米国の南部、南北に伸びるフロリダ半島の突先から南へ150キロのところに細長く東西に伸びる島国がキューバ共和国です。面積で日本の1/3、人口は日本の1/10の小さい国、1959年の革命でこの反米の社会主義的国家は生まれました。以来、多少の曲折はあったにしても、キューバと米国は不倶戴天の敵國として対峙を続けています。今日まで、キューバ共和国が米国によって征服破壊されなかった、キューバが米国の容赦ない残忍な暴力をかいくぐって生き延びてきたという歴史的事実、これは、まさに奇跡と呼ぶにふさわしい事実です。
今回の新コロナウイルス蔓延という天与の試練の下で、国家を形成する人間集団が如何にあるべきかについての価値基準が全面的に背反する米国とキューバ、この二つの国がどのように振る舞うか、如何にこの試練を克服するか、それとも、屈服してしまうか、私は、固唾を飲んで、事態の進行を凝視しているところです。
この天災に対する米国の反応は、世界のマスコミが時々刻々に報じています。しかし、キューバという小国がこの事態にどう対処しているかについては、ほとんど報じられてはいません。私たちはキューバの振る舞いを知ることによって、この二つの人間集団の根本的相違を実に明白に感得することができます。キューバの対応についての報道を、私は主にINTERNATIONAL 360° というサイトから得ています。早期の報道の一例はキューバが開発したインターフェロンが中国で新コロナウイルス患者に使用されて有効性が示されたという3月15日付けのニュースでした:
https://libya360.wordpress.com/2020/03/15/covid-19-cuban-interferon-in-china/
次の16日には、新コロナウイルス患者が数人発生した英国系のクルーズ客船「MS Bremar」の寄港をキューバが許したというニュースが同じサイトに出ました:
17日付けの記事の一つによれば、キューバから世界の61カ国に派遣されている2万8千人を超える医師や看護師たちは各現地で新コロナウイルスともたたかっているが、「今の所、彼らの中に被感染者はいない」とキューバ政府当局は発表した由です。
幸い、新コロナウイルスに対するキューバの対応についての詳細でよくまとめられた記事(スペイン原文からの英訳)が3月22日に出ましたのでお読みください:
https://zcomm.org/znetarticle/cuba-in-the-time-of-the-coronavirus/
今回のコロナ禍へのキューバの反応は迅速でした。発生当時、中国に居た2千人を超えるキューバの医療班員の一部は即刻武漢に赴いて防災に参加しました。キューバ本国内でも、その医療保健制度は優れた機能を発揮しています。3月23日の時点で、1229人が適切な施設で入院治療を受けていて、そのほかに33132人が、自宅で医療要員の監視下にあります。コロナ禍で収入を失った人々に対しては、1ヶ月の収入が確保され、その後の救済策も樹立されているようです。米国の禁輸措置で、食料も一般医薬品も不足して居ますが、政府による配給制度によって、最低限の必要は満たされているようです。
この全世界を巻き込む新コロナウイルス災害が、何時、どのような形で収束するか、正確な予測は至難でしょう。新コロナウイルスに対して有効なワクチンが十分の量、製造され使用されて、この天災が収束するとしても、それは、おそらく、最短でも、一年は先のこと、その前に米国が数的に最大の被災国となるのは明らかです。その時、人間集団としての米国に何が起こるか?
これは、今、我々の目の前にある世界と「もう一つの世界」(じゃなかしゃば)との対決です。私が固唾を飲み、息を詰めて、成り行きを見守る理由はそこにあります。
藤永茂(2020年3月25日)
<付記> ひとりの植物人間が旅立ちました。3月25日は初の月命日、もし西方に浄土があるならば、そこに到って旅装を解き、いまは、大いなる安らぎの中にあるに違いありません。
浄土あれ天国あれと茜雲、妻逝きし後のヴェランダに立つ
<記事原文 How Cuba is Leading the World in the Fight Against Coronavirus.>
ミントプレスニュース 2020年3月16日
アラン・マクラウド
<記事翻訳>寺島メソッド翻訳グループ 2020年3月26日
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-217.html
日本語翻訳記事が出ています。
前回の<植物人間>も大変感銘深く読ませていただきました。有り難うございました。チトーの思い出を心から懐かしげに語るセルビア人、コソボ人、クロアチア人の知人が居ります。チトーを嫌う人に会った事が有りません。仰るとおり、気は優しくて力持ちだったのでしょう。
最後になってしまいましたが、ご内室様ご逝去との事、心よりお悔やみ申し上げます。
どうか藤永先生、呉々もお身体にお気をつけてお過ごし下さいませ。
しばらくブログのアップがなかったので、何かあったのだろうかと思っていました。
大切な奥様を亡くされたとのこと。先生も色々な思いが去来されたのではと拝察します。心よりご冥福をお祈りします。
今、アメリカでは大変なことが起きています。
私も、Shelter In Place、実態は自宅軟禁生活に入り2週間がたちました。集会禁止、外出禁止、出入国禁止、国防生産法発令、一体どこへ向かっているのか、大変恐ろしいです。
一時はスーパーに行っても、棚に商品はなく、潰れたトマトが一個ごろんと残されているような状態、まるでバッタの大群が通り過ぎた後の畑のようでした。それを見た時、何故か私の頭に浮かんだのが「民意はその国の経済規模と比例しない」ということ。念頭にはキューバがありました。
これは、本当に「天災」なのでしょうか?仮に「天災」だとしても、私にはこのコロナそのものより、それがもたらす「人災」の方がはるかに問題であるように思います。
アメリカで今、一番苦しんでいるのは非正規雇用者と零細個人事業主です。人々が一切移動せず、経済活動が全てストップしてしまうことの恐ろしさを身に染みて感じています。にっちもさっちもいかないといった感じです。民主党は、対コロナ対策で強硬姿勢をみせることで政争の具にし、政府は血税で金融機関を救うことだけしか考えていないように思います。庶民は、両サイドからパンチをくらっているような感覚です。
初めて投稿させていただきます。
お悔やみ申し上げます。
心からお悔やみを申し上げます。
藤永様、くれぐれもご養生ください。
米国コネチカット州、ニューヘイブン 津久井
お寂しいこととは存じますが、天国の奥様が安心されますように、どうぞ御身お大切にお元気でいらしてください。
5年前の3月、父が亡くなった際に寂しさのあまり先生にメールをお送りし、温かいお言葉を頂いて心が慰められたのを思い出します。
今度は私が先生に何か言葉をおかけする時ですが、なんと申し上げてよいかうまく言葉が見つかりません。ただ、これだけははっきり言えます。
奥様は先生と長い道を歩まれ、最後までご一緒にいられ、先生にここまで深く愛されて、本当にお幸せな人生だったことでしょう、と。
天国の奥様の魂が安らかならんことを。
先生のご心痛が少しでも癒され、お体がお元気でおられますことを。