夕暮れの町で僕は見る
自分の場所からはみ出てしまった
多くのひとびとを
夕暮れのビヤホールで彼はひとり
一杯のジョッキをまえに斜めに坐る
彼の目が
この世の誰とも交らないところに
彼は自分の場所をえらぶ
そうやってたかだか三十分か一時間
夕暮れのパチンコ屋で彼はひとり
流行歌と騒音のなかで半身になって立つ
彼の目が
鉄のタマだけ見ておればよい
ひとつの場所を彼はえらぶ
そうやってたかだか三十分か一時間
人生の夕暮れがその日の夕暮れと
かさなるほんのひととき
自分の場所からはみ出てしまった
ひとびとがそこでようやく
彼の場所を見つけだす
黒田三郎