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映画 離愁(1973) 殆ど列車の中が舞台の不倫映画

2022年04月16日 | 映画(ら行)
 それにしてもウクライナ人の現状を見ていると悲しくなる。ロシアのプーチンには怒りが湧いてくるし、 映画でも多くの反戦映画と言うのが作られてきたが、この世の中の現状を見ていると反戦映画をどれだけ作っても大して役に立っていないことがわかる。今回紹介する映画離愁は反戦映画であり、不倫映画。今まで多くの不倫映画を観てきたが、なぜかそのような映画において名作が多いし、本作は特にドラマチックな結末を迎える。
 本作のタイトルは離愁という日本人が好むような題名が付けられているが、原題はフランス語で Le train。英語が少々でもわかれば、フランス語でも意味がわかるはずだが、本作の半分以上の時間が電車の中および、車両から出た外ばかり。不倫なんてものはモラルに反するが、本作を観たら不倫のイメージが変わる、と言うのは嘘。不倫を描きながら戦争の辛さを観終わった多くの人が感じるだろう。

 それではジャン=ルイ・トランティニャンと知的さを感じさせるロミー・シュナイダーといった当時の二大スター共演のストーリーをできるだけ簡単に紹介する。
 1940年代においてナチスドイツがヨーロッパ中を蹂躙している頃、ベルギーの近くのフランスの村に住んでいるジュリアン(ジャン=ルイ・トランティニャン)は娘と臨月を迎えている妻と一緒に、ナチスドイツの攻撃を避けるためにフランスの南部へ疎開しようと思い立ち、電車に乗り込む。しかし、身重の妻と娘は客車に乗せられたのだが、ジュリアンは自らと同じようにナチスドイツの攻撃から逃げるために多くの人が乗り込んでいる最後尾の貨物列車に乗せられて離れ離れになる。
 そんな時、ジュリアンは寂しげな雰囲気を持った美女の存在に気付く。最初こそ会話も無かった2人だが次第に2人は気が合うようになり、彼女は国はドイツでユダヤ人であるアンナ(ロミー・シュナイダー)ということを教えられる。やがて2人はお互いに家族がいるのだが、2人は愛を交わすようになる。
 そして電車も戦争の影響でボロボロになり客車と貨物列車は分断されることになり、ジュリアンの家族は本当にバラバラになる。ジュリアンは駅を降りるたびに家族の行方を探すがなかなか見つからなかった。そして最後の駅に到着した時にジュリアンは妻も娘も無事で男の子を出産した事を知るのだが、今まで一緒にいたアンナは突然のように姿を消した。
 そして3年後、まだ第二次世界大戦は続いていており、乏しい物資ではあったがジュリアンの家族は徐々に普段の生活を取り戻しつつあった。そんな時にジュリアンはフランスを支配するナチドイツの秘密警察に理由もわからず警察署へ連行される。そこで見たのは実はナチスドイツに対してレジスタンス活動をしていたアンナだった。警察署長からジュリアンにアンナを知っているかと問われる。もし知らないと答えればジュリアンは家へ戻され家族と平和に暮らせるだろう、しかし、知っていると答えてしまうと反ナチスのレジスタンス活動家を助けたことで自分もアンナと一緒に死刑にされるだろう。お互いの目が合い、ジュリアンは家族の元へ帰ろうとするのだが・・・

 電車が通るところでトラブルはあったりするのだが、非常にフランスの景色が綺麗。なんだか『車窓の窓』を見ているような気分になったりするが、アッ、今戦争が起こっているんだという現実に引き戻される演出が巧み。50年ほど前の映画なのに今の世の中を考えさせられる。電車の中で不倫するのはいけないが、しかし絶世の美女であるロミー・シュナイダーから『抱いて』なんて言われると、抱かないわけにはいかないだろう、なんて書いてしまった俺は女性の反感を大きく買ってしまったことは間違いない。
 しかし、最後の選択でジュリアンが採った行動はどっちにしろ観ている人にとっては賛否両論。ロミー・シュナイダーは目が合った時に言葉は交わさなくても、『私を知らないと言って』と目力で訴えていた。しかし、ジュリアンの選択は果たして。俺には最後のジュリアンの選択は不倫の罪を自らに課すことで、けじめをつけたように見えた。
 戦争によって電車の中で一瞬の愛が生まれ、しかし一瞬にして愛は無情にも不倫する2人を滅ぼす。画面が止まるラストシーンは案外珍しくて余韻を残すし、今まで平凡の生きてきても、いつどこで不幸に遭うかわからない。一期一会という言葉が俺の頭の中で重く響く。
 昔のヨーロッパ映画を観たい人、戦争の愚かさを描いた映画を観たい人、フランスの美しい景色を観たい人、美しい美女が出る映画を観たい人・・・今回は映画離愁をお勧めしておこう。

 
 
 

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