はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

もうすぐクリスマス

2007-11-27 19:09:17 | アカショウビンのつぶやき









 クリスマスまであと一月足らず、私にとって今が一年中で一番忙しい時…。
 鹿屋キリスト教会では、カナダ、ベルギー、アメリカ、そして日本全国に散る、信仰の友に毎年手作りのプレゼントを贈ります。今日も、教会のベテルホームに姉妹方が集まり、可愛いリース作りに励みました。
 毎年、こんな素晴らしいアイディアがどこから出てくるの? と驚くほど、素敵なプレゼントが生まれます。いつもアイディアをくださるHさんの提案で、今年は可愛い星のリースに決まりました。
 制作に取り掛かったのが10月末、1カ月しかないね…と案じながらスタートしましたが、でも簡単にできそうだから大丈夫…の予想に反して時間がかかり、少し焦りを感じ始めたところです。でも神様の導きを信じ、全部で2000枚近くにもなる大量のお星様をS姉妹が書かれた、可愛い聖家族の台紙にバランス良く並べ、裏には教会員のサインを貼って完成です。お一人お一人のお顔を思い浮かべ、祝福に満ちたクリスマスを! と祈りつつ、合わせて111枚! のリースを作っています。

おれんじ鉄道

2007-11-27 18:22:35 | かごんま便り
 先日、ある会合に呼ばれて阿久根市に出向いた。初めて乗る肥薩おれんじ鉄道。週末の夕方とあって通勤・通学客の姿はなく、車内は閑散としていた。
 静まり返った阿久根駅に降り立った。九州新幹線の部分開業に伴い、JRから経営分離されて3年半。かつて「みどりの窓口」も設置されていた特急停車駅の面影はない。駅前には絵に描いたようなシャッター通り。出迎えてくれたKさんがため息混じりにもらす。「第三セクターになって便数が激減しましたからねえ……」
    ◇  ◇
 肥薩おれんじ鉄道の経営再建問題が新たな段階に入った。県が災害対応などに備える経営安定基金を取り崩して赤字を補てんすることを沿線3市に提案した。取り崩すのは、経営分離の対象外でJR鹿児島線が存続する2市4町(当時)の出資分3億7500万円。だが2011年度には底をつく見通しで、その後は県と沿線3市が自腹を切るしか赤字を埋める方策はない。
 提案にあたり伊藤祐一郎知事は、県の見通しが甘かったことを認めた。経営基本計画による04年度の輸送人員予測は年間約243万人。だが実績は同188万人どまり。計画では何とか黒字経営が見込まれていたのに、開業翌年の05年度には赤字に転落している。
 特急が走らない並行在来線は経営困難というのが、JRからの経営分離=三セク化の背景だ。バラ色の未来は描きようがないはずだが、それでも鉄道を存続させるのは、高齢化が進んだ地方で住民の足を確保する大義名分があるからだ。 
 都市住民の利便性と引き換えに地域の足を切り捨てながら進む整備新幹線事業。並行在来線を巡って長崎ルートでも佐賀県と沿線自治体の綱引きが続くが、それは地方の将来像にかかわる重要な問いかけをはらむ。だから肥薩おれんじ鉄道の成り行きには、出張や帰省で新幹線の恩恵にあずかる身としても無関心ではおれない。
 毎日新聞鹿児島支局長 平山千里
 2007/11/25 毎日新聞鹿児島版掲載


はがき随筆10月度入選

2007-11-27 18:17:45 | 受賞作品
 はがき随筆10月度の入選作品が決まりました。
△阿久根市大川牛之浜、松永修行さん(81)の「充実の一日」(27日)
△鹿児島市小原町、吉利万里子さん(61)の「虫の音は心の潤い」(23日)
△鹿屋市札元、上村泉さん(66)の「思い出の永久保存」(20日)
──の3点です。
 酷暑の続く日がやっと終わりました。11月、立冬ですね。
 松永さんの「充実の一日」は、地域の小学校でスポーツの秋を楽しんだ様子をしっかり書きこみました。児童の応援合戦や日焼けした足、卒業生や地域住民の参加などなど、元気な姿が伝わって気分が若返りました。
 吉利さんの「虫の音は心の潤い」」は、秋の夜に虫の鳴く音色を全身で受け止め、静かに聴き入る世界を叙情的に表現しました。いいですねえ。今年は例年と比べると秋の風情をしみじみと述べた作品が少なかったように思います。
 上村さんは、旅先でもらったマッチや記念品のタオルを収集してきました。これらを単に取り出して眺めるだけでなく、永久保存して思い出を生かす楽しさを「思い出の永久保存」に述べました。個性あふれる発想にみちた内容で文章が生き生きしていますね。谷山潔さんは、かつて第二の職場の代表者Kさんのことを「心に残る人」(13日)で述べました。はがき随筆50回を目標にしている旨を告げると、50回と言わず自分の年齢まで続けるよう激励されて頑張りました。Kさんの人柄がよく書けましたね。
 寂しい思い出を書いた文章もいろいろありました。有村好一さんの「秋桜」(11日)、武田静瞭さんの「イエライシャン」(10日)は美しい花、香りの花にまつわる母親たちを思う心を切なくしみじみと書いています。これらの文章からは風情のある光景も浮かんできますね。
 福崎康代さんの「記憶」(16日)は、若いころに自分が教え子K君を喫煙のことでたしなめたことがありました。彼は若くして病死したのです。そのことをいつも気にかけて、説教でない言葉はなかったのかなどという深い思いを短文の中にまとめています。
(日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)
   2007/11/21 毎日新聞鹿児島版掲載

大鳥

2007-11-27 17:27:03 | はがき随筆
 飛行機の離陸する瞬間が好きである。気迫のこもった重厚な力にすっぽり包まれてゾクゾクッとする瞬間が好きだ。大空に羽ばたこうとする彼の意志が伝わってきて、たまらなくいとおしくなる。そうなのだ。もはや金属の物体ではなく、彼は輝くはがねの翼をつけた鳥である。
 朝と昼と夜とを自在に駆け巡るので、時差ぼけに悩まされる人もいるらしいが、そんなものを私は知らぬ。
 「追い風のため定刻より早く到着」という放送を聞いたりすると、のびやかに天空を舞う大鳥よ、と小躍りしたくなる。
   鹿屋市 伊地知咲子(71) 2007/11/27 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はhiro2さんからお借りしました

あいさつ

2007-11-27 17:21:19 | はがき随筆
 温泉の脱衣所で先日、ある政治家に会った。私の着替えは終わっていて向こうも来られたばかりだったので、裸も下着姿もお互いに見ず見られずに済んだ。ここら付近では、温泉など人が集まる所では、たとえ見知らぬ人でも後から来た人が前からいる人に「こんにちは」などと先に言葉をかける。この政治家はそれがなかった。他に誰もいなかったので、私が恐る恐る「失礼ですが……」と切り出してからは会話がスムーズにできた。袖振り合うも多生の縁、あいさつによって心が和み、事が進む。特に殺伐とした事件が多い今の世には大切なことだと思う。
   出水市 田頭行堂(75) 2007/11/26 毎日新聞鹿児島版掲載

ここに幸あり

2007-11-27 17:15:14 | はがき随筆
 年末になると50年前を思い出す。あろうことか妻子を置いて家出した。この地域で大成するのは難しいと思った。若気の至りか大都会に青雲の志? 行ったが10日で挫折、大都会は甘くなかった。駅頭に妻が娘をおんぶして出迎えていた。もう金輪際あんな心配させてはいけないと心に誓ったら涙があふれた。駅員さんがそのころ流行の「ここに幸あり」を歌っていた。以来、業に励み、さまざまな難関を乗り越えた。娘たちもそれぞれ子どもに恵まれ、私どもも金婚式を祝ってもらい、つつがなく暮らしていけることをこよなく感謝している。
   大口市 宮園続(76) 2007/11/25 毎日新聞鹿児島版掲載

いただきます

2007-11-27 17:06:46 | かごんま便り
 今年の第35回毎日農業記録賞(農水省、各都道府県など後援)で市来農芸高3年の濱田菜摘さん(17)が高校生部門の優秀賞に輝いた(16日朝刊)。全国トップ10に入ったのだからすごい。ちなみに県内からの中央入賞は2年連続の快挙だ。
 受賞作「命と食の有り難さ~貴方(あなた)の命を戴(いただ)きます」を読み返してみた。高校での実習で痛感した食や命の大切さ、その思いを出前授業などで実践する様子が描かれている。
 きっかけは鶏の解体実習だった。動物が好きで農業高校を志した濱田さんには思いもよらない「正直言ってやりたくない」出来事だった。さっきまで餌を食べていた鶏が、人の手で息絶える。頸動脈を切られ、湯につけて毛をむしり取られ、首を切り落とされる。
 「心の中でずっと死んでいる鶏に謝り続けた」濱田さんは食事がのどを通らないほどのショックを受けた。同時に「食べることの意味」「命と食の有り難さ」を身にしみて知ったという。
 肉でも魚でも、店頭では包装された食材としか目に映らない。だが野菜や果物などの植物も含め、私たちはさまざまな命を日々提供してもらっており、それが自身の血肉となる。「いただきます」の言葉には本来、命への感謝が込められているのだ。
 貴重な体験で命と食を見つめ直した濱田さんがすごいのは、自らの思いにとどめずそれを実践に移した点だ。給食センターに出向いての残飯量調査。学校の寮で残飯を飼料に活用していることを知って自宅でも実行。母校の小学校に出向いて命と食の重要性を訴える出前授業。作品は次のように結ばれている。「『給食費を払っているのだから、いただきますを言わせないでほしい』などという寂しい言葉が聞かれない日が来るのを信じ、私は訴え続けます」と。
食の安全・安心への関心が高まっている今こそ「いただきます」の言葉を心からかみしめたいものだ。
毎日新聞鹿児島支局長 平山千里 
2007/11/19 毎日新聞鹿児島版掲載