“みんながあの日の服装で
あの日の顔つきで
落葉松の緑が萌えている道を
笑いながらもう一度やって来ないかな”
■伊藤整「もう一度」より
陽光がまぶしい校庭で野球を見ていたが、
体のほてりを休めようと校舎に入った。
ひんやりした廊下が見通せた。
右手に職員室と校長室の看板。左手は窓が続く。
まるで遠近法の写生のモデルになりそうな廊下だ。
映像なら廊下の向こうからカメラに向かって
若き日の自分と昔の級友たちのシャドウが
スローで駆けてくるのかな。
震災で残ったこの校舎には
野球の歓声は何も聞こえてこない。
心を澄ませば
あの日の14歳たちの声が聞こえてきそうだな。
純粋に生きていた頃の、誰にもそんな懐かしい場所が存在しますね。
あの頃にはもう戻れない、今はいろんなことを知りすぎてしまいました。
校舎が震災を免れてよかったですね。
“そのときこそは間違いなく
本当に生き直したい
あの過ちをすべてとりかえしたい”
で結ばれています。