八月の読書、夏休みなのでやはり冒険もの。
という訳ではないが、新訳が出たというので
マーク・トゥエインの名作
「ハックルベリー・フィンの冒けん」を読む。
この本結構分厚い。読み応えがあると言えば
あるが、決して少年少女向けの児童文学だけの
域ではない小説である。
いかだでミシシッピ川を下ってゆく。
その間に様々な出来事に遭遇する
(詐欺、ペテン、殺し合い、なりすましetc…)
物語なのだが、(勿論人々の素朴で温かい光景もある)
1800年代前半のアメリカが、しっかり
描写されていて、なかなか奥が深い物語だ。
特に一緒にいかだに乗って逃げる黒人ジム
(ニガーという表現がされている)とハックの友情を
描きながら、当時の奴隷制度、詰まるところ
当時のアメリカの人種差別の実態を描いている。
それにしてもハックの何と機転の利く少年なことか。
教育も全くと言っていいほど受けていない、ほんの
10歳程度の子供のなんと雄弁なことか!
大人を相手にした嘘や詭弁には恐れ入ってしまう。
つまりしたたかに生きているのだ。それでもそこに
時々良心の呵責が存在するとことには救われる。
何とか読み終えたが、やはりアメリカ文学史上の
名作というだけのことはありました。
本書の訳では所々、註釈がつけられて、方言や
背景、意味が親切に解説されていて、当時の
バックグラウンドが解り、理解が促進されました。
ときどきはこうして古典を読まないとね。
■ハックルベリー・フィンの冒けん 1885年
マーク・トゥエイン、柴田元幸訳