今の床屋さんに世話になり始めたのは、今から20年ほど前です。
その店の若奥さんが、私を担当してくれました。
まだ子供さんは小さかった。
愛想のよい人で、ややボーイッシュな感じの美人でした。
その当時から、私の頭髪はかなり乏しかった。
しかし、私が、「いやー、ずいぶん薄くなったなあ」と言えば、「いいえ、そんなことはありませんよ!」と、私の言葉を言下に否定してくれました。
それから年月が経過しました。
もちろん、私の頭髪は発展的に薄くなって行きました。
でも、「これじゃあスカスカだねえ」とでも言えば、「いいえ、ちょっと手間をかければ大丈夫ですよ」と、ヤンワリと答えてくれました。
さらに歳月を重ねました。
私はヤケになって、「いっそのこと、ヘッドスキンにでもしようかなあ」と言ったことがありました。
彼女も少しギョッとしたらしく、しばらく私の頭を見たのち、
「いろいろと被りものもありますよ。なんなら検討してみましょうか」
と、遠慮がちに言ったのです。
あのころ20代の若奥さんも、今は3人のママ。上の娘さんは、高校受験の勉強中です。
2~3日前、お盆中だったのですが、床屋さんに行きました。
いつものように、あっちこっちと話題が楽しく飛びました。
鏡に映る愛しい私の頭は、アイパーをしていた昔日の面影はありません。
「これじゃあもう、手の施しようはないねー」
私の偽らざる感懐です。
鏡に映っている彼女の顔が、ニッと笑い、
「私が頑張ります!まだまだ大丈夫です!」 と、まるで太鼓判だった。
もはや何をしても、しないと同じこと。今の日本とそっくりです。
しかし、彼女の言葉によって、私は明るい気持ちになれました。
それにしても、「私が頑張ります」って、どんなこと?
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