私は生まれて初めて胡座を組んでの座禅を行なって以来、何も分からずままに長く吐く呼吸を行なって来ました。 息を出来るだけ長く吐こうと思った時には、最初に大きく息を吸うのが自然であるという思いからでした。
幸いなことに一般的な禅宗の、初めに息を吐く、同時に下腹からも吐く腹式呼吸を知りませんでした。 この呼吸法は後日知ったのですが、残念ながらこの呼吸法は体の自然な生理的な動きには反しているのです。
息を吐く時には胸は縮まり、下腹は膨らむのが自然な動きです。 私が長く吐く呼吸を通して感得したのは、下腹が膨らむ時には下腹にある臍下丹田が、気を吸うのです。 然るに禅宗の呼吸法では、この自然な生理的な動きに反して、息を吐く時と同時に下腹の丹田からも気を吐こうとしているのです。
テレビ映像で深海を深く潜る前のダイバーが、はじめに大きく息を吸っている姿を見ました。 下腹は大きく抉られお腹の皮が背中の皮に着くぐらい、凹んでいました。 その映像を思い出したり、空手家が演武の時に、息を吐くとき息音を立てながら行っている姿を、思い出しました。
従って出来るだけ長く息を吐こうとした時には、最初にラジオ体操の深呼吸の要領で、はじめに息を大きく吸っていたのです。
この自然な生理的な動きを行いながら、毎日、寝る前に1時間静かに座り続けたのです。 そのことが私たちが生来持っていた気感を取り戻し、誰もがお母さんのお腹の中で行なっていた胎息という、肺呼吸を伴わない気の呼吸を感得出来たのです。