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A Day in The Life

主に映画、ゲーム、同人誌の感想などをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、ここはいいトシしたおっさんのブログ。

塚口サンサン劇場「哭声 コクソン」「破墓 パミョ」見てきました!

2024-12-16 23:32:35 | 映画感想
 来週末はもう冬コミという衝撃の事実を脳内から追い出すのに1日の摂取カロリーの大半を消費している昨今、皆さんいかがお過ごしでしょうか。わたくし人形使いはカロリーが足りなくてなんか指先が冷たくなってきましたよ?
 そんな中、今日も余裕ぶっこいて映画を見に行きました。だって見に行かないと上映が終わってしまうから。
 というわけで今日見てきた1本目はこれ!
 
 
 わたくし人形使いは映画俳優としての國村隼氏をあんまり知らないんですが、なんとなく「気の良いおっちゃん」といった感じの印象を抱いています。
 しかしながら本作における國村隼氏は泣くほど怖い。
 そもそも本作を知ったのはかの「邦キチ!映子さん」で「褌一丁で鹿を丸かじりする國村隼が出る」とかいう怪情報が脳内に刺さってたからなんですが、本当に褌一丁で鹿を丸かじりする國村隼が出たのでひっくり返りました。怖すぎる。
 
 山中にある平和な田舎町、谷城(コクソン)。そこでは村人が自分の家族を惨殺するという陰惨な殺人事件が連続していました。メディアはその原因を幻覚性のキノコを接種したことと発表していましたが、犯人はいずれも異常な心神喪失状態にあるほか全員が皮膚に謎の湿疹を発症しているといった不可解な要素がありました。
 主人公である警官、ジョングをはじめとする村人達は、この事件の原因が山中に住む不審な日本人にあると考え始めます。そしてついにジョングの娘であるヒョジンが事件に巻き込まれ……。
 
 本作はいわゆるアジアンホラーのテイストの中に、サスペンスや宗教色を色濃く取り入れた作品となっています。わたくし人形使いは韓国の宗教や祭祀に関してはあまり詳しくないんですが、それがかえって異常事態感を非常に強くしていると感じました。
 ゾンビホラーやSFサスペンスは現実から大きく離れたものですが、フィクションとしてはよく見られるものなのである意味非常に馴染みのある、身近なものだと言えます。対して、本作で描写されているような宗教儀式は、現実の、そして同じアジア圏のものであるけれど馴染みがないものなので異世界感が強く、まさに「得体のしれないもの」を見ている気分でした。
 
 本作で強烈かつ不気味な存在感を放つ、國村隼氏演じる謎の日本人の男ですが、こいつがまた曲者というかなんというか。正確に言うならこのキャラクターに対する違和感のコントロールが抜群にうまい。
 序盤から中盤までは明らかにこいつが犯人だろという空気なんですが、呼ばれてきた祈祷師が「あいつは悪霊で死人だ」といい出したところからちょっとおかしいな?という感じが出てくるんですよね。確かにあからさまに怪しい人物ではあるものの、悪霊とか死人かと言われるとなんか違う、あくまで生身の人間が呪いをかけてるんじゃないか?あるいは悪霊そのものではなく悪霊に取りつかれてるんじゃないか?と思い始めます。
 中盤での祈祷師との遠隔祈祷バトルの時点でこりゃ呪術バトルだなと確信しました。悪霊や死人が祈祷はしないだろと。
 そこからのどんでん返し! 実はこの日本人は村を呪いから守るためにやってきたのだった! いやーそうだったのか。そりゃあ悪霊や死人ってわりには生身の人間っぽく痛がってたよなあ。すっかりだまされた!
 ……じゃあ冒頭で鹿を丸かじりしてたのはなんだったんだよ。
 とあとになって思ったものの、わたくしは人を疑うことを知らない純粋な心の持ち主なのですっかり騙されました。鹿を丸かじりしてる人間がまともなわけないだろ。
 
 かように本作の怖さは、呪いの正体がどうとか犯人の目的がどうとかよりも、「人間の認識や善悪の判断なんて見え方や見せ方次第で簡単にどこにでも転がっていく」という種類のものだった気がします。実際完全に騙されたもんなあ……。この「認識の曖昧さ、不完全さ」こそが真の悪霊と言えるのではなかろうか。
 
 そして2本めも続けて韓国ホラー!
 
 
 こちらは予告を見て異文化ホラーが見たい気分になったので見てきた作品。
 「哭声」に対して、こちらはさらに明確に韓国の風習、殊に葬儀に関わる風習や宗教儀式に強くフィーチャーした作品となっています。
 タイトルにもなっている「破墓」とは、土葬された遺骨を別の場所に移したり改装したりするために墓を掘り起こすことだそう。日本とは異なり土葬が一般的な韓国では普通の風習だそうですが、こうした日本では馴染のない風習がまず異界的。
 さらに「巫堂(ムーダン)」「明堂(ミョンダン)」「巫俗(ムソク)」といった聞き慣れないオカルティックな単語が現代を舞台にしている物語の中で頻出するので、そうしたオカルティックな要素が現代にも深く根を張っている韓国という国の独特な空気を感じることができました。
 我々日本人も宗教や儀礼には親しんでいるとは思いますが、本作では怪物が出たりスプラッター描写が出たりするよりもこの「知らない異国の宗教観」がもたらす言いようのない居心地の悪さがなんともじっとりした恐怖でした。
 
 若き巫堂=シャーマニズム的儀式を行う巫女であるファリムとその弟子ボンギルは、破格の報酬の仕事に飛びつきました。その仕事とは、代々跡継ぎの長男が謎の病気にかかるという符号が持ってきたもの。多額の報酬を嗅ぎつけた風水師サンドクと葬儀師ヨングンも合流し、墓を調べることに。その結果、墓は風水的に悪地であり、そのために葬られた先祖の霊が暴れていることがわかりました。先祖の霊を鎮めるため、4人はお祓いと改葬を同時に行うことに。しかし、その墓に封じられていたのはあまりにも恐ろしい秘密だったのです――。
 
 「先祖の霊が祟りをなす」という筋書きは日本でも珍しくないものだったのでそこはすんなり理解できましたが、中盤から後半にかけての展開はどうも日本と韓国の歴史が深く関わっているようで、ただ単にオカルト現象が起きたという話で終わっていませんでした。この感想を描いている時点では初見の感想を大切にするためにそこら辺についてはまだ調べてませんが、てっきりオカルト方向に全振りするものとばかり思ってたのでここに関しては大きく予想を裏切られた形です。
 だからといってオカルト描写に好きがあるわけではなく、墓を暴いたときに目に見えないものが通り過ぎていく描写、次々と起こる怪異は圧巻かつどれも生理的嫌悪感を催すものでそういうのが好きな人にはたまらん感じ。特に終盤での畜舎で大量の豚がバラバラになっているシーンなんかはかなり恐怖でした。
 
 作中では日本では見られない独特の宗教儀式が行われますが、その中でも特に「代煞(テサル)グッ」と呼ばれる儀式はかなりショッキングなものでした。公式サイトによれば、「煞(サル)」とは新湯つ邪悪な気運、「グッ」とは巫堂の行う儀式のこと。すなわち「代煞グッ」とは、「煞(サル)」を払うために鶏や豚といった生贄を殺傷する儀式のこと。同じ儀式は「哭声」でもやってましたね。
 日本にもしばしば贄を捧げる宗教儀式はありますが、この儀式は楽器が激しく打ち鳴らされる中、トランス状態となった巫堂が踊り狂うさまはビジュアルインパクトが非常に強かったです。日本の宗教儀式はどちらかというと「静」の印象なのでそのギャップに驚きましたね。
 そしてもうひとつショッキングだったのが「重葬」という風習。中盤の「転」のギミックとして登場するこの風習は、文字通り、ひとつの墓に2つの棺を重ねて葬ること。これは非常に稀なケースで、その土地が風水的な良地=明堂(ミョンダン)であると思って墓を作ったら、すでにそこには別の棺が埋められていたということがほとんどだそう。この場合、上に埋められた棺が子孫に凶運をもたらすので速やかに改装しなくてはいけないとのこと。しかし、本作でこの下に埋められていた棺の中身がまったく予想外のもので……。この正体に関してはこの感想を描いている時点ではおぼろげにしかわからないので書き終わったら改めて調べてみるつもり。
 はっきりいってこれの正体は初回ではまったくわかりませんでしたが、どうやら戦国時代の日本人であることが作中では明らかになっています。この辺の武者鎧姿の悪霊が襲ってくるって絵面は見始めたときにはまったく予想していなかったのでかなり驚きました。
 
 良作とも今まで見てきたホラーとはかなり毛色の違ったもので、独特のじっとり感と異界感がありました。ホラー映画と言うとジャンルがもうお決まりといった感もありますが、こうしたアジアンホラーには独特の強い異界感があるので、これからも土俗的宗教ホラーがあったら積極的に見てみたいですが「女神の継承」はほんとうに怖かった……。
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