褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 バベットの晩餐会(1987) 美味しそうな料理が出てきます

2021年12月30日 | 映画(は行)
 美味しそうな料理が出てくる映画の名作は多いが、今回紹介する映画バベットの晩餐会も美味しそうなフランス料理がクライマックスで登場する。そういう点で本作はグルメ映画の類に入れてしまう人が多いが、俺にとってはそのことが少しばかり腹立たしい。あ~料理が美味しくて幸せ、なんてレベルの内容ではない。人生の哀歓を感じさせる映画であり、否が応でも過ぎていく時間は時代の変遷、過去に対する後悔を呼び起こす。本作はそんな苦味を味わうことになったりするが、料理を食べつくした後に小さな幸せを感じることができる。そして、多くの人間が身近にある幸せに気づいていないことを教えてくれる。

 それではどんより曇ったデンマークの寒村を舞台にしたストーリーの紹介を。
 美しい姉妹であるマーチ―ネーとフィリパは、敬虔な牧師である父親の助けをしながら慎ましく暮らしており、父親も村の人々を説教を通して尊敬を集めていた。ある日のこと、姉のマーチーネーにだらしない生活を戒めるために叔母さんの家で謹慎中のローレンス士官が彼女に一目ぼれしてせっせと教会に通うが、清廉潔白な生活に耐えられなかったローレンス士官は故郷へ帰ってしまう。そして妹のフィリパにはフランスの有名オペラ歌手アシールが近寄ってくるが、非常に厳格な牧師である父親がアシールをフィリパと会わせなくしたために、仕方なくアシールはフランスに帰ってしまう。
 そして時代は過ぎ、今や父親の牧師は死んでいなくなり、姉妹も結婚せずにそのまま年齢を過ぎてしまい、教会を憩いの場として訪れていた人々も今では信仰も薄らぎ、口喧嘩が絶えなかった。そして雨が降る夜にくたくたになって姉妹の家を訪ねてきたのが中年女性のバベット(ステファーヌ・オードラン)。フランス革命のあおりを受けて家族を亡くしてしまったバベットはオペラ歌手のアシールと知り合いであり、彼から姉妹の事を聞かせれていて、亡命して姉妹の家に身を寄せてきたのだ。
 ただ働き同然でお手伝いさんとして姉妹の家に居候することになったのだが、いつもフランスの知人に宝くじを買ってもらっていたバベットに一万フランの大金が当たったとの嬉し過ぎるニュースが入ってきた。姉妹はついにバベットはフランスへ帰ってしまうのかと思ったのだが・・・

 明るい太陽が見られずに、どんよりとした空模様に寒そうな波打つ海岸。俺がこんな場所にいてたら鬱病になってしまいそうな村を舞台にストーリーが展開される。大したハッピーな話も出てこないが、ユーモアを交えながら淡々とストーリーが進む。古い概念、篤すぎる宗教への信仰、因縁が人々の心を少しばかり暗いものにさせてしまうが、そんな雰囲気を一気に変えてしまうのが、バベットが振る舞うフランス料理。村の人々にとって斬新過ぎるフランス料理とそれを調理するバベットを悪魔のように恐れおののく様子がけっこう笑えたが、次第に村の人々の疑心暗鬼な気持ちが溶けていく感じが見ていて心地良い。
 本作にはキーワードとして芸術というのが挙げられるが、芸術なんてものの価値は金額で決められるものではない。カネは欲しがるが、自分の給与を少しばかりの期間限定でもカットされるのを嫌がる議員が居るのも情けない限りだが、議員の評価は決して議員報酬の高低で決められない。両方とも鑑賞者、住民にどれだけ満足感を与えられるかだろう。そして幸福度なんて決してカネでなんか測ることはできない。
 グルメ映画ではない、なんて書きながら出されるフランス料理はやっぱり美味しそうだし、観終えた後の心地よさはハリウッド映画では味わえない奥深さ。デンマーク映画のレベルの高さを見せつける作品として今回はバベットの晩餐会をお勧めに挙げておこう


 

 


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