、履き慣れないブーツの音を響かせ、私は夜の学生街を歩く。
   喜界町 福崎康代(45) 2008/1/19 毎日新聞鹿児島版掲載

写真コンテスト

2008-01-19 20:17:58 | はがき随筆


 秋に小さな写真コンテストで思いがけなく最優秀賞をもらった。3歳の孫が90歳の双子(母とその妹)に誕生日の花束を贈った時のショットである。
 ふれあいをテーマにしたそれにマッチしたのだろうか。若いころから写真を撮ってきて、ほんの少し認められた気がしてうれしかった。3万円相当の副賞は、キャンピングセットを選んだ。暖かくなったら庭にテントを張って孫たちと楽しもう。
 元気に散歩をし、台所を片付けたりもする母だが、時に洗面台の場所を忘れたりと痴呆は少しずつ進んでいる。そんな母の〝今〟を残したい。
   薩摩川内市 馬場園征子(66) 2008/1/18 毎日新聞鹿児島版掲載

心のリハビリ

2008-01-17 11:32:12 | はがき随筆
 市内に離れて住む娘に常時、運転や歩行転倒、火の用心など「十分気をつけてね」と注意される。自分では大丈夫、心配するなと思っているが、直感的に失敗やそれに近いことを心配しているのだろう。事実、器具の破損、階段の上り下りのつまずき、聞き漏らし、度忘れなど確実にある。
 よし今年の一大決心は、①万事に用心し中地を払う②マンネリでなく工夫する(家事その他)③学び求める気構え(読書、川柳や狂句)を持つことに努力する、である。これらは心のよどみを押さえ、活性化を図る心のリハビリと心得、継続したい。
 薩摩川内市 下市良幸(78) 2008/1/17 毎日新聞鹿児島版掲載

篤姫

2008-01-17 11:07:31 | かごんま便り
 NHK大河ドラマ「篤姫」が始まった。画面に桜島や鹿児島のご城下が映し出されるたびに、にわか県民の私も何となくわくわくする。
 ビデオリサーチによると、初回(6日)の視聴率は関東地区20.3%、関西地区19.8%。関東では昨年の「風林火山」に0.7ポイント及ばなかったが、関西では逆に3.6ポイント上回ったという。
 放送開始に合わせて鹿児島市のドルフィンポートに「篤姫館」が開館した。江戸城・大奥の一部を再現、撮影に使われた衣装を展示し、年間約20万人の来場を見込む。1週間で約8600人が訪れたというからまずまずの滑り出しか。九州新幹線の座席に篤姫館の紹介パンフレットが置かれ、幼少期を過ごしたとされる今泉島津家別邸があった指宿市にも「いぶすき篤姫館(ふれあいプラザなのはな館内)」がオープンした。観光かごしま大キャンペーン推進協議会は今年、予算を倍増する張り切りようだ。
 白状すると、私は篤姫がどんな人だったのか知らなかった。言い訳めくが、歴史上の人物として篤姫の一般的な知名度が高いとは思えない。それでも先日、北九州市に帰省した際、少なからぬ人から「鹿児島は篤姫の年ですね」と声をかけられたから、放映の認知度はそこそこあるようだ。
 日銀鹿児島支店が試算した経済効果は約296億円。娯楽の多様化で〝大河の神通力〟が薄れたこともあり、バブル期の90年に放映された「翔ぶが如く」の約621億円には及ばないが、明るい話題が乏しい県内経済界には一つのチャンスだ。
 ブームにあやかって地域浮揚を目指すあいさつが相次いだ年始会や賀詞交換会。ある会合で日銀鹿児島支店長の市川能英さんがこんな話をした。「篤姫のころの鹿児島は今と同様、社会的・経済的に厳しい時代だった。現状から反転、飛躍の年になってほしい」。同感である。
鹿児島支局長 平山千里
2008/1/14 毎日新聞鹿児島版掲載

 毎日新聞の、「J字」化に伴い、誌面では、各面のタイトルが一新されました。「鹿児島評論」もぐっと親しみやすい「かごんま便り」に変わりましたが、いかがでしょうか。
<かごんま>とは、かごしまの方言読みで、<かごっま>とも言いますが、これからどんな便りが掲載されるか、みなさまお楽しみに(*^o^*) 
大河ドラマ「篤姫」も応援してくださいね。 
嬉しいことに「篤姫」第1回の平均視聴率は、県内ではなんと32・1%(ちなみに、テレビをつけている世帯の中での「占有率」は43・%だったそうです。アカショウビン
 

音読カレンダー

2008-01-16 18:58:12 | アカショウビンのつぶやき
声に出して すらすら読むことが 脳の「活性化」に とても効果的です。東北大学 川島隆太教授
 「朝になったら、前の日付のページを、めくりながら切り離します。するとそこに、その日あなたが出会う、「名作」があらわれます。中略…
 毎日、文章は、少なくとも2回、音読してください。1回目より2回目(あるいは3回目)が、前よりも早く読めるようにがんばってください。また、できれば毎朝午前中(朝食の後)に、1日2~3分間を目安として音読してください。農の活性化にいっそう効果があるからです。…後略」
 
 さびついた脳を刺激しようと、今年は日めくり音読カレンダーを買ってみた。
小説、エッセイ、童話など毎日が楽しみである。活字も大きくふりがな付きで読みやすい。
「みなさんの脳を鍛えるばかりか、日々の生活に感動やうるおいを提供するにちがいありません。」
 とある。今日は、林芙美子の「美しい犬」だった、明日は尾崎紅葉の「金色夜叉」半世紀以上も前に読んだ名作。たのしみだなあ。




出水市で勉強会

2008-01-16 12:12:28 | 毎日ペンクラブ鹿児島
作品もって参加を!
 25日、出水市で勉強会  毎日ペンクラブ鹿児島

 鹿児島面「はがき随筆」など毎日新聞投稿欄の愛好者でつくる毎日ペンクラブ鹿児島(清田文雄会長)の「第2回北薩地区勉強会」が25日正午~午後3時、出水市向江町のホテルキングである。
各自が持ちよった作品の合評会形式。それぞれが当日までに「はがき随筆」投稿を想定した文章(タイトル7字以内、本文約250字)を準備し、皆で読み互いに批評し合う。平山千里・毎日新聞鹿児島支局長の講評もある。会費2500円(昼食代を含む)。ペンクラブ会員以外の参加も可。参加希望者は18日までに、岩田さん(0996-82-4514)に連絡を。

 

へんてこりん

2008-01-16 12:07:20 | はがき随筆
 定年を実感する一つが朝の連続テレビ小説を見られることだ。衛星放送の7時半「ちりとてちん」から「都の風」へと京都、大阪弁のセリフのドラマだ。
「あんた、今日の予定はどないなってはるんだす」「予定ちゅう予定はおまへんけど」「そやったら、庭の一つも掃いたらどないだす」「ほんまやな、暮れに掃いたきりどすな」「さあ、ほんなら早う腰を上げなはれ」「分かった。そないにきつう言わんかて、やりますがな」
 夫婦共々、へんてこりんな関西弁の会話で、現実のドラマの主人公となっての、一日の幕開きでおます。
   肝付町 吉井三男(66) 2008/1/16 毎日新聞鹿児島版掲載

和む

2008-01-15 11:39:38 | はがき随筆
 お正月の生け花をしようと、花を探しに庭に出た。
 鮮やかな緑の松の葉、小さな小さな蕾をつけている梅の枝、ころころとした丸い実が可愛い千両、真っ赤でかれんな小菊の花。なんとサルビアも真っ赤な花を咲かせ続けている。薄桃色のバラの花も、ツワブキの黄色の花も──。足元を見ると、ナズナも小さな白い花を揺らしている。寒風の中、みなそれぞれに美しく咲いている。
 風に色があるとしたら、冬の風は何色だろう。「世界に一つだけの花」を口ずさみながら、しばし眺め、ホット一息。心が和んだ。ありがとう。
   出水市 山岡淳子(49) 2008/1/15 毎日新聞鹿児島版掲載

おせち料理

2008-01-15 11:32:25 | はがき随筆
 手作りのおせち料理を始めて今年で11年。娘が嫁いでから作っている。12月も終わりに近づくと必要な材料をメモして保存の利くものから買い集める。煮豆、田作り、こぶ巻き、傷みにくいものから始め、31日は朝から家にこもってクリきんとん、だて巻きを最後に仕上げる。面倒だけど皆の喜ぶ顔見たさでやめられない。元旦は6時前から重箱に詰め、孫たちには盛り皿用の料理を作る。昼にかけて集まった来る。所狭しと並べた料理を囲み、大にぎわいの正月を迎えられる喜びをかみしめ、今年も皆無事で幸多かれと願う。
 出水市 川頭和子(56) 2008/1/14 毎日新聞鹿児島版掲載

絵画展に思う

2008-01-13 17:38:31 | はがき随筆
 慌ただしかった年末年始。我が家なりの行事を済ませ、誘い合って妹夫婦と市街地の画廊へ出かける。年の瀬から開催中の弟の洋画展は新年の静けさの中、風景画、静物画の小品数十点が整然と展示され、作品前のあちこちで熱心に観賞されている情景にうれしさがこみ上げる。
 少年のころからの絵を見続けてきて姉として何よりの「心の癒し、潤い」で、今回も幾度となく足を運んだ。
 生まれ育った美しい海、野山が彼の「絵描き」の原点である。近年は年を重ねた「やさしさ」が作品の随所に見られ、迷わず2枚の絵を予約した。
   鹿屋市 神田橋弘子(70) 2008/1/13 毎日新聞鹿児島版掲載

年越しそば

2008-01-12 18:03:24 | はがき随筆
 年も押し迫ったある日、実家から新物のそば粉が届いた。ここ数年恒例となった親子の年越しそば打ち合戦。今年は身ちょれと思いきや母方から突然、体調不良で来られないとのこと。えらいことになった、一人でできるか不安がよぎる。そば合戦の戦利品を楽しみにしている友人知人がいる。「どげんかせんといかん!」。試される時が来た。母が使うと魔法のめん棒も私にはただの棒きれ。粉だらけで悪戦苦闘。何とかごまかして終了した。その夜はいつまでも母に甘えている自分に気づき赤面する。新年を迎えて独り立ちすることと親孝行を心に誓う。
   指宿市 有村好一(58) 2008/1/12 毎日新聞鹿児島版掲載

あー炬燵

2008-01-11 15:35:35 | はがき随筆
 夫の定年や子供の独立で一息ついたころ、気合い入れにと炬燵のない暮らしを始めて7.8年になる。結婚や孫の誕生とあわただしい年月が過ぎ行く中、旅行や山歩きウオーキングと楽しんできた。これからも続けるつもりだが、最近どうも手足の冷たさが身にしみる。そういう年になったんだと思うと無性に炬燵が恋しくなり早速組み立てることに。介護片手に編んだ思い出のカバーを掛けてスイッチオン。そっと足を入れるとあー暖かい。懐かしいぬくもりが心地よく、お正月疲れをゆっくりほぐしてくれた。グウタラママもほどほどにお世話になろう。
   薩摩川内市 田中由利子(66) 2008/1/11 毎日新聞鹿児島版掲載