今年の第35回毎日農業記録賞(農水省、各都道府県など後援)で市来農芸高3年の濱田菜摘さん(17)が高校生部門の優秀賞に輝いた(16日朝刊)。全国トップ10に入ったのだからすごい。ちなみに県内からの中央入賞は2年連続の快挙だ。
受賞作「命と食の有り難さ~貴方(あなた)の命を戴(いただ)きます」を読み返してみた。高校での実習で痛感した食や命の大切さ、その思いを出前授業などで実践する様子が描かれている。
きっかけは鶏の解体実習だった。動物が好きで農業高校を志した濱田さんには思いもよらない「正直言ってやりたくない」出来事だった。さっきまで餌を食べていた鶏が、人の手で息絶える。頸動脈を切られ、湯につけて毛をむしり取られ、首を切り落とされる。
「心の中でずっと死んでいる鶏に謝り続けた」濱田さんは食事がのどを通らないほどのショックを受けた。同時に「食べることの意味」「命と食の有り難さ」を身にしみて知ったという。
肉でも魚でも、店頭では包装された食材としか目に映らない。だが野菜や果物などの植物も含め、私たちはさまざまな命を日々提供してもらっており、それが自身の血肉となる。「いただきます」の言葉には本来、命への感謝が込められているのだ。
貴重な体験で命と食を見つめ直した濱田さんがすごいのは、自らの思いにとどめずそれを実践に移した点だ。給食センターに出向いての残飯量調査。学校の寮で残飯を飼料に活用していることを知って自宅でも実行。母校の小学校に出向いて命と食の重要性を訴える出前授業。作品は次のように結ばれている。「『給食費を払っているのだから、いただきますを言わせないでほしい』などという寂しい言葉が聞かれない日が来るのを信じ、私は訴え続けます」と。
食の安全・安心への関心が高まっている今こそ「いただきます」の言葉を心からかみしめたいものだ。
毎日新聞鹿児島支局長 平山千里
2007/11/19 毎日新聞鹿児島版掲載
受賞作「命と食の有り難さ~貴方(あなた)の命を戴(いただ)きます」を読み返してみた。高校での実習で痛感した食や命の大切さ、その思いを出前授業などで実践する様子が描かれている。
きっかけは鶏の解体実習だった。動物が好きで農業高校を志した濱田さんには思いもよらない「正直言ってやりたくない」出来事だった。さっきまで餌を食べていた鶏が、人の手で息絶える。頸動脈を切られ、湯につけて毛をむしり取られ、首を切り落とされる。
「心の中でずっと死んでいる鶏に謝り続けた」濱田さんは食事がのどを通らないほどのショックを受けた。同時に「食べることの意味」「命と食の有り難さ」を身にしみて知ったという。
肉でも魚でも、店頭では包装された食材としか目に映らない。だが野菜や果物などの植物も含め、私たちはさまざまな命を日々提供してもらっており、それが自身の血肉となる。「いただきます」の言葉には本来、命への感謝が込められているのだ。
貴重な体験で命と食を見つめ直した濱田さんがすごいのは、自らの思いにとどめずそれを実践に移した点だ。給食センターに出向いての残飯量調査。学校の寮で残飯を飼料に活用していることを知って自宅でも実行。母校の小学校に出向いて命と食の重要性を訴える出前授業。作品は次のように結ばれている。「『給食費を払っているのだから、いただきますを言わせないでほしい』などという寂しい言葉が聞かれない日が来るのを信じ、私は訴え続けます」と。
食の安全・安心への関心が高まっている今こそ「いただきます」の言葉を心からかみしめたいものだ。
毎日新聞鹿児島支局長 平山千里
2007/11/19 毎日新聞鹿児島版掲載
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