新・ほろ酔い気分

酔っているような気分のまま、
愚にもつかない身辺雑記や俳句で遊んでおります。
お目に留めて下されば嬉しいです。

ビリになってやる!

2010年08月22日 06時51分08秒 | 身辺雑記

 子供の頃から、私はこだわりが多かった。何事によらず、こだわりを持った。そのこだわりも、いい方向に向いたものならまだいい。ところが、褒められない妙なこだわりがかなりあった。

 たとえば、中学校時代のマラソン大会。「絶対にビリになってやる!」と、愚かなことを公言し、頑張ったことがあった。「ビリになる頑張り」というのも不思議な言い方だが、実際にビリになった。

 実はその前段があった。入賞するため、近所の同級生たちと、密かに練習をしていたのだ。

 うろ覚えだが、マラソン大会は2月ごろ。練習は、星がきらめく冬空の下で行った。とにかく寒かった。今でもその寒さは覚えている。

 ところが、短い距離の練習なのに、私は完走できなかった。途中でイヤになってしまうのだ。辛くなると、歩き出す。少し楽になると、走り始める。しかし、また苦しくなる。また歩くということを繰り返した。

 こんなことでは、とても練習にはならなかった。自信をなくすために、寒い星空を走ったようなものだった。

 この練習を提案したのは私だった。付き合ってくれた同級生たちの手前、もはや「止めようや」とは言い出せず、とんでもない一計を考えた。「一度ぐらいは、恰好のいい順位でゴールしたい」という思ったからだ。つまり、コースのショートカットを目論んだのだ。

 練習コースは、小川に並行している農道。上流に向かって2キロほど走り、上流で橋を渡って向こう岸の道路を戻ってくるコースだ。途中に橋がなかったので、狡いことはできない仕組みとなっていた。

「一度くらいは早く戻ってきたい」と思った私の一計は、川幅の狭いところを飛び越そうとしたのだ。仲間が走り去ったあとで、しかも戻ってくる前に、ピョンと飛び越す算段だった。

 ある練習の夜、その一計を実行することにした。幸い月はなく、星明かりの寒い夜だった。仲間たちが走り去ったので、狭いと見当をつけた場所で、ピョンとやっつけた。

 バシャン!と、見事に落っこちてしまった。手は向こう岸の篠を掴んだのだが、片足が小川を飛び越せなかったのだ。

 やがて上流から、仲間たちの跫音が聞こえ始めた。出るに出られず、通り過ぎるのを待ってから、とぼとぼとゴールを目指した。その時の寒かったこと。

 その夜以来、私はマラソンの練習をやめた。「ビリになってやる」と公言したのは、その夜以降だった。

 マラソン大会当日、案の定、私はビリになった。頑張って走ろうにも、足が動かなかったのだ。「意図的なビリ」ではなく、「正真正銘のビリ」だった。中途半端な遅れではなかったので、心配になった教師が、自転車で迎えに来てくれた。

 自転車に乗っかってゴールに戻ったのは、私のほかにもう一人いた。H.H君だった。一緒に練習をしていた同級生だった。

 H.H君は数年前に亡くなった。肝臓ガンであった。

 別館として、写真俳句ブログの「ひよどり草紙」を開いてます。

 ご覧いただけると嬉しいです。

   → こちら

 

コメント (10)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 夕べは通夜 | トップ | 友が退院 »
最新の画像もっと見る

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
前のまえにもコメントしておりますが。 (だんだん)
2010-08-22 09:38:24
前のまえにもコメントしておりますが。
またお邪魔しました!
内容は違っても、情けない企みごとの経験は大なり小なりあるんです。
中学卒業後、35年経って同窓会に初めて参加しました。
決心するまで、己自身の過去が怖かったのです。
今はどうでもよくなり、これが水に流すということかな、と…
訃報を目の当たりにする年齢になられたひよどりさん。
大先輩の心の有り様を、もっと伺いたく思います。
返信する
ほろ苦い思い出ですね。 (蘭子)
2010-08-22 12:38:32
ほろ苦い思い出ですね。
誰しも、このような体験の一つや二つあるでしょうが、
ひよどりさんのような文章が書けません。
鮮明に覚えていらっしゃるのは、当時の感性の鋭さ故でしょうか。
今もその感性は健在ですね。
返信する
 競争はキライです。 (太郎ママ)
2010-08-22 17:02:13
 競争はキライです。
 ですから、何事も他人と競うことはしません。 
 すべて、気儘にしています。
 これって、逆から言えば、負けず嫌いなのかもしれませんね。
返信する
冷たい川水の洗礼を受けたのですね (ひろこーぼ)
2010-08-22 17:12:49
冷たい川水の洗礼を受けたのですね

「ビリになってやる!」
よーくわかる気がします

笑ってはいけませんよね
当日は熱でもあったんではないですか?  
やっぱり ふふ
返信する
 ひよどりさんもヤッチャで、少しでも楽にしよう... (浜福祉)
2010-08-22 19:46:23
 ひよどりさんもヤッチャで、少しでも楽にしようと考えていたのですね !!
 ブログを拝見し、上手く飛べると思った小川を飛べつ『バシャン!』と落ちてしまった姿を想像すると、笑ってしまいました。
 大人になって知りましたが、「急がば回れ」納得です。
 明日もブログ楽しみにしています。
返信する
だんだんさん、お早うございます。 (ひよどり)
2010-08-23 07:19:31
だんだんさん、お早うございます。
先の記事に対するコメント、ありがとうございました。
遅ればせながら、返信をしました。

私も中学時代の同窓会に、いろいろのものがあって、出席できませんでした。
昨年出てみて、よかったと思いました。
今年もまた通知が来ています。
体調がよかったら、出ようと思っています。
こちらが深刻に気にしているほど、相手は気にしていなかったようでした。
返信する
太郎ママさん、お早うございます。 (ひよどり)
2010-08-23 07:21:46
太郎ママさん、お早うございます。
つまりは負けず嫌いが妙な行動になってしまいます。
同道と戦い、同道と負けることができなかったのですね。
屈折した男の子だったのです。
返信する
蘭子さん、お早うございます。 (ひよどり)
2010-08-23 07:26:37
蘭子さん、お早うございます。
コメントが順不同となってしまいました。ご免なさい。
苦い思い出なので覚えて居るのですが、その時の仲間たちは、覚えていないようでした。
ホットしたような寂しいような気分です。
11月にまた同期会があり、出席のつもりです。
返信する
ひろこーぼさん、お早うございます。 (ひよどり)
2010-08-23 07:28:37
ひろこーぼさん、お早うございます。
あなたは優しい人。
でも、熱はありませんでした。
いや、悪い知恵熱が出たかもしれませんね。
困った美少年(?)でした。
返信する
浜福祉さん、お早うございます。 (ひよどり)
2010-08-23 07:31:37
浜福祉さん、お早うございます。
「急がば廻れ」なんて考えませんでしたね。
なにしろ、走らずにゴールしようとしたのです。
つまり、「手抜き」です。
今になって、「手抜き」を指弾できる過去ではありませんでした。
返信する

コメントを投稿

身辺雑記」カテゴリの最新記事