雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

ストーリー・セラー

2012-05-10 20:10:56 | 

有川浩著"ストーリー・セラー"を読みました。
"Side A"と"Side B"の2編から成ります。
どちらも登場人物は夫がサラリーマンで妻が会社の
元同僚で現在は家で執筆をしている作家という設定です。
"Side A"では妻が病気で亡くなります。
"Side B"では夫が病気で亡くなります。

"Side A" の方がちょっと厳しい話です。
文章を書くのが好きで書き溜めていた小説を偶然に
同僚に見られてしまいます。
この小説を好きだと言われ励まされて世に出て行きます。
その同僚が夫になります。
学生時代に文芸部にいましたが書いた小説をこてんぱんに
だめだとたたかれました。
それがトラウマになっています。
家族は何も起きない時はなんでもない家族ですが何かが
起きると解決する能力を持ちません。
彼女が作家として知られるにつれ学生時代の文芸部の
批判した人たちが嫉妬してネットで攻撃してきます。
夫が許すものかと迎え撃ちしていますが彼女は鬱病に
なってしまいます。
一方、父方の祖母が認知症になりました。
一人暮らしで母が数日置きに面倒をみにいっています。
しかし家はゴミ屋敷と化し悪臭で近所の批判の的です。
民生委員が施設の入所先を探して勧めても父は
受け入れません。
ただ行動するのがいや、物事が頭の上を通り過ぎて
いくのを待つという人です。
母や兄弟も処理能力がありません。
孫の作家になんとかして欲しいとの依頼がきます。
夫婦で祖母を連れ出し、整理にいきます。
やがて作家の彼女は死に至ります。

"Side B"の方がおだやかな話です。
やはり同僚の小説をそれと知らずに読んでいてファンだと
いう男性と知り合い結婚した作家の話です。
夫が交通事故に会ってその時の検査で膵臓癌が見つかります。
会社を辞め残りの人生を生きます。
会いたいと思う人に会いに行く体力がないため交通費を
送って会いに来てもらいます。
そうやって会いたい人には会いました。
飼いたいと思っていた猫も飼います。

帯に"ダ・ヴィンチBOOK OF THE YEAR 2010 恋愛小説部門
第1位"と書かれています。
恋愛小説のジャンルになるのですね。
たしかに二つともとても信頼しあった夫婦です。
出会うべくして出会った男女だといえます。
どちらも夫がとてもいい人たちなんです。

"Side A"の方ですが家族を批判するのですが彼女自身が
それまでぜんぜん祖母がどういう状態なのか知ろうとも
していません。
家族を一方的に責めるのはちょっと違うのではないのと
思います。
たとえ親の代が責任を持たなければいけないとしても
少しは思い出してあげたら思います。

作家の方の心の内を知る話でもありました。
本が出版されたからにはとてもいいと感動する人や
最悪と批判する人もいます。
どちらの意見も甘んじて受けて平気でいられるのが
作家だと思っていました。
厳しい意見、的外れな意見には心が痛むのですね。
読者は勝ってな意見を言っていいのだと思って
いましたが心して書くようにします。