羊羹(ようかん)と言えば無茶甘い和菓子というのが子ども時代のイメージでした。しかし大人の舌に耐えるそんなにどぎつく甘くない羊羹もあります。
私の好きな羊羹は、御影・虎屋のでっち羊羹なのですが、この仙太郎さんの「栗蒸羊羹」もなかなか秀逸でした。ん?竹皮風の包みには「身土不二」という言葉が。どうやら「しんどふじ」と読むようです。
文献によると、この言葉は医師、薬剤師で玄米と食養の祖とされる石塚左玄(1851~1909年)の考え方をもとに、同氏が会長となり設立した「食養会」によって確立されたとあり、同会の活動のスローガンとしても掲げられたとありました。「『体と土とは一つである』とし、人間が足で歩ける身近なところ(三里四方、四里四方)で育ったものを食べ、生活するのがよいとする考え方」なのだそうです。解りやすく言えば「地産地消」を唱えるスローガンですね。
まあ、小難しいことは別にして、優しい甘さの羊羹でございました。自然の甘さというのはそんなにどぎつくありません。精製した砂糖の甘さや人口甘味料に馴れたら、こんな甘さは物足らなくなってしまう。そう考えたら現代の大量生産大量消費、低価格の食は恐ろしい気がします。
◇仙太郎 神戸阪急店 神戸市中央区小野柄通8-1-8