『愛、アムール』

2013-03-14 10:13:04 | 映画
♪すーるぽん だびにょん
おーにぱせ おにどんせ

泣いてしまいました。

わーわーと「泣かせる」映画ではないのですが
ここは参った。

上記はフランスの古い歌『アビニヨンの橋の上で』

Sur le pont d'Avignon
L'on y passe, L'on y danse


上記のひら仮名は、とある少年に訛って聞こえていた
(歌詞)で
私たちにも「アビニョンの橋で輪になって踊るよ」
みたいな和訳で知られていますね。

あちらも日本の老人みたいに童謡に弱いのかなあ。


『愛、アムール』という邦題は誰がつけたんだろう?

たとえば英語チャンポンで『愛、ラヴ』だったらヘンですよね。
『愛』だけ、もしくは『Amour』でよいのに。
言葉を重ねることにどんな意味があるのか、考えてしまいます。

「老人の愛の映画のようだが、賞をたくさん取ってるし
いちおう見てみようか」と、内容も知らずに行きました。
(予めの知識は邪魔、という信念があるので)

びっくり。
老老介護の話だった。

苦手なんですよね。重くなるので。
どちらの立場になっても厭でしょ?

(どうもニホン男子はいけませんね。)
映画館でも女性ばかり目立ちました。
夫婦で見るべき映画でしょうに。


以下、書くうちにネタバレになるかもしれません。

良くできた映画について何かを書こうとすると
ストーリー、大切なラスト、などに触れなければ
伝えることが不能、ということが多いのです。


ジャン・ルイ・トランティニャンは現代フランスで
一番好きな映画俳優です。
ジャン・ギャバン以上でしょうね。

『Z』『暗殺の森』『狼は天使の匂い』『離愁』・・

見得を切る事のない演技が好きです。

この映画でも素晴らしい!
ご高齢になっての演技にはとても見えません。

女優さんはヒロシマに縁がある映画
『二十四時間の情事』に出ておられます、E・リヴァ。
若かった・・・


動きの少ないカメラワークで長回し。
ホウシャオシェンみたいに微妙にフレームを動かす
技もありました。
(人の動きなどで構図を調整せねばなりません)

一拍早めの画面繋ぎと、昔の日本映画や古典落語にある
パっとした場面転換。
しっとりとした内容をダレさせないのは流石です。

とてもほぼ一軒の「家」だけで撮られたとは思えません。
美しい画面がたくさんありました。

映画の始まりにオランピア劇場のシーンがあります。

大勢の客を映しているのに、主人公二人がどこにいるか
まるでスポットライトがあたっているかの様に分かるのです。
どんな技でしょうね?

ここだけでも超一流の監督と分かります。


老老介護。真摯で、つらい話でもありますが、
愛の力を教えてもらう映画でもあります。

とても私にはできない。

「愛する」とはサプライズ・プレゼントを考える事ではなく
日々共に暮らすことではないか、と、じっくりと
語りかけてくるようでした。

トラブルもあるが、ふとした思い出で二人に笑顔がうかぶ
・・それで良いのではないかと思いますね。

台詞に「メルシ」と「パルドン」があふれていました。

「ありがとう」と「ごめんなさい」
私など、どうも黙ったままで済ますので反省です。


私たちも「介護」に遭遇するかもしれません。

そうだろうな・・たいへんだな・・僕にはできないな・・
こんなこともあるのか・・・

自分の心が保てるか、正直な処、不安ですね。

カミサンに叱られそう。