はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「まあるい」

2011-01-05 18:45:06 | 岩国エッセイサロンより


岩国市  会 員   片山 清勝

 パソコンで墨絵を描く講座。課題はお地蔵様。筆に見立てたカーソルが軽妙な講師の教え方に誘われてか、普段より軽快そうに動く。

 笑みを含んだまあるい顔の地蔵が受講者の数だけ誕生。並べて見比べる。人と人、親と子、国と国のいさかい事など思いもつかない穏やかな地蔵菩薩の顔々。太く書き添えた文字は「まあるい心で生きたい」。

 昨年も争いや苦しみ悩みがいろいろあった。皆がこんな顔、こんな心で過ごせたら、まあるい世界になるだろう。それを願って賀状のイラストはお地蔵様にしよう。 
  (2011.01.05 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載
写真はtatu_no_koさん提供

「人生いろ色]

2011-01-05 18:41:59 | 岩国エッセイサロンより
   岩国市  会 員   吉岡 賢一

 正月を迎えるたびに思ってきた。今年はどんな色合いの1年になるのだろうかと。穏やな緑もいい。真っ赤に燃える激しさもいい。元気の出る黄色もいい。

 人生いろ色だが、出発点は何色も混じらない真っ白がいい。妻との二人三脚も40年を迎える。花嫁衣装の白無垢がどんな色に染まり、どんな人生模様を描いているのだろう。

 今はまだはっきり見えていないが、できるなら「いい色合いだね」と笑顔で振り返りたい。年々の積み重ねをおろそかにはできない。今年も白を基調に多くの色を塗り重ねてみたい。
   (2011.01.01 毎日新聞「はがき随筆」掲載  岩国エッセイサロン より転載

大往生した母

2011-01-05 15:01:24 | はがき随筆
 金沢や大阪、加古川から病院に駆け付けた弟や妹たちが、母の耳に大きな声で呼びかける。我が子や、孫の肉声と分かったのか、酸素マスクの息遣いのもとで、かすかにうなずき、口や目を必死に開こうとする。その表情は“生と死”の意味を、最期に諭しているように思えた。──家族が見守る中、母は眠るように96年の生涯を終えた。
 通夜は昔、母が自慢していた話に花が咲いた。十数人の青年から求婚されたこと。子供12人を産み、貧しかったが8人の子供を育て上げたことなど……。
 祭壇の遺影に目をやると、母の優しい顔がほほ笑んでいた。
  出水市 清田文雄 2011/1/5 毎日新聞鹿児島版掲載