「小泊」は津軽半島の最先端近くの、小泊岬付近にある小さな集落。五所川原から延びる津軽鉄道の終点津軽中里から更にバスで1時間15分も揺られてようやくたどり着く遠き地にあります。
対馬てみさんは、その小泊の人。現在はその地の保育園長。その妹のFさんも小泊の生まれで、定時制高校時代、私が担任をしたことのある元生徒さん。(かっての小泊の地名は中里と合併し中泊となってしまいましたが、昔の名を懐かしむ私は、ここでは小泊で通します)
数年前、家人の友人Tさんは自らのルーツを求め、家人と共に2泊3日の、小泊への旅に出る計画を立てていました。その際、Tさん⇔家人⇔私⇔Fさん⇔対馬てみさんの関係から、当時小泊の観光課に勤務していた対馬てみさんに宿泊と案内を依頼しました。その旅の宿泊先で、てみさんが語った「津軽民話」の語りが素晴らしく、帰京後、その語りを是非多くの人に聞いて貰いたいと考え、Tさんと家人の二人は「津軽昔話」を聞く会を計画しました。4年前の夏のことです。
この計画は二人の努力によりその年の10月、「駒込地域センター」での開催に漕ぎ着けます。60名ほどの方が参加し、会は成功裏に終わりました。実はてみさんは”津軽昔話(てみさんは「昔っこ」と言います)の語り手”として、地元などでは有名で、いろいろな処に出掛けて披露していたのでした。NHKの深夜放送に出演したこともあります。
太宰生誕100年だった昨年9月、青森美術館などが、小説「津軽」を舞台化。津軽鉄道・芦野公園駅(五所川原市金木町)の隣の駅で野外劇として上演し、本物の列車を劇中の取り入れるダイナミックな演出で大きな反響を呼びました。その劇に対馬てみさんは太宰の子守役として出演。そのままの地で演じたのでした。
その「津軽」が再び11月27日・28日の二日間、新宿の全労済ホールで上演予定と、てみさんから家人へメールが届きました。生憎、私はこの両日旧学年会で箱根へ出掛ける事になっていて、見物を断念。家人は観劇のチケットを電話予約し、Fさんと出掛けました。朝日新聞に「津軽」公演が紹介されたのはその数日後です。チケットはあっと言う間に完売となったそうです。
当日の様子を家人から聞きました。てみさんは勿論太宰の子守のたけ役。てみさんが舞台に登場すると大声で「てみさん~」と声援が飛んだそうです。カーテンコールでは、足の具合の悪いてみさんは、主演者に抱えられ、最後に登場。まるで主演者のようだったとか。
津軽言葉のせりふには共通語の「字幕」がつき、休憩時間には、演出の一環として、劇の内容とかかわる地元の食材を使ったお弁当が観客に配られるなどが工夫もなされていたとの事。
来年5月に、青森県立美術館の特設ステージでの再演が予定されています。