はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

実のはなの候

2007-11-24 15:09:21 | はがき随筆
 キンカンがほのかに色づきはじめ、急に深秋の装いを始めた。
 ラジオ体操ののち、いつものコースを歩いていると、カワラヒワの群れが朝空をかすめて西へ飛び去った。あちこちの家にはサザンカが一輪、二輪とピンクの灯をつけている。
 家では゜ムラサキシキブ3本がそれぞれ小粒の実を日々濃くして葉隠れに存在感を示し、マユミの紅白も色づき、実ものが自己表現をおう歌してきた。
 ところが……真っ赤なマユミにカイガラムシがびっしり。
 これもはな? とおもいつつ、つぶし、しごく。
   鹿児島市 東郷久子(73) 2007/11/24 毎日新聞鹿児島版掲載

やいややいや

2007-11-24 15:03:03 | はがき随筆
 風の音に秋を感ずることもなく、夜空に輝く月や星と語らいもせず、降りしきる落ち葉に物悲しさも覚えず、ましてや人恋しく思う青春の胸のときめきなど、とうに忘れてしまい、満たされぬいら立ちを感じる毎日である。
 そんなある日、大学生63人の吹奏楽団が来た。妻と音楽鑑賞としゃれた。久しぶりの若者の集団だ。演奏曲も若々しく、パフォーマンスも躍動感にあふれている。ン十年前の若き時代にタイムスリップしてしまい、かえりしなチョィト妻の腕でもとろうと思い、腕にふれたとたん「介護しあうにはチト早いでしょう」と、かわされた。
   肝付町 吉井三男(66) 2007/11/23 毎日新聞鹿児島版掲載

コウテイダリア

2007-11-24 14:55:21 | はがき随筆
 5月にコウテイダリアの苗を2本、大きくなるのは知っていたので庇の雨どいの前に植えた。夏は葉が生い茂り、茎は太い所で直径10㌢くらいある。枝も四方に分かれ、9月になって荷ひもを三重にして雨どいの金具に結んで雪つりのようにつるした。近所の方も心待ちにして、いつ咲くのかとよく聞かれた。最初の一輪は11月9日だった。薄紫で一重の可憐な花びら。植えてから6ヶ月間、大事に育てた甲斐があった。咲き始めると次々に花開く。つぼみもかぞえきれないほど多くつけ、これからしばらくは楽しめそうだ。
 可憐なるコウテイダリアやっと咲き
   出水市 川頭和子(56) 2007/11/22 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はとものベジフラガーデンさんからお借りしました。

命拾い

2007-11-24 14:47:31 | はがき随筆
 豪雨になれば思い出す。昭和56年ごろ鹿児島市より後輩I君の運転する乗用車で鹿屋に出張。翌日、仕事を終え帰路の16時ごろ、垂水市で突然豪雨にあう。降り続く雨で桜島の野尻川下流の道路は濁流で通行は危険。私たちは手前で停車した。私は免許がなく助手席に座り濁流をにらむ。急がば回れのことわざ通りと思い、引き返して垂水経由を考えたが鹿児島へは約3時間かかる。ますますの増水。突然、I君はエンジンをかけ猛スピードで発進した。通行には成功したが危機一髪。妻に命拾いだったと語ると、顔を青ざめ「雨のやむのを待ったら」と小言。
   霧島市 谷山 潔(81) 2007/11/21毎日新聞鹿児島版掲載