雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

空色メモリ

2012-05-16 22:14:40 | 
越谷 オサム
東京創元社
発売日:2009-11-27

越谷オサム著"空色メモリ"を読みました。
高校二年生の河本博士、通称ハカセはたった一人の
文芸部員です。
同じく二年の桶井陸は部員として登録はしていないけど
文芸部に入り浸っています。
部室のパソコンで日記を書いています。
それを空色のUSBメモリに保存して持ち歩いています。
この文章を空色メモリと名づけています。
新入生の野村愛美が入部してきます。
ハカセは野村が気になります。
でもどうしたらいいかわかりません。

男子バスケットボール部に入部した期待の新人が
新谷友一郎です。
女子生徒たちがキャアキャアと騒いでいます。
ハカセと陸は野村と新谷がハンバーガショップで
親密に話しているのを見かけます。

野村の靴が2回盗まれました。
部室に脅迫状めいたものが放り込まれます。
野村と出身中学が同じで現在同じクラスの宮崎サキは
江原という断ったら何をするかわからない同学年の
男につきまとわれています。
ハカセ、野村、陸とサキの4人で靴を盗んだ犯人を
捕まえようと張り込みます。
同じ頃に陸はUSBメモリを失くします。
メモリを手にした者からメールで野村を部から追い出せ
さもなくば、メモリの内容をインターネットでばら撒く
と脅されます。

ねたばれなしにかけないのでこの後は読むつもりが
ある人はご注意を。
陸は初めは内緒にしていましたがみんなにメモリを
失くし脅されていることを打ち明けます。
話し合って犯人は江原だと推理します。

野村と新谷は双子の姉弟でした。
両親が3月に離婚して別々にくらすことになり
そのことを内緒にしていたのでした。
新谷と陸のクラスメートでバスケ部の北畠も加わって
江原からUSBメモリを取り返す計画が立てられます。

サキの家に江原を呼び出します。
みんなはそれぞれ押し入れやベランダに隠れます。
ハカセが証拠を残すためビデオ撮影することになります。
江原はメモリを盗んだことを口にします。
そしてサキに乱暴をしようとします。
押入れから飛び出し江原に飛び掛った陸はナイフを
振りかざした江原に刺されます。
お腹にカイロとまくらをくくり付けていたため怪我は
まぬがれました。

USBメモリは無事取り戻しました。
サキも文芸部に入部することになりました。
陸も正式な部員となりました。
ハカセと野村、陸とサキといい雰囲気です。

江原の性格、読んでいるだけで気持ちわるいです。
ストーカーとしてつきまとうタイプの男です。
高校生からそんなのがあるのかとぞっとします。
今回江原のやったことは窃盗、脅迫、強制わいせつ未遂、
殺人未遂です。
野村の靴泥棒も江原がサキの靴箱と勘違いして
盗んだのでした。

野村は新谷と兄弟であることを隠そうとして
行動が不自然になっています。
両親の離婚ってそんなに人に知られたくないこと
なんでしょうか。
今の時代多くの人々が離婚しています。
隠すようなことではないように思います。

インターネットの時代です。一旦ネットに流された
情報は取り返しがつきません。恐いですね。

永遠(とわ)をさがしに

2012-05-15 20:35:09 | 
原田 マハ
河出書房新社
発売日:2011-11-18

原田マハ著"永遠(とわ)をさがしに"を読みました。
和音の父は有名な指揮者です。
母は10歳ぐらいの時に離婚してある日突然家を
出て行きました。
それからどこにいるのかもわかりません。
母はチェロ奏者でした。
和音は小さなころからチェロの手ほどきを受けました。
しかし今はやっていません。
お父さんがボストン交響楽団の指揮者としてアメリカへ
行くことになりました。
和音は日本へ残る選択をしました。
ある日家に帰ると知らない女性がいました。
真弓と名乗る女性はあなたのお母さんだといいます。
お父さんと結婚しこの家に和音と住むといいます。
彼女は音楽関係のライターをしています。
ずけずけといたいことをいう人です。
ダイニングのテーブルに資料を広げて仕事をします。
家事の面倒を見てくれるのかと思いきや自分のことは
自分でやる、といってやってくれません。
和音がいつの間にか食事の支度をするはめになって
しまいました。
和音には文斗と朱理という心を打ち明けられる友達が
います。
文斗はクラシックなんて知らないといいながら実は
ピアノを真剣に習っています。
金銭面や能力から音楽大学へ行くことを諦めています。
彼のピアノを聴いた真弓が文斗の迷いを聞いてやります。
文斗は両親に本当の気持ちをうちあけることにします。
朱理は音楽のマネジメントをやりたいと思うように
なります。

真弓が過去のことを和音に語ります。
チェロをやっていたこと。
理想としていたチェロ奏者がいたこと。
その人がオーケストラを辞める時に交替するチェロ奏者に
応募したこと。
その人が和音の実の母親で親交があったことを語ります。
16歳の誕生日に真弓に手紙が渡されます。
それは実の母からの手紙でした。
何年も前に書かれ16歳の誕生日に渡すように頼まれた
ものです。
衝撃的なことが書かれていました。

この先ねたばれです。
母はプリオン病に侵されていました。
父にも和音にもそのことを告げずに実家へ帰っていました。
認知症のような状態になっていきます。
まだ手紙が書ける状態の時に娘に心の内を書きました。
ショックを受けた和音です。
再びチェロを手にしました。
お母さんは生きています。
和音のチェロと文斗のピアノで病院で演奏会をしようと
いう話が持ち上がります。
朱理がマネージメントを引き受けます。
真弓にも辛いことが起こってしまいまいた。
過去に突発性難聴で方耳がきこえなくなりました。
それでチェロの演奏を諦めたのです。
今度は聞こえていた方の耳が聞こえなくなりました。
演奏会は成功です。
和音は音楽の勉強のためお父さんの元へ飛び立ちます。
お父さんと真弓は結婚していませんでした。
和音の側にいるための偽装結婚でした。

童話のような感じのお話でした。
お母さん、真弓に不幸がこれでもかとおそってきます。
体の不調で好きなことを諦めなければいけないのは
辛いですね。
その中を和音は成長していきます。

踊るジョーカー 名探偵 音野順の事件簿

2012-05-14 20:20:05 | 

北山猛邦著"踊るジョーカー 名探偵 音野順の事件簿"を
読みました。
推理小説家の白瀬白夜は音野の友人です。
音野は引きこもっています。
彼には推理力があります。
白瀬は音野に探偵をさせるため探偵事務所を自分の事務所
の一部に開きました。

"踊るジョーカー"
地下室の入り口の鍵、部屋の鍵がかかった部屋で
ナイフで刺されて亡くなっていました。
あたりにはトランプが散らかっていました。
ナイフの根元にもトランプが厚さ2センチ分突き
刺さっていました。

"時間泥棒"
裕福でたくさんの価値ある美術品を遺品として継いだ
姉と弟が屋敷で暮しています。
姉には婚約者がいます。
アナログ時計が次々と消えていきます。

"見えないダイイング・メッセージ"
頭を殴られた人が金庫を開ける番号らしきものを
ダイイングメッセージとして残しました。
それはポロライドカメラで撮った写真です。
この話に音野のお兄さんが登場します。
音野とは正反対の性格です。
世界を又に駆ける指揮者です。
お兄さんがあっさりとその写真の意味することを
見抜きます。

"毒入りバレンタインデー・チョコ"
大学のゼミ室で女性の学生二人が作ってきたバレン
タインのチョコを食べて女性の一人が倒れて病院へ
運ばれました。
原因は青酸カリでした。
命に別状ありません。
青酸カリはチョコではなく台紙にある条件が加わると
チョコにつくようになっていました。

"ゆきだるまが殺しにやってくる"
音野と白瀬は大雪で道に迷いある屋敷にたどり着きました。
そこには父親と娘、メイド、娘の求婚者二人がいました。
娘が気に入った雪だるまを作った男と結婚するのだと
いうことです。
そのうちの一人が雪だるまを作っている最中に殺され
ました。

白瀬にひっぱられて音野はいやいや事件現場へ
出て行きます。
音野と白瀬はいいコンビです。
白瀬は事件を小説にしています。
ワトソンの役割ですね。

歌舞伎町ペットショップボーイズ

2012-05-13 19:03:37 | 
ハセベバクシンオー
双葉社
発売日:2009-10-21

ハセベバクシンオー著"歌舞伎町ペットショップボーイズ"
を読みました。
並木涼平は歌舞伎町でペットショップ"ロン"を経営
しています。
元精神医の湊がアルバイトに応募してきます。
精神科医なのに自分自身が病んでいて接客ができません。
何かがあったようです。
いろんな事件が起きます。

"残された猫"
お客さんの知り合いに旅行中の猫の世話を頼まれます。
約束の日になっても帰ってきません。
湊さんと部屋を調べにいきます。
ぐっちゃぐっちゃに散らかった部屋です。
依頼人が片付けられない人なのだと思っていたのですが
湊が意外なことを言います。

"二百万円とケーキ"
涼平のポストに二百万円が投げ入れられていました。
湊にたしなめられて警察に届けます。
地元の暴力団が五百万円盗まれました。
その一部だと暴力団の葛飾がやってきます。
何の関係もない涼平に五百万を返せと要求します。

"疑惑の動物病院"
涼平の売った犬が動物病院へ入院すると急変して
死ぬということが続きます。
病院を怪しんでその一匹を別の病院で解剖しました。
喉にゴム手袋が押し込まれた窒息死でした。
わざと殺している悪徳病院です。
警察へ持ち込んでも何もしてくれません。
東京都庁、農林水産省にもいきますが動いてくれません。
涼平たちができるのはインターネットでその病院の
実体を公表することぐらいです。

"キャバ嬢の盗撮DVD"
前にアルバイトをしていて現在キャバ嬢のケイコに
同僚のレナが盗撮されているので犯人を捜して
欲しいと頼まれます。
DVDに映っていたものから犯人を追っていきます。
しかしその犯人が殺されてしまいます。
そこにいることを忘れられる人に話を聞かれていました。

"一万円の募金"
駅前で募金活動をしているのを見かけてしようと思い
ましたが小銭がなく涼平はしかたなく一万円を入れました。
しかしその募金が偽であることに気づきました。
裏に暴力団がいてお金を借りて返せない人たちに募金を
やらせていました。
しかし捕まえたりやめさせたりするのは難しいことの
ようです。

"湊さんの過去"
湊は本を出版しテレビにも出ていた人でした。
引きこもりの男性を家庭訪問して治療していましたが
彼は自殺しました。
それ以降精神科医をやめました。
しかしその自殺には怪しい部分があります。
湊は当人と家族を助けられなかったことを悩んでいます。

すっきり解決しないことが多いです。
警察へ行ってもダメ、関係先を自分たちで探し回って
訪ねていってもぜんぜん相手にしてもらえません。
悪いことやっても罰せられないなんて腑に落ちません。
世の中こんなものなのですかね。
まあそんな生き方は長続きしないでしょう。
そうは思っても被害を受ければダメージは大きいですから
どうしようもない怒りがたまります。

川岸の夕映え 神田堀八つ下がり

2012-05-12 19:36:41 | 

宇江佐真理著"川岸の夕映え 神田堀八つ下がり"を
読みました。
読み始めたら前に読んだことがあるのに気づきました。
書き残してあるかと検索してみましたがないので書きます。

"どやの嬶 御厩河岸"
おちえは水菓子屋でした。お嬢様として育ってきました。
火事で焼け出され父親は死に一文無しとなりました。
番頭が下舞屋を見つけてくれすぐに八百屋を始めました。
母とおちえと弟と卯之助とで働かなければなりません。
近所の船宿の川藤の女将は大きくて威勢がよくどやの嬶と
人に呼ばれています。
実の息子は一人ですが大勢の子を養ってきました。
その子たちと店をやっています。
おちえは川藤の息子に勘次に見初められます。

"浮かれ節 竃河岸"
三十路保胤は小普請組に所属しています。
町人に混じって端唄を習っています。
都々逸が流行り始めました。
都々逸の扇歌と都々逸合戦をすることになりました。
賞金は50両です。娘を行儀見習いに出す費用に
するため勝ちたいと思います。

"身は姫じゃ 佐久間河岸"
橋の下に女の子が居ついています。
声をかけると"身は姫じゃ"と答えます。
岡っ引きの伊勢蔵は娘婿の龍次と女の子に出会います。
おかみさんのおちかを読んで女の子を家に連れ帰ります。
言葉づかいや汚れていても上等な着物から本当に
お姫様かもと身元を探すことになりました。
やがて両親を亡くし京都から侍女と中間が付いて
江戸の奥女中の叔母の元へやってきた姫だとわかります。
「わらわは、いつまでも忘れぬ」という言葉を残して
伊勢蔵の家を出て行きました。

"百舌 本所・一ツ目河岸"
横川柳平は津軽の出身です。
横川家は裕福な百姓です。
学問が出来た柳平は江戸へ学問をするため出てきました。
そのまま江戸で学問を教えていましたが抗争で無職と
なりました。
今は子供たちに読み書きを教えてくらしています。
弟の金吉とは仲違いしていましたが数年前からいっしょに
暮しています。
津軽の姉からの荷物が届けられます。
姉は柳平を江戸へやるために好きな人と別れて結婚
しました。
柳平は後でそのことを知りました。
もう一度姉に江戸見物をさせたいと兄弟は姉にお金を
送ります。
姉が江戸へ出て来るのを心待ちにしています。

"愛想づかし 行徳河岸"
旬助は勘当されて蒲鉾屋へ3年の修業に出されました。
3年が過ぎ家に帰らず居酒屋末広屋に働くお幾の家で
暮し、魚河岸で働いています。
旬助の家は廻船問屋です。
父親は亡くなり母と姉夫婦が店をやっています。
大阪の本店の叔父が倒れ姉夫婦を大阪に呼びました。
江戸の店を継がせるため旬助を探しています。
旬助がお幾を妻として店に連れて行くといいました。
店に帰って義兄にお幾のことを悪く言われます。
お幾を迎えにいくとお幾は愛想づかしをします。
旬助は諦め妻を迎えようとします。
愛想づかしをしたお幾ですが旬助に付きまとい
刃物で刺してしまいます。

"神田堀八つ下がり 浜田河岸"
有名な料亭嶋村の板前が店の扱いにがまんできずに
逃げ出しました。
小料理屋おそめは狭くきれいとはいえない店でした。
身投げしそうな男を店に連れてきました。
この男が作る料理が安い上に驚くおいしさです。

江戸のちょっとしたお話です。
みんないい話です。
ほっとする話が多いのですが"愛想づかし 行徳河岸"は
ちょっとかわいそうな話です。
仲良く暮していたのにどうしてこんな風に行き違って
しまったんでしょうね。

灯らない窓

2012-05-11 19:50:29 | 
最近パソコンの調子が悪いです。勝手に再起動します。
7、8年使いました。会社ではこれよりうんと長い年月
使っていたものもあるので寿命というには早い気がします。
でも突然起動しなくなる日が来そうです。
そうしたらぱっぱっと行動できない私ですから新しく
パソコンを買うまで数ヶ月かかる気がします。
ブログが停止したらパソコンがとうとう壊れたのかも
しれません。(または人間が壊れたのかも)

ここ数日風が強いです。5月に風が吹くなんて記憶に
ありません。寒いです。変です。


仁木悦子著"灯らない窓"を読みました。
家にある本の再読です。
仁木さんの本には子供たちが活躍する話が多くあります。
この本もお母さんとお父さんのために小学生の兄と妹が
活躍する話です。
お祭りから家に帰るとお母さんの様子が変です。
ある晩お母さんがお父さんのビールに薬を入れたのを
目にしました。睡眠薬です。
夜中にお母さんが家を出て行くのを見て男の子が後を
つけていきました。
お母さんが団地のある家から飛び出してくるのを
見てその部屋に入ってみました。
知り合いの男の人が死んでいました。
壁掛けの裏にテープが貼り付けてあるのをみつけました。
男の人の首にはお父さんのネクタイが巻きついていました。
男の子はテープとネクタイを持って帰ります。
すでに死体は冷たくなっておりお母さんが犯人では
ありません。
でもお母さんは警察に捕まってしまいました。
しかし何もしゃべりません。
その団地では以前に夜の道で女性が殺害されたことが
あります。
今回の事件と関係がありそうです。

男の子は妹と状況をうちあけたクラスメートの女の子と
お父さんに内緒で事件を調べます。
電車に乗って人をつけたりいろんな人に話しを聞いたり
します。
お父さんにも疑いがかかって警察の追求が迫っています。
警察をまいてお父さんにそれまで調べたことを伝えます。

真犯人に子供たちは捕まってしまいます。
犯人の仲間割れであわや焼死するところをお父さんが
飛び込んで二人を両手に抱えて助け出します。

子供達のがんばりで事件の真相がわかりました。
お父さん、お母さんはこの事件でお互いに不信感を抱いて
いましたが自分たちを信じてくれた子供達のために
それを乗り越えていこうと決意します。
犯人たちはお父さんの身近にいる人たちでした。
お父さんは普通の人なんですが、なんでここまで
信じていた人々に裏切られるのかなぁと感じます。
ちょっとつらいですね。
子供の目線で書かれているので読みやすいです。

ストーリー・セラー

2012-05-10 20:10:56 | 

有川浩著"ストーリー・セラー"を読みました。
"Side A"と"Side B"の2編から成ります。
どちらも登場人物は夫がサラリーマンで妻が会社の
元同僚で現在は家で執筆をしている作家という設定です。
"Side A"では妻が病気で亡くなります。
"Side B"では夫が病気で亡くなります。

"Side A" の方がちょっと厳しい話です。
文章を書くのが好きで書き溜めていた小説を偶然に
同僚に見られてしまいます。
この小説を好きだと言われ励まされて世に出て行きます。
その同僚が夫になります。
学生時代に文芸部にいましたが書いた小説をこてんぱんに
だめだとたたかれました。
それがトラウマになっています。
家族は何も起きない時はなんでもない家族ですが何かが
起きると解決する能力を持ちません。
彼女が作家として知られるにつれ学生時代の文芸部の
批判した人たちが嫉妬してネットで攻撃してきます。
夫が許すものかと迎え撃ちしていますが彼女は鬱病に
なってしまいます。
一方、父方の祖母が認知症になりました。
一人暮らしで母が数日置きに面倒をみにいっています。
しかし家はゴミ屋敷と化し悪臭で近所の批判の的です。
民生委員が施設の入所先を探して勧めても父は
受け入れません。
ただ行動するのがいや、物事が頭の上を通り過ぎて
いくのを待つという人です。
母や兄弟も処理能力がありません。
孫の作家になんとかして欲しいとの依頼がきます。
夫婦で祖母を連れ出し、整理にいきます。
やがて作家の彼女は死に至ります。

"Side B"の方がおだやかな話です。
やはり同僚の小説をそれと知らずに読んでいてファンだと
いう男性と知り合い結婚した作家の話です。
夫が交通事故に会ってその時の検査で膵臓癌が見つかります。
会社を辞め残りの人生を生きます。
会いたいと思う人に会いに行く体力がないため交通費を
送って会いに来てもらいます。
そうやって会いたい人には会いました。
飼いたいと思っていた猫も飼います。

帯に"ダ・ヴィンチBOOK OF THE YEAR 2010 恋愛小説部門
第1位"と書かれています。
恋愛小説のジャンルになるのですね。
たしかに二つともとても信頼しあった夫婦です。
出会うべくして出会った男女だといえます。
どちらも夫がとてもいい人たちなんです。

"Side A"の方ですが家族を批判するのですが彼女自身が
それまでぜんぜん祖母がどういう状態なのか知ろうとも
していません。
家族を一方的に責めるのはちょっと違うのではないのと
思います。
たとえ親の代が責任を持たなければいけないとしても
少しは思い出してあげたら思います。

作家の方の心の内を知る話でもありました。
本が出版されたからにはとてもいいと感動する人や
最悪と批判する人もいます。
どちらの意見も甘んじて受けて平気でいられるのが
作家だと思っていました。
厳しい意見、的外れな意見には心が痛むのですね。
読者は勝ってな意見を言っていいのだと思って
いましたが心して書くようにします。

はやぶさ新八御用帳(四)鬼勘の娘

2012-05-09 17:55:06 | 

平岩弓枝著"はやぶさ新八御用帳(四)鬼勘の娘"を読みました。
このシリーズは昔NHKでドラマ化されて見ていました。
本のほうは当時手に取ってぱらぱら見ましたがどうも
おもしろくなさそうで読んでいません。
ふと手にして借りてきました。
あら、この本おもしろです。
なんでおもしろくないと思ったんでしょうね。
1冊読んだだけなんで後のはどうかな。
同じ作者の"おん宿かわせみ"に較べると話があっさり
しています。
何かが起こってあっさりと解決しています。
その辺はちょっとものたりなさを感じます。
隼新八郎が主人公です。
根岸肥前守の内与力として仕えています。
お鯉が奥女中として肥前守に仕えています。
新八郎には郁江という妻がいます。友人の妹です。
今は引退した十手持ちの鬼勘こと勘兵衛とは
親しくしています。
鬼勘の娘が初です。清元、踊りをやります。
踊りでの名前が小かんです。
十手持ちになって事件の捜査がしたい元気な娘です。
父親の鬼勘はそんなことをして欲しくありません。
小かんって4冊目でやっと新八郎と会っているのですね。
テレビドラマでは最初から登場していたような気がします。
新八郎は妻がいるのにお鯉に気があるようでそれは
ないよねと思います。
八編ありますのでひとつひとつ書き残すのは骨が
折れますので省略します。

うたうひと

2012-05-08 20:02:48 | 
小路 幸也
祥伝社
発売日:2008-07-23

小路幸也著"うたうひと"を読みました。
歌手、演奏家など音楽に関わっている人を主人公にした
短編集です。
みんなほろりとさせる暖かな話です。
短い話ですし読みやすいです。
ほっとした気持ちになりたいときにお薦めな本です。

"クラプトンの涙"
往年の有名ギタリストと、彼を病院へ取材に行った
女性との会話です。
中学の時からバンドを組んでいました。
先輩のアンリと高校でもその後の活動でもいっしょでした。
彼はずっと彼女を愛していました。
ところがアンリは何も告げずに姿を消しました。
ずっとどうしてだろうと思ってきました。
取材者の女性が自分のことだと語り始めました。
小説家になりたいという男性と付き合っていました。
彼には才能がありました。
彼女は妊娠しました。
今彼が子供の養育に心を奪われたら彼の才能のためには
いいことではないと何も告げずに姿を消したと。
取材が終わり彼女はこの話は自分の母親の話だと
つぶやきます。

美談みたいに書かれていますが、本当にこれでいいのですか?
彼は愛する人と共に生きる時を失いました。
子供の存在を知りません。
子供と共に過ごす喜びを失いました。
かなりダメージを受ける出来事ではありませんか。
子供の存在とはそれほどマイナスなものですか?


"左側のボーカリスト"
ケントとショーは幼馴染です。
いっしょに曲を作ってきました。
プロをめざした時に現れたのはメイというプロデューサー
&マネージャーです。
彼女の助言でケントは一人で曲を作るようになりました。
ふたりの歌は人々に受け入れられました。
しかしショーは作曲、作詞の能力がすぐれているケントに
反発するようになりました。
二人は別れました。
何年も経ってケントはコンサートを開催することに
しました。
左側のボーカリストが来てくれることを信じて。

"唇に愛を"
ホーンセクション中心のグループ<ウルトラホーン>です。
バックバンド中心の仕事をしています。
仲良く仕事をしています。
佐野万理と組んで仕事をしています。
万理に乱暴を働いた作曲家を叩きのめしてこの仕事を
失います。
しばらくして伊藤ミキと組みます。
バンドメンバーの一人とミキが恋に落ちます。
許されない恋です。
コンサートの最後二人は舞台上でキスを交わし逃げ出します。
ウルトラホーンがその後の舞台を力いっぱい自分たちの
演奏をして盛り上げます。

"バラードを"
トップクラスの女性シンガーが突然引退宣言をしました。
彼女は目が見えません。
年老いた里親の元で育ちました。
彼女は特に愛情を与えてくれたわけではありませんが
何かをするときに音をたて彼女はその音をピアノで
まねして暮したといいます。
インタビューをしていた人がそれはわざとしていた
のでは、と推測します。
年老いていて長くはいっしょにいられない。
彼女の才能を育ててやろうとしたのではないか。
彼女はトップシンガーになりましたがほんとうに
歌いたい歌に心が込められません。
付き合っていた男性が自殺しました。
この悲しみを歌に生かすようにと言って。

"笑うライオン"
バンドでドラムをやっている貫太は<笑うライオン>
と呼ばれています。
舞台で夢中になって演奏すると髪が立ってきます。
楽しくて笑い顔になっています。
ずっと疎遠になっていたお母さんが倒れたとの報せが
入って実家に帰ります。
部屋の中には彼のポスターや切り抜きはCD、DVDが
あふれています。
仕事はオフの時で家にいることにしました。
がんばりすぎて階段途中でぎっくり腰になり全治三ヶ月
となりました。
仕事は別のドラマーが助けてくれました。
その曲が人気となり彼は自分はいらないのかと落ち込んでいます。
見せられた彼らの演奏で代理のドラマーはライオンのかぶり物を
して貫太の演奏をまねしています。

"その夜に歌う"
ピアノ・バーの経営者のジョーはその日店を磨きたてています。
二年前にエリックはぼろぼろの格好で店へ来ました。
ピアノを弾かせてくれるようジョーに頼みました。
弾かせてみてその才能に驚きました。
すべてのジャンルの曲が弾けます。
そして歌も歌えます。
店のお客をひきつけました。
アルバイトで店を手伝っているミンディと付き合っています。
やがて彼のうわさを聞きつけてレコード会社の人が
やってきます。
彼は世界にはばたくことになりました。
ミンディーには2年たったら戻ってくると言い残します。
その日が来ました。
みんなが店に集まっています。
彼がやってくるのを待っています。

"明日を笑え"
この話は初めはクレージーキャッツを題材にしている
のかと思っていました。
ビートルズを思わせる有名イギリスグループの前座を
努めたとあるのでドリフターズをもとにしているのだと
気づきました。
グループがコメディーの方へ進んだ様子や前座で演奏した
時の様子などが描かれています。

古道具屋 皆塵堂

2012-05-07 21:17:58 | 
輪渡 颯介
講談社
発売日:2011-02-24

輪渡颯介著"古道具屋 皆塵堂"を読みました。
この本なんか変なんです。
最初読み出してなんかぜんぜん内容が頭に入らなくて
これ日本語で書いてある?って思って読むのをあきらめました。
1日おいて何か読むものはないかと、再度この本を
手に取り読み始めました。
不思議?難しい文章なんてない、普通の文章です。
いったいどうしたのでしょう。
一時的に頭がどうかしたみたいです。
それとも本の中の幽霊にまどわされたのかしら。

太一郎は道具屋の長男として生まれました。
しかし十歳で奉公に出され店は弟が継ぐことになりました。
太一郎は何度も奉公先が変わっています。
やっと経師屋としてやっていけるようになりました。
ところが弟が病気で亡くなりました。
弟は今わの際に太一郎に店を継いでくれるよう言い残します。
父親の重松に店を継ぐ前に道具屋の再修業を皆塵堂で
するように言われます。

皆塵堂の主人は伊平次です。峯吉という小僧がいます。
がらくたのようなものまでごちゃごちゃと店にはあります。
店によく顔を出す清左衛門が店の大家さんです。
巳之助は子供のころの遊び仲間で今はぼてふりの魚屋です。

皆塵堂の前に商売をしていた主人夫婦が強盗に押し入られ
殺されています。
それ以来家に幽霊が出ます。
皆塵堂が買い付けてくる品物にもいわくあるものがあります。
太一郎は幽霊が見えるのです。
見たと人にいうとおかしな目でみられるので隠しています。
この本は品物についている幽霊の話です。

殺した女房を自分が作った箪笥に押し込んで川に捨てた
箪笥職人の女房の話。
これを読んだ直後に鰻は食べられません。

刀鍛冶がある娘を好きになりました。
娘の父親は彼がいい刀を打てるようになったら娘と結婚を
許すとその場限りのことを言いました。
彼は何年もかけて満足いく刀を作りました。
しかしその時には娘は別の人と結婚していました。
彼が作ったその刀を持つと人を殺したくなります。

簪を贈ったのに受け取りを拒否されて自殺してしまった
男の幽霊の話。

最後の話は太一郎の子供のころの話です。
太一郎は5歳以前の記憶がまったくありません。
連れていかれた廃墟となった屋敷に入って昔のことを
思い出します。
その屋敷は太一朗が子供の時に住んでいた家です。
太一郎には妹がいました。
二人して川で溺れ太一郎は助かり妹は亡くなったことを
思い出します。
太一郎は現れた妹の幽霊を抱きしめてやります。

父親が太一郎に家を継がせないと決めたのは幽霊が
見えることに気がついていたからです。
幽霊がついている道具は多いので道具屋では幽霊が
見えてつらいだろうと思ってのことです。
修業を終えて太一郎は皆塵堂を去り自分の店へ
帰ります。

太一郎、皆塵堂の主人の伊平次や、清左衛門、峯吉、
友達の巳之助等みんな味のある人たちです。
幽霊ものですがこわくはないです。

週末は家族

2012-05-06 19:44:14 | 
桂 望実
朝日新聞出版
発売日:2012-01-04

桂望実著"週末は家族"を読みました。
シェークスピアに心酔して小劇団を主宰する大輔と
無性愛者の瑞穂は結婚しています。
病気をして家族がいないと手続きが不便だと実感した
大輔に便宜上夫婦になったら何かと便利といわれて
人を愛せない瑞穂は結婚しました。
指定された人物になりきってその場に出向く仕事を請け
負っています。
子役が必要となる場面が多くなり探していました。
養護施設の劇で抜群の演技をする女の子に出会いました。
月に1、2度週末に子供を家に迎える週末里親制度が
あることを知ってひなたの週末里親となります。
依頼者と瑞穂が夫婦、ひなたが娘という設定で依頼者の
末期の父親を病院へお見舞いに行く仕事をします。
ひなたは完璧に役をこなします。
シェークスピアを語りだしたらとまらない大輔には
ひなたはすぐなじみます。
瑞穂とはちょっと打ち解けません。
お芝居をしているのか本来のひなたなのかわからない
部分があります。
ひなたは母親が14歳で生んだ子です。
施設の姿勢は昔からの型にはまった方針をがちがちに
踏襲しています。
子供は親と暮らすのが幸せ、子供は親が迎えに来て
くれるのを待っているというものです。
施設は母親と連絡を取っています。
何度もひなたに会いに来るといっては何か理由をつけて
実際にはやってきません。
ひなたは施設のこの方針に反発しています。

依頼人と大輔とひなたとの家族という設定の時もあります。
大輔の劇団の劇にひなたは役をふられて出演することに
なります。
大輔がシェークスピアをアレンジしたものですが
ひなたは内容に満足できません。
新しい家族の有り様を描いて欲しいと思っています。
施設での演劇の台本を大輔が引き受けるのですが
内容が受け入れられないひなたは自分で書くと
言い出し自分の求めるマッチ売りの少女を書きます。

大輔は演劇に対する姿勢が変りました。
瑞穂も変ります。ひなたとの関係も変っていきます。
三人は既成の夫婦ではないし、ひなたとは親子という
関係にはなれないと感じています。
三人は親子ではない大人と子供の関係があるのだと
いうことを認識します。

最初はひなたはどういう大人になるかと心配しました。
本の中でも瑞穂が同じことを言っています。
ひなたはものすごくしっかりした子です。
心の中は寒々としたものなんだろうなと思わせます。
ひなたは大輔と瑞穂という自分のしっぽをしっかり
持っていてくれて、この世に繋ぎとめてくれる人との
出会いをしたのだろうなと思います。
大輔と瑞穂も普通の夫婦とは違いますがお互いに大切な
存在だとわかっています。
人との関係は決まりきったものじゃないよといって
くれる本です。

殺人配線図

2012-05-05 19:23:06 | 
仁木悦子著"殺人配線図"を読みました。
持っている本です。30年前ぐらいの出版です。
仁木さんのファンです。
新聞記者の吉村が主人公のミステリーです。
吉村は学生時代の友人の塩入にばったり会いました。
叔父が3階のベランダから転落死してその娘で従姉妹の
みどりを家に引き取りました。
みどりは父が死んだのは自分が髪油を割って後始末を
するのを忘れたためだといって打ち沈んでいます。
みどりの父親は偏屈な発明家です。
母方の高齢の祖母と、大学生の下宿人の尾根とお手伝いさん
がいっしょに住んでいました。

吉村はみどりの気持ちを変えるためなんでもいいから
みどりが原因ではないと思わせて欲しいと頼まれて
叔父の家の近くの塩入の家に逗留することになります。
調べるうちに事故ではなくて殺人ではないかと思うように
なります。

みどりが下宿人の尾根と結婚したいと思っていたこと。
父親が財産を宝石にしてどこかへ隠したといっていたこと。
前に同居していた助手の乙谷が行方不明になっていること。
父親にもう一人娘がいてどん底の生活をしているのに
冷たくあしらっていること。
人の発明を盗んで特許を取ったことなどがわかってきます。

転落した時ベランダの電球が切れており側には呼びつけ
られた尾根がいました。
顔の側を白い蛾が飛んで体をずらした時に転落して
いきました。

前に何度か読んでいます。
それでもおもしろいです。
ラジオの配線図が事件を解く鍵になっています。
抵抗のカラーコードの読み方なんかが出て来て
なつかしいです。
数回だけ電子部品のハンダ付けをしたことがあります。
抵抗の色を読む赤い人参、茶を一杯、青二才のろくでなし、
なんてごろあわせをかすかに覚えています。
仁木さん電気に強かったのでしょうか。

雰囲気がレトロだなぁと感じます。
みどりと尾根の様子もなんか現代とは違います。
転落死は殺人とはいえないです。
いわば自業自得です。

今日もいい天気です

2012-05-04 21:18:53 | 日常の出来事
今日も昨日と似た天気です。
午後から青空になりました。
暑くもなく寒くもなく、こういう気持ちのいい気温の
日って1年のうちそうはないと思います。
街は連休なんだなと感じさせる賑わいです。
今日も昨日に続いてノリタケの森へ音楽を聴きに
行きました。
草野由花子(鍵盤ハーモニカ)、木全希巨人(E.bass)、
青木弦六(G)、奥村将和(Ds、Per)
の方たちの演奏です。
Jazzです。最近Jazzの演奏多いです。
私にとって Jazzってこういう場所でないと聴けない
のでありがたいです。
ライブハウスには足を踏み入れられないですから。
今日もとてもすてきでした。
鍵盤ハーモニカ(ハモンド フォティフォーという商品名
だそうです)の音いいです。
ピアニカのプロ用と言ったらいいのでしょうか。
私の小学校時代には縦笛でピアニカはさわった
ことないです。

草野さんが76.1 のFMで今日の放送に出演すると
言ってみえました。
76.1 のFMってなんなんだろうと思いました。
インターネットで調べたらMID-FMっていうFM局だって。
ちゃんとラジオで聞けました。
インターネットラジオでも聞けます。
インターネットの方が選局する必要がないから楽です。
でもこんなFM局があるなんて全然知りませんでした。
知らないことっていろいろありますね。

Conjunto Serio(コンフント セリオ) 聴きました

2012-05-03 19:38:19 | 音楽
朝のうちはどんより雲っていました。
お昼過ぎから青空となってこいのぼりが映える
天気になりました。
ノリタケの森へ行ってきました。
今日はいままで見たことがない混みようです。
どうして?連休だから?
このぐらい普段の土日に人出があれば閉鎖するなんて
話が出ないですむのにね。
ノリタケの森ミュージックシーンを聴きました。
演奏者は"Conjunto Serio"(コンフント セリオ)です。
どんな意味か辞書でひいてみたら"グループ 深刻な"
だって。へんなの。
先ほどリーダの瀬利優彰さんのブログをみたらSerioは
真面目という意味だそうです。"グループ 真面目"の
方がいいですね。
ラテンジャズです。
メンバーは
瀬利 優彰(sax,clarinet)
SHIHO(piano,keyboard)
Luis Arroyo(bass)
荒川"B"琢哉(conga)
岩月香央梨(timbales)
です。メンバー紹介は何度もあるのですが聞き取れないし
覚えていられないので、やはり瀬利さんのブログから
コピーさせてもらいました。
ミュージックシーンも今日はお客さんが多いです。
演奏はどんどんとテンションが上がっていきます。
その熱気に煽られます。
演奏者が楽しそうだと聴いている方も楽しくなります。

ラテンジャズよかったです。
"Conjunto Serio"の始めての演奏会だそうです。
Jazzの演奏はメンバーが集まっては解散、また別の
メンバーで集まり解散を繰り返すと聞きます。
今回のメンバーの"Conjunto Serio"でまた演奏が聴けたら
いいな。

夕方になると風がひんやりとしてきます。
つい先ごろまで寒いといっていたのにひんやりした風が
心地いいと感じる春です。

格闘するものに○(まる)

2012-05-02 20:24:19 | 
三浦 しをん
草思社
発売日:2000-04

三浦しをん著"格闘するものに○(まる)"を読みました。
三浦さんの最初の作品だそうです。
大学4年生の藤崎可南子は就職活動中です。
父は政治家で別居しています。
実母が藤崎家の人で父はお婿さんでした。
幼い時に実母は亡くなり父は再婚して義母がいます。
現在は義母、異母弟と三人で暮しています。
弟とは仲がいいです。
義母はいい人なんですがちょっとひややかな感じです。
可南子だけに対してではなく弟に対してもです。
可南子は高齢の書道家の西園寺さんと付き合っています。
西園寺さんは脚フェチです。
可南子の足にペティキュアをして喜んでいます。
その部分はそりゃなんなんだと思います。
祖父と孫のような信頼関係があります。
可南子は漫画が好きで漫画の編集者になりたいと思っています。
何社にもエントリーシートを送ります。
筆記試験を受けそれに受かったら今度は何度もある
面接試験が待っています。
面接試験では腹立たしい質問をしてくる試験管がいますが、
それに答えなくてはいけません。
足を引っ張り合うような集団面接もあります。
ことごとくに落ちます。

父は政治家で親戚や後援会から跡継ぎを誰にするかと
迫られています。
藤原の血筋の可南子にとか、いや弟にとか要求してきます。
しかし二人とも政治家になる気はありません。
ここを読んでいると政治家になるのは就職するより楽
なのかと思わせられます。

西園寺さんは人生最後の望みの中国の書を訪ねる旅に
帰ってこないつもりで出発しました。

可南子の就職試験の結末は書かれていません。
どこかに就職できたのでしょうか。
しわよせを非正規労働者に押し付けていつまでこの
状態がもつのでしょう。
就職活動の話はちょくちょく描かれています。
私が就職する時は学校に張り出された求人票を見て
ここ行きたいと言えばそれでお終いでした。
手続きは学校がサポートしてくれたのだと思います。
もっとも当時の仕事内容はお茶くみのような雑用でしたけど
それしかなかった時代です。
エントリーシート書き、筆記試験、面接とこれを数十社と
続けていたら心が壊れてしまうのではないかと感じます。
これからという若者を疲弊させる今の就職活動は
なんかおかしいです。
この就職活動の様子は三浦さんの経験なのではと思います。
どうなんでしょうね。