はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

うそも方便

2007-11-19 07:57:01 | はがき随筆
 がんで胃の大部分を取り、落ち込んでいる男性を「私も胃の3分の2を切ったが、こんなに元気です」と励ました。
 後で妻が「あなたも実は5分の4を取ったのよ」と唐突に言う。<エッ、何で今になって?>と思ったが、平成を装い「じゃ病名は?」と聞くと口を閉ざす妻。私は運転に集中した。
 18年前、医師に「胃かいようで3分の1弱取ります」と告げられたが、術後は3分の2に変わった。それが本当は胃の8割を失っていたのである。
 しかし〝うそも方便〟。真実を隠されたお陰で、身体や心の回復が早かったのだと、医師や家族に感謝したい。
   出水市 清田文雄(68) 2007/11/19 毎日新聞鹿児島版掲載

極楽鳥花と彼岸花

2007-11-19 06:49:28 | はがき随筆
 極楽鳥花が一輪咲いた。「今ごろ咲く花だっけ?」と思わず独り言。それを聞きつけた妻が「秋から春にかけて咲くのよ。つぼみをもっているから、これから次々と咲くわよ」。
 花屋さんの店先にはいつもあるような気がする。2㍍ほど伸びた葉の先に、だいだい色のトサカを振り立てた極楽鳥が1羽……その直線的なポーズは元気印そのものである。
 少し離れた所には、黄色の彼岸花が咲いている。40~50センチの茎の上に、温和な感じの花がフワッと載っている。
 極楽鳥花と彼岸花、対照的な花が秋を演出している。
   西之表市 武田静瞭(71) 2007/11/18 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はマグナさんからお借りしました。