はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

おれんじ鉄道

2007-11-27 18:22:35 | かごんま便り
 先日、ある会合に呼ばれて阿久根市に出向いた。初めて乗る肥薩おれんじ鉄道。週末の夕方とあって通勤・通学客の姿はなく、車内は閑散としていた。
 静まり返った阿久根駅に降り立った。九州新幹線の部分開業に伴い、JRから経営分離されて3年半。かつて「みどりの窓口」も設置されていた特急停車駅の面影はない。駅前には絵に描いたようなシャッター通り。出迎えてくれたKさんがため息混じりにもらす。「第三セクターになって便数が激減しましたからねえ……」
    ◇  ◇
 肥薩おれんじ鉄道の経営再建問題が新たな段階に入った。県が災害対応などに備える経営安定基金を取り崩して赤字を補てんすることを沿線3市に提案した。取り崩すのは、経営分離の対象外でJR鹿児島線が存続する2市4町(当時)の出資分3億7500万円。だが2011年度には底をつく見通しで、その後は県と沿線3市が自腹を切るしか赤字を埋める方策はない。
 提案にあたり伊藤祐一郎知事は、県の見通しが甘かったことを認めた。経営基本計画による04年度の輸送人員予測は年間約243万人。だが実績は同188万人どまり。計画では何とか黒字経営が見込まれていたのに、開業翌年の05年度には赤字に転落している。
 特急が走らない並行在来線は経営困難というのが、JRからの経営分離=三セク化の背景だ。バラ色の未来は描きようがないはずだが、それでも鉄道を存続させるのは、高齢化が進んだ地方で住民の足を確保する大義名分があるからだ。 
 都市住民の利便性と引き換えに地域の足を切り捨てながら進む整備新幹線事業。並行在来線を巡って長崎ルートでも佐賀県と沿線自治体の綱引きが続くが、それは地方の将来像にかかわる重要な問いかけをはらむ。だから肥薩おれんじ鉄道の成り行きには、出張や帰省で新幹線の恩恵にあずかる身としても無関心ではおれない。
 毎日新聞鹿児島支局長 平山千里
 2007/11/25 毎日新聞鹿児島版掲載


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