頭の中は魑魅魍魎

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『噛み合わない会話と、ある過去について』辻村深月

2018-07-26 | books
大学で同期だった男子ナベちゃんが結婚することになった。女子たちからは、人畜無害のいい人だと思われていたナベちゃん。結婚式に招待されたが、「ナベちゃんの嫁がヤバいらしい」という噂が立った・・・<ナベちゃんのヨメ>

松尾先生はアイドルグループで大成功した佑くんの弟の担任だった。テレビの撮影で松尾が教える小学校に佑くんが来るという。自分の事を覚えているという彼から告げられた意外なこととは・・・<パッとしない子>

自分に対して強権的だった母親ついて語る友達・・・<ママ・はは>

昔クラスで浮いていたゆかりは、その後塾の経営と教育コメンテーターとして有名になっていた。同じクラスでは上位カーストにいた早穂は情報誌でライターをしている。連絡を取りにくいと思っていたが思い切ってインタビューを申し込むと、意外にもOKしてくれた。ゆかりの口から出て来たのは・・・<早穂とゆかり>

どれも巧い。ネタバレしたくないので、上手く説明できてないけれど、ヒネリやオチが効いていて、人と人の記憶違いや、考え方の相違など、人間の闇の部分が巧妙に削り出されている。

悪い人ではない。真面目で、そして本音で生きているこの人には、みんながこの場所で建前で話しているなんていう、なあなあの発想がそもそもないのだ。裏表がなく、みんなが自分のように真剣にここで問題解決がしたいのだと思っている。理不尽でも我儘でもない。悪意だってもちろんない。ただ少し、ずれているだけなのだ。

「真面目な人って、義務が得意なんだよね」
「義務?」
「うん。することを与えられるとそれは一生懸命、とにかくこなすことを考える」

「ナベちゃん、幸せなんだよ。相手に必要とされて、自分も相手を必要として。そういう人に巡り合えたんだよ。それでいいのかよってみんなは言うけど、きっとそれでいいんだよ」

読んだ人と語り合いたくなる、地味なのに深い短編集だった。

噛みあわない会話と、ある過去について
辻村深月
講談社


今日の一曲

Chicagoで、"25 or 6 to 4"



では、また。
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