敗戦後、軍の物資を横取りした人

2011-07-21 20:32:13 | 塾あれこれ
父の親友にAさんという方がおられました。
もう一人とで仲好三人組だったらしい。

もう一人の方は戦前から戦後にかけて地方では
比較的有名な会社の御曹司、ただし私が物心ついた
ころにはほぼ没落しておられました。
父は友の名前=カンジから「カンちゃん」と呼び仲がよかった。

母も一緒になって「○○のカンちゃん」

3人組のもう一人は「Aさん」
Kちゃんよりすこし距離がある、もしくはAさんは
立派な方で(ちゃん呼ばわり)しづらかったのかも
しれません。

父はシベリアに行き23年に帰国、他の日本人より
戦後のスタートで後れをとったと感じていたようです。
祖母からのプレッシャーも大きかったらしい。
何しろ祖父が戦争前後で家業をつぶしていましたから
長男の父を頼るしかなかったのですね。

Aさんは戦後しっかりと事業を成功させておられました。
3人組も1勝2敗だったようです。


母があるとき「Aさんは敗戦直後、軍の物資を横流しして
事業の資金を作った」という話をしていました。
良いとも悪いとも言わなかったですが、カンちゃんの話をする
明るい響きはありませんでした。

父が敗戦時日本にいたとしてAさんの真似を出来るはずもなく
倉庫へ取りに行ったらドジをしてつかまっていたに違いなく
Aさんをとやかく糾弾する話でもないのですけれど。


戦争はいつまで続くか分からないから軍はそれなりの物資を
備蓄していたのですが(国民生活が厳しくても)
もともとは国民が必死の思いで納めたものと言えます。

Aさんがクスネたのは(凶暴かつ負けちゃった、軍)から
というよりも、大元は国民からなのです。
戦争に負けちゃいけないから必死で納めた。
(軍の一部はそれを浪費していた)

横流しを私は(威張れる行為)とは思いません。

けれども不必要に浪費をしていた軍の実態を知っていて
横流しに及んだとしたらその気分も分かる気がします。

大阪のオバチャン的な感覚ならどうでしょう?

「どうせ置いといても他の誰かが持ってくヤン」
「もともと軍隊のもんとも言いづらいやろ」
「軍のエライさんが取り込むかもわからんし
 敗戦時の国民がちょっと分けてもろうてもエエんちゃうの」

私「でも供出した人のことを思うと軍と同レベルに・・」

オバチャン「ほんなら元の人へ返せるか?」
 「あんたが、ええかっこしたいならカマンけど、
  人を悪うは言えんな」

どちらも正しいのでしょう。


ただ、人間は自分の心にはウソをつけません。

私のように「金は欲しいなあ、でも倫理的に許されるか」と
悩むタイプが実社会では最悪。
それは分かっていてもハートが渋る。

どこでこんな損な性分に育ったのか、
もしかして学校の道徳教育だったらちょっこし不平を言いたい
気ではあります。

戦後、膨大な物資が消えている筈です。
当時どんな倫理観が働いていたのでしょうね。

PS
親爺はアル中で経済能力もなく、子供から見てワガママな
戦前男子でしたが、妙にヤセガマンのところがありました。

物資横取りの話をもしも父にしたら怒るでしょう。
「リクツはない!イケンもんはイケン」

もちろんAさんとは仲たがいなどありえなかったハズです。
たぶん「あいつはあいつ」