01逢いたや2014・・・秋!

2014-12-16 | 海外蒸機
水沼先生の秋レポートをお届けいたします。


1、ザールフェルト:1980

“鉄”の神様が目の前に現れて

「ヤマシタさん、世界のどこか一カ所だけ好きな時代の好きな場所へ連れて行ってあげる」

とのたもうたら?

ここは東十条の居酒屋たぬき、午後11時、酒が入って上機嫌の国鉄時代、編集長の山下修司さんは言う

「あるものは上野駅13番線、あるものは函館本線上目名、飯田線、しかしわしゃー1980年の雨と霧のザールフェルトへ行きたい! もう一度あの陸橋から、01を、44を今のデジカメで撮りたい!!」

そう1980年の旧東ドイツ、ザールフェルトには蒸気機関車が集結していた。

駅のそばの陸橋から機関区と駅が見渡せた。

ドイツらしい低い雲がたれ込める中、機関区から次々と01、44等の蒸機が給水、給炭を終わり目前の側線に現れるのだ。 一旦停止した後、構内やザールフェルト駅のホームの発車位置に向かうのだ。
待つ事しばし、長笛一声、ほれぼれするようなブラストとともに黒煙を上げ、白いドレインを切って眼下を通過していくのだ。

確かに‘もし’世界でただ一カ所行けるとしたら、上野でも常紋でも横川でも無い。 私も間違いなく1980年のあのザールフェルトの陸橋を選ぶだろう。


2、ノイエンマルクト:2014

「今年の秋は01大集合だ!」

5月にドイツを訪問した際、ネルトリンゲンのバイエルン鉄道博物館の機関士、デトレフ メゴウ氏は酔っぱらいながらわめいていた。

ネルトリンゲンの01も066と180が参加予定だという。 ボイラー修理中でバラバラの 01 066 が数ヶ月後に走るとは信じられなかったが、スイスから来た180はマイニンゲンの蒸気機関車工場で修理中だという。

“01大集合”はノイエンマルクトにあるドイツ蒸気機関車博物館が主催となっていた。

ノイエンマルクトはドイツの東南部でニュールンベルクに近い。 国鉄時代の編集長、山下修司氏のいうところでは結構な山岳地帯だという。 01は9台が大集合するらしい。

この01大集合の噂は何度も聞いた。 2011年のアイゼンバーン ロマンティックでもこの話を聞いた。
そのたびにガセネタだったのだが、定例のたぬき会で新人、松岡君の情報だと、ネットには情報が流れていてどうやら今度は確実らしい。 これは何があってもいかなくてはと決心した。



9月後半、5人の日本人は続々とドイツ東南部ノイエンマルクトへ集合した。

今回はKATOから社長加藤浩さん、営業企画課長関良太郎さん、ネコ・パブリッシングの編集局長名取紀之さん、そして大学院生の松岡秀樹君とバラエティーに富んだチームだ。

フランクフルトで加藤さんのBMWに乗せて頂く。
今回はポルシェはなし。

ポルシェに乗っていたらドライブが楽しすぎて“鉄”を忘れてしまう。

第1日

泊まったホテルはスパと言う名前の、山の上のなかなかしゃれたリゾートホテルだ。


朝の窓からは霧が立ちこめるノイエンマルクトの町が見下ろせる。


朝靄の中をドイツ蒸気機関車博物館に向かった。


線路は架線がなく、駅舎は立派で貨物ホームまであるが、なんと無人駅だ。

松岡さんの前情報だと50ユーロで‘2日間パス’が買えるという。 博物館の出入り自由で有料撮影地も自由、そして列車乗り放題だという。
ドイツ語の堪能な彼はあっというまにパスを人数分手に入れてきた。 首からパスを下げ蒸気機関車博物館に向かう。


小さめの機関区、そして良い状態で保存された静態保存の蒸機が現れる。


博物館内にエンドレスで敷かれている600mmナローを眺めながら行くと数条の煙が上がっている。


朝靄の中に01が忙しく出発準備をしている。


結局、参加したのは6台。

デトレフのバイエルン鉄道道博物館からの 01 066、01 180 は修理が間に合わず参加しなかった。

ウルムの 01 1066 もやってこなかった。

しかし6台が一同に会するとは壮観だ。
 

左はスイスからやってきた 01 202号機、磨きだしの動輪を持つ。 右は西ドイツニューリンベルグで一度は焼失した 01 150 号機、前回はトラブルで走らなかったが今回は走行可能らしい。


そしてフランクフルトから 01 118号機はいつもの美しい姿を見せている。


一番奥はオランダからやってきた1075号機で今回唯一の3シリンダー機だ。 結構汚れていて、かえって現役っぽく好ましい。 

東ドイツ型で、人民01とかナメクジと呼ばれる015は今回 509 と 533 が参加しているはずだが重油専燃機 509 が見当たらない。


533 は入れ替え用のディーゼルに牽かれて現れた。




朝靄はどんどん晴れて行く。

しかしドイツの9月は天候不順で午後からは雨らしい。


石炭炊きの015(ヌル・アインス・フュンフ)01 1533


ダンプスペクタケルでは走れなかった 01 150


美しい 01 118


給炭中


磨き上げられていないのが好ましい 01 1075


次々に給水、石炭を積み出庫していく。


ビールの絵が気になりますね

走行写真を撮るべく駐車場に戻るとすでに一杯で車を移動することができない。

やむなく駅近くで発車をとることにした。
駅構内に陸橋が有り、すでに人だかりだ。 撮り鉄に専念する松岡君はシャトルバスで終点近くの撮影地へ向かった。  

残るおじさんたちは陸橋に上がった。


次々と01が駅構内にやってきて出発位置につく。


補機としてオーストリアから01と共に38型 1301号が来ている。

2012年にデトレフのS3/6と重連でオーストリアへ行った時に重連を組成した機関車だ。 当時は手すりを赤く塗っていたが、黒くなりナンバープレートも替えてシックに見える。


もう1台、64 491という小型のタンク機もやってきている。

列車は隣のMarktschorgast駅まで30分毎に発車する。

線路は非電化の片登りの複線でMarktschorgast駅から単純にバックしてノイエンマルクト駅へ戻ってくる。


9時47分定刻に1番列車が発車した。 トップバッターは 01533、509 の東独タイプの重連だ。


前向きに強烈なドレインを吹く




陸橋上は煙と蒸気で全く見えない。






64 491


01 1075

2番列車は 01 118 の単機で38形が後補機につく。


20分後、01118 も凄いドレインを吹きながら発車していった。






どこかで同じ光景をみた気がするがデジャヴかもしれない。


ニュールンベルグから“テツ”満載の臨時列車を牽いて旧塗装のディーゼル機 216 224号も到着し、構内は賑わっている。 この機関車は日本のDD54の見本になったといわれ外観もDD54に似ている。


次は走行が撮りたいがとても駐車場から車をだせそうもない。

駅から15分くらい歩き、カーブのアウトから第3列車を狙う。


背走する第2列車


豪快な3気筒の音と共にオランダから来た 01 1075 と 01 509 の重連が駆け抜けて行く。










北海道南部のような風景を歩く


スイスからの 01 202 と 01 533 の重連を横から撮った。


38形


背走する第3列車








駅へ戻りながら原形タイプ 01 118 を撮った


この頃から空は曇りだした。


その後晴れることはなく、先程見かけた小さな橋の上で2回めの 01 1075 と 01 150 重連を捉えた。 01が2台が現れたと思ったらそのまま停止してしまった。


しばらくすると汽笛二声が鳴り、後ろで候補機のもう一つ汽笛が響き、空転を繰り返しながら再スタートしていった。


01二台のブラスト音は凄い。






ビデオ向きで井門さんが今回参加して動画を回していたら狂喜したろう。

結構疲れたおじさんたちはもう駅へ戻った。


機関区の横に臨時に作られたバーで昼食を取る。

入れ替えをする01を眺めながら地元のソーセージとビールをやるなんてこんな幸せはない。


ビール名は地ビールのKapuzinerdeでこくがあり苦みもちょうどだ。 ソーセージもさすが本場でおいしい。 すぐそばを通過する01の動輪を眺め汽笛とブラスト音を聞きながら一杯は最高だ!このまま時間が止まってほしい。

空腹が落ち着くとすでに雨は本降りになっていた。 濡れるのはしんどいので博物館に入った。


01 111


比較的狭い扇形庫だが綺麗に整備されている。


流線型の010


グラスカステン  他に18形もがいる。

どれも鉄道模型ではおなじみだ。


博物館内の敷地を600mゲージのナローがエンドレスに敷かれている。

ここにも有火の2軸のナローの蒸気機関車がいて小さな列車を引いている。 この小さな1台を入れれば蒸気機関車は9台が有火で稼働していることになる。

雨は小降りになってきた。


乗車無料だから終点まで乗り鉄をすることにする。 跨線橋を渡り駅へ戻り今度は列車に乗った。


うれしいことに食堂車があり、また地元のビールを頼む


一等車のコンパートメントを見つけたのでここで寛ぐ事にした。

前から汽笛二声、後ろからも一声で列車は走りだした。
歯切れの良いブラスト音でかなりの加速だ。
線路は結構な勾配だが列車はぐんぐんスピードを上げていく。
機関車の音が3気筒と2気筒の重連で微妙にずれてかえって楽しい。
01のブラスト音を聞きながら1等のコンパートメントで地ビールを飲むなんて贅沢の極みだ。

10分ほどでMarktschorgast駅へ着いた。 後は下り坂を折り返すばかりだ。 ノイエンマルクトに戻り列車を降りると加藤さん、関さんはBMWでスイスへ向かった。 彼の地で鉄道模型の打ち合わせだという。


360度回転は出来ない独特のターンテーブルに乗る 64 491






600mmゲージと標準軌のクロッシングを撮影する名取さん

残った名取さんと私はお土産を探すことにした。


ナローゲージのエンドレスの中にかわいい機関庫があり、その中で銘板を売っている。


名取さんはどうやらナローのディーゼルのプレートがお目当てらしい。


私は Deutche Raichbahn (東ドイツ国鉄)とBw Saalfeld(ザールフェルド機関区)の銘版を購入した。

販売のおじさんが

「ザールフェルドは蒸気が大集合した有名な機関区だ」

と説明してくれた。

「知っているよ、1980年に行ったから」

と答えるとびっくりしていた。






最後列車は3重連になる。


現役で01が走っている頃はほとんどが平原を単機で走っていた。 リアルではないがC62も最後は3重連のイベントだったと聞く。
40年後にまともに走っているC62が1台も無いとは鉄道大国として情けない。


陸橋を登ると出発直後は蒸気と煙でさっぱりわからなくなるので、少し先の陸橋を過ぎたDDMの看板がある位置で構えることにした。

待つ事しばし、01 118 原型機が先頭、そして01 509、01533と東ドイツで活躍した機関車達が素晴らしいブラスト三重奏で眼前を通過していった。

















雨は土砂降りになってきた。




かなり堪能した名取さんと私はホテルに戻った。

部屋でうつらうつらしていると汽笛が何度も何度も聞こえる。 後に合流した松岡君の話では8台全て繋げるというショーをやっていたらしい。

7時すぎにホテルを出てまた機関区に向かった。






最近、流行中のライトアップだ。


少々不自然だがこれも魅力だ。


01の赤い動輪が照明がライトアップでくっきりと浮かび上がる。








残念ながら三脚がなく感度を上げて撮影した。


01 118

この日は午後9時に引き上げた。

充実した長い一日だった。




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