はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

来客様様

2010-03-23 11:48:12 | はがき随筆
 私の怠惰を戒めるかのように、たまに来客がある。
 更に緊張を強いられるものに泊まり客がある。それもうんと気を使う相手が良い。掃除のしがいがあるというものだ。
 最近、その機会に恵まれた。手抜き専門の掃除もいくらか入念に、不用品も数袋搬出できて気分的にさっぱりとなった。
 整理下手には来客という負荷をかけないと、駄目な自分が情けないが今更直りそうもない。そのうえ、物を捨てられない症候群も困りものである。
 どうやら、いつもより光っているキッチンに「来客様様だね」と言われてる気がする。
  霧島市 □町円子(70) 2010/3/24 毎日新聞鹿児島版掲載

懐古の情

2010-03-23 11:22:55 | はがき随筆
 串良名物の二十三夜市でのこと。当時1年生の息子は小遣い300円を握りしめ市へ行っ
た。るとお母さんが泣いて喜ぶよ。魔法の砥石はこれ1本きり。売り切れたら大変だあ!」とお店のおじさんにすすめられ、思わず300円で砥石を買った。通すると「この砥石を買って帰りの市ではのどから手が出そうな綿あめやタイ焼きクン、しんこ団子などがズラリー でも一文ナシになった彼は砥石を握りしめ、飲まず食わずで4㌔の道のりを母の元へ急いだ。あれから42年、砥石はすり減ぅているけど今も私のアシスタント。息子の優しさに触れながら……。
  鹿屋市串良町 宮内京子(77) 2010/3/22 毎日新聞鹿児島版掲載

消えた焼酎

2010-03-23 11:16:12 | はがき随筆
 ふと、戸棚から化粧箱入りの焼酎3本が消えていることに気づいた。それぞれ大事な方から頂いたもので、特別な時にと、とっておいたものだ。
 娘や私に休肝日を多く強いられる夫が、我慢しきれずにこっそり飲んだのだろうと思いつつ「ここの焼酎どうしたの?」「この前の同窓会に持って行った」「特別な日に飲むんじゃなかったの?」「自分を『先生』と呼んでくれる人間と飲む、これ以上特別な日はないからね」。
 私が尋ねて夫が答えた。「この人はつくづく先生なんだなあ」と思った。そして初めて焼酎を飲めなくて損した気がした。
薩摩川内市高江町
    横山由美子(49)

好きな数

2010-03-23 11:04:05 | はがき随筆
 私は「N」という数が好きである。
 暦の月にはもちろん日にもなく、1とN以外では割り切れない。昭和20年、旧制中学に入学したときの受験番号である。
 Nが、道を歩いているとき見た車の下2ケタだったり、旅などのキップの連番になっていたり、まして温泉に行ったときの脱衣所の番号なら、何かよい事がありそうでうれしい。朝測る血圧も、上が「IOOとN」以下になるよう願っている。また動き出すときもN分が多い。
 Nを自分では「いい味方」と都合よく解釈して、いつでもどこでも何にでも利用している。
  出水市 田頭行堂(78) 2010/3/20 毎日新聞鹿児島版掲載

里のひまわり

2010-03-23 11:01:34 | はがき随筆
 お誕生日おめでとうございますと菜の花、桃の絵はがきをボランティアグループ「ひまわり」の方から頂いた。元気で皆様から祝福を頂き、ささやかな幸せに、心身共に健やかな日々を感謝と共に明日への励みとなります。大浦干拓が広がり、亀ケ丘より吹上浜、またリアス式海岸を西に望む、高齢化が進んでいる里ですが、こうして「ひまわり」の方々の活動に元気を頂き、今日を生きゆくしるべとなります。夫と計160歳。達者は□だけとよく言いつつ、野菜作り、また友達と親ぼくを重ねながら、互いの誕生日の絵はがきを友にしたいと思います。
  南さつま市 下村節子(79) 2010/3/19 毎日新聞鹿児島版掲載