私が学生だったころ、スマートボールというゲームがあった。
パチンコを凌ぎそうな勢いで流行りだしたこともあった。
パチンコは立てて玉を弾くが、スマートボールの場合、箱を横に寝かせて玉を弾いた。
玉の大きさは、パチンコよりも幾倍もの大きさだった。
右手で玉を弾き出す。
玉はゆっくりした勢いで箱の中を通り、釘をくぐり抜けたり跳ね返ったり……。
途中の穴に入れば、何個かの玉が出てくる。つまり、アタリだ。
どの穴にも入れなかった玉は、手前の大きな出口の穴へ流れ込んでくる。これはハズレ。
ゲームのやりかたはどうでもいい。
友人と私が、そのゲームに凝った時代があった。
特に友人の凝り方が異常だった。ある特定の店へ、毎日のように通った。私が同道しなくても顔を出していたらしい。
女性店員に気があったのだ。
その女性店員は、いつ行ってもマスクをしていた。
色白であることは分かった。声は爽やかで、歯切れもよかった。大人しげな感じであった。
友人はうまいこと話をして、その女性を誘いだしたようだ。
ことの次第はよく知らなかった。その後、友人はその件を話したがらなかった。
そのとき以降、友人のスマートボール店通いは止まった。必然的に、私も止めた。
「夜目遠目傘の内」
そのおりの友人の言葉だった。
そのことがあって以来、私はその友人が嫌いになった。許せない気持ちだった。
薄暗がりや遠くから女性を見ると、とてもいい雰囲気に見える。
傘の中での見え隠れは、色白であれば美人に見えてしまうのは当然だ。
これは女性に限らない。男の場合も同じ。
薄い頭髪むき出しの私の場合、マスクをしても遠目であっても論外。
危険物と思われることだってありそうだ。
このこと、実は容貌に限らない。
人の評価についても言える。
遠目によく見えていても、とんでもないことがある。
だから私にとっては、むき出しがもっとも安全なのだ。
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