新・ほろ酔い気分

酔っているような気分のまま、
愚にもつかない身辺雑記や俳句で遊んでおります。
お目に留めて下されば嬉しいです。

滝落つる

2008年06月27日 01時45分21秒 | 写真俳句・エッセー

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胸底の重石こなごな滝落つる

 男の胸に、鬱屈するものがあった。

 一つや二つではない。仕事のことや家庭のこと。健康上の悩みもあった。

 このようなことは、その男にかぎったことではない。現代に住む誰でもが抱いているありふれた悩みだ。

 仕事のことであれば、誰かに相談もできた。

 健康上のことなら、医師に相談するしかない。相談すればそれなりの手だてはできる。むしろ、自分で悩んでいても仕方がない。

 その男にとって、やはり女との問題は大きかった。誰にも相談はできない。

「あっそうだ。あの滝へ行ってみよう!」

 男は思い立った。

 病み上がりの身ではあったが、車を降りて4キロ弱の道程を歩いた。

 梅雨寒の日であった。雨模様なので、さすがに山道を行く人はいなかった。

 歩きながら、さまざまのことを考えた。答えが出るわけもなかった。

 久しぶりの山歩きのせいか、少しばかり胸苦しかった。同行者がいないことも、不安の材料だった。歩くにつれ、じんわりと汗ばんできた。

 滝の音が聞こえはじめた。

 息苦しさを怺えながら、しばらく歩いた。

 いつもよりもずっと水量の多い滝が、突然、男の目の前に突っ立った。

  胸底の重石(おもし)こなごな滝落つる  鵯 一平

 胸底の重石(おもし)の消えず滝しぶき  鵯 一平 

 

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コメント (16)
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