私はこの世に生を受けてから、呼吸を意識したことはありませんでした。 大学の級友からクラス会で、大月にあった鉱泉宿で一泊した時に、気功の一種である静功の会が多摩センターで開かれることになったので、自分は参加すると云うのです。
級友は千葉に住んでおり、わざわざ多摩センターまで来て参加すると云うのでした。 丁度その頃、胸に違和感を感じていて、知り合いの看護婦の方に、どこの病院で診察をしてもらったら良いかを、聞いておりました。
参加費も高かったので躊躇したのですが、最終的には参加することにしました。 週一回で3時間の会でした。 私は何も分からないままに本屋に行って、気功の初歩の本を買ってきました。
本には長く吐く呼吸の大切さが書いてあり、それまでの呼吸法の映像が思い出されました。 深海に潜る前にダイバーが行う呼吸を、真っ先に思い出していました。大きく息を吸う時に下腹が大きく抉られるように凹む下腹でした。
勿論ラジオ体操の時の、はじめに大きく息を吸ってから、ゆっくり息を吐く姿も思い出しておりました。
空手を習っていた連れ合いと観た極真空手の創始者である、大山倍達さんの自伝映画「空手バカ一」で見た演武での息を吐く時に、息音が聴こえるような呼吸法でした。
最初の静功の会では、先生役の中国からの留学生が胸の中心が燃えるようなイメージで、いて下さいなどの初歩的な話を聞いた後に、真っ暗な部屋で胡座を組んで1時間過ごしました。
私は、ひたすら大きく息を吸ってから、出来るだけ長く吐く呼吸を行なっておりました。 すると45分ぐらい経った頃に、頭のてっぺんにある百会(当時は何のことかは分かりませんでしたが)を中心として、電子の輪の帽子を被ったような状態になったのです。
長く吐く呼吸は、息音が聴こえるように自然と吐いておりました。 後で反芻すると、吐く息を体の中へ吐き入れておりました。
体の微妙な変化があったために、何となく興味が湧き、その日以来、毎晩、半身浴で入浴後に、隣室で家族がテレビを観ている音が漏れ聴こえる部屋を真っ暗にして、1時間 普通の胡座を組んで静かに深呼吸の要領で、長く吐く呼吸、吐く息をイメージで体の中へ吐く呼吸を行なっておりました。
日中も電車やバスに座っている時も、少し浅く座って肩の力を抜いてリラックスし、軽く目を閉じて長く吐く呼吸を行なっていました。 事務所でも同じように行っておりました。
すると何時しか、家族から何か変な息音が聴こえると云って、注意を受けるようになったのです。 意識しなくても無意識のうちに、大きく息を吸ってから
長く吐く呼吸を、また自然と息を体の中へ吐き入れる呼吸を行なっていたのです。