はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

自分至上主義?

2010-03-18 22:23:38 | かごんま便り
 阿久根市議会が暗礁に乗り上げている。新年度予算を審議する、年間で最も重要な定例会なのに竹原信一市長は議場に現れず、幹部職員にも「答弁拒否」を命じている始末。まったく八方ふさがりの状況だ。

 本欄で竹原市長を取り上げるのは2度目だ。前回(昨年4月20日付)、私は彼の改革への志がまっとうだとしても、その政治手法には疑問を感じざるを得ないと書いた。彼の物言い、振る舞いはその後も過激さを増す一方。彼なりに計算された意図的なアクションなのだろうが、最近の言動はいかにも常軌を逸し、理解の範囲を超えている。   

 近著「独裁者 ″ブログ市長″の革命」(扶桑社刊)を読むと、竹原氏の自治体職員や地方議会に対する痛烈な批判には耳を傾けるべき指摘も少なくない。「民主主義」という美辞麗句の欺まん性をやり玉に挙げつつ、自身の「改革」「革命」という言葉は無批判に絶対視するなど自分本位な強引さはあるものの、公務員のお手盛り体質やチエック機能を放棄して行政側となれ合う地方議員に切り込む記述には説得力がある。現状打開には荒療治が必要だとの主張も分からないではない。

 だが竹原氏の思いを知れば知るほど、実際の行動には首をひねるしかない。市長の提案に″何でも反対″の反市長派議員の態度が「子どものけんか」なら、堂々と論戦を挑まず「報道陣がいるから」と議場に来ない手法も同じだ。市職労との団体交渉に報道陣を入れてガラス張りの議論を提案したことがあったが、彼の言い訳はご都合主義が目に付く。つまるところ主張がいかに立派でも、改革への本気度は疑わざるを得ず、混乱を楽しんでいるとしか見えない。

 現下の竹原市長に、議会正常化への意志はないらしい。このままでは最も迷惑を被るのは、彼が最も心を寄せ、大切にしたいとしている阿久根市民なのは間違いない。

鹿児島支局長 平山千里 2010/3/15 毎日新聞掲載

そらまめ

2010-03-18 21:29:30 | アカショウビンのつぶやき
 いつも種子島から送ってくださる<Fさんのそら豆>が、今年も届いた。

 新鮮なそら豆を箱詰めにし、業者に発送依頼したところ、海が時化て輸送がストップ…だったらしい。「一昨日の豆ですが…」と、申し訳なさそうな電話があった。立派なさやに入っているそら豆は、日持ちが良い。「ありがたく頂戴いたします」とお礼を述べて待つこと二日、届きました。

 緑色のさやは光沢があり、内側は真っ白で、やわらかなクッションにくるまった豆がきれいに並んでいる。そのさまは、なぜかいとおしくも感じられる。

 分厚い莢に入っている<そら豆>は、ずしりと重さを感じるが、痛む脚をひきずって、新鮮なうちにご近所にお裾分け。

 明日は摂氏1度まで気温が下がるようだが、食卓には春がいっぱい。そら豆ご飯に塩ゆでそら豆、そら豆のサラダ、明日は何にしようかなあ。

「老いらくの心」

2010-03-18 20:36:32 | 岩国エッセイサロンより
2010年3月13日 (土)

岩国市  会 員   山本 一

「お父ちゃんが近所の若い娘を好いちょるんよ」と母が言う。父が80歳、母が71歳のころである。「いい年をして」と当時の私は一笑に付した。その後も、介護施設の父の部屋に入り浸りの女性がいて、母が激しく妬ける。私は驚きながらも「年寄りが」と軽くあしらった。

ところが、後期高齢者となった今の私はどうだ。女性に対する心のありようは、若いころからちっとも変わっていない。肉体は年老いても、異性に反応する心は変わらない。老いた父母の心も一緒だったのだ。

 お彼岸にはお墓に行って「親父、もてたんだね」と言ってやろう。

   (2010.03.13 毎日新聞「はがき随筆」掲載)
岩国エッセイサロンより転載

バスの深呼吸

2010-03-18 20:23:39 | 女の気持ち/男の気持ち
 むかぁし生徒だったこ ろ、スリッパのペタンペタンまでそっくりに先生の歩き方をまねしたり、あだ名をつけて楽しんだものです。でもそれは人気のある先生方ばかりでした。
  例えばすぐ赤面する音楽の先生は「タコボウズ」、始業の鐘と同時に教室へ入ってくる古文の先生は「消防自動車」。今でもお顔とあだ名は思い出しますが、本当のお名前はどうしても思い浮かばない。
 私が利用するバスは市街地の向こうの高台のホテルから街なかを巡り、反対側までの長い距離を走る路線バス。雨天だったり街に行事があれば運行が遅れるのは日常茶飯事です。
 春浅いある日、教育者らしい人が乗ってきました。
 「バスが遅れてるじゃないか。説明せんか」と運転手さんに角の立った言い方。車内はシーンとなり、運転手さんは恐縮して「どうもすみません」と、5分遅れている理由を話し、停留所ごとに乗降客に謝り続けました。その方が学校正門前で下車した後、バスが深呼吸したようでした。
 5分くらい待てないのかな。大人げないな。いい年をして相手の立場に立って考える心のゆとりを持たない人なんだ。夫婦げんかでもしたのかな……、いろんな思いがよぎります。
 こんな先生にあだ名をつけるとしたら……。でもあだ名をつけてもらえるほど生徒さんから信頼されているのかな……。
 雨の午後のひとこま。
  大分県別府市 楢崎 好江・78歳 2010/3/14 毎日新聞の気持ち欄掲載

エデンの園

2010-03-18 20:15:29 | はがき随筆
 冬のさなかというのに、その日は春のように暖かだった。
 鹿児島市中央公園には楠をはじめ緑の葉がサワサワと光っていた。天文館通りに足を進めた。にぎやかな中に聞き慣れない声が。中国からの団体のようだった。皆ラフな服装で見分けがつかない。外国人の渦の中に交ざって歩くのもまた一興。彼らは電車の軌道が芝生で敷き詰められているのに驚いていた。
 日が陰ってくると、天文館通りにヤングが増えてきた。家族連れも多い。子供を肩車に乗せている若い父親もいる。
 ひょっとすると鹿児島は、世界一住み良い町かもしれない。
  鹿児島市 高野幸祐(77) 2010/3/18 毎日新聞鹿児島版掲載

人生は出会い

2010-03-18 20:05:30 | はがき随筆
 波乱の多い人もいるものだ。昨年7月、久しぶりに会った6人は、1台の車で山□県岩国市に向かった。目的地は、萩焼を体験できる画廊。
 初対面の、その経営者Mさんは「私は学校時代いたずらっ子で、ワルの札をはられ、ぐれていましたが、ある先生と出会い柔道を勧められ、警官になれました」と話した。続けて「現職中、陶芸や美術のうまい方に巡り合い、画廊を営むことになりました。人生は出会いですね」と、昔をしみじみ振り返るように語ってくれた。
 萩焼体験で出会った親切な彼を、私は今も忘れない。
  出水市 小村忍(67) 2010/3/17 毎日新聞鹿児島版掲載