陽だまりの旅路イスキア

あ、slice of life…日向香を感じる日々の暮らし…

広島の夏 夕凪の街 桜の国

2007年08月02日 | slow culture

「うちはこの世におってもええんかね」
「うちは幸せになったらいけんような気がして」

ここは昭和三十三年の広島・夕凪の街。
被爆したヒロイン平野皆実(みなみ)の
口から絞るように出る言葉。
それはまぎれもない贖罪である。
被害者であるのに何故に罪を背負う?
神戸で十二年前に被災した私には
びんびんと伝わってくる言葉であった。

その場面場面で出てくる皆実の言葉に
すーっと涙が頬を伝ってしまう映画だ。

昭和三十三年の広島。
本川沿いのバラック小屋での生活。
それでも家族が普通に生きていく姿が胸を打つ。
この特撮映像がとても美しい。

桜の国。
一転映画は平成十九年の現代に遡る。
皆実の姪七波(ななみ)が
父(皆実の弟)の後を追って広島へ。
そこで七波は
原爆に翻弄された皆実おばさんを通して
自らのルーツを、自分を見つめなおしてゆく。

被爆という悲しい出来事を主題にしつつ
過去と現代…二つの糸を紡ぐその構成は
その美しい映像と共にしんしんと心に響く。
なかなかである。しかも被爆と言う
重い主題を硬派に取り上げるというのではなく
日常の日々のふれあいを通じた人の愛を
さりげなく表現することで、かえって
その主題の重みが私たちに伝わってしまう。
これもなかなか心憎い演出である。

「生きとってくれてありがとう」

皆実が心を寄せる恋人・打越の言葉。
生きるという存在の重さが
私の心にずどんと落ちた。

皆実役の麻生久美子。好演である。
清楚でとても美しい。昔の女性の
ひたむきで透き通るような美しさを見る。
いっぺんにファンになってしまった。

ハープの調べの音楽も哀切をそそる。秀逸…。
忘れられない映画になりそうである。
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