はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

誕生日

2010-03-01 23:32:28 | はがき随筆
 ついに84歳の誕生日を迎えた。戦中派としてはここまで生きるとは思わなかったから、何と言っても有り難い。しかも元気でまた現役の開業医として。
 誕生日がくると、いつもこの寒いときに私を産んでくださった母にしみじみと感謝する。平均寿命をとうに超えて、さてこの先いつまで生きられるか分からないが、健康に留意して少しでも世の中の役に立ちたいものだと思う。
 戦死した友の分まで生きたい。妻が亡くなって今年の誕生日は、ひとりでひっそりと祝っ
た。いつまでも明日に夢を託して燃えて生きたい。
  志布志市 小村豊一郎(84) 2010/3/1 毎日新聞鹿児島版掲載

「2」並びの日

2010-03-01 00:44:18 | 岩国エッセイサロンより
2010年2月24日 (水)

岩国市  会 員   山下 治子

 平成22年2月22日。アヒルが5羽の2並びだ。この数列どこかで見覚えがある。そう、中学時代の息子の通知表だ。

 勉強よりスポーツに意欲的だった彼は、部活が原因で不登校を始めたが、なぜか雪の降る日と試験日だけは登校した。父親の怒りや祖父母の憂いに、彼のいらだちの矛先は弟と私に向き、出口の見えない日々が続いた。評価しようもないはずの通知表が届いた。2並びのなかで明らかに間違いであろう「5」が数学に付いている。担任に尋ねると「正真正銘彼の成績です」。とにこやかに言われた。

 あれから十余年、彼は今結婚資金の蓄えに忙しい。
  (2010.02.24 毎日新聞「はがき随筆」掲載」)
岩国エッセイサロンより転載

「出前講座 弁当楽しみ」

2010-03-01 00:41:23 | 岩国エッセイサロンより
2010年2月28日 (日)
岩国市  会 員   片山 清勝

 所属しているパソコンの会は、パソコンの普及と利用促進を図ることを目的にしたボランティア団体だ。活動は、機材を会員の車に載せ、合併で広域化した岩国市内各地へ出前講座に出かける。
 会員は大方が年金生活者。パソコン経験もスキルも異なる。こんなメンバーが協力し合う。講座は手作りのテキストを使い、分かりやすく教えることに苦心している。
 講座では受講者との会話も楽しいが、もうひとつ楽しみがある。それはお昼の弁当。初めは手弁当で出かけていたが、いつごろからか、開催地域の温かい弁当を食べるようになった。
 献立、作り方、味付け、容器などみんな違う。共通点は食材が地元産でヘルシー。何より手ごろな値段がありがたい。
 同じ弁当を食べながらの会話も盛り上がる。会員になる前の職業はさまざま。そこでの体験などを聞くと、知らない世間が多くあることを教えられる。
 こうした形で元気に楽しみながら食べることを、定年前には考えもしなかった。さて、次はどこの弁当だろう。
(2010.02.28 中国新聞「広場」掲載)
岩国エッセイサロンより転載