雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

うたうひと

2012-05-08 20:02:48 | 
小路 幸也
祥伝社
発売日:2008-07-23

小路幸也著"うたうひと"を読みました。
歌手、演奏家など音楽に関わっている人を主人公にした
短編集です。
みんなほろりとさせる暖かな話です。
短い話ですし読みやすいです。
ほっとした気持ちになりたいときにお薦めな本です。

"クラプトンの涙"
往年の有名ギタリストと、彼を病院へ取材に行った
女性との会話です。
中学の時からバンドを組んでいました。
先輩のアンリと高校でもその後の活動でもいっしょでした。
彼はずっと彼女を愛していました。
ところがアンリは何も告げずに姿を消しました。
ずっとどうしてだろうと思ってきました。
取材者の女性が自分のことだと語り始めました。
小説家になりたいという男性と付き合っていました。
彼には才能がありました。
彼女は妊娠しました。
今彼が子供の養育に心を奪われたら彼の才能のためには
いいことではないと何も告げずに姿を消したと。
取材が終わり彼女はこの話は自分の母親の話だと
つぶやきます。

美談みたいに書かれていますが、本当にこれでいいのですか?
彼は愛する人と共に生きる時を失いました。
子供の存在を知りません。
子供と共に過ごす喜びを失いました。
かなりダメージを受ける出来事ではありませんか。
子供の存在とはそれほどマイナスなものですか?


"左側のボーカリスト"
ケントとショーは幼馴染です。
いっしょに曲を作ってきました。
プロをめざした時に現れたのはメイというプロデューサー
&マネージャーです。
彼女の助言でケントは一人で曲を作るようになりました。
ふたりの歌は人々に受け入れられました。
しかしショーは作曲、作詞の能力がすぐれているケントに
反発するようになりました。
二人は別れました。
何年も経ってケントはコンサートを開催することに
しました。
左側のボーカリストが来てくれることを信じて。

"唇に愛を"
ホーンセクション中心のグループ<ウルトラホーン>です。
バックバンド中心の仕事をしています。
仲良く仕事をしています。
佐野万理と組んで仕事をしています。
万理に乱暴を働いた作曲家を叩きのめしてこの仕事を
失います。
しばらくして伊藤ミキと組みます。
バンドメンバーの一人とミキが恋に落ちます。
許されない恋です。
コンサートの最後二人は舞台上でキスを交わし逃げ出します。
ウルトラホーンがその後の舞台を力いっぱい自分たちの
演奏をして盛り上げます。

"バラードを"
トップクラスの女性シンガーが突然引退宣言をしました。
彼女は目が見えません。
年老いた里親の元で育ちました。
彼女は特に愛情を与えてくれたわけではありませんが
何かをするときに音をたて彼女はその音をピアノで
まねして暮したといいます。
インタビューをしていた人がそれはわざとしていた
のでは、と推測します。
年老いていて長くはいっしょにいられない。
彼女の才能を育ててやろうとしたのではないか。
彼女はトップシンガーになりましたがほんとうに
歌いたい歌に心が込められません。
付き合っていた男性が自殺しました。
この悲しみを歌に生かすようにと言って。

"笑うライオン"
バンドでドラムをやっている貫太は<笑うライオン>
と呼ばれています。
舞台で夢中になって演奏すると髪が立ってきます。
楽しくて笑い顔になっています。
ずっと疎遠になっていたお母さんが倒れたとの報せが
入って実家に帰ります。
部屋の中には彼のポスターや切り抜きはCD、DVDが
あふれています。
仕事はオフの時で家にいることにしました。
がんばりすぎて階段途中でぎっくり腰になり全治三ヶ月
となりました。
仕事は別のドラマーが助けてくれました。
その曲が人気となり彼は自分はいらないのかと落ち込んでいます。
見せられた彼らの演奏で代理のドラマーはライオンのかぶり物を
して貫太の演奏をまねしています。

"その夜に歌う"
ピアノ・バーの経営者のジョーはその日店を磨きたてています。
二年前にエリックはぼろぼろの格好で店へ来ました。
ピアノを弾かせてくれるようジョーに頼みました。
弾かせてみてその才能に驚きました。
すべてのジャンルの曲が弾けます。
そして歌も歌えます。
店のお客をひきつけました。
アルバイトで店を手伝っているミンディと付き合っています。
やがて彼のうわさを聞きつけてレコード会社の人が
やってきます。
彼は世界にはばたくことになりました。
ミンディーには2年たったら戻ってくると言い残します。
その日が来ました。
みんなが店に集まっています。
彼がやってくるのを待っています。

"明日を笑え"
この話は初めはクレージーキャッツを題材にしている
のかと思っていました。
ビートルズを思わせる有名イギリスグループの前座を
努めたとあるのでドリフターズをもとにしているのだと
気づきました。
グループがコメディーの方へ進んだ様子や前座で演奏した
時の様子などが描かれています。