人間ドックの結果が知らされてきた。
「呼吸器に炎症の疑い」とのコメントがあった。さあ、大変だ。
さっそく、かかりつけの病院へすっ飛んで行った。
「自覚症状は?」
中年医師の問診は、素っ気ない。患者が多い中で、私のようなケースは不要不急なのだ。医療亡国の代表例と言われかねない。
「なんとなく咳っぽくて……」
「熱はあるの?」
「さっき測ったら、35度ちょっとでした」
「いつもそんなですか?」
「ええ、おそらく……」
「音を聞かせてください」。つまり、聴診器だ。
「大きく息を吸って!ハイ、次は背中です」。私は2~3回ほど深呼吸をした。
「問題はないですね。マア、念のため、レントゲンを撮ってきてください」
と、医師の指示を受けた。
「アノー、私の体温は低すぎますか?」
体温に対する先ほどの医師の反応が、少し気になった。いや、実のところ、私自身、35度台の体温を気にしていたのだ。
「そんなことありませんよ。ただ、平熱は何度なのかなと思ったので、聞いただけです」
医師の言葉に納得したわけではなかったが、ほかの患者が待っているので、診察室出た。
よく考えてみれば、以前は、平熱が35度台ということはなかった。36度2~3分はあったように思う。今日は、少し低すぎるようだ。
しかし、今ここで気に病んでいても仕方がない。レントゲン撮影に急いだ。
1時間ほどして、さきほどの診察室から呼ばれた。
「やはり、問題はありません。人間ドックの時、風邪をひいていたのかなあ」
写真を見ながら、医師が言った。とりあえず、ホッとした。しかし、気になることもあった。
「先生、私の体温は低すぎますか?」
私の質問は唐突だった。
「一概には言えませんよ、個人差もありますし……。それに、歳をとってくると、多少は低くなるかもしれませんしねえ」
もはや、医師は私に用事はない。次の患者のカルテを手にしている。やむを得ず、外へ出た。
以前に、「低体温は万病の元」、と聞いたことがあった。一定の体温は、生きている証であり、活動が衰えてくると、低くなってくるという説であった。
「病原菌をやっつけるために体温を上げているのだから、解熱剤で熱を下げてはいけない場合もある」、ということもよく聞く話だ。加齢と平熱の関係もありそうだ。
いまごろになって、自分の平熱が気になるとは、まことに愚かな話だ。
ピンピンコロリならいつ死んでもいい、などと悟ったようなことを言っていたわりには、平熱ごときチッポケなことを気にして、右往左往しているのだから、とんだお笑い草ではないか。
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