頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『ボクシングと大東亜 東洋選手権と戦後アジア外交』重松優

2017-01-03 | books
フィリピンのようなボクシング大国とボクシングを通して、戦後外交をどのように行ってきたかを描く、論文のようなノンフィクション。以下のようなことが明らかにされる。

裏社会の人間瓦井が白井義男、沼田義明、小林弘、藤猛らの世界タイトルマッチのプロモーターになれたのはなぜか。山口組二代目の山口登がピストン堀口の試合のプロモートできたのはなぜか。

正力松太郎率いる日本テレビが黎明期のボクシング中継でどう活躍したのか。後楽園スタヂアムの株主だった、阪急グループの総帥、宝塚歌劇団の総帥小林一三の弟田辺宗英は戦後の日本ボクシングにどのような影響を与えたか。田辺を含めた様々なボクシングに関わる人間たちが国粋主義に傾倒していたか。岸信介の外交とボクシングはどのような関係があったのか。

活躍したボクサー、金子繁治、矢尾板貞雄、勝又行雄の奇跡。ピストン堀口は、ノーガードで撃ち合う「玉砕」型のボクサーだったが、アメリカ流のカーン博士に指導され、科学的なボクシングによって日本人初の世界チャンピオンになった白井義男のボクシング。

ファイティング原田が1965年にバンタム級、藤猛が1967年にジュニア・ウエルター級、沼田義明がジュニア・ライト級のベルトを獲得し、世界タイトルの11のうち、3つが日本のものとなり、フィリピンを越した日本。

というようなかなりマニアックは話だった。ものすごく面白かったけれど、他人には薦めにくい、力作だった。

ボクシングと大東亜 東洋選手権と戦後アジア外交

今日の一曲

デンゼル・ワシントン主演の映画「ハリケーン」でも描かれた。実在のボクサー、ルービン ”ハリケーン”カーターを歌う、Bob Dylanで、"Hurricane"



では、また。
コメント    この記事についてブログを書く
« 2017年元旦 | トップ | 『痣』伊岡瞬 »

コメントを投稿