年明け最初の3連休の初日は、とりあえず家族サービスということで一日終始しておりました。来週はいよいよインテックス大阪ですし、家人一同から快く送り出してもらうためにも、ここは手を抜くことは出来ません。今日は久しぶりに穏やかな冬晴れの気持ち一日でしたし、一通り満足してもらえたのではないか、と安堵しています。できれば来週のインテックス大阪も、今日のような天気になってくれればありがたいですね。
さて、今日は久しぶりに本の感想を一つ認めておきましょう。正月休みに「沈まぬ太陽」と並行して読んだのが海堂尊の「ブラックペアン1988」上下です。「チーム・バチスタの栄光」を皮切りに織りなされる、架空の都市「桜宮市」にある東城大学医学部附属病院を舞台とする「桜ノ宮サーガ」を構成する1冊で、これまで語られてきたお話の20年ほど昔の話が綴られています。奇跡的な手技を持つ「神の手」佐伯教授君臨する外科学教室を舞台に、困難な食道癌手術を劇的に簡略化できる秘密兵器を引っさげて帝華大から講師として赴任してきた後の病院長高階先生に、日常かなりグレーな行動が目立がメスを持てば天才的な手腕を持つ渡海医師が挑む、という医療技術をめぐる闘争、そして渡海と佐伯教授の隠された過去を巡るお話が、佐伯教室に配属された一年生の新米医師を語り部にして、クライマックスに向けて怒涛の勢いで展開していきます。手術シーンの精緻な描写や人間関係の鮮やかな配置、あっと驚くどんでん返しなど、いつもながら見事な筆致で、引き込まれるように一気に読んでしまいました。
中でも私が一番気に入っているのは、海堂尊の描く権力者像です。「螺鈿迷宮」で描写された碧翠院桜宮病院院長の桜ノ宮巌雄や、「ジェネラル・ルージュの凱旋」における黒崎誠一郎・臓器統御外科教授もそうでしたが、この「ブラックペアン」でも、傲岸不遜でヒトをヒトとも思わないような姿で描かれる佐伯教授が、最後の最後で一患者の命を救い、過去の贖罪をなすために、それまで執念を燃やしてきた権力掌握をあっさり放棄して引退を宣言するなど、とにかくその姿勢が潔いのです。また、時に辛辣に過ぎるほどに厳しい姿勢を見せながら、その奥には後進をより高みへと導くための深みのある熱さに溢れていることが、読み進めるに連れて見えてきます。これらの姿は、例えば今読んでいる山崎豊子の登場人物などにはまず絶対に現れることがありません。一種のピカレスク・ロマンに通じるこの種の人物設定には、私が常日頃魅了されてやまない、実力十分な自信家の姿も見えて、それがまた実に心地よいのです。
「沈まぬ太陽」はまた改めて感想書きますが、こちらの登場人物は、今時子供向け特撮番組だってもう少しひねっているぞ、と言いたくなるくらい見事に単純な善玉と悪玉に分かれていますので、同時並行して読んでいると、この人物造形の違いが否応でも目についてしまいます。
「桜宮サーガ」はこれからも続くようですし、既刊でまだ読んでいないものも幾つかありますので、しばらくは楽しいひとときを過ごす本には困らずに済みそうです。私も、いつかはそんな没頭して時間を忘れさせるような本が書けるようになりたい、と切に感じさせられました。
さて、今日は久しぶりに本の感想を一つ認めておきましょう。正月休みに「沈まぬ太陽」と並行して読んだのが海堂尊の「ブラックペアン1988」上下です。「チーム・バチスタの栄光」を皮切りに織りなされる、架空の都市「桜宮市」にある東城大学医学部附属病院を舞台とする「桜ノ宮サーガ」を構成する1冊で、これまで語られてきたお話の20年ほど昔の話が綴られています。奇跡的な手技を持つ「神の手」佐伯教授君臨する外科学教室を舞台に、困難な食道癌手術を劇的に簡略化できる秘密兵器を引っさげて帝華大から講師として赴任してきた後の病院長高階先生に、日常かなりグレーな行動が目立がメスを持てば天才的な手腕を持つ渡海医師が挑む、という医療技術をめぐる闘争、そして渡海と佐伯教授の隠された過去を巡るお話が、佐伯教室に配属された一年生の新米医師を語り部にして、クライマックスに向けて怒涛の勢いで展開していきます。手術シーンの精緻な描写や人間関係の鮮やかな配置、あっと驚くどんでん返しなど、いつもながら見事な筆致で、引き込まれるように一気に読んでしまいました。
中でも私が一番気に入っているのは、海堂尊の描く権力者像です。「螺鈿迷宮」で描写された碧翠院桜宮病院院長の桜ノ宮巌雄や、「ジェネラル・ルージュの凱旋」における黒崎誠一郎・臓器統御外科教授もそうでしたが、この「ブラックペアン」でも、傲岸不遜でヒトをヒトとも思わないような姿で描かれる佐伯教授が、最後の最後で一患者の命を救い、過去の贖罪をなすために、それまで執念を燃やしてきた権力掌握をあっさり放棄して引退を宣言するなど、とにかくその姿勢が潔いのです。また、時に辛辣に過ぎるほどに厳しい姿勢を見せながら、その奥には後進をより高みへと導くための深みのある熱さに溢れていることが、読み進めるに連れて見えてきます。これらの姿は、例えば今読んでいる山崎豊子の登場人物などにはまず絶対に現れることがありません。一種のピカレスク・ロマンに通じるこの種の人物設定には、私が常日頃魅了されてやまない、実力十分な自信家の姿も見えて、それがまた実に心地よいのです。
「沈まぬ太陽」はまた改めて感想書きますが、こちらの登場人物は、今時子供向け特撮番組だってもう少しひねっているぞ、と言いたくなるくらい見事に単純な善玉と悪玉に分かれていますので、同時並行して読んでいると、この人物造形の違いが否応でも目についてしまいます。
「桜宮サーガ」はこれからも続くようですし、既刊でまだ読んでいないものも幾つかありますので、しばらくは楽しいひとときを過ごす本には困らずに済みそうです。私も、いつかはそんな没頭して時間を忘れさせるような本が書けるようになりたい、と切に感じさせられました。